二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第二章「青春熱血!熱き拳」 ( No.19 )
日時: 2015/03/25 22:42
名前: ポカラ ◆Cewk4iJLMo (ID: gJuvDJZQ)


「はっはっはー!やるな、そのスピード中々だぜっ!」

そう大声で叫ぶのは一人の青年、満面の笑みを浮かべながら腕を組み目の前の生物に声を掛けている。
その生物は青い毛皮に覆われたまるで犬の様な生物。額には赤い鉢巻を巻いており、両腕には同じく赤色のボクサーグローブをはめている。
何より二足歩行で俊敏に動き回っている。そう、この生物もデジモンの一種である。名前はガオモン。

「ハァ、ハァ…へへへ、どうよタクト!俺の動きは早いだろ」

EDENの人気のない広場でどうやら一緒にトレーニングをしているようであった。人間とデジモンがそれはもう楽しそうに組み手を取っている…何とも異様な光景であった。
組み手を一時終えたかの様に赤いタンクトップの青年、浅田タクトは地べたに倒れるように寝転がれば爽快な表情で再び口を開く。

「そろそろよ、トレーニングじゃなくて実戦も経験しないと駄目だと俺は思うんだが。どうだ?ガオモン」

その言葉を聞けば、ガオモンはタクトの傍に歩み寄り地面に座り込む。息を整えながらその問いに答えた。

「おう!俺は何時でも準備は出来てるぜ。でも、そんな実戦してくれる様な相手はいるのか?」

んー確かに…とばかりに表情を歪ませるタクト。そして地面から飛び起きれば服の埃を払うかのようにパンパンと音を立てて叩き始める。

「イーターとやらを探すついでに、色んなところを歩いてれば多分戦ってくれる奴くらい見つかるだろう!よし、そうと決まれば早速出発だ!着いて来いガオモン!」

傍に掛けてあった、茶色いコートを荒々しく羽織れば休憩も束の間その場から移動しようと駆け始めた。
そんなタクトの背を小走りをしながらガオモンも着いて行く…が…

「た、タクト…もう少し…きゅ、休憩させてくれよぉ!」

何とも騒がしいコンビだが、彼らもリンと同じく選ばれた人間の一人である。同じように目的は、侵食者X(イーターエックス)を探し出しこの世界から取り除くこと。
リン同様既に世界を救う為に、お騒がせ破天荒コンビは早々と動き始めたのである。



ところ変わって、此処はEDENのコミュニティ広場。その名の通りコミュニケーションを取るために色んな人が集まっている。
世間話をしたり、はたまたナンパをしようと女性を物色している男性もいたりとその目的は各々自由だ。
リンはEDENのログイン後直ぐにツメモンと合流すると、寄り道をせずにこの場所にやってきた。一応ツメモンを他の人に見せないようにと再びリュックの中に詰め込みながら…
目的は侵食者Xの情報を聞き込むこと…とはいっても真面目にそんなことを聞いたりしたら、頭のおかしい奴として無視されるのが目に見えている。
真実は告げずに、このEDENで何か変わった事や大きな事件はないかと多数の人に聞き込むも…成果は未だ0。中々目ぼしい情報は掴めずにいた。

「あぁ…もう。本当にこの世界にそんな奴いるの?ツメモン…」

聞き込みも疲れたーとばかりに大きな溜息をつきながら、背負うリュックの中に収まるツメモンに声を掛けた。ボソボソと小さい声で苦しそうにだがツメモンは応答する。

「い、いる筈だよ、多分どこかに隠れてるんだ。デジタルワールドでは地面や壁に穴を掘って身を潜めてたけど…」

地面や壁に穴を掘る?とは言っても此処は電脳空間。そんな穴を掘って潜り込むなど何か想像が出来ないが…
しかしリンは思いつく、データを食らう生物なら全てがデータで出来たこのEDENの壁や地面…いや、全てのものに穴を開けて身を潜める事が出来るのではないかと。

「それならあまり人の目に付く所にはいないかもしれないね。となると…あまり人の来ない場所…アンドロとかかな?」

とはいえEDENで人がこない場所など幾らでもある。それを一つ一つ確認して回っていたら時間が幾らあっても終わらない気はするのだが…他に方法もない。
さてどうしたものかと悩んでいれば、自分の横で楽しそうに会話する二人組みの少年の会話が耳に入ってきた。

「なぁなぁ!クーロンって知ってるか?」

「クーロン?あぁ、あのデータの溜り場だろ。あんなゴミ溜めがどうかしたのか?」

クーロン。彼女も少しは聞いたことはあった。この電脳空間には下層のエリアが存在するらしく、其処の場所を人はクーロンと呼んでいるのだ。
様々なデータの残骸が流れ着き蓄積される、少年の言ったようにゴミ溜めと言うのが正しいのかもしれない。
アンドロと同じく一般ユーザーは近づきもしない危険な地域としてちょっとした話題にもなっている。リンは勿論未だ赴いた事はないのだが。

「それがよ、そこで大勢のハッカー達が化け物を見たって騒いでるんだってよ!面白そうじゃねぇか?行って見ようぜ」

「バーカ!それホラ話だぜ。お前は本当単純な作り話を信じるよな。ハッカーがそんな話を噂にして広めて、面白半分で来た奴のアカウントをハッキングして楽しんでんだよ」

そんな話をしながら少年達は笑いながら何処かへ去っていった。
化け物?そのワードに反応するリン。リュックの中に収まるツメモンが同様に反応したのかモゾモゾと動いている。

「どう思う?このタイミングにしてはちょっと出来すぎた展開の様な気もするけど…」

「でも行って見る価値はあるかもしれないよ、リン」

そうなんだけどねー、クーロンは危険なところなのだよツメモンさんと口にはしたかったが…引き受けた手前そんなことも言えずに。
しかし息詰まっていたのも事実。漸く手に出来た唯一の情報だ、このチャンスを逃す手はない。

「そうと決まれば行くしかないね、ツメモン!ようし、クーロンに出発よ」

「ありがとう、リン。わたしも頑張るよ」

多少怖いが、ツメモンが一緒だと何か自信が持てる、どんな苦難も乗り越えられる…そんな気がした。
まだ出会ってわずかだったツメモンともこの何日かで随分仲良くなることが出来た、信頼も少しは高まった。
しかし気になることも一つあった…それは。

「ところでツメモン?イーターを見つけたらどうやって駆除するの?」

「それは…戦うんだよ。リンと私で。」

なるほど…あれ?

「ところでツメモンって戦えるの?」

「うん。あわを吹いて攻撃とか出来るよ!」

不安だ、物凄く不安だが…何とかなる、何とかなるのかな?と思いつつも二人が歩み先は一つ。


———下層エリア クーロン。