二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第二章「青春熱血!熱き拳」 ( No.28 )
日時: 2015/04/06 23:13
名前: ポカラ ◆Cewk4iJLMo (ID: gJuvDJZQ)

突如としてツメモンの身体は強い光に包まれる、あまりのその光度に目を開けることは難しかった。思わず両目を瞑りながら右腕でその光を隠すかの様に前に出した。
その異様な光景をタクトも唖然としながら見つめていた。当然ガオモンも手出しが出来ない状態である。
やがて徐々にその強い光にも慣れだし薄っすらとだが目を開けることが可能になった、その視線の先には未だ強く光りながら小さいデータの粒子が幾つも天高く上っていく光景が見えた。
一瞬だがツメモンがやられて死んでしまったのかさえ思ってしまった…しかし事実は直ぐに明らかになった。
光がゆっくりと収まる。その先には……リンは目を疑った。

ツメモンの姿はなかった。

「……え?」

そう、ツメモンの姿はなかったのだ。その代わりとばかりに見たこともない新たな生物がそこにいたのだ。
ツメモンの面影を残しつつ…しかし身体は一回り二回りも大きくなっている。2本の長い腕も生えており、特に目についたのはその無邪気な表情だ。
今にも笑い出しそうなその表情と全てを呑み込みそうな大きな口。ツメモンに一体何があったというのか?

「つ、ツメモン?……なの?」

突然の出来事にペタンと座り込んでしまうリン。それと同時にツメモンだった生物はゆっくりと此方に振り返ればその大きな口で喋り出す。

「わたしはケラモン。リン、怖がらなくて平気よ。わたしは…」

そして今度はガオモンの方へ身体を向ければ再度口を開く。

「進化したんだよ」

進化——その言葉は少なからず聞いてことはある…しかしそれは生物がゆっくりと時間をかけて変化していく現象とかなんとか。こんな目の前で突如発光し姿形を大きく変えてしまう…こんな非現実的な事が本当に起こったというのであろうか?
いや、既にこのデジモンという生き物と出会った時点で私の現実は大きく変わっているのだ…驚きはしたが受け入れられない訳ではない。

「そ、そっか。ツメモン…じゃなくてケラモン。えっと…驚いたけど、まだ戦える?」

「大丈夫、ここから反撃よ。任せて、リン!」

まだまだケラモンに沢山聞きたいことはあったが、未だ決着がついていないこの戦い。リンはその場から立ち上がればタクトを見据えた。
彼は未だ驚きの表情を見せながらも、何処か今の状況を喜ぶかの様にゆっくりと笑顔になっていけば…

「は…はは…はーっはっはっは!」

そして腰に手を当てながら突如大声で笑い出す。一体何を考えているかさっぱりである。

「すげぇ、すげぇよお前ら!この短時間で強くなっちまった!そうこなくっちゃな、熱いぜ!燃えるぜ!いよぉぉし、続きを再開だーッ!」

それは心底嬉しそうであった。彼の性格が移ったのか何なのか知らないがガオモンもワナワナと震えている様に感じた。
似たもの同士…その言葉がピッタリ似合うそんな二人組みだ。でも不思議と悪い二人組みには見えなかったのだが。

再び対峙するケラモンとガオモン、しかし先手を打ったのは今度はリンのほうであった。

「ケラモン、行って!」

その指示と共にケラモンは早い動きで浮遊しながらガオモンの背後へと回り込む。しかし接近することはなく一定の距離を保ったまま。
そして全てを飲み込むかの様なその大きな口をガバっと開ければ鈍く光る赤い光弾をガオモンの背中目掛けて何発も射出した。

「クレイジーギグル」

複数の赤い光弾は迅速にガオモンに向かっていく。接近戦を得意とするガオモンにとって嫌な攻撃を繰り出してくるものだ。
彼の速度なら一発を避ける事など造作もない。しかし複数飛んでくるその光弾を全て見切り回避することは難しい…加えて背後からの攻撃、当然判断も遅れる。

「ぐわっ!」

悲痛な叫びと共にその内の一発がガオモンの肩に直撃する、それだけではなく回避した残りの光弾が地面へと着弾すれば小さい爆発を起しその衝撃波がガオモンを追撃した。
爆発音が連続で鳴り響き、ガオモンはその衝撃により吹き飛んだ。しかし痛みを堪えながらも空中でその身を翻し回転しながら鮮やかに地面へと着地した。

「ガオモン、まだまだこんなんじゃ終われないぜ。もう一度見せてやれ、お前のその拳を!」

コクっと頷いたガオモンは己の両足で再び地面を強く蹴り上げれば、先程よりも早い速度でケラモンに接近していく…天高く繰り出す拳をもう一度食らわせようと。
やはりガオモンのスピードはケラモンを上回っている、見切って回避は難しい。しかしリンは考えた、ケラモンの外見を見て一か八かだがどうせ回避が難しいのであれば受けてやればいいと。

「ケラモン!パンチをお腹で受けて。そのままさっきの攻撃の準備を…大丈夫、私を信じてっ!」

そのリンの言葉に一瞬戸惑うもケラモンはゆっくり頷き再度口を大きく開く。赤い光が強くなり口の中にエネルギーが溜まり始めた。
あの攻撃を受ける?舐められたものだ…お腹だろうが何処だろうが直撃すれば只では済まない。進化して強くなったのが自信になったのかあまりにも無茶なことを指示している。そう思ったタクトは勝利を確信した。
赤い光弾には正直驚いたが、この勝負もここまで…初めての実戦だったが物凄く良い経験になった。

「良いだろう、その腹に食らわせてやるぜ!最強の一撃、ローリングアッパーをくらえええ!」

その叫びとリンクするかの様にガオモンは身体を回転させながら高く飛躍すれば、浮遊するケラモンの腹部目掛けてその渾身の右腕を解き放つ。
ケラモンはリンの指示通り避けようとはせずその場に留まったまま、未だ己の口にエネルギーを溜めている…そして。

————ズンッ!

鈍い音と共に見事ガオモンの右拳はケラモンの腹部に減り込んだ。先程よりも更に強力なその一撃は避ける意思の無いケラモンを倒すには十分すぎる威力であった。
勝った、勝負ありだ…タクト&ガオモンコンビはそう確信した。

しかし……。

「惜しかったね」

倒した筈、戦闘不能になった筈の相手は表情一つ変えることなく自分の強力な拳を腹に受けたままそこに居たのだ。
そんな馬鹿なとガオモンは目を疑うも、その異様な状況を漸く理解することができた…確かに攻撃は直撃したのだ、しかしケラモンの腹部だと思ったその部位は何本もの触手が束になった塊。
即ちそこに拳を打ち込んでも触手の束は解けるだけで威力は大きく分散されてしまう。リンが咄嗟に考えた作戦にまんまと引っかかってしまったのだ。

ケラモンの溜めるに溜めたその一発の大きな赤き光弾。それは今にもガオモン目掛け放たれようとする。空中そしてこの至近距離…ガオモンに避ける事は不可能だ。
咄嗟に空いている左腕でガードするガオモン、そして至近距離でそれは放たれた。

「これで終わり、クレイジーギグルッ!」

赤い光がこの公園全体を強く照らす、そして少し遅れるかの様に空中で大きな爆発と衝撃波が巻き起こった。