二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- パート6:雷電霹靂 ( No.75 )
- 日時: 2015/03/25 14:48
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「……おめーの言うとおり、だ」
静炎邸、玄関。立ち話をするのはアレだが、余裕をくれる様子は無かった。
仕方が無いので、その場でボマーは語りだす。いつもの猛々しさとか、傲慢さはその表情には無く、至って真剣なものだった。
「俺はお前らに嘘をついていた。1つ目、俺と旋の過去。これはまだ隠していただけだからまだしも、だが-----------」
ボマーの顔が曇る。
「2つ目、旋が何でボックス内を回る旅に出たのか、それについては完全に嘘をついた」
やはり、嘘だったか、とアクアは確信した。
あの時のボマーの態度、後から考えて見れば不振すぎる。
「嘘って、どういうことよ、ボマー。あたしらにも言っていなかったことがあるってこと?」
「そうだよ! BOHに一緒に出たあたし達にも隠し事してたの」
非難の眼が集まる。しかし、アクアだけは少し違った。
----------やっぱり、か。
そんな、淡白とした反応だった。ぶっちゃけると、アクアはボマーが嘘をついたことについては、それ程気にしてはいない。
彼の真意さえ知れれば、それで十分なのだ。この程度で殺気立つほど、アクアは子供ではない。
が、それを許さないメンバーも当然居る。
「ふざけてんじゃ、ねぇよテメェッ!!」
叫んだのは、レイドだった。足りない背でボマーに食って掛かり、普段の彼からは考えられない程の剣幕でボマーに詰め寄った。
年下の中では特にボマーになついており、まるで兄弟のようだった2人。それ故、彼が嘘をついたことが許せなかったのだろう。
「BOHに一緒に出て、俺達ゃいつまでも仲間なんじゃなかったのかよ!! 何で嘘なんかついたんだ、言え!! 言うんだ!!」
「すまねぇ。これを言ったら、おめーらが旋の事を怖がったり信用できなくなるんじゃねえか、って思った」
「その程度だったのかよ……このクソ野郎ォ……!!」
振り絞るように、レイドは反駁した。
「俺らはお前からすりゃ、その程度の奴にしか見えていなかったのかよ! 人から聞いた第一印象だけで、そいつを軽蔑するような奴にしか見えていなかったって言うのかよ!!」
「レイドさん……! それ以上は……!」
ムゥの制止する声も聞かず、レイドは捲くし立てた。
怒りだった。ひたすらボマーへの怒りが込められていた。
「てめぇの仲間は俺らの仲間だろ!? 少なくとも、旋はお前が言うような怖かったり、信用できねえような奴じゃなかった!! てめぇは俺らのことをバカにしたどころか、旋のことまでバカにしたんだ!!」
「悪い、少し下がれ」
気迫の篭った声で、ボマーは言った。
しかし、突っぱねるような言葉が余計にレイドを苛立たせた。
「おい、ボマー、まだ話は------------!!」
「レイドさん」
真意を悟ったのか。彼の肩をアクアは無理やり引っ張り、ボマーから引き剥がす。
そして、当のボマーは地面に正座し、そして--------------思いっきり頭を地面に付けた。
「本当に、申し訳無かった!!」
つまり、土下座だった。
アクアも察していたとはいえ、これには驚いていた。
ボマーが、人前で誰かに頭を下げたことなど滅多に、いや一度も無かったからだ。
「俺は最低な野郎だ。どうやったら仲間を傷つけないで済むか考えていて、結局逃げ回っていたんだ。その結果がこれだ。お前らに不信感を抱かせ、旋にも要らない迷惑を掛けちまった」
「お、おい、やめろよ、ボマー」
先ほどの態度とは一転、レイドの感情は怒りから戸惑いに変わる。
「ふざけんなよ。そんなになって謝られたら、怒鳴れねぇじゃねえか……」
「すまなかった。俺の嘘で結局皆を混乱させちまった。仲間を想っているだなんて馬鹿馬鹿しい。結局、一番仲間を信頼していなかったのは、俺じゃねえか!!」
「誰だって空回りすることはあります」
言ったのはアクアだった。
「ボマー先輩が仲間思いなのは、本当は皆知っていますから」
下げた頭を上げ、ボマーは呟くように言った。後悔と自責の念が滲んでいた。
「俺は、嘘をついたんだぞ」
「先輩のいい所が不器用なりにも仲間想いなところだとすれば、悪いところを敢えてあげるとすれば、お人好しすぎてしまうこと、ですから」
「俺は、お前らを信用していなかったんだぞ」
「誰だって、そんなときはあります。一時的な感情に惑わされて、本当の自分を見失わないで下さい」
それに、とアクアは続けた。
「僕は先輩を責めに来たんじゃない。貴方から真実が聞ければ、それだけで十分ですから」
屈託のない笑顔だった。
それだけで十分だった。
ボマーの眼には涙が浮かんでいた。
「ま、訳があるんでしょうし。何であたし達に言わなかったの、って話よね」
「そーだよ! 幾らでも相談に乗れたと思う!」
「ま、あっしらも同感でさァ」
「そうです。もう私達は仲間なんですから」
アクアの言葉で、メンバーの疑念など無くなっていた。
そして、こんな自分を改めて仲間と認めてくれた彼らに、ボマーの涙腺は完全に壊されたのだった。
「は、は、俺はつくづく馬鹿だ……お前らが、こんなにも良い仲間だということにも気づかなかったなんて」
「もう、良いんですよ。それよかレイド」
ぞくり、とレイドは悪寒を感じた。
阿修羅豪傑夜叉般若が逃げ出すような形相でアクアが睨んでいる。
「誰がしゃしゃり出て良いって言いましたか」
「悪かったって! 俺だって」
「いーや、レイドのおかげで目が覚めた。やっぱ隠し事なんざ向いちゃいねぇな、俺にゃ」
ぽん、とレイドの頭に優しく手を置いたボマーの顔は、既に晴れていた。
「あんがとな」
慣れない言葉を掛けられた所為か、少しレイドは照れて、そのまま言葉を失ってしまった。
しかし、これでわだかまりは消えただろう。
「ま、何だかんだで一件落着ね」
フレイの言葉で、この件は一旦幕を閉じ---------
「とりま、中で話すぞ」
るわけがなかったのだった。
「……これ、ひょっとしてあたしが人数分の夕食追加しないといけないパターン?」
今は既に6時。正直、もうすぐ夕飯の時間だった。
「……不憫だわ」
この邸のコックは、今出払ってしまっている。入院とかで。
料理ができるのは彼女くらいなものなのだった。
「……待ちなさいよ、こういうときのための------------」
にやり、と彼女は笑みを浮かべた。そして、そのまま皆の後に着いていくのだった。