二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第一章「デジタルモンスター」 ( No.7 )
- 日時: 2015/03/23 22:26
- 名前: ポカラ (ID: gJuvDJZQ)
EDENには朝昼夜といった時間はない、1日中同じ明るさに同じ温度が設定されている。暑くもなく寒くもない、いわゆる適温で過ごし易い環境だ。
つまり長い時間ログインしていると時間間隔がなくなってゆく、時計がなければ時間も分からず今が朝なのか夜なのかもログアウトしなくては分からないのだ。
正にもう一つの世界と言っても過言ではないのかもしれない。一生涯EDENで過ごしたいと思っている人も少なくない筈だ。
それが理由で人が多くいる場所はほぼ一日、いや毎日賑わいを見せる場所も存在する。人がいない時が無い、眠らない街と言ったところだろうか。
そんな人ごみの多い場所でリンは呆然とベンチに座り込んでいた。自分の目の前を通り過ぎて行く人、人、人を目だけで追いながら。
「……………。」
忘れようにも先程起きた謎の現象が頭から離れないのだ、あれは何だったのか。果たしてあれは自分だけが体験したことなのだろうか。
そもそも助けてとは、本当に自分に求めているものなのか?たまたますれ違っただけで他の人に語りかけていたのかもしれない。
でもあの時あの場所には自分以外の人間はいなかった筈。それにあの謎の生き物とばっちり眼があったような気がするし…
考えても考えても謎は深まるばかり、いっその事すっきり何もかも忘れ去って何時ものようにEDENで遊んでいたい…そう思うのだが。
「運営に報告したほうがいいのかな、不具合の様な気もするし・・・うーん……———。」
眼を瞑りながら、意味も無くああしようとこうしようと頭の中でぐるぐると意味がない事を考える。
そのお陰でとある人物が自分の事を呼ぶことに全く気がつかずに。
「———ち…と……ン…!」
とにかくデジモンって言うのが妙に頭に引っかかるんだよね。一体何のことを伝えたかったのだろうか。
「…っと…リ…ン……!——」
悩む、悩む…そしてまた悩んでしま———
「ちょっとリンッ!聞いてるの!?」
「はわわっ!」
突如大声で呼ばれ驚きのあまり変な声を上げてしまう。
右耳がキーンとしながらも、自分の名前を呼ぶ聞きなれたその声の主に眼をやった。
「め、メイ…もうビックリしたじゃない、脅かさないでよ。」
腕を組み、不機嫌そうな顔で此方を見ているその人物。名前は春名メイ、同じ高校に通うリンの親友だ。
すこーし気が強いところもあるが、何時も頼りになり助けてもらっている。しかし身長が小さい事を物凄く気にしているのでその事を指摘すると怒ります、凄く怒ります、めちゃくちゃ怒ります。
「ビックリしたじゃないわよ。幾ら呼んでも反応ないし、なーに黄昏てんのよ?何か悩み事?」
彼女は自分の隣に脚を組んで腰掛ける。
「んーと、まぁ悩み事というか…なんというか。それよりメイが一人でEDENに来るなんて珍しいね。」
メイはEDENに来るのはあまり好きではなかったはず、今日は誘ってもいないのに自分から来ることがあるなんて随分珍しく感じ取れた。
まぁ何時も通り自分から誘おうとは思っていたのだが、まぁあんな事がありましてその事もすっかり忘れていたと言う事だ。
「珍しいも何も別に来たくて来たわけじゃないわよ。あんたを探してたのッ!メールしても電話しても一向に返事なし応答なしで、んで何時ものようにココ(EDEN)にいると思って来てみたら当りだったってわけよ。なによ、今日は携帯もっていないわけ?」
やれやれとばかりに呆れた表情をするメイ、とはいえわざわざ探すために好きでもないEDENに来てくれるのはちょっぴり嬉しいなと思いつつ。
ポケットから携帯を引っ張りだしその連絡とやらを確認してみる。
「えへへ…ごめんごめん、気づかなかったよ…ってあれ?」
愛用の黄色い携帯(スマホ)のボタンを押すが反応がない。反応どころか液晶もつかず操作が出来ない状態である。電源を落とした記憶もないし、ほんの数分前には使えていた筈。
そもそもEDENにログインする為についさっき使用したばかりだ、なんかの拍子に落ちてしまったのだろうか。
「おっかしいな、電源が落ちてる。消した覚えはないのに。」
自分の手に持つ携帯の液晶をひょいっと覗き込むメイ。それを見れば再度呆れた表情を見せる。
「充電するの忘れたんじゃないの?まぁ、何にせよそれじゃ連絡も気づかないわけね。」
おっしゃる通りだ。これじゃどれだけ連絡を貰っていても気づかなかった訳だ。兎も角このまま電源が落ちた状態では何かと不便だし、デジヴァイスが起動できなければログオフも出来ない。
ログアウト様の端末を借りれる施設は存在するが何かと面倒だし、お金も掛かる。ここはやはり充電できる所を探したほうが言い訳で…いざ探しに行こうかとベンチから立ち上がろうとした瞬間。
「あれ、電源がついた。な…に…これ?」
突如落ちていたはずの電源が再復帰し、液晶に明かりが灯ったと思えば。そこには見慣れた画面ではなく見たこともない文字が表示される、赤く大きな字でこう記されていた。