二次創作小説(映像)※倉庫ログ

茶番2 ( No.21 )
日時: 2015/03/18 20:23
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

「——それで、トンベリは今にも死にそうなほどに疲労困憊なのか」
「まったく、部屋に引きこもってばかりいるからだよトンベリ君。引きニートめ」
「……引き、こもり、のつもりは、ない……対戦、して、るし……」
「HAHAHA! まあまあ、なんにせよ若いとはいいことですよぉ。ちーちゃんさんも、随分と張り切っているみたいですしねぇ」
「えへへ、なんだか昨日は、いっぱい対戦するぞー、って思ってたので、対戦できなかったのが残念で」
「そういえば一昨日のちーちゃん、あまり選出されなかったから戦い足りないって感じだったわね。その反動かしら」

 時は流れ、(主にトンベリが)身体を引きずってなんとか雷切宅へとたどり着いた二人は、対戦前に軽く雑談として、先ほどのことを皆に話していた。

「ま、なんでもいいけどよ、ちーちゃんを助けたっつー奴には感謝だな」
「うちの大事なエースだものね。怪我でもされて、対戦できなくなったら困るわ」
「うちのお父さんみたいだねそれ。まーそうでなくっても、ご主人様の激怒パンチが飛んでくるしねー」
「パンチで済めばいいがな。下手すりゃ俺ら大量虐殺されるぞ」
「六人しかいないのに大量とはこれいかに」

 パーティー一つのうち五体ものポケモンが消し飛べば、ポケモン界では大量虐殺になるだろう。
 まあ、いくらなんでも虐殺はしないが。借金の上乗せとかはするかもしれない。

「さて、そんじゃそろそろ今日の対戦に行くか。ちーちゃんやトンベリもやる気みてーだしな」
「はいっ! 今日もがんばりますよー!」
「……オレは、できれば……ベンチで……」
「残念トンベリ君、ベンチウォーマーの座は譲らないよ! このパーティーで選出率が一番低いのは私なんだからねっ!」
「……そんなことで、張り合われても……というか、雪姫……体、冷たいじゃん……暖まらない……」
「レートパで一番先に首を切られたのは俺だがな」
「あたしたちのパーティー、選出率の格差が酷すぎるわね」

 トップトンベリ、次点でちーちゃん、ラグナ、次いでココロ、ドンケツを雷切と雪姫で争っている感じだ。
 そんなこんなでわいわいやりながらもランダム対戦へ赴こうとする一同を、引きとめる音が鳴る。


コンコン


「……誰だ? こんな辺鄙な家に客とは珍しい」
「というか、インターホンあるんだから使えばいいのに……」


コンコン


「はいはい、ちょっと待ってくださいね」

 再び扉からノック音。
 なにゆえ誰もインターホンを使わないのか、ということに疑問を抱きつつも、ココロが家の戸を開く。
 そして、来訪者の姿が露わになった。

「邪魔するぞ」

 凛とした声。精悍な顔立ち。それに続き、なびく白い長髪。細身だが、無駄なく筋肉が引き絞られた体躯。
 武人、という言葉が真っ先に浮かんでくる。そんな容姿をしていた。
 そして、その姿を見て、真っ先に声を上げたのは、年少組の二人だった。

「あ! あなたは!」
「……さっきの……」

 二人は、その来訪者の姿に覚えがある。
 その人物はまさしく、階段から転げ落ちそうになったちーちゃんを助けた恩人だった。

「さっきはありがとうございました!」
「む? ……あぁ、階段で出会った子供たちか」

 客人の方もそれなりに驚いていたが、案外淡白な反応であった。
 そして、その人物の来訪に最も吃驚しているのは、ちーちゃんでもトンベリでもない。
 ガタッ! と、椅子を蹴り飛ばすように、雷切が立ち上がる。それに続き、ラグナロクも横に並んだ。

「……久しぶりだな、雷切、ラグナロク」
「HAHAHA! そうですねぇ、何年ぶりでしょうかぁ……グレンさん」
「てめぇ……!」

 突然の来訪に最も驚愕していたのは、ラグナロク、そしてそれ以上に——雷切だった。
 雷切は拳を握りしめ、いつも悪い目つきをさらに鋭く来訪者を睨みつけると、床を蹴り飛ばすように飛び出した。
 そして固めた拳を、グレンと呼ばれた人物へと振りかざす。

「なにしに来やがった!」



【雷切の雷パンチ!】



「ちょ……ライ!?」
「らいきりさんっ!?」
「っ……いきなり、なにを……」
「雷パンなんて今まで使ったことないくせに、無茶しちゃってー」

 突然の攻撃に戸惑う一同だが、ラグナロクと、そしてターゲットにされた本人、グレンは動じることなく、

「……ふんっ」



[グレンHP:105/155]



 その拳を、真正面から受けた。
 だがただ喰らったわけではない。顔面に叩きつけられた拳——その手首を、がっしりと掴み返す。

「貴様の拳は、相変わらずぬるい」
「あぁ!?」
「いつも言っているが、その程度では——私は倒せん!」



【グレンのブレイズキック!】



 グレンは掴んだ腕を自分側へと引っ張りつつ、腰を捻って回転を加えた、回し蹴りのようなミドルキックを雷切の腹へと炸裂させる。

「がはぁ!?」



【効果は抜群だ!】



 強烈な一撃を叩き込まれ、その勢いのまま吹き飛ばされる雷切。
 床に叩きつけられ、勢いを殺せず近くのテーブルや椅子を巻き込んで転げ回る。



【雷切は倒れた!】



 いつも自分のことを紙耐久、弱耐性と卑下しているだけあってか、その一撃で雷切はノックダウンした。

「ラ、ライ……」
「だいじょうぶ、ですか……?」
「……弱い……」
「くそ雑魚ナメクジだね」

 雷切を心配するものと呆れるものとに分かれる外野をよそに。
 グレンは倒れた雷切の下へと歩む。

「ぐ……っ!」
「立て、雷切」

 そう言われ、自分を見下ろす位置にあるグレンをただ睨みつける雷切だが、彼の行動に最も呆れているのは、他ならぬこの来訪者だったのかもしれない。
 グレンは一呼吸おいて、雷切を見下ろした状態のまま、目的を告げる。

「今日は殴り合いに来たのではない——仕事の話だ」