二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート5:この風が泣いている(2) ( No.51 )
日時: 2015/03/03 22:14
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

 落ちる最中、谷の下を見た。アクアは水タイプの直感で分かった。幸い、深そうな川が流れている。
 すぐさま、自分の姿を原型に変換した。
 そして、特性:呼び水でドロポンまで飲み物にしてしまうレイドを無視し、水が苦手なチャモの方に手を伸ばす。彼女は既に気を失っているようだった。
 しかし、それでも必死に手を伸ばす------------
 ----------届いた!!
 彼女の服を引っ張り、抱き寄せた。
 そして、そのまま彼女を上に向けて入水した。
 激しい衝撃で頭の中が揺れる。
 とにかく、浮くことだけを考える。
 そして、何とか水面に浮くことができた。
 だが、水に落ちた衝撃は、決して小さくはない。流石のラグラージと言えど、意識が朦朧としてくる。
 ----------くそっ、もう何も-----------考えられません……

 ***


 ----------そこの君!
 ----------何ですか、僕は今読書中なんです。図書室で大声を----------
----------今度さ、校内のタッグバトル大会があるんだよね! 君、確かラグラージだったよね!
 ----------で? 僕に参加しろと。貴方と一緒に。
 ----------ダメかな?
 ----------残念ですが、目立つのは嫌いなので。ラグラージだからという理由だけで罵詈雑言の雨が降る世の中だ。
 ----------でもでも、君ラグラージの割には顔が良いって----------
----------それが嫌なんだよ!! 同属からですら、それで忌み嫌われてきたのが分からないんですか!! どいつもこいつも、僕の外見ばかりを見やがって!!
 ----------あたしだって、女の癖にバトルなんて野蛮だ、とか同属の男の子にそのVを寄越せっていじめられてた頃、あるよ?
 ----------それがどうしたって------------
 ----------でも、あたしが戦う資格を持って生まれたことには変わらないんだから。君も、クラス:5Vの優等生君なんでしょ? なのに、バトルを極端に嫌がるからマスターも心配していたよ?
 ----------貴方に……何が……!
 ----------他人の嫌事なんて気にしてたらやってられないよっ! あたしがその大会に出ようと思ったのは、皆を見返すためなんだから! 
 ----------酔狂な……これ以上は付き合ってられません。
 ----------もう。
 ----------ですが-----------少し、考えておきますよ。

 あれが、全部始まりでしたね。

 ----------決まったの?
 ----------僕も悔しくない訳じゃあない。仕方がないですが、やってやりますよ。ただし、アタッカーの訓練なんかロクに受けてないので、貴方のサポートに回ることが多くなると思いますが、良いですか。
 ----------ぜんぜん、おっけーだよ! そーいえば、君。名前は?
 ----------まだ名乗っていませんでしたね。アクア。ラグラージのアクアです。
 ----------あたしはチャモ。バシャーモのチャモだよ! よろしくね、あっくん!
 ----------誰が、そう呼べと。

 そして、大会に優勝した僕らはマスターに認められて、レートメンバーに入ることを約束された訳だったか。
 思い返せば懐かしい。

 ----------あっくん、どーしたのー?
 ----------全く、頭のおかしいのは何処にでも居るもんですね。たった1人でフリーに出ようとしているのがいるそうです。ほら、この新聞。
 ----------へー。その人って確か、ボマーっていう人じゃなかったっけ?
 ----------ボマー。聞いたことありますよ。破壊力SSの異名を持つデストロイヤー。しかも脳筋、短気、馬鹿の3拍子を併せ持つとんでもないのじゃないですか。
 ----------しかも、あたし達の先輩でこのがっこーの在校生だよ?
 ----------最悪だよ! ナイトメアだよ! 
 ----------何か、訳あってレートパのメンバーが皆居なくなっちゃったから、憂さ晴らしに1人でフリーに行ってるんだって。
 ----------バカですね。仕方がない。そのバカ面拝みに行ってやりますか。

 BOHに出ることになったきっかけでしたね。これが。

 ----------終わったね。バトル・オブ・ホウエン。
 ----------皆はそれぞれの場所に戻るんでしょうね。
 ----------でも、あたし達のコンビは解散しないよね?
 ----------まあ、多分。
 ----------何で……そんなに曖昧に返すの?
 
 あれ? こんな会話、ありましたっけ?

 ----------あっくんは、あたしのことが嫌い?

 違う、違うんです。

 ----------もう、いいよ。あたし達のコンビは、解散だね。

 何で、そんな顔をしてそんな事言うんですか。
 違う!! 僕は、貴方がいないと------------!!

 ----------あたしのことを突き放した罰だよ。あっくんは、自分がいないとあたしがドジで何も出来ないのって思ってるんでしょう?
 
 誰が……そんなことを!!

 -----------違うよ、あっくん。弱いよ、君は。だって、今だって言いかけたじゃん。あたしがいないと、何もできなくなっちゃったんだよ。あたしがいないと、ダメになっちゃったんだよ。

 何を、言っているんだ!

 ------------貴方は壊れてしまった。

 だ、誰だお前は……! 僕か? 僕に似て---------

 ------------当然だ。僕は貴方なのだから。

 違う!! お前は僕なんかじゃない!!

 ------------いや、違う。貴方は僕なんかじゃない。いつからだ? そんなに強くなったのは。

 な、何を言って-----------

 ------------貴方は他人の影響を受けすぎたんです。優等生キャラを演じて、一生穏便に過ごす-----------それは貴方の生き方だったのではないですか。

 違う!! そんなのは、僕の生き方じゃない!!

 ------------特に。貴方に干渉しだしたのは、このチャモという女だ。

 チャモさんは、何も関係ないじゃないですか!!

 ------------今のを見ても分からないのか。お前には他人と生きるための光なんか、必要ないんだよ、アクア。

 分かったぞ……お前はラグラージ族の……!!

 ------------以前は女に現を抜かすのは、馬鹿のやることだ、と言っていたが、今のお前はどうだ?

 チャモさんのことが------------くっ。

 ------------ダメだね。お前は一生孤独じゃないといけない。それがお前に与えられた罰だ。

 何が悪いんだ……!!

 ------------何?

 何が悪いんだ!! 僕だって、ポケモンとして生まれたんだ!! タダの戦闘生命体なんかじゃないんだよ!! だから、何が悪いんだよ!! 仲間を持って、誰かを好きになることの何が悪いんだ!!

 ------------やっと、理解できたか。

 え?

 ------------お前が今、抱いている感情が何なのか。表の意識で完全に自覚するのは、まだ先になりそうだが-----------

 ちょっと待ってください!! 貴方は一体------------