二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 茶番3 ( No.32 )
- 日時: 2015/03/24 17:00
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「ちょっと待ったーっ!」
「あ?」
遠くから怒鳴り声が聞こえてくる。
そして、ダダダダッ! と複数人の足音がそれに続き、雷切たちの前に現れた。
「おまえら! そいつをどうする気だ!?」
「……はぁ?」
「そいつをどうする気だって聞いてるんだよ! いいから答えろよ!」
凄い勢いで怒鳴るが、しかし気迫というものはいまいち感じれらない。
それもそのはず、怒鳴り散らしているのは、雷切の半分くらいしか生きていないだろう、小さな子供だったのだから。
年齢で言えば、トンベリと同じか、それよりも小さいくらいだろうか。
「んだお前ら。ここはガキの来る場所じゃねーぞ。さっさと家に帰んな」
「あなた子供の頃この場所を遊び場にしてたって言ってたじゃない」
「ここはボクたちの縄張りだ! お前こそ帰れ! というかボクらはガキじゃない!」
「縄張りなぁ……」
当然だが、このゴミ捨て場は誰かの私有地というわけではない。強いて言うなら運営の管理場所だろう。
なので縄張りと言って、自分たちの遊び場にしているにすぎないということは、すぐに理解できた。
「やっぱガキじゃねーか」
「だからガキじゃないって言ってるだろ! ボクたちは秘密団なんだぞ!」
「秘密団?」
「そうだ、スーパー秘密団だ。ボクはその団長だ。カッコイイだろ?」
「……名前……ダサ……」
「やっぱガキの遊びか……」
自分たちの集団に名前を付けて、ごっこ遊びをしたくなるような年頃なのだろう。ガキじゃないなんて口では言っても、年相応の子供に違いはない。
ただ、いつまでもそんなことを言っても、向こうは否定するだけでなにも進まない。なので雷切は、子供相手に話が通じるか疑問に思いつつも、こちらから問いかけてみることにした。
「で、そのスーパー秘密団? の、団長、だったか? が、なんの用だよ」
「あ、そうだった……おまえら! それをどこに持っていく気だったんだよ!」
それ、というのは、団長というリーダー格らしい少年が指差す物体——ラグナロクが背負っている、スパコンピのことだろう。
「どこにって、家に持って帰るだけだが」
「な……そ、そんなの許すわけないだろ!」
「いや別にお前らの許しを請うつもりは毛頭ないが」
「とにかく! そいつを持っていくことは許さないぞ! そいつはボクらの仲間だ」
「……? ……あぁ……」
最初、このガキなに言ってんだ、頭イカレてんのか? などと思っていたが、なんとなく理解できた。
そして、まずはその確認をしてみる。
「お前……いや、お前ら、ポケモンか?」
「っ! わ、分かるのか……?」
「こいつを仲間っつーならな。同じポケモンだってことだろ」
「ってことは、まさかおまえらも……」
「まーな。つっても俺の場合は、十年前からこいつについては知ってたけどな」
スパコンピは、言ってしまえば見た目はただの鉄塊でしかない。それを仲間などと呼ぶということは、スパコンピがただの物体ではない、ポケモンであると見抜いている証拠。
こんな場所ではポケモンの姿になることはそうないはずだろうし、普通の人間が気づくことは難しいはずだが、同じポケモンであれば見抜くことも難しくはない。
「だが、それはそれだ。こいつはお前らみたいなガキには過ぎたもんだ」
「で、でもそいつはボクらの仲間で、ボクらと同じスーパー秘密団の団員だ!」
「知るか。俺はゴミ捨て場でこいつを拾った。それだけだ。お前らの事情なんて知らん」
「うぅ……」
「……ライ、大人げないわね……」
とはいえ雷切も、こんな高性能コンピューターを、子供への温情なんぞで手放すわけにはいかない。
そもそも、彼に子供への気遣いを期待する方が無駄であるとも言える。
「んじゃ、俺らはもう帰るわ。行くぞ」
「え、い、いいんですかぁ? あの子たち、凄く泣きそうなんですけどぉ……」
「知るかよ。俺らにも俺らのやることがあんだろうが。あんなガキの遊びに構ってられるかよ」
「……まあ、同意……馬鹿正直に、付き合うこと、ない……所詮、子供……」
「自分だって子供のくせに、背伸びしちゃってー」
と、スパコンピを持って帰ろうとする雷切一行。
しかし今まで噛み付いていた子供らが、そんなことを許すはずもなく、
「ま、待て!」
「あん?」
再び、雷切たちの前に立ち塞がった。
「こうなったら……みんな! ボクらの団員を取り返すんだ!」
「はぁ?」
「おい、おまえ! ボクらと勝負しろ! それでボクらが勝ったら、そいつを返してもらう!」
ビシッと、宣戦布告する団長という少年。
口で言い負かされたからか、今度は実力行使に出たようだ。
「勝負ってなぁ……俺らとまともにやりあって勝てると思ってんのか? それ以前に、その勝負を受けて、俺らにメリットはあるのか?」
「うるさいうるさい! とにかく勝負だ! 受けて立て!」
「日本語がおかしいな……」
「いいんじゃないですかぁ、受けても……そうでもしないと、この子たち、収まりそうにありませんよぉ」
「そうだなぁ……」
雷切は思案する。こんな子供に負けるとは思わないが、わざわざこんなお遊び集団に付き合うのも癪である。
とはいえラグナロクの言うように、ここで勝負を受ければ、大人しく引き下がるかもしれない。突っぱねたところで、何度も突っかかってくるはずなので、ここは引き受けた方がいいのだろう。
「……分かった。いいぜ、その勝負とやら、受けてやっても」
「! な、なら——」
「だがこっちも条件は出させてもらうぜ。俺らが勝ったらこいつの所有権は俺らにある、お前らはもう突っかかってくんなよ。それと」
雷切はラグナロクの後ろに回り、彼が背負っているスパコンピを下させる。
そして、その蒼色のボディを軽く叩いた。
「おい、スパコンピ。起きろ」
——ウィィン
そんな起動音染みた音を発し、スパコンピのボディが変形した。
四足は広がり、その先からは爪が出て、今まで閉じていた瞳は開眼する。
その姿は、今までの鉄塊ではない。正真正銘の、ポケモンの姿だった。
「792309183」
「え、なに? なにか喋った……?」
「プログラミング言語みてーなもんだ、気にすんな。それより」
雷切は子供たちに向き直ると、ポケモンの姿へと変形して起動したスパコンピを指し、
「俺らは五人、そしてお前らは六人——この数の差はアンフェアだよなぁ。つーわけで、こいつを穴埋めにさせてもらうぜ」
「な……なんて卑怯な……!」
「五対六で挑む方が卑怯じゃねーのか? それと、そうじゃねーと勝てねーか?」
「う、うるさい! そんなわけないだろ!」
「……子供相手に、挑発……大人げ、ない……」
なにはともあれ、雷切側はスパコンピを加えて六体。
数の上では、これで平等になった。