二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 選出画面1 ( No.105 )
- 日時: 2015/05/21 00:28
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: rGbn2kVL)
きたる月曜日、新入生歓迎会当日。
最初に退屈な学校紹介や授業、教師の紹介といった定例の紹介をさっさと済ませてしまい、その後は部活紹介へと移り変わる。
運動部は練習風景の再現、文化部は創作物を持ってきたり、活動の様子を映像で流すなどして、それぞれのアピールをする。
そしてそれらの紹介が終わると、遂に本日のメインイベント。
新歓バトルマッチの開催である。
■■■
「うわー……人いっぱい……」
「新入生がたくさんなのです。この人たちみんな、私たちの後輩になるのでしょうか……?」
「理屈としてはそうだねー」
バトルマッチ専用のステージが造られた体育館、その舞台袖で、トンベリたちは待機していた。
バトルマッチは年々トーナメント制にしていたらしいが、生徒数の増加に伴い、クラスの数が増え、同時に教師や部活の数も増えたために、バトルマッチに時間を割くことができなくなり、今年から1クラス一戦ずつとなった。
そしてトンベリたちの相手は、隣の6組らしい。
「ん? 委員長がいねえぞ?」
「あめちゃんなら、先生のとこにいったよ、ニコくん」
「6組さんのパーティーを聞きにいったそうなのです、ニコくん」
「おう、そうか……ところで、俺のことはニックと呼んでほしいんだが……」
「まあまあ、呼び名なんてどうでもいいじゃないのー。ねー、ニコちん」
「その呼び方はやめろ」
「…………」
対戦直前だというのに、緊張した面持ちの見られない我が5組。不安なのはトンベリだけなのだろうか。
ただでえさえバランスの悪い面子が揃っているというのに、気楽すぎではないかと思う。
バトル・オブ・ホウエンのメンバーもバランスが悪かったが、あの時はまだ、個々のスペックが高かったし、参謀が優柔すぎるほど優秀だったため、ここまで不安ではなかった。
しかし今回、その参謀はいない。どころか、自分が指令塔だと、彼から任命されてしまった。
トンベリのメンタルは型に反してそこまで図太くないのだ、そろそろ精神的に参ってきてしまいそうである。
(……でも、そんな甘えも、言ってられないか……)
もうここまで来たら乗りかかった船だ、諦めようと自分に言い聞かせる。
と、ちょうどその時、キャンディが戻ってきた。
「みんな揃ってるわね? 相手のメンバーが分かったわ」
その手には、相手パーティーが映し出されたタブレットがある。
「相手はどんなのー?」
「怖い人たちじゃなければいいのですが……」
「そんな怖がらなくても。相手は私たちと同じポケモンで、しかも同級生なんだから」
「……で……相手の、面子は……?」
「これよ」
そう言って、キャンディは全員に見えるように、タブレットを軽く掲げた。
そのタブレットに表示されている、相手ポケモンは以下の通りだ。
【6組PT
・バシャーモ[♀]
・オンバーン[♂]
・エンペルト[♂]
・サンダース[♂]
・リーフィア[♀]
・ストライク[♀]
Analysis end】
「うぅ、強そうです……」
「こらこら、今から気落ちしてどうすんの。まずは、選出を決めましょう」
相手の面子を見ただけで気圧される電を、キャンディが軽く諌める。
相手のパーティーを見たら、それが強そうに見えるということはよくあることだ。だが、実際は自分も相手も同じ土俵に立っている。そこに差はない。
なので、こちらも自信を持って、相手に勝てるような選出を考えなくてはならない。土台が同じなのだ、勝てない相手ではない。
「とりあえず、私で起点を作って——」
「……待った……」
「トンベリくん?」
キャンディがいつものように先んじて進めようとするのを、トンベリが制止した。
いきなり出鼻を挫かれてしまったキャンディは、やや不機嫌そうにトンベリへと向き直る。
「なによ、トンベリ」
「……まず……オレたちの、型……を、確認……」
「は? なんでそんなことを——」
「いいから……」
「……分かったよ」
いつもとどこか違う雰囲気を醸し出しているトンベリに、キャンディは大人しく身を退いた。
実際、今回はいつものランダムマッチのように選出にかける時間を制限されていない。なので、自分たちの型をしっかりと確認して、選出を決めることには意味も価値もある。
「……じゃあ、まず……オレ、から……」
「トンベリは今回、どんな型なんだ?」
「……タラプメタバ型……性格、呑気で……ガルド抜かれ、調整……」
