二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第三章「悪臭騒動!?元凶を探れ」 ( No.43 )
日時: 2015/05/02 23:44
名前: ポカラ ◆Cewk4iJLMo (ID: gJuvDJZQ)


時刻は午後4時を回っており、学校を終えた学生などが増え始める。リンもその中の一人だ。
彼女が住所を見ながらやってきたのは、中野ブロードウェイ。既にその建物の中には沢山の人を確認することが出来る。
普段なら学校帰りにこんな場所にやってくればカフェや喫茶店でスイーツの一つや二つ堪能したいところなのだが、今回この場所に来た理由は当然それではなく…

「えっと、探偵事務所は1Fかな?」

壁に貼られた館内のMAPを指で示しながら確認する。エレベーター通りの先に目的地の名前を発見した。
MAPを見る限り何故かこの探偵事務所だけポツンと孤立した場所に存在してた。まるで他のお店が近くで営業するのを避けているのかのように…恐らく偶然なのだろうが。
進んで行くとやがて見えてくるのは木材の大きな扉。その隣の壁には大きく【暮海探偵事務所】と表札が備え付けられている。
なんともこの賑わった場所には不釣合いに感じてしまう…今まで賑わっていたのが嘘のように周囲を静寂が包包んでいた。
薄暗いこの通路を不気味に光る非常口誘導灯が緑色に染め上げる、その雰囲気が雰囲気だけに中に入るのを躊躇してしまう。
しかも近くには何だか怪しく感じてしまう相談屋なるものもあり、其処に何故いるのか分からないが白い猫が此方を睨み付けるかのように凝視している。
戸惑ってこんな所に立ち止まっていれば、今度は自分が怪しい人物に見えてしまう恐れもあると感じ意を決して探偵事務所に入ることを決める。
小さく二回ノックすれば、その扉のノブをゆっくりまわし中を覗き込むかの様に入室する。

「こ…こんにちは」

薄暗い外の通路とは違い中は案外明るかった。とは言っても電気は蛍光灯が数本点いているだけで窓から差し込む日の光が主にこの部屋を照らしていた。
ドアの前にはグレーの玄関マットが引かれ、その横にはスリッパ立てが配置されている。幾つかスリッパが差し込まれているのだが片方床に落ちていたりと雑な感じがした。
それだけではなく様々な書類がまるでぶちまけたかの様に床に散乱しており、部屋の角にはダンボールが山積みにされていたりする…はっきり言えば部屋の片付けはされていない様である。
何より一番目に止まったのは、大きなブラインドの窓の上に立てかけられている大きなフレームだ。【徹頭徹尾】か書かれている。
自分の小さな声に気付いたのか、その大きな窓の前に座るこの探偵事務所の主が椅子から立ち上がった。

「あら、お客さん?いや…依頼人の方が正しいわね。どうぞ、其方に掛けてお待ちになって」

そう声を発するのは予想外にも綺麗な女性であった。自分の勝手な想像だったが探偵といえば年配の渋いおじ様のイメージがあったからか驚きを隠せない。
長い金髪のその女性は部屋の真ん中に置かれた黒い応接ソファに座って待つように告げてきた。
小さな声でお邪魔しますと呟けば、リンはそのソファにちょこんと座り込む。探偵の女性はキッチンの様な場所でカチャカチャと音を立てながら飲み物を用意しているようであった。
やがて目の前に出されたのは白いマグカップ。中身は…極普通のコーヒーだ。受け皿にはスプーン、そしてミルクとシュガーが備え付けられている。

「ごめんなさい。コーヒーしかないんだけど、とにかく寛いで頂戴」

「あ、どうも…」

女性は自分と対面するかのように、向かい側のソファに腰をかければ一枚の名詞を取り出すとそれを手渡してくれた。


「私はこの探偵事務所の所長を勤めている、暮海京子よ」

小さく頭を下げながらその女性、暮海京子は名を名乗る。苗字を聞いても直ぐに分かるようにどうやらこの人がこの探偵事務所の所長であるようだ。

「それで、あなたの名前は?それと今回ここに来た用件を教えてくれる?」

さてここに来た理由…一体なんて説明しようものか。信じてくれるのか不安だが、解決したくてやってきたのだ。嘘を言っても仕方がない。
それにノキアさんがここを頼ってみてと言ったのだ、恐らく頼りになる方なのだろう…そう信じながらリンは口を開く。

「朔月リンです。えっと、今回ここに来た理由は…そのー、白峰ノキアさんという方に困ったらここに頼ってみてと言われたので…」

「白峰ノキア…あぁ、あなたも彼女と知り合いなのね。それで彼女は何故ここに来る様に言ったのかしら?何か理由があるんでしょう?」

その理由、勿論他でもない…侵食者Ⅹの事で相談があるからだ。しかしそれを説明するにはまずデジモンのことを話さなければいけない。

「はい…実は」

———デジモンの存在、侵食者Ⅹの脅威。自分に課せられた真実…そして現状に至るまでをリンは間接に説明する。
とても信じられるような内容ではないにも関わらず、暮海京子は顔色一つ変えることなく真剣な眼差しで自分の説明を聞いていた。

そして。


「なるほど。つまり、その侵食者の足取りが一向につかめずに困っているのでここに来たと…それにしても噂のデジモンがそんな生命体だったなんて少し驚きね。」

どうやら京子はデジモンの名は聞いたことがあるようであった、しかし直接は見たことはないのだろう。
自分の説明を聞き、何やら考え込む京子を見つめながらも出されたコーヒーに手をつける。ほろ苦いコーヒー独特の風味が口いっぱいに広がった。
多少大人びていても高校生という年齢的にはまだまだ子供。ブラックコーヒーの苦さには慣れておれず一口啜れば直ぐにミルクとシュガーを混ぜ合わせる。

「こんな不思議な事件?なんとかなるでしょうか…」

「そうね…ひとつ聞いてもいいかしら?侵食者というのはEDENのどんな所に潜んでいるのかは分かる?明確な場所ではなく、どうやって隠れているのかさえ分かれば何とかなるかもしれない」

正直驚いた。この嘘の様な話を信じてくれたかと思えば、何とかなるかもしれないという漸く見つけた一つの希望。これにはリンも喜びを隠せない。
京子に望みを託すかのように嬉しそうな表情を見せながらもリンは直ぐにその問いに答える。

「ほ、本当ですか!はい、私の相棒のデジモンが言ってたんですけど…侵食者は壁や地面に穴を開けて巣を作ったりすると言ってました。そこで繭を張り成虫になると穴から出てくるみたいなんですけど。なんとしても成虫になる前に見つけなきゃ大変なことになるみたいで」

「穴を開ける…即ちそれはEDEN内のデータの一部を破損させていると言うことね。ふむ、少し時間を貰ってもいいかしら?」

何か思いついたのか京子はソファから立ち上がれば自分のデスクの前まで移動する。そして慣れた手つきで愛用のPCを操作し始めた、何をしようというのだろうか。