二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第一章「デジタルモンスター」 ( No.3 )
日時: 2015/03/22 02:41
名前: ポカラ (ID: gJuvDJZQ)

第一章「デジタルモンスター」

あの事件から半年以上の月日が経っていた。殆どの人がそんな悪夢を忘れ今も普段通りにEDENを使用している。
彼女、朔日リンもそのうちの一人であった。何時も通り学校から帰れば直ぐにEDENスポットに向かう。
EDENスポットは何処にでも備え付けたある専用の接続ブースだ、簡単に言えば公衆電話のようなものと言えば分かりやすいかもしれない。
そこから愛用のデジヴァイスで接続しログインをすれば、電脳空間に飛べると言う訳だ。
ログインすれば自分の身体がアバターとなり、もう一つの世界を堪能できるといった感じになっている。

「さって、今日もEDENにログインっと」

そんな独り言を呟きながら近場のEDENスポットを探す、現在いるのは新宿駅周辺。こんな大都会ならスポットなんぞ幾らでもある。
ブレザーのポケットから愛用の携帯、即ちデジヴァイスを取り出せばアプリを起動。最も近場のEDENスポットを認識し直ぐに接続可能な状態になる。
液晶にログインするか否かの表示が現れ、そんなの決まってるじゃんとばかりにYESボタンをタップする。
接続中と表示の後に自分の身体がまるでEDENスポットの端末に吸い込まれるようにデジタル化しその場から姿を消した。
もう慣れたものだ、最初は自分の身体に起こっていることが現実だとは思わなかったが、今は驚くことなんてない…むしろ当たり前といったかんじである。

「今日は何処にいこうかなぁ」

ご機嫌の様子でログインを続ける、データの流れと共に自分が浮遊するようにどんどん進んで行く。
まるで空を飛んでいるような状況、そのまま進んでいけば人が沢山いるところに辿り着くであろう。例えて言えばEDENの都会の様な所だ。
データの流れに身を任せ進んで行くが一行に出口…いや、EDENへの入口が現れない。
普段なら等に賑わっている場所へと辿り着いていい様な時間なのにと首を傾げるがそこまで深く考えることなく進んでいった。

「———ッ!!」

途端、頭の中にまるでノイズが走ったような強い衝撃を感じた。痛みと驚きにより歯を強く食いしばりながら目を瞑る。
こんなこと初めてだった、EDENの接続環境が悪いのか…もしくは電波が弱いの分からないが異常が起きていることが直ぐに感じ取れた。
早く着いてくれ、そう思った途端のことであった。

「……お…ね……い……」

ノイズ音に混ざるように頭に響く謎の声、だが聞き取りにくく何を語りかけてきているのか分からない。

「…おね…が……い…た…け」

徐々にノイズの痛みに慣れが生じ、その声の内容が聞き取れるようになってきた。

「…おねがい……たすけて!……」

聞き取れた。今度は完璧に聞き取る事ができた。お願い、助けて?正直何の事なのか分からないし、一体誰が話しかけてきてるのか分からないしとりあえずこの状況に混乱していた。
痛みを堪え、瞑っていた目をカっと見開いた次の瞬間。
目の前からデータの流れに逆らうように此方へ向かってる、小さな黒い物体が視界に飛び込んできて、やがて自分とすれ違う。

「お願い、助けて!僕たちデジモンを救って!」

その悲痛の叫びが聞こえたと共に、自分は何時の間にかEDENにログインし人が栄える都会に立っていた。
頬に一筋の汗が流れ落ち、ただただ呆然と目前を見つめたまま口をだらしなくあんぐりと開けている状態であった。

「今の…何?」

黒い小さな物体、早いスピードですれ違ったがその姿をはっきりと認識できた。
サッカーボールくらいの大きさだろうか、そんなサイズの黒い物体には大きな赤い眼が着いておりその頭には二本の触手の様なものが生えていたのだ。
それに下半身?と言えばいいのか分からないがその大きな眼の下の身体の部位はまるで人間の手のように5本の指の様なものが生えその先には鋭い爪が生えていた。

「く…黒い手の…お化けぇ…?」

いやまさかそんな筈はない、大体この電脳世界にお化けが存在するって事自体アンバランスというか非現実的というか何というか…
兎も角自分が幾らお化けが苦手とは言えそんな変な物を見たなんて気のせいに決まっている、きっと勝手に脳内変換されてしまったのだろう…そう思い込むことしか出来なかった。

「気のせいだよね、疲れてるのかな…私…忘れよう。でもデジモンって…なんだろう。」

両の目をごしごしと擦りながら何時ものようにEDEN内を歩き始める、しかしあの悲痛の呼びかけの声が脳内にこびり付き離れなかった。

この現象が既に彼女を事件へと巻き込んでいることなど未だ誰も知らない。