今回のトンベリの型は、耐久を調整して多くの相手の攻撃をメタルバーストで跳ね返す型だが、その中でも最遅ガルドの後手を取れるように調整していた。
とはいえタラプが発動してからでは、ギルガルドのシャドーボールをメタルバーストで反射しても、倒しきれないのだが。かといってタラプを外すと後出しが利かなくなる。
そもそも今回、相手にギルガルドはいないので、その調整が生きることはないのだが。
「次……ちーちゃん……」
「あ、うん。わたしは、素早さにも努力値を振って、炎の牙と剣の舞を入れた型だよ」
「炎牙はハッサムとかナット対策よね? なら今回は刺さらないかな……」
それでも、ちーちゃんが強く出れそうな相手は少なくなさそうではあるが。
「それじゃあ……次……流れで……」
「私は襷を持って、ねばねばネットと痺れ粉、パワーシェアで起点を作る型よ。吹き飛ばしもあるから、簡単には積ませないわ」
「あたしは物理受けだねー。つっても、ゴツメじゃなくてオボン持ちで、地割れの試行回数稼ぐ感じー」
「わ、私は、眼鏡なのです……メガストーンは、ちーちゃんに譲りました」
キャンディは起点作成、フレイヤは物理受け、電は眼鏡アタッカー——そして、最後。
ニコラスはというと。
「……ニコラス……」
「おう。俺はHAにぶっぱした、チョッキのフルアタ型だぜ!」
「……そういうこと……」
「は? どういうこと?」
とりあえず一通り型の確認は終わったが、いまいちトンベリが言いたいことが分からないでいるキャンディ。
そこでトンベリは、やっと彼女にもわかる言葉で、言いたいことを述べる。
「……つまり……オレたちは……鈍足が、多い……ねばねばネットの効果は、薄い……」
「あ……」
自分たちの面子は、ヤミラミ、クチート、アメモース、コータス、ライボルト、シザリガー。素早さ種族値がほとんど60未満で、唯一高速と言えるのは電のみ。
ちーちゃんがSを振っているとはいえ、ここまで遅いと流石にねばねばネットも刺さらない。そもそも浮いている相手も多い。
「あっちゃー、まずったなー……やる気満々で今回の型を用意したのに、完全に空回っちゃった……」
「俺が龍舞型だったら、またちょっとは違ったかもしれないんだけどな」
「……というわけで、悪いけど……キャンディの選出は、無理そう……」
「仕方ないね。攻撃技もないし、命中不安の痺れ粉に頼るのも心もとないし。私の方こそ悪いけど、みんなに任せるよ」
こちらの選択肢が一つ消え、本格的に選出を考えるトンベリたち。
「……とりあえず……ニック、頼む……」
「おう、俺か? 別に構わねえが、なんで俺?」
「いや……刺さってるし……」
【選出確定
ニコラス————[♂:シザリガー]】
今回のニコラスの型は、HAチョッキの異教徒型ヤザリガー。
アクアジェットを搭載しているため、バシャーモにも先制して弱点を突け、ブイズ以外となら戦えるだろう。
「それから……全体的に、通りもいい……電も、行ける……」
「わ、私ですか? ここは、ちーちゃんとかの方が……」
「……ちーちゃんも、戦える相手は、多い……けれど……有利に戦える、相手は……電の方が、多い……」
【選出確定
ニコラス——[♂:シザリガー]
いなずま——[♀:ライボルト]】
拘っているので小回りは利きづらいものの、避雷針でサンダースの電気技を吸収できたり、エンペルトに打点があるなど、ちーちゃんよりも電の方が、特殊アタッカー相手に戦いやすい。
問題は、拘り状態の中で、如何にして攻撃を通すかだが。
「それで、最後の一枠はどうすんのー?」
「…………」
フレイヤに促され、トンベリは思案する。
キャンディには既に戦力外通告を出しているので、候補となるのちーちゃん、フレイヤ、そして自分。
相手次第とはいえ、ちーちゃんは特殊アタッカーには繰り出しにくく、確定一発にされないとはいえ、オンバーンには炎技もある。
エンペルトだって眼鏡ドロポンで強引に削ってきたり、熱湯で火傷を狙ってくる可能性もある。こちらからの有効打も不意打ちしかない。
サンダースだって、ボルトチェンジで引っ掻き回されたり、どくみが型で攻撃を透かされることも考えたら——などと、様々なパターンが考えられる。
フレイヤを出した場合はどうか? 今回の彼女のダメージソースは、拘束ダメを稼ぐ炎の渦と、一撃必殺の地割れのみ。それこそ、オンバーンなんかには有効打が皆無だ。
そもそも相手には特殊アタッカーが多い。物理受けのフレイヤはあまり刺さっていない。だがバシャーモには強く出れる。
とはいえ後受けでメガバシャーモの攻撃を耐えきれるのだろうか。そもそもこちらだって、バシャーモを倒す手段は地割れしかない。流石に運に頼りすぎだ。
そうこう考えているうちに、トンベリは自分自身の思考がまとまらなくなって、だんだんと焦燥が滲んできた。