二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 番外編:パート1 ( No.95 )
- 日時: 2015/04/01 08:11
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「どーするんだ、オイィ!! こないだもまた、良いとこをあのバシャーモに取られちまったぞ!!」
インターネットの中心にある仮想空間、セントラル・フィールド。此処は、その中でも都市圏の郊外に当たる酒場だった。
真っ黒いコートに、マフラーを巻いた黒髪の男は目の前にいる帽子を深く被った同年代と思われる青髪に怒鳴った。
「仕方がないよ、ボクだってまさか、またあいつが出向くとは思わなかったんだ。しかも、複数の仲間を連れてさ」
「くそっ、ドラゴンポケモンの討伐なら俺らの十八番だったんだが……」
「ああ、しかもジュカイン、ユキメノコ、ラグラージ、サーナイト、ドラゴンを殺す気マンマンの面子だったよ」
「お前には言われたくないとは思うわ」
彼らの仕事は、所謂始末屋、退治屋と言われるものである。
セントラル・フィールドは度々、野生のポケモンが対戦用ポケモンのデータを吸収して凶暴化し、暴れることがあるので彼らが度々退治に出向いているのである。
それだけではなく、裏社会の荒事を一挙に引き受けることも多い、危険な仕事である。
この間も荒野でドラゴンポケモンが暴れているという情報を掴み、早速討伐に向かったのだが----------流石に数が多かった。ミニリュウ、オノンド、リザードなどの下級龍共に阻まれてキツかったので、仕方なく準備に何日か費やすことにしたのである。
仲間を雇い、3日後に洞窟に向かおうとしたところ。
洞窟からバシャーモ、ジュカイン、ラグラージ、サーナイト、ユキメノコの5体が出て行ったのが見えた。
まさかと思って中に入ってみたが、奥には既に屍となり、データの塵となって消えかけているカイリュー、リザードン、オノノクスの姿があった。
この洞窟のボスだったのだろうが、恐らく先のメンバーにやられたのであろう。
先を越されたのだ。完全に。
「だから言ったろうに!! 何で着替えにあんな時間がかかるんだ!!」
「う、うるさい! ボクだって一応----------」
「あいあい、うるせぇうるせぇ、言い訳は聞いてねぇんだよ。つーかよ、マスターの奴はボックスに戻るんじゃねーぞコノヤローとも言ってるし! このままじゃ、明日のおまんまは食パンの耳だけになっちまう。それだけは避けねば! くそっ、ボックスじゃ、あの脳筋トカゲがエースだの何だのとちやほやされてるんだろーなぁぁぁ、妬ましいなぁぁぁ」
「非常に見苦しいんだけどなぁ……」
金だ!! と彼は叫び、続けた。
「金だよ!! 俺達退治屋の仕事は何もポケモン退治だけじゃねぇ。どうにかしてでも、金を稼がねぇと、いつかはあのバシャーモに仕事を全部取られちまう!!」
「大げさな……半分事実ではあるけど」
金が無ければ、酒場でドラクエよろしく仲間を雇うこともできない。即ち、2人だけで任務をこなさなければならない、そして成功率は落ちる、結果明日の飯はパンの耳という悪循環に陥るのだ。
金欠の問題は何としてでも解決せねばならないのである。
「……そうだね。何としてでもこの状況は打開しないと」
「おっし、んじゃあ景気付けにもう1杯飲むか!!」
そう叫ぶと、残り少ない財布の金を確認しながら、男はバーテンに叫んだ。
「カルピスソーダもう1杯!」
「……でもいまいち格好付かないんだよな……」
彼らは、まだ未成年なのである。いまいち、ここで酒の名前を叫べないのは格好が付かないだろう。
未成年飲酒・ダメ、ゼッタイ。
「でも、アテはあるのかい? ドーラ」
青髪帽子は、黒い服の男の名を呼びながら、疑わしげに言った。
「勿論だ、ルル。稼いで稼いで、金欠を打破するんだ!!」
彼は金のためならば、法律すれすれのことでもやってのける亡者だ。
少々ルルと呼ばれた少年は不安になったのだった。
「それに、もしかしたら新しい仲間が手に入るかもしれねぇし」
意味深気に呟いたドーラは、ルルには知らない何かを知っているようだった。
「どういうことだよ」
「これを見ろ」
そのチラシは、地下闘技場のものだった。そして、優勝者には多額の賞金-----------そして、優勝賞品も別に用意されているようだった。
「マスターからちーっと前から頼まれててな。隠密機動にも協力して貰った結果、こいつの在り処が此処だと分かったのさ」
隠密機動とは、ゲッコウガなどの忍者系ポケモンの組織であり、マスターのポケモンの中でもトリッキーな動きを得意とするものが多い。
「こいつって……何なんだよ。サザンドラナイトでも見つけたのか」
「ちげーよ!!」
***
「男性お二方ですか」
入り口の男はそう言った。
あ、いや、とドーラは何か言いたげだったが、そのまま奥に通されてしまった。
「あー、お前のこと言わなくて大丈夫だったか?」
「いーよ。別に。舐められるよりマシだしさ」
此処は地下闘技場だった。違法賭博によって、毎日何億もの金が動き回る。
あるものは狂喜し、あるものは絶望の底に落とされる。
そして、それを決めるのは------------闘技場でデスマッチを演じるポケモン達だった。
今回は2対2。どちらかのチームが両方倒れるまで勝負は続く。普段の対戦とは違い、完全な肉弾戦だ。
「というか、こんなのに出て大丈夫なのか? 嫌な予感しかしないけど」
「おっ、怖いのかねルル君」
「今、この場で君にじゃれついても良いんだよ?」
さぁっ、とドーラの顔が青くなる。
「わ、わ、わ、悪かった」
「分かればよろしい」
威圧感に押され、ドーラは謝る以外の選択肢を見出せなかった。種族的な問題である。もしくはタイプ相性か。
ドラゴンタイプのドーラに、フェアリータイプのルルは一方的に不利なのだ。
それはさておき、今回の目的は2つ。
まずは、優勝賞金の獲得。
そして、優勝賞品の獲得。
前者は勿論のことだが、むしろドーラからすれば後者も重要だった。自分のマスターが探しているもので、自分としても手に入れておきたいものだからだ。
司会が赤い幕を取って見せたのは、青い鋼の塊。鉄の脚のようなものが伸びていて生物のような何かに見えるが、動く気配は見当たらない。
「間違いねぇ。あいつを俺らの仲間に引き込めば、戦力増強に一躍買ってくれるはずだ。あんなもん、マスターに渡せるかってーの」
「ちょっと待って、何だアレ」
「鋼鉄の肉体を持つ、第三世代最強のポケモン、スーパーコンピューターMX/CPU201番型、通称:メタグロスのメタンだ」
「アレって確か、マスターも愛用していた奴だよね。何でこんなところにあるのさ」
おもくそ見覚えのあるそれに、疑念の目を向ける。
ドーラはその質疑に早速答えたのだった。
「盗まれてたんだ。悪い奴に」
「盗まれてた!?」
「隠密機動が、それの行方を追っていたんだがな、結果、此処に行き着いたってところだ。元々しばらく起動させなかったマスターもマスターだけどな。知らないうちに進入してきたウイルスプログラムにやられて持ってかれた」
メタンの行方は当初、全く分からなかったがようやく此処に行き着いたのである。オークションを転々としていたらしい。
だから、ドーラが此処のチラシを手に入れたのは偶然ではなく、実は隠密機動の面子から持ってきてもらったからである。
「ま、何であれ優勝するのは俺達だ-------------」