二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 茶番5 ( No.97 )
- 日時: 2015/05/06 20:45
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
というわけで、翌日。
キャンディの言う頼み込めば引き受けてくれそうな奴に頼み込むべく、トンベリはいつもより早く登校したのだが、
「……で、どいつ……?」
「まだ来てないみたいね。ま、元から朝早く来るような奴じゃないし」
「……そういうことは、先に、言え……」
そうしたらこの早朝登校の意味はなんだったのか。
ちーちゃんなんて、慣れない早起きなんてしたものだから、もう机に突っ伏して寝てしまっている。ちーちゃんだけではなく、フレイヤもだが、彼女はいつだって寝ているようなものなので、逆に気にならない。
「うーん、流石にこの時間には来そうにないかな。一時間目が始まるまでには来るはずだし、次の休み時間に聞いてみようか」
「もっと……計画性を、持て……」
「そうね、確かにその通りだね。次からは気を付けないと」
トンベリの小言もあっけらかんと言い返すキャンディ。
彼女自身、自分が完璧ではないと分かっているだけに、こういったことで毒づいてもあまり効果はなかった。むしろキャンディは、自分の失敗をちゃんと認め、きっちり反省して次に生かす性分だ。
天才は孤立するのがこの世の常、しかし秀才は受け入れられるのがこの世の社会だ。だからこそ、キャンディには人望があった。
聡いトンベリには逆にそこまで分かってしまうので、いまいち好かないのだが、しかしそれがキャンディのいいところであることは認めなくてはならない。
非常に癪な話ではあるのだが。
「……とりあえず……一時間目……終わるまで、待機……」
トンベリも早起きする習慣なんてない、むしろ夜更かししがちな生活習慣を送っているので、流石に眠い。
やることがないと分かり、睡魔が本格的に襲ってきたため、トンベリも机に伏せて、ゆっくりと目を閉じたのだった。
■■■
一限目の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
それを合図に教師も授業の終了を口頭で伝え、それにより、教室の生徒たちは皆、教科書や筆記具を片付け、思い思いの場所へと移動する。
クラス内の友人と話したり、隣のクラスまで足を伸ばしたり、トイレに行ったりと、先ほどまで同じ教室で固まっていたクラスメイト達が、一斉に散り散りになる。
そんな中、素早く道具を片付けて席を立つキャンディの姿が見えたので、トンベリも仕舞いかけた教科書を机の中に押し込み、筆記具は机の上に置いたままにして、立ち上がった。そしてキャンディの後に続く。
キャンディは今まさに教室を出ようとする生徒——男子生徒——へと、声をかける。
「ニコラス!」
「お?」
キャンディにニコラスと呼ばれた男子生徒は、くるりと首だけで振り返った。
「おー、なんだ、委員長じゃねえか! 俺に何の用? あ、それと俺のことはニックって呼んでくれていいぞ」
「ニコラス、あんたにちょっと頼みがあるのよ」
ニコラスの言葉は半ば無視され、キャンディは自分の要件から入る。
いつもの彼女なら、相手の言うことはなんでも、多少なりとも触れるものだが、流したということはそれを受け入れられる人物だということ。
なんとなくトンベリは、この時点でニコラスという人物のキャラクターを察してしまった。
「俺に頼み? なんだ? 我らが委員長様の頼みとあらば、大抵のことは聞いてやるぜ」
「その言葉、嘘はないわね? だったら言うけど、あんた、新歓バトルマッチのパーティーに入ってくれない?」
というか、前に教室で全員に言ったんだけど、とキャンディは小さく付け足した。
トンベリの印象からしても、確かにこのニコラスという男は非常にノリが良さそうだ。新歓バトルマッチなどという一大イベントに出場するきっかけなんていくらでもあったはずなのに、それをスルーしていたというのは不自然に感じる。
今まで欠席していたというわけでもないようだし、どういうことだろうと首を傾げていると。
ニコラスが、ふっと微笑んだ。
「ふっ……やっとか」
「は?」
「やっと、俺にその話を持ちかけて来てくれたな、委員長。俺はこの時を待ってたぜ」
「……なに言ってんの、あんた」
「俺も新歓バトルマッチには興味があったんだが……いやなに、委員長がパーティーメンバーを探しているのは知ってたんだ。教室で、でっかい声で宣伝してたしな」
だったらなんでその時に参加表明しなかったんだ、とトンベリは心の中でツッコむ。
そしてキャンディも同じことを思ったようで、
「だったらなんでその時に参加表明しなかったのよ」
と、口に出して、ややきつめな語調で言った。
それに対し、ニコラスは、
「いやだって、全員に向けて言ってる時に出たって、ただの目立ちたがりみたいじゃん? だから俺は、委員長が直接、俺に頼み込んでくれるこの時を待っていたんだ。その方が、俺が必要とされている感が出るだろ? そっちのがカッコイイしな」
「あんたねぇ……」
「……なんだ……こいつ……」
こちらは必至で人手を探していたというのに、この言い分。出る気があったのなら、最初からそう言え。
しかしその理由があまりにも阿呆らしく、怒る気力も湧かない。キャンディも呆れたように息を吐いて脱力していた。
「……まぁ、出てくれるならそれでいいか。で、本当に大丈夫なの、ニコラス」
「おうともさ! あ、それと俺のことは、親しみを込めてニックって呼んでくれていいぞ。去年も言ったけど」
「うん、大丈夫みたいね。それじゃあよろしく、ニコラス」
ともあれ。
これで出場メンバー六人が揃った。
しかしこれまでの集まった面々を思い返してみると、溜息が出る。
誰も彼も曲者揃いで、新歓の舞台に立たせて問題ないのだろうか。
そう思うと、気を揉まずにはいられなかった。
「……こんなんで、本当に大丈夫なのか……?」