二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第三章「悪臭騒動!?元凶を探れ」 ( No.47 )
- 日時: 2015/05/18 00:53
- 名前: ポカラ ◆Cewk4iJLMo (ID: gJuvDJZQ)
そのタクトの叫びと共にハッと我に返ったリンは不気味なデジモン、レアモンに目をやった。
レアモンはそのヘドロ状の身体をゆっくりと動かしながらも此方を睨み付ければ巨大な口をガバっと開いた。
「オマエラ…キエナイナラ、コロス…」
寒気が走るほどのその気味の悪い声そして発言と共に口から放出されるのは、深い緑色の巨大なヘドロの塊。それが一直線に此方目掛けて飛んでくるではないか。
「リン!危ないッ!」
「タクトッ、避けて!」
それを認識したケラモンは直ぐ様己の触手でリンの腕に巻きつけば横に飛び退いた。少々強引に引っ張ったのかリンは横に倒れこんだ。
ガオモンも同じくタクトに向け大声で叫ぶと二人はほぼ同時にリンやケラモンとは逆方向に飛び退き回避をする。
そしてその中心に遅れて着弾するのは緑のヘドロ。
———グチャ
汚らしい音が響き、地面を緑色に汚す。ヘドロはゆっくりと広がり悪臭を放っている。
「いてて…ありがと、ケラモン」
ケラモンが引っ張ってくれたお陰で何とか回避することが出来た。あんなヘドロの塊が直撃すれば只では済まないであろう。
リンがゆっくりと立ち上がっている間に既にタクトはガオモンに指示を出していた。ガオモンは俊敏な動きでレアモン目掛けて向かって行く。
「行けっ、ガオモン!ラッシュ攻撃だ」
指示を受けたガオモンは一直線には突っ込まずに、まるで反復横飛びをするかのようにレアモンに接近する。その素早い速度と錯乱するかのような動きに相手に判断を鈍らせる。
そして両腕をレアモン目掛けて交互に解き放った。
「ガオ…ラッシュ!」
1発、また1発と確実にパンチを打ち込んでいく、その度にレアモンの身体からは衝撃により灰色のヘドロが飛び散った。
「グオオオ…オオ…」
身体の大きさが違えど、ガオモンのそのラッシュは確実にダメージを与えている。
レアモンの低く不気味な悲痛の叫びが響き渡り…それがやがて怒号に変わった。
「オオ…グアアアアッ!」
次の瞬間、怒号と共にレアモンの身体全体から黄色いガスが噴出される。そのガスの勢いに巻き込まれる様にガオモンは後方へ小さく吹き飛んだ…
「うわぁぁ…く、くせぇぇ…」
ガスの衝撃…と言うよりその臭いが強烈であった。嗅覚の優れるガオモンにとってはある意味致命的な一撃だ。
両腕のボクシンググローブで鼻を擦るガオモン。何とかその悪臭を拭い取ろうと必死である…しかしその行動が油断を招いた。
レアモンは再度緑色のヘドロをガオモン目掛けて射出する。一直線に飛んでいくその汚物にガオモンは気付いていない。
「が、ガオモン!逃げろっ」
タクトの叫びによりガオモンはそれに気付くが時既に遅く、ヘドロ攻撃は直ぐ目前へと迫っていた…しかし。
突如ガオモンの後方から弧を描きながら飛んでくるのは赤く輝く光弾、そしてヘドロ攻撃とぶつかりあうと小さい爆発を起し相殺する。
ガオモンの目前に緑色のヘドロが小さく飛び散った。
「よかった、間に合った・・・」
言うまでも無くケラモンの攻撃である。ギリギリだがヘドロ攻撃を打ち消しガオモンを守れたことにリンは安堵した。
ガオモンは一度体勢を整える為後方へと飛び退いた。その時にケラモンにお礼を言いながら。
