二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第一章「デジタルモンスター」 ( No.11 )
日時: 2015/03/24 01:20
名前: ポカラ (ID: gJuvDJZQ)

やはり見間違えではなかったのだ。謎の黒い小さな生物、それはしっかりとそこにいた。大きな眼でこちらをジッと見つめている。
直ぐにでも自分を此処に導いた理由を聞きたくなったのだが、不思議と口が開かなかった。それくらいその不思議な生物に見とれてしまっていたのである。

「来てくれて…ありがとう。」

喋った、やっぱり喋ったんだ。聞き間違いじゃなかったんだ、あのすれ違いの時助けを求めたのはこの子だったんだ。
口が何処にある分からないけど、ハッキリと自分の耳で聞き取る事ができた。この生物は、生きているんだと実感する。

「あなたは誰なの?どうして、私ここへ?」

漸く聞けた、この質問。これを聞くためにこんな危険な地へとわざわざやってきたのだ。
そんな自分の質問に代弁するかのように変わりに口を開いたのは案内をした男であった。

「ここからは…あーめんどくせぇけど、俺が変わりに説明しようか。いいか、あまり此処に長いこと居られないんで間接に話すぞ。しっかり聞いとけよ。」

「まずこいつの正体は一体何なのかということから話そうか。こいつはデジタルモンスター、略してデジモンっていう生き物だ。
まぁこの世界では元々ハッカー共が使用している特別なウィルスって事になってるが…そいつは間違いだ。こいつら知識もある、喋る事もできる、食いモンも食べる、そして睡眠も取る。」

デジモン。あの時助けてと言っていたのはこの事だったのだ。

「何より、生きている。人間と何ら変わらない生き物だ。現にお前に話しかけて会話をしている訳だ、信じるしかねぇけどな。そしてここにお前を呼んだ理由だが…このデジモン達にも故郷があるんだ、デジタルワールドっていうな」

「デジタルワールド?それは私達とは別の世界があるって事…ですか?」

突然こんなこと言われても正直未だ半信半疑の状態。デジモンっていう生物がいるってことで頭の中がパニック状態なのに更に物凄い事を言われれば頭上に?マークが幾つも浮いていることは言うまでもない。
しかしそれでも聞かなければならないようだ。

「ご名答!そう、この世界とは別の世界だ。それがデジタルワールド。そこが今色々と問題があってな、まぁ問題ってのあれだ…めんどくせぇから省略するけどよ。ともかくピンチって訳だ。」

物凄い一番大事な部分をカットされた様な気がしたが、もはや色んなことがありすぎてそれに突っ込むことに頭も回らない状態であった。

「ともかく、その問題を解決するためには人間の力が必要なんだ。それも選ばれた人間だけな。それがお前さんだったってわけ。」

選ばれた人間?まずそれに選ばれた理由。何故自分が選ばれて此処に呼ばれたのか、それが一番聞きたい事でもあった。

「なぜ、何故私が選ばれた人間で…此処によば…」

「その理由は!……後々分かる。ただ今はこのデジモンに協力するかしないかだけ決めてくれ。」

自分の質問を無理やり中断させられ、選択を迫られる…正直どうすればいいか分からなかった。理由も分からない、私には関係のないことだ…でも、でもほっとけない気もする。
再度デジモンと呼ばれる生物を見つめる、こんな生物が沢山住む世界…どんな所とか気になりはするものの、いざ助けるという選択をしたとして私に何ができるのだろうか。

「まぁ、あれだ。何から助ければいいかって話だけどよ。このEDENになやばい奴が解き放たれちまったんだよ、その正体は追々話すとしてな。そいつをどうにかしないと…この世界もやばいことになるってことだ。
そいつはな、全てを食らうんだ…何もかもをな。データもデジモンも…そして、人間もな。それをこのデジモンと協力して駆除するのを助けて欲しいってのがまぁ此処に連れて来た理由の一つだ。」

何だか話が色々と複雑になり始めているが、大まかに纏めれば…このデジモンって生物がデジタルワールドっていう世界、そしてこの世界も救うためにその解き放たれたヤバイ生物を倒すから手伝ってくれということらしい。
そしてそれに自分が選ばれた理由は教えてくれない…正直勝手な話である。でもこの子達の故郷、何より自分達の世界もピンチを言うなら、やらざる負えない部分もあるのだが…
それに連れてきた理由がその一つってことはまだ他に理由があるということなのか、それも聞いておきたいが果たして教えてくれるのだろうか…

「それは、聞きたいって顔だな。まぁ大まかに言えばな、これは運命なんだ。決まっていたことでいずれお前は選ばれる存在だった。大きく言えば…お前は世界を救う一人なんだ。納得できないかもしれない、けどお前の宿命なんだ。」

言葉を失う。何がどうなってる?これが私の運命?世界を救う?考えたこともなかったし、思ったことも一度もなかった。
今でも信じられないし、そんな宿命どうやって背負えばいいのか…そんなに直ぐに決められるような事ではない。

「そしてこのデジモンはお前を選んだ、選ばれし一人はお前なんだ…朔日リン!」

「選ばれし…一人、私が?」

その言葉が頭の中に響き渡る、繰り返し繰り返し流れる。そしてその言葉を最後に何時の間にかその謎のおじさんは姿を消していた。
景色も何時の間にかアンドロの風景に戻り、自分は細い道に立っていた。しかし目の前には自分を呼んだデジモンとやらがこちらを見つめたまま未だそこにいる。

「わたしの名は、ツメモン。協力してくれる、リン?」

これが私とデジモンの初めての出会い。
既に歯車は回り出していたのだ、そしてそのヤバイ奴とやら…その脅威も徐々に活動を始めようとしていたのであった。