二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 茶番1 ( No.30 )
- 日時: 2015/03/22 15:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「——うーむ」
「これは、どうかしらね……」
「次の一撃、耐えるんでしょうか……?」
「分かりませんねぇ。かなり微妙です」
「……でも、ラグナロクは……取っておかないと……」
「とりあえず一撃でも耐えられりゃなんとかなるんだがな。ここで落とされたら終わりだ」
「下手すれば、このアローだけで全抜きされかねないしねー」
いつものようにランダムマッチで対戦していた雷切たち。
現在、消耗したラグナロクとファイアローの対面。ここでラグナロクを居座らせるか、退かせるか、悩んでいた。
「ここで落とされるんなら一旦退くが、耐えるなら殴っていいだろうな」
「でも、耐えられるか分かりませんよ……」
「かなり微妙だからな……うし。ココロ、ダメージ計算だ」
「分かったわ」
いつもは経験則という名のフィーリングでなんとなくダメージ量を予測するのだが、このような重要な時は感覚ばかりに頼ってはいられない。
ココロはパソコンに向かい、ダメージ計算ソフトを起動させるが、
「……あ、あれ? ちょ、ちょっと!」
「どうした? なにかあったか?」
「パソコンが動かない……あ、が、画面が真っ暗に……」
「なんだと!? どういうことだ?」
「あたしにもなにがなんだか……フリーズしちゃったのかしら。とりあえず、一旦再起動して——」
「らいきりさん、ココロさん! 時間! 時間なくなっちゃいます!」
「……残り……十秒……」
「どどどどどどうしましょう雷切さん!?」
「落ち着けお前ら! ココロ、PCはまだ立ち上がんねーのか!?」
「ダメ、全然動かない……どういうことかしら……」
「もう時間ないよー?」
「あぁクソッ! しゃーねぇ、ここは居座りだ! 耐えろラグナ!」
「りょ、了解ですよぉ! ふんぬらばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
【ファイアローのブレイブバード!】
【急所に当たった!】
【ラグラージは倒れた!】
——その後、ファイアローに三タテされ、惨敗した雷切たちであった。
■
「——ダメだこりゃ、完全にイカレてやがる」
対戦後。
雷切は唐突に動かなくなったパソコンを分解して弄っていたが、最終的にはそう結論づけた。
「もう直らないんですか?」
「あぁ。言うなれば、こいつはもう“寿命”なんだよ。もう動かせねーな」
まあ仕方ねーか、と。存外、雷切はすっぱり諦めがついていた。
「仕方ないって、どういうこと?」
「そもそもこのパソコンはその辺で拾ったもんだからな。むしろ今までもったのが奇跡だってことだ」
「……そんな、ボロいの……使ってたの……?」
「どうりでやたら汚れたり、へこみがあると思ったわ」
「しかしどうすっかねこれから」
「パソコンがないのは辛いですよねぇ」
この情報社会において、パソコンが使えない——もっと言えば、オンラインになれないというのは由々しき事態だ。
単純に対戦においても、先ほどのようにダメージ計算ができないこともそうだし、最新の環境をリサーチしたり、新たな型を模索するための情報収集もできない。
そして、なにより
「『BOHパ対戦記録譚』が投稿できないよ!」
「……は? なんだそりゃ」
「私たちの対戦記録を綴ったものだよ。ほら、対戦した動画を公開してお金貰ってるでしょ、私たち。それのこと」
「それか……そっちのことについてはお前に任せてるが、そんな名前付けてたのか……」
「ともかく、パソコンがないと私たちの収入減がなくなちゃうよ。早くなんとかしないと! 私も動画とかアニメとか見れないし!」
「俺のパソコンで見てんじゃねーよ!」
「……なんにしても、このままパソコンが使えないっていうのは良くないわね」
ダメージ計算ができなかったり、情報収集ができなかったり、収入減がなくなったりと、悪いことづくめだ。
早急に、新しいパソコンが必要である。
「で、でもパソコンって、高いんじゃないでしょうか……」
「そうでもないわよ。あなたたちの金銭感覚だと、当然高いでしょうけど」
「中古で、安い、ものだと……最近じゃ、数万で、買える……」
「よく知ってんな、トンベリ」
「ん……まぁ……」
「トンベリ君にとってはPCは最大の相棒だもんね!」
「……違う……」
「あ、ごめん間違えた。ちーちゃんだっけ、ベストパートナーは」
「? わたし?」
「……ちーちゃん、こいつの言うこと……真に受けない、方が、いい……」
「おやぁ? お姉さんに向かってこいつとは随分なお言葉だねぇ」
「……事実……」
「はいはいそこまで。トンベリは自分で言っといて熱くならない。ユキも大人げなく煽らない」
「で、どうするんですかぁ、雷切さん」
「うーむ……」
確かにこのご時世、安いパソコンならそれなりに手頃な値段で買える。
しかし今後も長く使うというのなら、多少値が張っても性能の良いパソコンの方がいいだろう。安く買って、またすぐに壊れてしまっては、最終的な収支ではマイナスになりかねない。
だがそもそも、高いパソコンを買えるほど、雷切は金銭的余裕がない。今まで荒稼ぎした金は、ほぼすべて借金返済に充てられ、残りは生活費だ。
「……仕方ねーなぁ」
「新しいパソコンを買うのね」
「いや、新しいパソコンを——拾ってくる」
「……は?」
一瞬、ココロの頭がフリーズした。
先ほどのPC画面のように真っ暗になるが、今度はちゃんと再起動し、
「拾ってくるって……そんな使えるパソコンがほいほい落ちてるわけ……」
「はっ、残念だがアテはあるんだよなー、これが。俺がこのPCを拾ったゴミ捨て場なんだが、明日にでも行ってくるか」
「でも、またボロボロのパソコン拾って、すぐにダメになるんじゃ……」
「そん時はまた新しいのを拾えばいい」
「パソコンをそんな消耗品感覚で使わないでちょうだい……」