二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 対戦パート3 ( No.109 )
- 日時: 2015/05/21 00:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: rGbn2kVL)
「……え?」
一瞬、なにが起こったのか理解できなかった。
しかし次の瞬間、途轍もない熱風と爆風が吹き荒ぶのを感じた。
そして、トンベリは業火の中で、焼かれている姿があった。
【トンベリは倒れた!】
「トンベリイィィィィィッ!」
「ト、トンベリ君が……っ」
「ここでフレドラだなんて、お相手、ベリリンの思考を読んでたのかなー……?」
素の火力で殴られたって致命傷なのだ、一積みしたメガバシャのフレアドライブを、HB特化でもないトンベリが、どうして耐えられようか。
プスプスと煙が立ちこめながら、焼け焦げたトンベリが、ゆっくりと倒れ込む。
その時、彼の口が、小さく動く。
「……ニック……」
「な、なんだ……?」
「……あと……頼んだ……」
「え……?」
そうして、トンベリは遂にばたりと倒れ込んでしまう。
「ふふふ、まずは一体よ! さあ、次は誰が来るのかしら!?」
トンベリを倒して勝ち誇った顔を見せる6組委員長。
確かにほぼ無償でトンベリを突破したことは大きい。相手の裏がなんであれ、トンベリは役割を遂行することが可能なはずなのだから。
しかしトンベリとて、無駄死にしたわけではなかった。
【バシャーモは反動によるダメージを受けた!】
[バシャーモHP:4割強]
「! 見て! あいつの体力……!」
「あ、反動ダメージなのです」
「あいつ、まさか最初からこれを狙って……!」
ブレイズキックの採用は、可能性が低いと考えられる。剣舞よりも火力の上がり幅が小さい爪研ぎだ。エースアタッカーならば、威力が大きく劣るブレイズキックより、フレアドライブを選ぶことは簡単に推測できた。
勿論、膝が来ることも考えての選択だろうが、仮に膝ではなかったとしても、トンベリは自身を捨て駒にすることで、バシャーモの体力を削り、ニコラスのアクアジェットの圏内へと入れたのだ。
【バシャーモの加速! バシャーモの素早さが上がった!】
「……ニコラス、後はあんがた頼りよ。電もかなり消耗してるし、今まともに動けるのはあんただけなんだから」
「分かってるぜ委員長。俺だって男だ、やる時はやるし、トンベリの仇だって取ってくる。あいつの弔い合戦だ!」
「いや……別に、オレ、死んでない……」
確かに死ぬほど痛い攻撃ではあるが、トンベリは今まで、剣舞を積んだメガバシャのフレアドライブだって嫌と言うほど喰らってきたのだ。もう慣れっこである。
【頑張れ! ニコラス!】
「さあ、行くぜ! 女の子の前だ、かっちょいいところ見せてやろうじゃねえか。ついでに、トンベリの仇も取ってくるぜ」
「オレの仇は……ついでか……」
しかし、ここでニコラスの存在が非情に重要であることは確かだ。少なくとも、目の前のバシャーモを倒すことができるのは、ニコラスだけなのだから。
「んじゃ、まずは一発! 喰らいやがれ!」
【ニコラスのアクアジェット!】
【効果は抜群だ!】
【バシャーモは倒れた!】
水流を身に纏い、超高速でバシャーモへと突貫するニコラス。そのスピードは、いくら加速しようとも、追いつくことはできない。
相手のバシャーモはその一撃を喰らうと、思い切り吹っ飛んでどこかへ消えてしまった。
「……ちっと気合い入れすぎたな。まあいい! 次は誰だ?」
これで相手の残りは一体。数の上では有利だが、電が瀕死寸前であり、ニコラスも少しばかり消耗していることを考えれば、五分五分といったところだろう。
なによりも、相手のラスト次第ではあるが。
そして、6組の最後のポケモンが、現れる。
【6組はエンペルトを繰り出した!】
「……エンペルト……」
「微妙なところね。ストライクやオンバーンとかよりはマシかもしれないけれど」
「でも……技構成次第では……勝ち目は、ある……」
エンペルトと言えば、有名なのは風船やシュカの実を持たせ、弱点である地面技を受けつつ、冷凍ビームで返り討ちにする型。主にガブリアスを仮想敵として定め、襷持ちでも倒せるように、アクアジェットも持っている可能性が高い。アクジェがあるなら、体力が残り僅かな電は、もう戦闘不能も同然だ。
「でも、エンぺはまだマイナーな部類だし、型は読みづらいよねー。チョッキとか、眼鏡とかもあるかもよー?」
「風船は最初のサンダースが持ってたから、少なくとも風船じゃないよね……なんだろ……?」
「6組さんはSを削ったサンダースや、爪研ぎを積むメガバシャーモもいたのです。なにをしてくるか、読めないのです……」
