二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 対戦パート3 ( No.8 )
- 日時: 2015/03/01 20:37
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
【男たちはリザードンを繰り出した!】
「リザードンか……Yだったら岩雪崩で叩き落してやるところだが」
非常にXの香りがする。
勿論、相手に晴らすことがデメリットとなるようなポケモンがいるからと言ってYではない確証たりえない。
だが今までの経験と、今この場における感覚、直感では、目の前のリザードンはXであるように思えるのだ。
「……ま、仮にXとして、地震でも一撃じゃ落とせねーわけだし、ここはXでもYでも通る岩雪崩が安定かね」
どうせ威力は25しか変わらないのだ、火力不足の雷切にとっては大差ではない。
そんな自分の火力不足を自分で皮肉りながら技を選択すると、相手のリザードンが光に包まれる。
「見晒せ小僧! これがてめぇと俺様の格の違いだ!」
【リザードンのリザードナイトXと、スーツの男のメガリングが反応した!】
【リザードンはメガリザードンにメガシンカした!】
黒スーツの男——リザードンは、雷切の予想通りXへとメガシンカ。
漆黒の体躯、青白く燃える炎。先ほどまでの橙色の龍の姿はどこにもない。
「格の違い、か……」
確かに格が違う。環境トップ率を誇るリザードン。レートではYが多いとはいえ、Xも龍の舞からの無双性能が高く、強力であることに変わりはない。
素早さしか取り柄のない雷切では、まず敵わないだろう相手だ。しかし、
「だからどうした?」
「っ……!」
雷切は凄んでみせる。
目の前のメガリザードンに臆する素振りなど一切見せずに。
「お前は俺が脆弱で、スピード以外に長所がないんだと思ってんなら大間違いだぜ」
「なんだと……?」
「その油断が命取りにならないといいな。つっても、もう手遅れかもしれねーが」
「ぐ……!」
雷切の言葉に、相手は唸る。こちらを警戒しているようだが、その警戒は怯えにも見える。
盤面の上ではこの対面、雷切が不利に見える。しかし彼の口振りから、なにか秘策を隠し持っているようにも思えた。
そんな、彼の心中は——
(やべえやべえやべえやべえやべえやべえ! ここでXとか舞われたら終わりじゃねーか!)
——非常に焦っていた。
(ハッタリで強がってみたものの、この対面はどう考えても絶望的。メガリザXは岩雪崩程度で落とせる耐久じゃねーし、そもそも今回の俺はほとんどAに振ってねぇ! 半分削ることすらままならねーよ!)
弱みを見せると一気に突き崩されそうだったのでさっきは強気に言ったが、内心はこんなものだ。
相手の深読みを誘って、舞われずそのまま殴ってくれればまだ勝機はある。しかし相手もここが全抜きする格好の起点、それを先ほどのハッタリで見逃すかどうか。
(とりあえず、岩雪崩がどのくらい入るかだ……!)
【ジュカインの岩雪崩! 効果は抜群だ!】
[リザードンHP:8割近く]
【ジュカインの命が少し削られた】
[ジュカインHP:117/145]
「……ねぇ、ライ」
「言うな、今必死で勝機を探してんだ」
確かにほぼAには振っておらず、相手は物理耐久が増すメガリザードンXだ。たかが威力75の不一致弱点程度は余裕で耐えられると思ってはいた。
しかし、まさかここまで火力が出ないものとは……いや、分かっていた。分かっていたことだ。自分の火力が悲しいくらい足りていないことは。
だが、火力は足りていなくとも、雷切の行動が無駄だったわけではなかった。
【リザードンは怯んで技が出せない!】
「おぉ……?」
相手は怯んで行動不能。つまり、これは、
「……やっぱビビってんのか?」
「ぐ、う、うるさい!」
「俺が隠し持ってる“こいつ”がそんなに怖いか?」
「うるさいと言っているだろう!」
内心は焦ったまま、雷切はまた挑発的にハッタリをかます。
ちなみに彼が隠し持っているという最後の技は目覚めるパワー。しかしタイプは氷だ。
(強がってはいるが、相当さっきのハッタリが効いたみてーだな。ビビッて怯んでら)
焦りが募っていく雷切だったが、今の怯みで少しだけその焦りが解消された。
それでも、こちらが不利であることに変わりはないが。
(さて、ハッタリが効いたとはいえ実際に強がってんのは俺なんだが、状況は全然好転してねーな)
さきほどの岩雪崩で半分近く削れていれば、次の地震で落とせたかもしれない。
しかし岩雪崩のダメージがあれでは、地震が急所に当たっても怪しい。
(怯み狙いでもう一発岩雪崩か……? ここで舞われたら誰もあいつの攻撃を耐えられなくなってゲームセットだが、逆鱗を誘ってラグナを捨て、ココロを死に出しからのムンフォなら……いや、それだと裏のマンムーにやられる。ならここは龍舞読みでラグナを投げるべきか……? いや、そもそも逆鱗じゃなくてドラクロ採用かもしれねーし……)
一度は効いたハッタリも、そう何度も通用するとは思えない。雷切はここからの勝ち筋を必死に模索する。
(それか、フレドラの反動で落とすか? 俺とココロでフレドラを誘って、反動ダメージで落とし、ラストのマンムーはカウンターでなんとか……それもきついか。俺は珠ダメで消耗してるし、ココロもHには振ってねーから、反動で落としきれる気がしねぇ。相手のマンムーの襷だろうし、カウンターしても落としきれない可能性が高い。そもそも地震を耐えられるかどうかも分かんねーし、氷柱針を撃たれたらカウンターも意味をなさない)
いくつかの勝ちパターンを想定するも、しかしどれも勝率は低そうだ。
その細い勝ち筋の中から、どの勝ち筋が最も確実であるかを考え、雷切は結論を出した。
(……ここは逆鱗誘いからのラグナ捨て、そしてココロでニタテだ!)
