二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 茶番2 ( No.5 )
- 日時: 2015/03/01 20:34
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「ライっ!」
「あ?」
カジノから出ると、男の耳に聞き覚えのある女性の声が届く。
その声の方を見遣ると、そこには見覚えのある影が二つ。スレンダーな女性と、巨漢の男性だった。
「ココロ、ラグナロク……どうしたお前ら」
「どうした、じゃないわよ。まったく、またこんなところに入り浸って……」
「みんな雷切さんのこと心配してるんですよぉ」
「そうか、悪ぃな。ついカモが多いもんだから、長居しすぎた」
そう言って雷切と呼ばれた男が強く腕を振ると、袖口やらコートの内側やらズボンの裾からやら、いたるところからぱらぱらとトランプのカードが舞い落ちた。
「イカサマして勝つなんて、感心しないわね」
「あーいう場所はどんな方法使っても勝ちゃぁいいんだよ。ばれなきゃイカサマじゃない」
犯罪は犯罪と発覚するまで犯罪ではないように、イカサマもイカサマであると証明されなければ、ペナルティは問われない。
そもそもイカサマでもしなければ、そんな簡単にロイヤルストレートフラッシュなんて出るわけがないのだ。
「90%で勝てる場合でも負けるのが俺たちの本来の世界だからな。六十五万分の一とか、偶発的に出て来たら一生涯の運を使い尽くして、永遠に技が当たらなくなるっつーの」
「? なんのこと?」
「なんでもねーよ。それよりも悪かったな、わざわざ迎えに来させちまって」
「雷切さんのことは信頼しているので、僕は大丈夫だと思っていますけど、ちーちゃんさんやトンベリさんは、帰るまでずっと心配していましたよぉ」
「いくら稼ぎが必要だからって、賭け事はやめなさいよ……あの子たちも心配するし」
「つってもこれが手っ取り早いうえに儲かる手段だからな……ま、今後は多少は控えるようにする」
「多少じゃなくて身を退いてほしいくらいなんだけどね。本当にもう、気が気でないのよ……」
悩ましいというようにココロは頭を押さえて溜息をつく。
しかし当の雷切は、あっけらかんとしたものだった。
「ま、だがここではかなり稼いだからな。そろそろ俺のイカサマを看破する奴が出て来るかもしれねーし、少なくとも新しい稼ぎ場所見つけるまでは本業に戻るか」
「金輪際やめて欲しいって言っているんだけどね……」
再びココロはため息をつく。
その時だった。
「おいてめぇ!」
「あん?」
また聞き覚えのある声が、カジノの入り口から聞こえてくる。
そちらに目を向けると、そこには手下と共に先ほどのスーツの男の姿があった。しかも、酷く憤慨している様子だ。
「なんだよあんた、まだ俺に用か? 言っとくがもうポーカーは受けねーぞ」
「てめぇ! さっきの勝負! ありゃイカサマだったのか!」
「あぁ、さっきの話、聞いてたのか。その通りだが?」
「な……!」
あっさりとイカサマを認める雷切。あまりにあっさりしすぎていたためか、男は一瞬言葉を失う。
その間に、雷切は、
「だがあんたは、ゲーム中にそのイカサマを見破れなかった。もう勝負はついてんだ、今更なに言ってもおせーんだよ」
それに、と雷切は悪っぽく口角上げて、目を細めながらにやりと男を見つめる。
「イカサマしてたのはあんたも同じだろ」
「っ!」
「トップ・ブラインド・シャッフル、手配操作、仕込んだカードのすり替え、それにカード自体にも不自然な傷があったなぁ」
相手のイカサマ内容を並べていく雷切。それだけで、相手の顔が青ざめていく。
そして最後に、一層声を低くして、声を発した。
「気づかないと思ったか?」
その一言で、男は一歩後ずさったが、しかし目はまだ雷切を睨みつけている。
どうしてでも雷切に報復したい、そんな目だ。
「くそっ、こうなったらかくなるうえは……てめぇら、やっちまうぞ!」
男が手下に目配せすると、その手下たちの姿が変わっていく。
一瞬にして鳥獣のような姿と化した男たち。しかしその姿は、雷切たちにとって日常的なものであった。
「ほぅ、そう来るか。つーかお前らもポケモンだったんだな」
ポケモン、それが雷切たちの本来の姿であり存在。
この世界の根幹をなす生物だ。
雷切は男たちの姿を見るなり、またあくどい微笑を浮かべる。
「ポーカーはもう受けねーが、そっちの勝負なら受けてやってもいいぜ。ココロ、ラグナ! ちっとばかし手伝ってくれ」
「はぁ……やれやれ、仕方ないわね。こういうトラブルがあるからやめて欲しいって言ってるのに」
「雷切さんの頼みとあらば、いつでも行けますよぉ! HAHAHA!」
こちらは三人、それだけいれば十分だ。
相手は見るからに屈強そうな姿形をしている。それに、勢いに任せたとはいえ勝負を挑んだということは、それなりに腕に自信はあるとみていいだろう。
しかし、
「だがけどあんたら、また後悔すんなよ」
「あぁ!?」
「俺の——俺らの本分は、こっちなもんでな」
その言葉を皮切りに、雷切たちも臨戦態勢へ。
そして、勝負の第二幕が始まった。
今度は——ポケモンバトル、という形で。