二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート5:この風が泣いている(6) ( No.55 )
日時: 2015/03/08 18:36
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

 三途の川、上流。先ほどの戦闘の傷だが、彼らの持っていた回復薬で何とか癒えた。
 さて、辿り着いたのは良いが、成る程防御壁らしきものが張られていた。そこから先は進めなくなっていた。

「どーすんの、あっくん」
「……同じだ」
「何が?」
「同じなんですよ。僕もバリケードを作るなら、同じ方法で作ります。データの塵を集め、それを固めているというものですが、1枚壁ではなく、何枚もの壁を張り合わせてより屈強にしてあるんでしょう」

 やはり、この先に居ると思われる守護級。アクアは、自分に似ているものを感じた。

「この壁……コンピューターを守りたいだとか、そういう意思ではなく、単純に外部の者を遠ざけるために作られたんじゃないでしょうか」
「あっくん……」

 チャモは、まるで以前のアクアを見ているような気分になった。アクアも同じだった。

「ですが、やるしかありません。力技では壊せないので、何とか壁を構築するプログラムにウイルスを送り込んで、破壊するしかないでしょう。ただし、すぐにこいつは再生してしまうので、とっとと入る必要がありますが」

 アクアは、タブレット(当然、防水加工済み)の画面を開き、コードを幾つも繋いで画面に噛付くように操作を始めた。
 ウイルスとか色々ヤバいことやらかそうとしているが、別に悪いことに使うわけじゃあるまいので良いだろう(ウイルス作成は犯罪です)
 改めて、この少年が悪人じゃなくて良かった、とチャモとレイド含む全員は胸を撫で下ろしたのだった。

「……あれ? 何か聞こえてこない?」
「川の方を登ってくる音ですね」

 どれ、と下流の方を覗いたシェムハザは戦慄した。


「下級です!! サメハダーが数体!!」


 叫んだシェムハザ。見れば、軽く6体程の凶暴ポケモン・サメハダーが群れを成して襲い掛かってくる。
 しかも、いずれも黒い影に身を包んでいる。
 間違いない。影の携帯獣の下級だろう。

「畜生!! 後もう少しなのに……!!」
「仕方がありません! 雑魚は私達が食い止めます!」
「……駆逐」

 雲斬とシェムハザが飛び出していく。
 旋も後に続こうとするが---------

「待ちなさい。君はアクア君達と一緒に居るんだ!」
「し、しかし……!」
「我々の中でメガシンカが使えるのは、君とアクア君しかいない。しかも、アクア君は先ほどの戦いで、もうメガシンカするエネルギーは残っていないはずだ。それに、壁の解除は一瞬の間。君も一緒に連れて行く訳にはいかない!」

 くっ、と言葉を失う旋。自分の所為、だと。
 
「雑魚は私達に任せなさい!! 君は、アクア君の力になってやるんだ!!」
「----------分かった、シェムハザさん。雲斬さん」

 今、悔いている暇は無い。
 今、自分に出来ることをしなければ!


「やりました!! バリケードのプログラムを破壊しましたよ!!」


 アクアの声が聞こえた。壁がバラバラに崩れ落ちる。
 そして、チャモとレイドが奥へと進んでいく。
 アクアもタブレットを手に、走っていく。

「早く!! 旋さん!!」

 ----------師匠。俺でも誰かの力になれるのなら。
 そして、旋もその先へ向かったのだった。
 それを見送ったシェムハザは呟いた。

「彼は成長したよ。あの男の下でどれだけ扱かれたかは知らないが」
「……男?」
「滅茶苦茶で破天荒だが、芯は人一倍通っている龍の男だ」

 さて、とサメハダーの群れを見てシェムハザは笑みを浮かべた。

「神の名に誓って、奴らを滅さねばならないようだ……!」
「……御意」


 ***

 壁の先は別世界のようだった。
 瘴気に包まれた空間が奥には広がっていた。
 そこには、子供のおもちゃのようなものが転がっていた。ぬいぐるみ、ブリキの車、ボール……。

「まるで、子供が1人で遊ぶための部屋だな」
「閉塞感漂ってんなー、オイ」
「不気味……」

 それぞれがそれぞれの感想を思い思いに言う。
 
「ねえ、アレ見てよ!」

 部屋の隅に、うずくまっている少年が居た。
 
「……居なく……なってください。どーせ、僕は誰からも必要とされていないんだ……!!」

 今、アクアはその声が自分の口から出たものと思ってしまった。
 現に、3人とも自分のほうを向いた。
 しかし、それが少年の発した言葉だと分かったようだった。

「アクアに……似てる、だってぇ!?」
「声まで……此処までとは思いませんでした」

 
「……1人にさせてください……!!」


 ぐるり、と向き直った少年の姿は、ヘッドフォンをしていないアクアそのものだった。
 しかし、目玉は今までの守護級同様黒くなっており、異形のモノであることを再確認させた。
 そして、空間が収束し、少年の姿が変わっていく。
 新たに5つの影が現れた。
 
「---------排除……します」

 4人は、臨戦態勢に入る。
 呟いた少年の姿は----------ラグラージになっていた。

「どんな理由があろうが、僕の姿でそれ以上好き勝手して貰うと困るんですよ。全力で貴方を倒し、コンピューターを破壊する!! それだけです!!」