二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- パート6:雷電霹靂(12) ( No.91 )
- 日時: 2015/03/29 16:48
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
守護級が倒されたことにより、コンピューターは剥き出しとなった。
そして、そのままそれは、ボマーの捨て身タックルで破壊された。
これにより、雷電械域に生息していた無機物ポケモン達は全てコントロールから解放されたのだった。
「一件落着、だな」
「さっすが、ボマーネ! ベリーストロングなパワー、惚れ惚れしマース!」
腕に縋り付いて離れないモーターを呆れた目で見た後、とりあえずさっき言われたとおり、彼女の頭を撫でておく。
んふふー、と嬉しそうな顔で彼女は笑ったのだった。
「うわ、爆発しろリア充」
「黙れ」
からかってくる弟分に睨みを利かせて、そのまま彼は部屋を後にしたのだった。
***
かくして、ボマー達は雷電械域を出て、そのまま中央区域を目指して歩いて帰っていた。
5つ目のコンピューターの破壊、残るコンピューターは1つだけだ。
「しっかし、今まで色んな奴と戦ってきたな」
ボマーが呟く。フレイも頷いた。モーターは何とか引き剥がし、今は後ろで皆と喋っていた。
今までの敵はいずれも、メガシンカポケモンで尚且つ自分の待遇に不満を持ち、世界を恨んでいるポケモンの恨みの集合体だった。
「ええ。いずれも何だかんだで強敵だったわね」
「そうだな。アクア達が倒した奴もいるが、強かったと聞いた」
厳選作業の過程で淘汰されたタツベイの集合体のメガボーマンダ。
自らのメガシンカ種族値と環境からの消失を嘆いたメガフーディン。
性別厳選の過程で淘汰された哀れな♂ラルトスの怨念のメガエルレイド。
進化できなかったゴーストの恨みつらみの募った存在、メガゲンガー。
自らの外見をバカにされ続け、アクアの恨みも吸収したメガラグラージ。
そして、今回のメガハッサム。
「悲しすぎるよな。世界を憎んだまま生かされ続けるなんてよ」
「誰がこんなことをしたのかしら……」
いずれも背後には黒幕がいるはずだ。
しかし、それはまだ分からない。見えない敵の存在は、確実にボマー達を足止めしようとしていることだけは確かではあるが。
「まるで、もっとデカい切札を隠していて、それを使うための時間を稼いでいるように思えるぜ」
「だけど、今は目の前に立ち塞がる守護級の討伐よ」
「……そーだったな。残るは頂龍山域か」
しばらく、間が空いた。
何も、喋らなかった。
そして、沈黙を破るように、フレイが口を開いた。
「---------ねぇ、ボマーはモーターのことが好き?」
再び、沈黙が続いた。
「……何でんなこと聞くんだ」
「べ、別に! ちょっと気になっただけよ。でも、あの子あんたのこと大好きだから……」
狼狽した彼女の顔を見る。
俯いて、顔が少し赤くなっていた。
「こんなはずじゃなかったんだよなぁ」
ボマーが拾った頃のモーターは、まだ唯のコンピューターに過ぎなかった。
徐々に自らを拾って生かしてくれたボマーを好きになり、終いには擬人化体まで手に入れ、学校に通うようになった。
ボマーに寄せる好意はストレートになり、彼が腐っていた頃も、フレイと一緒に学校に行くよう促したり、彼のことを心配したりしていたのだった。
しかし、だからと言って----------
「俺があいつのことを好きかというとな、」
少し、間が空いた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「まだ、分からん」
意外だった。彼の気持ちが揺らぎ始めている証拠だった。
そのまま沈黙が、再三続いた。
***
「まさか、期待以上のものを持ってくるとは思いませんでした」
モーターを見たアクアは、そう呟いた。
現在、此処はアクア宅、地下室。そこにボマー達は入ってきていた。
「改修終わっていたんですね」
「ああ、うん。だけど色々問題だから封印されてたコイツ」
「イエース! でも、一万年と二千年前からワタシはボマーが来るのを待っていたのデース!」
「トラック事故の前に会ったのは、半年前だろうが!!」
「ノー! ワタシとボマーは創世アクエリオンも驚きの時間を掛けて、感動の再開を果たしたのデース!」
「果たしてねぇぇぇぇ!!」
ごほん、とアクアが咳払いした。
「いずれにせよ、モーターさん。貴方が居れば、このコンピューターの解析もスムーズに進むはず。ご協力願います」
「オーケィ! 分かったネ! でも、少しウェイトして貰って良いデスかー?」
「はぁ」
向き直ったモーターは、ぎゅっ、とフレイのブレザーの袖を握り、言った。
「ちょっと、その前にフレイと話したいことがありマース!」
「え、ちょっと、モーター!!」
そのまま、フレイはモーターに引っ張られ、地下室を出て行った。どうやら、誰にも聞かれたくはないらしい。
***
「フレイ? さっきはボマーと何話してたネ?」
嫌悪とか、そういう感情ではなかった。興味津々、といった表情だった。
「べ、別に……何でも無いわ」
「まぁ良いデース! フレイ、ユーはワタシのライバルネ!」
モーターは急に詰め寄るように、彼女に迫った。
「だから、ちょっと勝負しませんカー?」
「勝負?」
「そうネ!」
にっこり、と笑顔で返した彼女は続けた。
どうもフレイはモーターが笑顔のときには嫌な予感しかしない。
全て、見通されている気がするのだ。
「ワタシがボマーを振り向かせるか、その前にユーがボマーに告白するか--------勝負しないデスかー?」
ぎくり、とフレイは言葉を失った。
「勝負って……」
「まず、ワタシがボマーとくっついたらどうしよう、とかそんな風に考えていマスネー?」
図星だった。反論する気さえ失せてしまう。
何年も一緒に居る中ではあるが、目敏いので嫌になってしまう。
「---------それで、何よ。あたしは無理よ。あいつとは口喧嘩してばっか、どうせあいつもあたしのことを疎ましく思ってるわよ」
「疎ましく思ってるなら、ボマーはフレイを連れていかないと思いマース」
大丈夫ネ! とモーターは言って、続けた。
「素直に想いを伝えたら、ボマーも応えてくれるネ!」
「何で、恋敵のあたしにそこまで--------」
「ノー。このままじゃ、フェアじゃないって思っただけデース。それに、ワタシがその前に、ボマーを振り向かせるだけネ!」
彼女は言うと、踵を返して部屋の方に向かって行く。
「バーイ! あの分だと、アクアに当分帰して貰えないみたいデスしー。これだけ言いたかっただけネ!」
彼女が地下室の扉をあけて、そのまま中へ入っていくのを見た後も、フレイは少しぼーっ、としていた。
「素直に、か」
そう、呟いて。