二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート6:雷電霹靂(2) ( No.76 )
日時: 2015/03/25 17:43
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

 ボマー達はフレイに案内されて、食事会場に集められた。

「……夕食ができるまで、此処で話をすると良いと思うわ」
「誰が作ってくれてるんだよ」
「その辺は大丈夫。少々、不安だけど」

 言葉を濁した彼女に不審そうな眼差しを向けるボマーだった。
 が、全員が席についたのを確認すると、柄にもなしに咳払いをし、話を始めた。
 
「今から話すことは全て事実だ。キーワードはメガシンカ」
「メガシンカ……?」
「そうだ」

 
 ***

 
 大いなる力には大いなる代償が必要だ。
 メガストーンとキーストーンは、その代償の代わりとなっている。
 その力を得ることが出来る者は限られてはいるが、その限られたものでも幾つもの修羅場や条件を乗り越えた奴じゃねえと、完全に扱うのは難しいと思うぜ。
 そんな前置きは置いておいて、だ。旋の教育係を任されたのは半年前だった。

「----------ピジョットの旋……だっけか。あれだね、君種族値見直して来たらどーだよ、コノヤロー」
「はい、我ながらゴミのような種族値だと自覚しています!」
「ストレートな自虐だなオイ!! うん、本当ざっけんなって話だぜ。普通、仮にも落ちぶれとは言え、600族の俺様が序盤鳥(笑)の教育係を任されるってこと自体がだな」
「はい、先輩も600族最弱で馬鹿と揶揄されているのも知っております! マスターが『馬鹿正直な奴には馬鹿教官がお似合いだ、コノヤロー』と言っていたので」
「殺すぞ、テメエ!! 後マスターも!!」
「ですが、」

 旋は馬鹿みてえに正直で、俺よりも不遇なはずなのに、


「誰よりも、馬鹿みたいに真っ直ぐ空を見ていることも知っています!!」


 当時の俺よりも、ずっと空を見ていて、

「だからこそ、その先輩から学ぶべきことを全て吸収し、いつかは龍も倒せるような猛禽になりたいです!!」

 誰よりもずっと夢を気高く持っていた。

「ケッ、馬鹿かテメー」
「自分には無理でしょうか」
「アホか、一回心の中で誓ったのならば、無理だとかそういうのは二度と思うな」

 俺は、自分と通じるモンを感じたのかもしれねぇ。

「先輩」
「それにな、なりたいじゃねえ。なるんだよ!! 俺だって600族最強になるって夢があんだ。お前ももっとでけぇ夢持ったって良いんだぜ」

 そして、あいつは、


「はいっ!! ならば、自分は600族最強になった先輩も倒せるような猛禽になります!!」


 ムカつく程生意気だった。


「ケッ、くそムカつく野郎だ……が、気に入った!! 覚悟しとけよ、旋!!」


 ***


「特殊技のトレーニング、か。両刀なら俺もやったことがある。タイプも同じだし、それで俺に任せたのかね、マスターは」

 うおおおお、と今日も旋の気迫が聞こえてくる。
 精神統一、組み手、技のトレーニング。
 流石の種族値だ。特攻は元は低いだけあって、物覚えははっきり言って悪い以外の何者でもなかった。

「大体暴風なら、カイリューにって、特殊カイリューなんかうちのボックスにいねえのか、確かに問題ではあるな、問題では」

 うああああ、と暴風に失敗して、跳ね返った風に巻き上げられてるのをみながら、んなことを思っていた。

「先輩、此処はどうすれば良いんでしょうか」
「風向きを考えろ。純粋な飛行タイプは、風の声が聞こえるって聞いたことがあるぜ」
「風の……声?」
「つーか、聞こえなくてもな、俺でも身体の回りを舞う風を纏って……って言い方が合ってるか。とにかく、風と一体になれば良い。風がどこに吹くのか分かんねぇなら、自分が風になれば良いんだ」

 あいつには、俺の知っていることや、マスターから教わったことを一杯教えた。

「『嵐吹く、三室の山のもみぢ葉は、竜田の川の錦なりけり』。嵐の後に川の上に浮かぶ紅葉の散った紅葉の美しさを歌った短歌だが川に浮かべたのは紛れもない、嵐」
「はあ」
「嵐ってのは人に害なすこともあるが、こういうのもオツだと思った。芸術のための道具に出来る」
「芸術、ですか」
「おかしいか? 馬鹿な俺だが、こういうのが好きなところはあいつに似たのかね。ま、何であれ、だ。旋。どうせなら、変に荒ぶった風なんかより、美しい風を起こせ。脳筋の俺が言うのもなんだが、お前には俺のようにはなって欲しくねぇからな」

 くっさい話だ。後から考えてみればみるほど、な。
 

 ***


「最近は、めきめきと力を付けてるんじゃねえか、お前」
「はいっ、師匠のおかげです!!」
「その師匠って呼ぶのはどーにかならんかね……。俺ひょっとして老け顔? じじ臭くて嫌なんだけども」
「いえ、俺を此処まで鍛えてくれたのは、貴方です。それを師匠以外の名で呼ぶことは許されません」
「堅苦しいにも程があるんだよな」
 
 この頃から師匠と呼ばれるようになった。老け顔なのか、俺。ヤンキーと言われたことはあってもジジイ呼ばわりされたことはなかったんだけどな。

「そーいえば、だ。暴風は完成したのか」
「はい、勿論です!」
「撃ってみろ、俺に向けて」
「い、いえそんなことは---------」
「つべこべ言うんじゃねえ!! 早くしねえと、ストーンエッジブッ刺すぞ!!」
「うわ、もうボーマンダの姿に----------」

 とっとと戦闘体になって、俺は突っ込んでいった。どうせ、奴がよっぽど臆病じゃねぇ限り、俺より先制できるんだから俺を暴風で巻き上げることができるはずだった。
 
「そ、それでは、恐縮ですが-------------」

 俺の周りの風が変わった。いっきに、上昇気流は俺を巻き上げていく----------


「うおおおおあああああ!!」

 
 信じられなかった。とんでもねえ速度の習得だった。
 息を切らした旋を労いに、俺は擬人化体に戻っていた。

「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
「おい、やったじゃねえか!! 此処までとは思わなかったぞ!!」

 旋の羽根を撫でてやっている途中で、俺はあることに気づいた。
 どうもおかしい。
 様子が。
 妙に息が荒くて、目の色が殺意を放っているような------------

「……殺ス……!!」
「は?」
「……オ前、殺ス……!!」

 一瞬、何があったか分からなかった。
 だけど、俺の肩は確かに旋の嘴に貫かれていたんだ-----------