二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート6:雷電霹靂(11) ( No.90 )
日時: 2015/03/29 10:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

【モーターのハイドロポンプ!!】


 激流がハッサムを直撃した。避けようとしたが、間に合う訳も無く。

「貴様……!! 舐メタ真似ヲ……!!」

 息も絶え絶えにメガハッサムは呻いた。


『メガハッサム残りHP:50%』


 流石の耐久である。BやDにも多少裂いていたのだろうか。
 しかし、問題はない。
 火傷のダメージが2匹を同時に襲った。


『モーター残りHP:42/157』

『メガハッサム残りHP:40%』

「セ、セメテ、刺シ違エナケレバ……!! 俺様ノ、誇リガ……!!」

 虚ろな表情で、ハッサムは言った。
 その目に、フレイは何かを感じたのか。

「--------まるで、操り人形のよう」

 と、評する。
 自らの恨みや怨念への凄まじき執念。勝利への固執。
 普通のポケモンのそれでは無いことは分かりきってこそいた。分かりきってこそ居たが、やはり怨念の集合体であることが関係しているのであろうか。

「記憶は電磁波になって残る……一説ではそれが幽霊だとされていることもあるわ」
「心底不愉快だゼィ。こいつらの戦いも、こいつらを戦わせている奴も」
「奴ら、苦しんでる。全く希望なんてもんを持ってる奴なんか、居なかった。今まで戦ってきた奴も」

 ギロリ、とメガハッサムがフレイ達を睨み付ける。


「黙レ、俺様ニ同情ヲスルナ!! 俺様ニ哀レミノ感情ヲ向ケルナ!! 俺ハ強インダ、俺ハ強インダ、俺ダケジャネエ、オ前ラガ殺シタ奴ラモ、同ジダ、憎シミデ皆強クナッタンダァァァァァァ!!」


 けっ、とボマーは吐き捨てるように呟いた。


「つまんね」


 と。

「心底つまんねぇよ、お前ら。自分の思い通りにならねぇからって逆ギレして駄々捏ねてるガキんちょのそれじゃねぇか」
「貴様ニダッテ分カルハズダ、ボーマンダ……!! 自分ヲ冷遇シテイルコノ世界ヲ壊シタイト思ッタコトガ---------」
「あるわけねぇだろうが!!」

 怒気に満ちた彼の声が響いた。

「俺はいつも、自分が弱い原因が自分にあると思っていたんだ。だからこそ、色んな道を究めようとしたんだ!! 自分の待遇を嘆いて何にもしなかった、てめーらと一緒にすんじゃねぇぞ。何が憎しみのパワーだ、結局努力で培った真の力には勝てるわけがねぇんだよ!!」

 届くわけがないことは分かっていた。
 相手は所詮、恨みのデータの集合体。情緒などあるわけがない。
 そんなことは知っていた。
 だが、そんな奴如きの穢言に、自分の今までの行き方を否定されたくはなかった。
 
「ナラバ、マズハオ前ヲ殺スゾ、ボーマンダァァァァァァァ!!」

 ハッサムが弾丸の拳を場外にいるボマーに向けて飛び掛ってくる。
 しかし。
 その拳はボマーに届く前に、別のものに衝突した。
 
「勘違いも程々にして下サーイ。貴方の相手は、このワタシネ!!」

 モーターが身を挺して鋼の拳を受け止める。


【ハッサムのバレットパンチ!!】

【効果はいまひとつのようだ】
『モーター残りHP:29/157』


「邪魔ヲスルナァァァァァァァ!!」
「バッド」


 冷たい、モーターの声が静かに響く。本来のコンピューターとしての無機質なそれである。
 ドラム洗濯機の蓋が開き、超至近距離でメガハッサムの正面に向けられた。
 そして、激流は放たれる。

「よくも、ワタシのボマーに手を出しましたネ。削除(デリート)シマス」

 
【モーターのハイドロポンプ!!】


「ソ、ソンナァァァァァァ!!」


 恐怖と同時に、激流で吹っ飛ばされ、メガハッサムはそのまま沈黙した。


【敵のメガハッサムは倒れた!!】 


 さて、残る敵は唯1つ。
 パーティで激重のマニューラのみである。

「しゃーねぇ、此処でモーターのお嬢は捨てるしか無いですねィ」
「ノープロブレム! ボマーがノーリスクで出てこられるなら、此処で死んでも構わないネ!」
「ねぇ、この娘怖い」