自分とラグナの二人を捨てて、ココロでタテるプランに決定した雷切。
マンムーの氷柱針が二発で止まれば、それ+氷の礫を耐えるかもしれないという判断だ。
なので雷切は、ココロで確実に落とせるよう、ここでメガリザードンを少しでも削っておく。あわよくばフレドラの反動を嫌って逆鱗を撃ってくれるかもしれないという希望的観測込みで。
「ちっ……いきがるなよ、小僧があぁぁぁぁぁっ!」
「……!」
メガリザードンが吠える。それとほぼ同時に雷切も震脚し、地面を強く踏み揺らした。
そして——
【ジュカインの地震! 効果は抜群だ!】
【急所に当たった!】
「ぐはぁ!?」
【リザードンは倒れた!】
——メガリザードンは、撃墜された。
「…………」
急所突破。
ポケモンではよくあることだ。次の一撃を耐えると思ったら急所に当たって耐えられなかった、要塞化したポケモンすらも突き崩す乱数の悪戯。
非常にポケモンバトルらしいと言えばらしいのだが、あまりにも呆気ない幕引きに雷切は口を開けなかった。
【ジュカインの命が少し削られた】
[ジュカインHP:103/145]
「とりあえず……有効急所頂き、ってことでいいのか?」
「……いいんじゃない、なんでも」
「HAHAHA! 美味しいですねぇ! メガリザードンX突破ですよぉ!」
正直メガリザXで詰みかけていたのだが、怯みと急所でとりあえず突破できて良かったということにして。
これで男たちに残っているのは、マンムー一体のみ。
【男たちはマンムーを繰り出した!】
「さて、ここでわざわざ退くこともねーな。俺はリフストでも撃って退場するぜ」
「そうね。後は任せなさいな。本来はあなたの仕事だけど、狩り残しは掃除してあげるわ」
というわけで。
雷切はここで捨てる。この体力では、氷の礫でも落とされかねない。それならわざわざ引っ込めて、後ろに負担をかけることもないだろう。やられる覚悟を持ってリーフストームで倒しにかかる。
「ま、どうせ襷だろうし、そもそも特攻下がって実質等倍のリフストだ。たぶん落ちねーだろうな。そらよっ、と!」
【ジュカインのリーフストーム! 効果は抜群だ!】
[マンムーHP:3割くらい]
雷切の予想通り、二度目のリーフストームで威力は半減しており、抜群でもマンムーを落としきれなかった。
とはいえ、氷の礫が飛んでこなかっただけマシなのかもしれないが。
【ジュカインの特攻がガクッと下がった!】
【ジュカインの命が少し削られた】
[ジュカインHP:89/145]
【マンムーの氷柱針! 効果は抜群だ!】
【一回当たった! ジュカインは倒れた!】
「一発でKO……なんて脆弱な……」
「言うな、それは俺が一番分かってんだ」
相手のマンムーは返しの氷柱針で雷切を落とすが、たった一発だけでノックアウトした。これだと氷の礫でも余裕で落とされていただろう。
恐らく相手は交換読みも兼ねて氷柱針を撃ったのだ。その警戒心がいい具合に働いてくれただけ儲けものだろう。
「さて、これで俺は退場だな。ココロ、ラグナ、後はお前らに任せたぜ」
「ま、任されても残ったのはお零れみたいなマンムーだけだけどね」
「どうしますかぁ? 僕から出てもいいですが」
「いや、ここはあたしから行くわ」
【あと少しだ。行け、サーナイト!】
【サーナイトのトレース。サーナイトはマンムーの厚い脂肪をトレースした】
どちらから出ても同じだろうが、手っ取り早く終わらせたいので、ココロから先に出る。
ここでの負け筋は、ココロが同速対決に負けて落とされ、ラグナロクでは削りきれず、地震やら氷柱針で落とされること。
とはいえ同速対決は完全に運の勝負だ。もしも勝てなければすっぱり諦めるしかないだろう。
もっとも、このタイミングでココロを出した理由は、他にもないわけではないが。
【マンムーの氷の礫!】
[サーナイトHP:84/143]
「氷の礫、ですかぁ……?」
「こっちのトレースを忘れてるのかなんなのか……ま、ここまでの動きとこのタイミングの登場で、相手はココロをスカーフとでも思ってんだろうな」
先発に出し、単一の技のみ使用して交代、同速のマンムーに堂々と出してきたことから、スカーフを警戒されても不思議はない。
まあもっとも、トレースで今のココロは厚い脂肪を得ているので、礫程度では倒せるはずもないのだが。
「それじゃあ……これで、終わりよっ!」
ココロは手中に凝縮された自然エネルギーを球体として生成し——マンムーへ向けて、放つ。
【サーナイトのエナジーボール! 効果は抜群だ!】
【マンムーは倒れた!】
「……終わったわ」
「あぁ、対戦終了、だな」
さしものマンムーも雷切のリーフストーム、ココロのエナジーボールによる二連続弱点攻撃は耐えきれず、その巨体は横倒しに倒れ込む。
これで相手の繰り出すポケモンはすべて倒した。相手にはもう、戦えるメンバーはいない。
それは、即ち、
【ギャンブラーの男たちとの勝負に勝った!】