「ケラモン、遠距離攻撃で牽制しながらガオモンをカバーしてあげて」
「うん、任せて」
その指示通りにケラモンは上空高く浮遊すればレアモン目掛けて何発も攻撃を繰り出していく。
動きが鈍いレアモンにとっては空に飛ぶデジモンは厄介極まりない相手であろう。
「クレイジーギグル!」
威力はそこまで期待できないが、ケラモンの光弾はレアモンの注意を逸らしつつ確実にダメージを与えていく。
やがて何発かその光弾を食らっていたレアモンは悲痛な叫びを漏らしながらまるで溶けるかの様に地面へと沈んでいった。
「グ…ォォォ…ォ……———」
例えて言うなら水が土の地面に染み込んで行く様な感じだ。レアモンの身体はその場から姿を消してしまった。
なんともあっけない…化け物じみたデジモンであったが、そこまで強い相手ではなかったのかもしれない。
後に残ったのはヘドロの残骸と不気味な静寂のみ、ともあれ無事事件解決なのだろうか。
「勝った…のかな?ふぅ、よかった」
リンはようやく微笑みながら上空にいるケラモンに親指を立て、それに答えるかの様にケラモンは頷いた。
タクトも小さく息を吐くと、やれやれとばかりにリンの元へと歩み寄っていく。
「悪臭騒動もこれにて解決…だな。あーさっさと風呂にでも入りたいぜ」
「ホント、もう臭いのはこりごり。私も家でシャワー浴びたいよ…っとその前に京子さんに報告しなきゃ」
二人はそんな和やかな会話をしているのにも関わらず、ガオモンは未だその表情を曇らせていた。
「おーい、ガオモン。どうしたんだ、折角倒したってのによ」
そのタクトの問いに反応するガオモン。
彼は鼻をヒクヒクと動かしながら周囲の臭いを嗅いでいるようであった…一体何故なのだろうか?
「いや…あいつ、レアモンの臭いがまだするんだよ…いなくなった筈なのに」
「ハハッ!お前の身体にアイツの臭いが染み込んじまったんだろ。だからまだ臭いが強く感じるんだ。戻ったら身体を洗ってやるから安心しろ」
未だその言葉に納得のいっていないガオモンだが、気のせいなのかなとばかりに首を傾げながらトボトボと歩み寄る。
リンも上空にいるケラモンに向け口を開いた。
「ケラモン、私達も帰ろ!」
その呼びかけに対し此方に向かおうとケラモンはくるりと身体を翻したその瞬間であった。
上空…いや、天井と言った方がいいのであろうか。その天井から一滴の水がポツンと垂れ落ちた…と思えば突如大量の灰色のヘドロがケラモンの真上から落下してきたではないか
天井から染み出したそのヘドロはケラモンの身体を覆いかぶさるかのように直撃すれば、そのまま地面へと落下していく。
「えっ、ケラモン!!」
ボトボトと鈍い音を立てながら、ケラモンを下敷きにし呑み込んでいったヘドロはやがて形をなしていき…あの化け物じみた外見、レアモンが再度姿を現した。
ケラモンの身体はレアモンのヘドロで出来た身体に呑み込まれてしまい、数本の触手が外に飛び出ている状態になっている。
「いや…そんな…嘘でしょ…」
信じられないその光景にリンは涙目になりながらその場にペタンと座り込んでしまう…完全に戦意喪失してしまった、そんな状態だ。
タクトはその光景に目を見開き、ガオモンは拳を強く握った。今すぐにケラモンを助けなくては、直ぐにその考えが頭に過ぎる。
「コイツ…食ッタ…アト、サンニン」
「ケラモン、今助けるぜ!頼む、ガオモン!」
タクトは叫ぶ、その意思にリンクするかの様にガオモンは今までにない速度でレアモンに向かっていった。
一瞬の油断が招いてしまったこの状況。果たして、ケラモンは無事なのであろうか。安否はいかに…