テンプレに近い型の多いこちらに対して、相手はそのテンプレから少し外れた型が多く見受けられる。このエンペルトも、その例に沿う可能性は高い。
だが、しかし、
「……それでも、相手は……大きく、テンプレから、外れてるわけじゃ、ない……」
トンベリの言うとおり、確かにあいてはテンプレから多少は外れているだろうが、奇形や地雷と言えるほどではない。テンプレにちょっと手を加えた程度だ。
サンダースは元々技スペが余るので、フルアタにすることも考えられるだろう。爪研ぎだって、積み型メガバシャーモの一種でしかない。
それならばこのエンペルトも、際だって奇形とは限らない。
「……エンペルトの、基本技は……ドロポン、ラスカノ辺りの、タイプ一致技……サブウェポンに、冷ビとか、草結びとか……あとは、先制技に、アクジェが、あるかどうか……」
補助技としてステロや欠伸があるかもしれないが、ステロ欠伸型なら先発だろうし、ここまでくればステロも欠伸も怖くはない。
「……エンペルトの、技のほとんどは……ニックが、半減できる……アタッカーなら、タイプ一致技二つと、冷ビは欲しいはず……あと一枠、アクジェなら、ニックに有効打は、ない……草結びでも、押し切れる可能性は、あるし、草結びがあるなら、たぶん、アクジェはないから、電で、押せる……」
唯一、アクアジェットと草結びを両立されていたら、こちらに大きな負け筋が生まれるが、相手がテンプレに近いアタッカー型なら、その可能性は低いと考えられる。
なんにせよ、ここからは相手がこちらに有効打を持っていないことを、ただ祈るのみだ。
「んじゃ、ここは馬鹿力で一気に吹っ飛ば——」
「……待った……」
「? なんだよ、トンベリ」
「……一度、叩きで、様子見……」
ニコラスが突っ込んで行きそうになるのを、トンベリは制止。そして、馬鹿力の前に叩き落とすを指示する。
「は? 馬鹿力で弱点突いた方がよくね?」
「いや……相手の、道具……不気味だから、ここで落としとく……」
「うーん、でもここで状況をひっくり返せる道具って、なにかしらね?」
「でも……相手に、有効打がないなら……少し、様子を見るのも、悪くはない、はず……」
「ちょっとひよってる気がするけどなー。ま、でもその辺はベリリンにお任せするよー」
「なのです、ニコ君」
「……分かった。トンベリの指示に従うぜ。まずは叩き落とすからだ!」
【エンペルトの熱湯! 効果はいまひとつのようだ……】
[ニコラスHP:130/170]
【ニコラスのはたき落とす! ニコラスはエンペルトの弱点保険を叩き落とした!】
[エンペルトHP:2割少し]
「じゃ、弱点保険……!?」
「これは……場合によっては、危なかったかもしれないわね」
「それよりも、相手の熱湯が気になるね」
ここで熱湯ということは、相手はこちらに有効打がなかったのだろう。
保険ということはアタッカーであることは間違いないだろうし、熱湯を採用しているということは、威力の高い波乗りよりも、三割の火傷に期待していたからだろう。
「ここで草結びが来ないってことは、最後の技はきっとアクアジェットね」
「……ガブ辺りを仮想敵に、耐久調整して、反撃する型、か……?」
なんにせよ、ここで弱点保険を落とし、火傷も引かなかったのは幸いだ。不一致馬鹿力では、H振りのエンペルトは倒しきれない。次の一撃で、ほぼ確実に決まるだろう。
「じゃあ……ニック、頼んだ……」
「おう、頼まれたぜ! 行っくぜえぇぇぇぇぇぇぇっ!」
【エンペルトの熱湯! 効果はいまひとつのようだ……】
[ニコラスHP:90/170]
【ニコラスは火傷を負った!】
「ちょっと」
「しっかりしてよー、ニコちんー」
「う、うるせえな! 仕方ねえだろ!? 三割引いちまったんだから!」
「……まあ、流石に……ここまで削ってれば、馬鹿力なら、届く、と思う……」
最初に火傷を引いていればまだ分からなかったが、相手もかなり消耗しており、今更か力が半減しても、威力120の弱点技。流石に耐えきれないだろう。
ニコラスは全身全霊の力を込め、右拳(鋏)を、エンペルトへと突き出す。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ! 二重の極みいぃぃぃぃぃぃぃっ!」
【ニコラスの馬鹿力 効果は抜群だ!】
【エンペルトは倒れた!】
ニコラスの一撃は、果たしてエンペルトを真正面から捉える。
そしてその一撃は、相手の装甲を完膚なきまでに粉砕するのではないかというほどの爆発力で、相手を吹き飛ばした。
わざわざ画面を確認するまでもない。その破壊的な一撃で、エンペルトは戦闘不能。
それは、即ち——
【第2学年の6組との勝負に勝った!】