 突っ込むボマー。
 さて、司令塔に回った番人のハッサムだが、かなり思案に思案を重ねていた。

「だがっ、ドラゴンタイプが氷タイプに勝てる訳が無い! この勝負、我々の勝利だ!!」


【マニューラの氷の礫!】

【モーターは倒れた!】

『マニューラ珠ダメで残り8/10』


 あ、とガメリオの顔が真っ青になった。

「やばいですゼィ、ボマーの旦那。あんたのハイパーボイス、あのマニューラに撃っても、80%から75%程しか削れねぇですゼィ」
「何!?」
「特防意外と高かったのね、あいつ……」
「く、くっそー、こんなことならいつも通りの物理型にしてくれば良かったぜ!!」
「どの道、やばかったですがネィ。相手が氷柱落とし持ってたらアウト」
「ちえーっ、結局あのエーフィ♂だったのかよ」
「今更ァ!?」

 待てよ、とボマーは一瞬思考した。
 そして----------今の今まで眠っていた少女---------マンムーを一瞥した。


【チーム・ボマーはムゥを繰り出した!!】


「ここでの負け筋を潰す選択は唯一つ! 眠っているムゥで何ターンか耐えて、やつに珠ダメを蓄積させれば、良いだけだ!」
「最悪ね……」
「つーか、ぶっちゃけ大文字でも良かったんだが、避けられる可能性を考えると、これしかなかった。だけど、マニューラの攻撃如き、何発か耐えて--------」


【敵のマニューラのけたぐり! 効果は抜群だ!】

【ムゥは倒れた!】


 --------くれるわけもなかった。
 全員が思い出したように、「あ」と声を上げる。
 けたぐり。相手の体重に応じてダメージが変わる格闘技。
 ムゥには効果抜群、さらに体重も重いので尚更だった。
 ようやく、意識が覚醒して起き上がったムゥが、「ボマーさあああああん!?」と呪怨の声をあげる。

「酷いです、酷いです!! 絶交なのです!!」
「いや、だがムゥ。お前のおかげで相手のHPは7割を切った! これで、次のハイパーボイスの確1圏内に入ったぜ!」
「……あんまり嬉しくないのです……」

 ぶっちゃけると、捨て駒のような戦法だが、勝ち筋をギリギリまで残しておくのは、ポケモン対戦において重要な戦術の1つなのである。
 特に、珠ダメは美味しい。
 
「それに、お前はエーフィを落としたじゃねえか。それだけでもう、十分だ」
「……うう」

 恥ずかしそうに呻いた彼女の頭を撫でたボマーは、一息つくと再び戦闘体の姿に戻る。
 が、不満そうなモーターが追いかけてくる。

「ストップ、ボマー! 後でワタシにも撫で撫でしないと、バッドなんだからネ!」
「うっせー、まずはこいつをぶっ飛ばしてからだ」

 目の前の敵を見据えた。
 そして--------------戦場へと、立った。


【チーム・ボマーはボマーを繰り出した!!】

【特性:威嚇で相手のマニューラの攻撃力が下がった!!】


 相手のマニューラは怯む。
 目の前の敵の存在感に。自分は龍を狩る存在のはずなのに。

【タクのメガバングルと、ボマーのボーマンダナイトが反応した!!】

【ボマーはメガボーマンダにメガシンカした!!】


 己の進化論を破壊し、上書きし、更なる存在へと昇華する。

「ぐっ、マニューラ、やってしまえ!!」
「了解……先制技デ落トス!!」


【マニューラの氷の礫!!】


 氷の小さな弾丸が襲い掛かる。
 しかし。


「あんだ? 結局これだけかよ」


【効果は抜群だ!!】
『ボマー残りHP:77/171』


 その場に居た全員は驚愕した。
 やはり、とんでもない耐久の持ち主だ、と。
 
「あ、が、馬鹿な、落とせなかった-----------!!」
「さあ、ライブの始まりだぜ!!」

 すぅーっ、とボマーは大きく息を吸った。
 そして、一気に空のオーラを纏った自らの声を-----------放出した。


「俺の歌を、聞きやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


【ボマーのハイパーボイス!!】


 マニューラの体がそれに耐え切れるわけもなかった。
 一瞬で、粉微塵になって吹き飛ぶ。
 同時にそれは、守護級であるハッサムの消滅も意味していた。


【マニューラは倒れた!!】


「そんな、バカな、この俺が-----------!!」


 爆音の勢いで放たれた衝撃波は、ガーディアンの鋼の装甲を貫通し、そのまま消し飛ばしたのだった。


【械域の番人との勝負に勝った!!】