二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 序章【異変の再来】 ( No.2 )
- 日時: 2015/03/22 01:50
- 名前: ポカラ (ID: gJuvDJZQ)
序章【異変の再来】
デジタルで作られた世界が広がる、次世代のWebサービス電脳空間EDEN。通常の世界とは違い周囲には多くのデータが流れている。
白い殺風景な巨大な空間の中には簡易的に作られたビルの様な四角いブロックが山のように詰まれており、まるで賑やかな都会にいるような感覚に陥る。
その中にはショッピングができるお店や大手企業などの会社なども存在しており、広く大衆に復旧している。
EDENはアカウントを所有していれば年齢問わず誰でもログインが可能なサービスなのだ。
そう人々にとってこの世界はもう一つの日常世界となっている。
しかし使用する多くの人が善人とは限らない、少なからず悪事を働く輩も存在している。
セキュリティによって守られてはいるが、裏では甚大な被害をもたらす悪人…すなわちハッカーも少なくなかった。
そんな事など露知らず、今日もまた多くの人々がEDENを使用していた。
「おい、何だよこれ!こんなの初めて見たぜ。」
そう声を発したのは、若い20代の男性。彼の指差す先には白い壁…そこにはデータが乱れ、青白く小さな穴ができている状態のものがあった。
分かりやすく言えばデータの破損、処理や読み込みができなくなっている状態がEDEN内では視覚的に認識ができる。
時折ジジジと音を立ててノイズが走り、データが乱れ徐々にではあるがその穴が広がっている。
「これやばいんじゃないの?運営に連絡したほうがいいよ。」
その男性の連れである女性が心配そうにその穴を見つめながら、彼の服を引っ張りその場から離れようとする。
しかし好奇心からか男性はその場から一行に離れようとはせず、あろうことかその穴に手を伸ばし触れようとしていた。
「大丈夫だって、心配しすぎだよ。面白そうじゃん、ちょっと触ってみるよ、俺!」
彼女の制止を振り切り、彼はそのデータが破損した一部にそっと手をあてた…次の瞬間。
巨大な警告音が周囲に鳴り響き、白い空間が赤く点滅し始める。その光景に周辺にいる人々は驚きを隠せなかった。
【警告!警告!直ちにログアウトシテクダサイ。警告!警告!直ちに———】
EDEN内に機械の声による警告音が鳴り響く。データに触れたその男性も、連れの女性も直ぐにログアウトしようと持参するデジヴァイスを手に取ればログアウト処理を実行しようとするが。
そのパネルに表示されるは大きなErrorの文字、もはや操作も不能な状態であった。今までこんな状況など一度も無かっただけに当然焦りの方も強くなる。
「だから言ったでしょ!やばいよこれ、何がどうなってんのよぅ…」
女性はその場で蹲れば、データに触れた男性は額に大量の汗をかきながらデジヴァイスのパネルを何度も強くタップするのに精一杯の状況、当然Error表示のまま動作不可能な状態だ。
途端巨大な警告音がピタッと鳴り止むと、EDEN内全体の照明が一斉に消えれば世界が一瞬にして闇に包まれた。
聞こえてくるのはパニックに陥る人々の悲鳴、ログアウトも出来ず、現実世界にも戻れず、ただただ闇の中でその場にただずむことしかできなかった。
一方その頃、電脳空間EDENを運営するカミシロ・エンタープライズでは既にその異変を察知し対応を始めていた。
普段はEDEN内を映し出している多数のモニターだが今は闇に包まれ聞こえてくるのは人々の悲鳴のみ状況を認識することができなかった。
「駄目です、電源復旧できません!予備電源も使用不可です!」
「こちらからログインも不可の状況です、こんなの初めて…」
社員やスタッフが必死に状況を打破しようとするが、全てが無に終わる。今までこんな状況が一度もなかった事もあり対応策が無いのも理由の一つだ。
「止む終えない、利用者だけでも強制ログアウトするしかないだろう」
「それは危険です!万が一データに破損でも起こればその人は只じゃすみません」
EDENにログインしている人はアバターとは言え、精神データも此方の世界に来ている状態。即ちそのデータになんらかの不備、または破損が起これば現実世界にいる元の肉体にも影響を及ぼしてしまう可能性がある。
だからといってこのまま暗闇の中に利用者を放置しとくわけにもいかない…さてどうしたものか、そう思った矢先。
利用者の悲鳴や声が聞こえなくなり、EDENは完全な静寂に包まれた。闇に包まれ、一切の音を発さないその電脳空間は正に不気味であった。
しかし次の瞬間、照明が一斉に点灯し世界を再び強く照らす。だかその光景は先程の様に賑やかものではなかった。
利用者は全員その場に立ち尽くし、ピクリとも動かず、そして何も発さずに固まっている…それはまるで人形(マネキン)のようであった。
あまりにも異様な光景…モニターで確認しているスタッフもその光景に目を奪われ、何も発することが出来ない状態。
一体利用者に何があったのか、その理由も分からずただただモニターを直視することしかできなかった。
データの破損によってできた小さな穴。その穴の奥で蠢く怪しげな物体に気づかずに…
翌日の新聞やニュースにはこの事件が取り上げられ、既に世間で話題になっていた。
【EDENで謎の不具合、利用者は無事なのか?】
【闇に包まれた電脳空間。運営の陰謀説】
などと諸々噂になりはじめている。
利用者はというと全員無事にログアウトし、元の肉体に戻り今も何時も通りにEDEN生活を満喫している。
表向きはそう発表されており、カミシロ・エンタープライズ通常通りEDENを運営していた。
実際はその時利用していた者はこん睡状態に陥り、精神データは今も電脳世界を彷徨っていると言う。
元の身体は昏睡状態となり、病院で隔離している…悪く言えば隠蔽しているといった状態であった。
全ての利用者の記憶から抹消された筈のあの脅威
【EDEN症候群】の再来である。
起こる筈のなかった、いや起こっては行けないことであった。
しかし歯車はゆっくりと狂い始めていた。
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「皆様のもう一つの世界、それが電脳空間EDEN。
新たな生活、新たな環境。素晴らしい空間がなんと無償で利用可能。
コミュニティ、フリーエリア、企業案内、多種多様なサービスを展開しておりお客様に満足してもらえる物だけを提供しております。
あなたも新たな世界へ、私たちが電脳空間EDENへお連れいたしましょう。カミシロ・エンタープライズがお送りしました。」
今日もまた新たな利用者がログインをする。