二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート6:雷電霹靂(5) ( No.79 )
日時: 2015/03/27 18:52
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「……うーん……これは……」
「はい、お茶」
「……ありがとうございます」

 此処は、アクアの家。その地下室にある作業室だった。パソコンが3台も置かれており、コードがあちこちに繋がれてあり、足を引っ掛けそうな部屋である。
 彼自体綺麗好きではあるのだが、この部屋は仕方ないと思っているらしい。

「しかし、すいません。貴方も手伝わせてしまって」
「良いよ。それに、もしも中央区域が危なくなったら、ということも考えてるんでしょ」
「……実は、少し違うんです」

 実は、これは半分建前だったりした。別に中央区域に強いポケモンは、まだまだ居る。
 ファイアローのコママも例外ではない。
 アクアはネタばらしと言わんばかりに続ける。

「雑用係が欲しかった、それだけですよ」
「もうっ!」

 というのも実は建前で。
 -----------言える訳無いでしょ、ただ貴方と居たかっただなんて。

「……そんなことのために、あたしを呼んだの?」
「いや、申し訳ない。やはりこういうのは、逆に信用できる人に任せたくて」
「あたしのこと、信用してるの? うっかりしたりとか、ドジしたらどうしよう、とか思ってない?」

 不安げな表情で、チャモは言った。

「……そのときは、そのときです。確かに1人で作業するときは落ち着くんですけど、同時に少し不安ですから。それより、誰かが居た方が良い」
「あたし、足を引っ張るかもだよ?」
「心配なく。……それとも嫌でしたか?」

 ううん、と彼女は首を横に振った。


「あたし、あっくんと一緒に居れるだけで最近、すっごい幸せだもん」


 え、と予想外の反応にアクアが今度は困ったような顔をしてしまった。
 彼女の言葉の意味を詮索してしまう。
 

「……か、からかってるんですか? ほ、ほら、今度はそこの工具を取ってください!」
「はいはい。ふふっ」
「何がおかしいんですか、もう」
「さっきのお返し。あっくん、あんなこと言うんだもん」
「はいはい、悪かったですよ……」

 申し訳無さそうに、または困ったように彼は言った。
 実際、彼女の無自覚なのか自覚のあるのか分からないアプローチには毎度毎度ドキドキさせられる。
 向こうが自分に気があるのか、そうじゃないのか、変に詮索してしまう。

「じゃあさ今度2人でパフェ食べに行こうよ!」
「結局食い気ですね……。この戦いが終わったらそれも良いかもしれませんが」
「最近、2人っきりになることも少なかったし」
「恋人じゃあるまいし、そんなこと気にする必要は無いと思いますが」

 素っ気無く返した彼は、再びパソコンに向かって敵のコンピューターのデータを洗い出した。

「……ほんとに、恋人同士だったらどうする? なーんて」

 アクアに聞こえないように、彼女はそう呟いたのだった。
 彼を見守りながら。


 ***


「……おい、コラどーゆー意味だ」
「今言ったままの意味だ。この工場の管理システムは殆どやられてしまっている、此処に現れた守護級の所為でな」

 守護級。やはり、既に敵の毒牙はこの工場にも伸びていたとは。

「生産ラインの停止を図ろうとしたが、無理だった」
「さらに、敵の守護級もおそろしい攻撃力の持ち主で立ち向かったものはいずれも返り討ちにされています」
「それだけではない。コイル達を直接止めようとも思ったが、電磁バリアであれ以上は近づけなくなっている。普通のポケモンは阻まれ、電気ポケモンも体内の電気を狂わされて、頭痛、吐き気を催し、最悪再起不能に陥る」

 なるほど、確かにコイル達のいるベルトコンベアに近づこうとしたが、後1mほどのところで、バチッと見えない何かに弾かれた。
 これが所謂電磁バリアという奴であろう。
 また、コイル達が作らされているのは、どうやらいずれも下級の携帯獣のようだった。
 さらなる改造を加えているらしい。それらは今こそ起動はしていないが、いつ動き出すか分からないという。
 つまり、この工場は兵士量産工場になっているのだった。

「ふーむ。なるほど。よし、分かった。となれば、あんたらのところから誰かを連れて行けば良いんだな。これでパーティ6匹だから丁度良い」
「おい、こんなこと言ってるよ姉さん、どうするんだよ」
「私だって嫌に決まっておろう、この間ボコボコに負かされたばかりなのに。しかも、まだ仕事もあるというのに」
「もう良い、てめぇらには頼まねぇ!!」
「うるさい、貴様にやるものは1つもない、帰れ!」
「というか、何であんたらあたし達に対して、そんなに疎外的なのよ」

 フレイが突っ込む。
 ライボルト姉弟は口をそろえて言った。


『このボマーは、いっつも此処にくるなり、「おーい、頼むぜ。今日の俺の活躍をもっとクリアに映せるよーなテレビは作れないのか?」と押しかけてくるからだぁぁぁぁ!!』


 3秒後。脳筋トカゲの公開処刑が決まり、執行された。


 ***

「さ、行くわよ」
「はい、ずいまぜんでしだ……」

 フレイの金縛り、かーらーのめざパ氷集中砲火で、ボマーのHPはマッハで消費されていた。
 ライボルト2名にはしっかり謝ったのだった。

「しかし、まずいな。ジルルもバルルもこの分だと強制的に働かされ続けているってことか」
「全て連中の思い通りに操られているわね。人形という言葉が似合うわ」
「気に入らねェ、奴隷じゃねェですかィ」
「かわいそうなのです……」
「奴隷……うん、そういうプレイも良いかも」
「体内の水全部抜くわよ、触手野郎」

 ああ、待て、とライボルトの2人が追いかけてくる。

「実はな、マスターが現在改修に出していた切札があるのだ」
「切札ァ?」
「そいつは、奴らの催眠電波を食らっていないから、コントロール下には無いはず」
「コイル達を操った催眠電波は、あくまでも催眠をするためのもの。今はコントロールするための電波が流されているんです」
「つまり、そいつの修理が終われば問題ねぇのか」
「いや、もう終わっている」

 ある部屋にボマー達は案内された。
 地下の研究室だ。
 そこには、5種類の家電がおかれていた。
 洗濯機、電子レンジ、芝刈り機、冷蔵庫、扇風機。

「……これが切札?」
「正確に言えば、これを動かすモーターが足りない」
「ふざけてんの?」

 苛立ちの声をフレイは上げた。
 ボルルを睨み付ける。
 しかし、臆した表情も見せず、彼女は続けた。

「違う。これを見て、何か思い出せないか?」
「……まさか、”あいつ”か」

 思い出したように、ボマーは言った。


「モーターの奴か」