二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 茶番6 ( No.101 )
- 日時: 2015/05/10 19:14
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
ニコラスをパーティー加え、出場メンバー六体が揃った、その放課後。
もう土日を挟んだらすぐに新歓が訪れるということだが、まだ六人ともパーティー入りをしたというだけで、ロクに自己紹介すらしていない。
なので、放課後に自己紹介も兼ねて、軽くミーティングっぽいことでもしようかということになったのだ。特に去年クラスメイトでなかったニコラスには必要だろう。
「さて、みんな揃ってるわね。私が2年5組の学級委員、キャンディよ」
「……いや……全員、知ってるし……」
「別にいいでしょ、改めてよ、改めて。ほら、次。トンベリ」
「……それだけで……自己紹介、終わってる……」
「屁理屈こねてないで、自分で言う。ほら!」
「…………」
お節介だ、と思うトンベリだが、しかしキャンディの言うことももっともだ。
トンベリは億劫に思いつつも、自分の口で、名を名乗る。
「……トンベリ……」
「……それだけ?」
「……それ以外……言うこと、ないし……」
「もっと他に言うこともあるでしょう。ほら、バトル・オブ・ホウエンに出たとか」
「あー、そっか。お前、バトル・オブ・ホウエンに出てたんだっけ」
ニコラスが思いだしたように言う。
トンベリとちーちゃんがバトル・オブ・ホウエンに出場したことは、石窟中学内では周知の事実であり、そのこともあって二人は結構な有名人だ。
そうでなくてもちーちゃんは主人の嫁と宣言されているポケモンであり、そんなちーちゃんといつも一緒にいるトンベリもそれに伴って名が知れている。
なのでニコラスも、トンベリの名は知っていて、それをさっき思い出したのだろう。
もっとも、最初にトンベリが推薦された時にもその名はでていたので、その時点で思い出していて然るべきなのだが、ニコラスの記憶力はあまりよろしくないのかもしれない。
「へえ、そっかそっか。お前がバトル・オブ・ホウエンに出たトンベリか! 名前は聞いてるぜ! すげえ有名人らしいじゃねえの!」
記憶力は悪くてもテンションの高いニコラス。目の前の根暗は少年が、あの名の知れた
トンベリだと分かるや否や、さらに気が紅葉していく。
そのようなテンションが苦手なトンベリにとっては、非常に絡みづらい。
「え……あ、あぁ……えっと、ニコラス、だっけ……」
「ニックでいいって! これからよろしく頼むぜ!」
「わ、分かった……痛い……痛い……痛い……」
バンバンとトンベリの背中を叩くニコラス。テンションが上がりすぎて、なおのこと絡みづらくなっている。
「男子同士仲がいいようで助かるわ。ま、そうでないとニコラス誘った意味がないしね。ほら、じゃあ次、フレイヤ」
「あいあいさー。あたしフレイヤだよー、ハッピーうれピーよろピクねー!」
「……なにそれ」
「気にしない、方が……いい……」
いつも混沌とした発言を一斉掃射している、ベンチクーラーな知人も口にしていた言葉だ。なんとかという漫画で使われたフレーズだという。
つまり、無視してもいい言葉なので、トンベリはスルーを推奨。
「よく分かんないけど、次は……そうね、電、お願い」
「は、はいっ! えっと……」
指名されて、少しばかり驚いたような電だが、しかしいくら気弱でも、名乗るくらいはできる。顔の知らないニコラスがいるとはいえ、キャンディたちも傍にいるのだ。
だがそれでも、やや控えめに、おずおずと電は名乗った。
「電です。どうか、よろしくお願いいたします」
「そんなに固くならなくてもいいのに。ちーちゃんみたいに、もっと気楽にすればいいの。同級生なんだし。ねぇ、ちーちゃん」
「そうだよ、これから一緒にパーティーを組む仲間なんだから。だからよろしくね、ニコくん」
「おう! あと、俺のことは親しみを込めてニックと——」
「じゃあこれで自己紹介は終わりね」
親しみのこもらない無慈悲な一言で、自己紹介タイムは終わりとなった。
だが、しかし、
「……で、どうするんだ……?」
問題はこの先だった。
自己紹介をして親睦を深めた(?)のはいい。だが、そこからどうするのだろうか。
わざわざ集まっておいて、これでお開きなんてことは流石にないと思うが、
「そうねぇ……相手パーティーも分からないわけだし、ここであーだこーだ言ってても仕方ないわ。この時間じゃ偵察だってできやしないし、今日はもうお開きにしましょうか」
……思うが、そういうこともあった。
確かにキャンディの言う通りではある。対戦なんて、相手のポケモンに対してどのポケモンが有利かを考えて選出する場合がほとんど。つまり、選出は相手によって変わる。言い換えれば、その場の判断だ。
事前に相手の手がある程度透けていれば、それに対するメタも用意できるが、これもキャンディの言うとおり、今更他のクラスに偵察などできない。今までメンバー集めに東奔西走していたせいで、そんな暇はなく、金曜日の放課後であるこの時間に、残っているクラスもそうないだろう。
そういうわけで、今日はこれ以上動けない、2年5組の面々であった。
「今日は解散! 各自、本番までに型の準備と、しっかりとした休息を取っておきなさい!」
というキャンディの締めの一言で、本格的に終わりとなった。
メンバーが集まっただけで、どう戦うのかは全くの未知数。
こんなことで本当に大丈夫なのか。
「……はぁ……大丈夫、なのかよ……」
トンベリは、またしても大きく暗い、不安の渦に取り囲まれ、溜息を吐くのだった。