二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第四章「清く 正しく 、そして美しく ( No.61 )
日時: 2017/09/06 23:09
名前: ポカラ ◆V6LJ8P/cKo (ID: j5axgBAW)


コンコン……
木製のドアを二度ノックし、ノブに手を当てそれを引く。
薄暗い通路にいた為、部屋の中に差し込む日差しが眩しく、思わず目を細めてしまう。
目が慣れてくるとやはり飛び込んでくるのは【徹頭徹尾】の文字。ブラインドの窓の上にドドンと大きく飾られていた。

「失礼します、朔日です。京子さん、いらっしゃいますか?」

リンは辺りをキョロキョロ見渡しながら、この探偵事務所の所長である暮海京子の姿を探した。
いつも座っているであろう椅子に彼女の姿はなく、留守なのかなと思った矢先、台所の方から彼女はヒョコッと顔を覗かせた。

「あら、いらっしゃい。丁度コーヒーを作っていたところよ。ソファに座って待っていてくれるかしら?」

分かりましたと返事をすればリンとメイはソファに腰掛ける。メイは初めて来たからなのか、少し挙動不審のように周りを見渡していた。
恐らく辺りに積み重ねられた書類やらダンボールの量に驚いているのであろう。
待つこと数分、白いマグカップが二人の前に出される。前回同様……ごく普通のコーヒーだ。

「今日はお友達も連れて来たのね。初めまして、私は暮海京子よ、宜しく」

京子はメイにそう告げると右手を差し出した。

「あっ、リンの友達の春名メイです。今日は付き添いに来ました。よろしくお願いします…」

慌ててメイも右手を差し出せば京子と握手をする。
リンも初めて会った時に思ったがこんなに綺麗で美人な方が探偵をやっているだなんて、未だに驚愕してしまう。そしてやはりメイも同じことを思ったのであろう、何とも見とれてしまっている様子であった。
そしてメイは肘でリンの脇腹を数回突くと京子には聞こえない様に小声で話しかける。

「……ちょっとリン!何よこの綺麗な方。本当に探偵なの?」

「うん、私も初めて会った時驚いたけど…凄く綺麗だよね。スタイルも良いし羨ましいよね」

オマケに身長も高いと言おうとしたが自分の背の小ささにかなりの不満があるメイには告げない様にした。告げると跡が怖そうなので…

そして軽い挨拶も済ませ、さていざ本題へと進もうとしたその瞬間思いもよらない展開が起きる。

「ふふ、丁度良いところに来たわね貴女達。是非このコーヒーに合わせて飲んで欲しいものがあるの」

突然京子はクスリと笑えば、何やらコーヒーに合わせて欲しいものがあると告げる。何だろうか?コーヒーに合わせるものなんて正直砂糖やミルク以外に思いつきもしないが…
何かのスイーツだったりするのだろうか?それは凄く嬉しいが彼女の手から差し出されたものは…


マヨネーズーーー。


呆気にとられる二人。差し出されたその半固体状ドレッシング、卵黄又は全卵を使用し、かつ、食用植物油脂、食酢若しくは…じゃなくてその白い調味料の原料など今はどうでも良い!
何故だ、何故コーヒーに全くと言っていいほどベストマッチしないであろうその調味料が出現するのか理解するのに時間が必要であった。

「これなんだけど、私の助手がハマってる飲み方なの。ちょっと風変わりな飲み方をなんだけど、良かったら感想を聞かせてくれないかしら?」

その助手とやらの味覚がおかしいのだきっとそうだそうに違いないそうだと言ってくれ。
しかしそうは思いながらもなぜ京子さんはそれをお勧めしてくるのかも分からない…使い方は違うが綺麗な薔薇にも棘があると言ったところだろうか…

「は…えぇ……っと。」

ニヤニヤと此方を見ている京子。この人絶対私達の反応を楽しんでいるに違いない。ドSだ!サディストだ!
白いマグカップの中に注がれたコーヒーに白濁色のマヨネーズが追加される。かき混ぜるにつれ変色していき、何やら油まで浮いてくる始末…こんなもの飲んで果たして無事なのであろうか。

「い、いただきまぁす…」

二人同時にさっきまで美味しそうだったコーヒーだった物を口に流し込んだ……

そしてーーーー。

中野ブロードウェイ館内を満喫する人達が、とある探偵事務所から女性の叫び声がすると噂される様になるのはまた後の話だ。