二次創作小説(映像)※倉庫ログ

茶番4 ( No.23 )
日時: 2015/03/21 01:50
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 凶暴化したポケモンが暴れているという場所は、街から離れた荒野だった。
 荒れた野原と書いて荒野。その通り草木のほとんど生えていない荒地だが、しかしこの荒野は街に入る行商人の陸路として利用されているため、道もそれなりに整備されており、人通りもそこそこある。
 ゆえに、ポケモンの凶暴化は由々しき問題なのだ。
 雷切たちはグレンに先導され、そのポケモンたちに強襲をかけるべく、奴らの住処の洞窟へと向かっていた。

「しっかし、ポケモンの凶暴化、ねぇ……まあ珍しいことってほどでもねーが、こういことって頻発しているのか?」
「どうだろうな。しかし、以前よりもその手の仕事が多くなっているようには感じる。もしや、ボックスサーバー内でのことが関係しているのやもしれん」
「ボックスサーバー? なんかあったのか?」
「私も詳細は知らない。しばらくボックスには帰還していないのでな。お前たちについても、実は又聞きで知ったことだ」

 故にこれから話すことも又聞きだ、とグレンは前置きする。

「ボックスサーバーの方で、なにやら問題が起こったらしい。ポケバンクの使用不能、ボックス内外への移動制限、内部抗争染みたことも起こっていると聞く」
「おいおい、なんかすげーやべーことになってんじゃねーの……ひょっとして、主人野郎に連絡がつきにくいのも、それが原因か?」
「言ったろう、詳細は知らないと。しかしそのことと関係しているようではあるな……仮にそのような事態が発生していたとして、主の行動から察するに、主はそういった制約下の状況でも、裏ルートを用いて抜け道を作り、制限を掻い潜っているようだが」
「無茶苦茶やってるな、あいつも……」
「お陰で元々少なかったポケモン出入りが、より少なくなっている。継続的なものにはなっているがな。しかし他サーバーは、そもそも出入りが不可能な状況、より酷いものではボックス内で戦闘が起こっているとも聞き及ぶ。PGLのメインネットワークサーバーが襲撃されたことが原因だという説もあるな」
「……流石にデマじゃねーのか? それは」

 ボックス内で戦闘などまずありえない。ましてやほぼすべてのプレイヤー情報を管理しているPGLのメインサーバーが襲撃されるなど、流石に非現実甚だしい。どんなウイルスプログラムが流れたらそんなことになるのやら。いくらポンコツ運営でも、そこまでザル警備ではないはずだ。
 ボックスの機能不全というだけでも怪しいのに、半信半疑どころか、かなり疑わしい話だ。噂として広まる途中、どこかで誰かが誇張したようにも感じる。
 そして、それはグレンも分かっていることだ。

「詳細は未知だ。我々にはそれを確かめる術はない」
「は? どういうことだよ」
「ボックスへの帰還を禁止されているのは、貴様だけではないということだ」

 どうやら、グレンも雷切と同じように、ボックスに戻れない状態でいるらしい。
 いや、グレンだけではない。少なくとも、街に出ているポケモンたちは、皆そのような状態だそうだ。システムどうこうではなく、単純に主からこの街に留まるように言いつけられているとのこと。
 加えて言うのであれば、雷切たちの主人は、ボックス内のポケモンを次々と街に送り出しているという。

「……これも、どこまで本当なのか分かんねーな」
「この街は外界——ボックスからは独立しているからな。仮に向こうのサーバーがダウンしたとしても、こちらに影響は及ばない。即ち、我々はこの街にいる限り真実を知ることはできない。が、しかし、主の不可解な行動と、前述の噂……無理やり繋がりを求めるのは愚考だが、しかし無関係とは思えん。やはりボックスでなにかあったと見るべきだろうな」
「だが、俺たちには手出しできねーし、俺たちの出戻りを禁止してるってことは、向こうで処理するつもりなんだろ」

 問題ない、と雷切はそう結論付ける。
 なにせボックスには、自分たちよりもずっと腕の立つポケモンがわんさかいるのだ。
 ポケモン対戦界の基準ガブリアス、御三家最速ゲッコウガ、鉄壁防御女神クレセリア——他にも数々のポケモンたちがいる。
 それらのポケモンがいれば、問題はないだろう。そしてその意見は、グレンも同意だった。

「むしろ足手纏いを追っ払いたくて、俺らを街に放ったのかもしれねーしな。あいつはあいつで勝手にやるだろ。なら俺は、俺の方で勝手にやらせてもらうぜ」
「……流石に短絡だと思うが、今はそうするしかなあるまいな。主も、恐らくはそれを望んで我々のボックスへの帰還を制限しているのだろうしな」

 ここでいくら議論をしたところで、なにかが変わるわけではないし、そう簡単に変えられるものでもない。
 腐っても自分たちの主人だ。その指示、行動は二重の意味で絶対的だ。
 一つは、絶対的強制力。そうしろと言われてしまえば、こちらからは反抗できない。
 もう一つは、絶対的自信。主人が現状の行動が最善と判断したのなら、それが正しい、正解の行動であると確信しているからに他ならない。
 ならばそんな主のポケモンとして、その意向に沿うのが、主のポケモンたる使命とも言える。
 ……と、思っているのは、ラグナロクやグレンくらいなもので、実際は、

(借金返済で大変だってのに、面倒なことに巻き込まれたくねーしな……勝手にやってやがれってんだ)
(あの人はまた無茶そうなことを……こっちに飛び火しないことだけを祈るばかりね)
(串カツ食べたい)

 とかそんなことを考えている連中ばかりである。
 などとなんやかんややっていると、先導していたグレンが足を止めた。

「着いたぞ」
「……ここか。奴らの住処ってのは」
「あぁ」

 その声の先には、真っ暗闇に包まれた、洞窟があった——