二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第一章「デジタルモンスター」 ( No.9 )
日時: 2015/03/24 01:13
名前: ポカラ (ID: gJuvDJZQ)

電脳世界であるEDENにおいての犯罪は勿論色々ある訳であるがダントツに多い犯罪はやはりハッカーによるハッキング行為だ。
以外にも暴力や殺傷事件ってものは少ない。というよりアバターにそんなことをしたところで意味をなさないからだ。
ではハッキングといってもどのような行為があるのか。1つの例としてあげるなら、アカウントの乗っ取りなどがある。
他人のアカウントの情報をハッキングし、そのアカウント自体を文字通り乗っ取ってしまう訳だ。
乗っ取られた人物はそのアカウントにログイン諸々がする事が出来ずに、打つ手なし…完全削除するか、乗っ取り犯を探し出すしか道は無い。
他にも凄腕のハッカーにもなるとEDENの世界を変えてしまったりと大規模な犯罪も起こる可能性もあるのだ。
即ちEDENを運営する会社にとって、ハッカーってのは一番厄介な敵であるわけなのだ。

そしてこの街アンドロにも大勢のハッカーがいると言われている。
外見では判断は出来ないが、視界に入る怪しい人がまるで全員ハッカーで悪事を働いている様に見えてしまう…

「うぅ、噂通り嫌な街ね…」

自分の隣を歩く親友春名メイは本当に嫌な表情で肩を竦めながら辺りをキョロキョロと見渡していた。
普段のEDENの世界観は周りは白く、その中にカラフルなデータが飛び回ってる何とも素敵な空間なのだが…
此処はまるで正反対…景色は赤黒く、ノイズの様に乱れた漆黒のデータがそこら中に流れている。見ていると吸い込まれそうなくらい不気味だ。
恐らく相当腕の立つハッカーがこの街だけの外観を変えてしまったのだろうか…何にせよ悪趣味である。

「メイ、そんなキョロキョロしてたら私達が怪しく見えちゃうよ。」

挙動不審なメイにそう告げるのだが、彼女のその行動も無理はない。普段こんな場所に普通の女子高生が2人歩いていること自体不自然なのだから。
当然この街に住み着く輩はまるで蛇が獲物を狙うかの様にジロジロと此方を見つめてくる。
道の真ん中を歩いている為、ある意味注目の的と言ってもいい。
当然そんな二人に突っかかってくる者もいる訳で……

「おねーちゃん達さー、此処は君達が来る様な所じゃねーんだわ。さっさと回れ右して帰ったほうが身の為ダヨ?」

案の定二人の前に立ち塞がるは、いかにもチャラチャラした代名詞の様な男が二人。
耳に鼻に瞼に口にとリング状のピアスをつけ、服にも靴にもシルバーのチェーンの様な物をつけ歩くたびにジャラジャラとやかましい音を鳴らしている。

「あんた達には関係ないでしょ!何処歩いてたってあたし達の勝手、関わってこないでくれる?」

性格上リンより俄然強気なメイが反論にでる、体は小さかろうが態度は大きいものだ。

「おーおー威勢はでっけぇちっこいお嬢ちゃんだこと。そういう強気な女は嫌いじゃねぇぜ、よかったら一緒に遊ばねぇか?」

言った、言ってしまった…禁句の言葉を言ってしまったこの男A。あーあもう手に負えないなこれはとばかりにリンは一歩その場から後すざる。
チラッと横目で親友の姿を確認すれば、予想通り額に青筋を立てて今にもこの男Aに飛び掛って噛み付きそうな勢いだ。

「ムカッ。誰がチビだってぇぇ!あんた見たいなキモイ男、こっちから願い下げよ。とっとと失せなさいよッ、このブ男ッ!」

鼓膜を劈くような大声とマシンガンの様な罵声が街中に響く、こうなった彼女はもう手がつけられないのは昔から知っている…長い付き合いだ。
しかし場所が場所だけに、彼女の響く高い声が何時もより異様に気になった。一層注目を集めてしまっている。

「め、メイッ!もういいから行こう。こんなことしてる場合じゃないよ。」

怒りを静めるかのように彼女の腕を引っ張り、早々にこの場から移動しようとするのだがこれだけの罵声を浴びせられた男共が黙っている筈もなく。

「随分威勢がいいじゃねぇかよ!先ずはログアウトして生身の体でお相手してもらおうかああぁ?あああん?お嬢ちゃんたちいい?」

その大声と共に自分は腕を乱暴に掴まれれば、強制的にEDENからログアウトをさせる為か男はリンの携帯を取り上げる。
やはり男と女、力の差は大きかった。幾ら振り解こうとしても男は片手だけで自分の力を押さえつける。

「ちょっと!リンから離れなさいよッ!あたしにも触るなっ、やめてよ!」

メイも同じ様に他の男から腕を掴まれれば、同様に携帯を取り上げられそうになる。
やはりこんな街だ、こうなることも予想はしていたのだが…兎も角大ピンチ。どうすれば良いのかそう思った矢先であった・・・

「はいはーい。そこまでそこまで、落ち着けーいお前ら。」

背後から聞こえて来るは一人の男性の渋い声、腕を掴まれながらもその場から振り向けばそこに立っていたのは中年のおじさんであった。
だが驚いたのはそこではない、その男性の容姿である。髪型は時代劇に出てきそうなちょんまげ、服装は袴姿で履物は下駄と来たもんだ。
どう見たっておかしいし、しかもこの電脳の世界…最先端のデジタルな世界EDENでこんなにもアンバランスな格好があるのだろうか…何処からかタイムスリップしてきたようにも見える程だ。

「あー…なんだ、あれだ。落ち着いたなら、その手を離してやれ。嬢ちゃん達が痛がってるだろう。」

姿はどうあれ、自分達を助けようとしてくれているらしい。しかしそんな言葉だけでこの男達が素直に聞くわけもない。

「んだぁ?おっさんは引っ込んでろよ。」

「おっさん?俺のことか?おいおい、勘弁してくれよ。俺はそんな歳じゃねぇよ、失礼なクソガキだなお前。」

正直何処から見てもおじさんにしか見えない外見だが、あえて突っ込まずに黙ってその様子を見つめる。

「どっから見てもオヤジじゃねぇぇかよ!とにかく消えろよ、テメェに用はねぇんだよ。」

男Aが代弁してくれた、ありがとう。じゃなくて、なんだこのやり取りは…どうすればいいのか。
隣で同じく腕を掴まれ、チビと言われ怒り狂っていた親友もポカンとしている。

「マジかよ、俺おっさんに見えんのかよ・・・ショックだなぁ、この髭がいけねぇのかな…剃った方が若く見えたりしてな、ハハハ。」

己の不精髭をジャリジャリと音を立てて触り出す、謎のおじさん。ともかくこの男達に隙は出来たのは確かだ…今なら振り払って逃げ出せるが…
と、そんな事を考えていた次の瞬間。謎のおじさんは右手で指をパチンと鳴す。

途端——。