二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第二章「青春熱血!熱き拳」 ( No.21 )
日時: 2015/03/26 00:34
名前: ポカラ ◆Cewk4iJLMo (ID: gJuvDJZQ)

下層エリアクーロン、その場所には様々な噂が流れている。
例えば「化け物を見た」、「突如データの粒子となって様々場所にジャンプする男女を見た」、「うるさい女が様々なハッカーを捕まえて仲間に無理やり引き入れまくってる」などなど、数え出したらキリがない。
しかしそれも全てあくまで噂だ。実際に見たという証拠もなければ、一切信憑性がない…本気で信じようとする奴なんて殆ど存在しないのだ。
そんな噂に藁をも掴む思いでやって来たリンはその例の場所に足を踏み入れた。本当に此処はEDENなのかと疑うほど普段の光景とは違う世界が広がっていたのだ。
青白い世界、しかし周囲にはデータの残骸があちらこちらに散らばっている。本当に電脳世界のゴミ溜め場とい言葉が似合う場所である。
そして不気味なほどの静寂に包まれており、一歩また一歩と歩く自分の足音だけがクーロン全体に響き渡っているようであった。その響く足音が妙に気持ち悪く感じてしまい、無意識に忍び足になってしまっている自分がいた。

「うっわぁ…噂には聞いてたけど、これは人も来ないわけね…」

来ないと言うより来たくないと言ったほうが正解か。自分も含め来る用事が無ければ遠慮したい場所だ。
ツメモンはというと既にリュックから飛び出ており、自分の横で浮遊しながら周囲をキョロキョロと見渡していた。様々なデータの残骸が妙に珍しく感じたのだろうか。
ともかく真っ直ぐに続いた道を歩きながら、何か気になるものが無いかと探しながら進んで行く。とはいえ、これだけのデータの残骸が蔓延する中小さな穴に潜む侵食者Xを探したすのも至難の業なのだが。

「リン、この奥に何かいる気配がするよ」

ツメモンがそう告げる前に、自分も既に気づいていた。この道を進んだ更に奥。暗闇になっていてこの場からじゃ分からないが微かに人の声が聞こえてくる。
一人?ではない気がした。誰かと会話しているのだろうか…兎も角この目で確認しない事にはその正体は分からない。

「悪いハッカーかもしれないし、慎重に気づかれないように行くよツメモン」

ゆっくりと、データの残骸に隠れながら前へ前へと進んで行く。徐々に近づくにつれその声は大きくなってきた。
やがて見えてきたのは…公園?公園だ…いや、このクーロンで何を言っているんだお前はと言われるかもしれないが本当に目の前にあるのだ…朽ち果てた、ボロボロの公園が。
ブランコもあるし、ゾウさんの滑り台もある。奥には蝶ネクタイをした巨大なクマ?のぬいぐるみが置かれている。ゴムのタイヤが幾つも積み重なっており、アスレチックジムもある…ともかく公園がそこにあるのだ。
物陰に隠れながらリンは驚きを隠せなかった、こんな場所があるなんて想像もしてなかった。

「嘘でしょ、何なの…」

そして更に驚いたのは、その公園の中心にいる者。恐らく先程聞いた声の主であろうその人物は自分より小さい生物と会話をしていた。
その生物何処からどう見ても人間ではない…青い犬の様な生き物、しかも二本足で歩いてるし…

「リン!あれはデジモンだよ、やっぱりわたしの他にもいたんだよ」

「えっ!あれもデジモン!」

ツメモン以外のデジモンを見たのはこれが初めてであった。あんな普通の動物の様な種もいるんだと少し関心しながらもそのデジモンと共にいる人物にも視線を送った。
自分と同じ歳くらいの青年が楽しそうに犬の様なデジモンと会話している。そんな光景を見るとどうも悪いような人には見えないのだが…果てしてどうなのか。
途端、思いも寄らぬことが起きる。

「スン、スン…タクト、あそこに誰かいるよ」

あろうことかあの青い犬デジモンが鼻をヒクヒクと動かしたと思えば此方を睨み付けるかの用に振り向いたのだ。
流石犬なのか鼻は効くようだ、微かな匂いで隠れているのを見破ったようだ。
リンは慌てて物陰に隠れるとツメモンを抱きかかえ、自分の手で口を覆った。しかし時既に遅し、青年はその場で自分に声を掛けてきた。

「なにっ!おい、誰だ隠れてんのは?姿を現しやがれ。」

まいったなーといった感じにリンは苦笑いしながらツメモンを抱きかかえたまま物陰からゆっくりと姿を現した。

「ああ、あ、怪しい者じゃないです…その、通りすがりです!えっと…邪魔する気は無いので、その、失礼しまーす」

何を誤魔化しているのか自分でも分からなくなったまま、あまり関わってはいけないと何故か感じてしまい早々にその場から退散しようとしたその刹那。

「待て!お前、その抱えてるの…デジモンか?」

やっぱり気づかれたかと思いつつ、立ち去ろうとした歩みを止めれば苦笑いの表情のままゆっくりと頷く。
それを確認するや否や、青年はそれはもう心底嬉しそうに驚きの発言をしたのだ。