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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第二章:『蔓延する狂気』-5 ( No.22 )
- 日時: 2015/08/12 15:40
- 名前: 霧桜 ◆U7aoDc6gZM (ID: kkPVc8iM)
神。これ即ち、天地の双方に在れる力を持ち、空奔る影に姿似る者。
インビンシブルの知る神の像は、一行の想像を絶していた。今空の遥か彼方を飛ぶインビンシブルでさえ、彼等にはその全貌など知る術も無いと言うのに、神はこれすらも越えているのだ。神とは一体何者なのか。
計るべきスケールがヒトの許容量を越えている。一行はたじろぐしかなかった。
「なんっつーか、その……何だ。オレ達、そんな奴に会いに行くのか?」
「仮令神がどのような者であれ、行かねばならないだろう。滅びをただ待ちたいだけなら帰れ」
「誰もンなこと言ってねぇだろが。定規がデカいからちょっと引いてるだけだよ」
どん、とバルの背を小突いて、弓使いは彼女の冷たい言葉にムッとしたような口調で言い返す。対するバルは何のリアクションもない。ただ、誰にでも分かるほどの強い殺気と警戒を発しながら、歩を止めるのみだ。
先導する者の異様。その理由はすぐに分かった。
「何か、居る」
剣の柄に手を掛けながら、腰を低く落とし、声のトーンを落としてバルは告げる。今更分かりきったことを、と者共は一瞬思えど、口にはしない。沈黙に佇んだまま、彼等は得物を構えるだけだ。
漂う静寂。だが、無音ではない。遺伝子にまで刻まれた風の音、荒地特有の砂の音、そんなものが耳に入ってくる。そして旅人の聡い耳は、更に多くの音を聞き分ける。
「五、いや、六は居るか」
「四足歩行……キリンか?」
忍び寄る幾つかの足音。微かな呼吸音。そして、獲物を狙う時の低い唸り声。
捕食者の接近を、彼等は音で感じていた。
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