二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 虚の旅路 -Story of TERRA BATTLE- ( No.34 )
- 日時: 2015/10/17 21:11
- 名前: 霧桜 ◆U7aoDc6gZM (ID: kkPVc8iM)
雨音と、時折轟く遠雷の音が、まどろみの中に居たバルを揺り起こす。
湿気が肌に纏わりついて、酷く鬱陶しい。苛立ち極まって、彼女はその眼を開けた。
ゆっくりと体を起こし、ぼんやりとした頭で、一体どれほど長く眠っていたのか考える。陽が落ち、暗くなり始めた頃に、眼精疲労も極まって横になった所までは覚えているが、それ以降の記憶はない。そして今、彼女の眼には、白み始めた空が映っている。随分と長い時間寝ていたようだ、と言うことは、とりあえず察しが付いた。
やや重たい頭を小さく振り、意識の覚醒を促しつつ、ゆっくりと部屋を見回す。相変わらずの殺風景さ、その真ん中には、素朴な木のテーブルが一つと椅子が二つ。意味の分からない議論が飛び交っていたその場所に、一人はペンを握り締めたまま突っ伏し、一人は椅子に身を預けて死んだように身動ぎしない。
「二人共?」
試しに声を掛けても、反応はなく。常として自分よりも早く起きているソーマニアすら、沈黙を貫いている。そんな老師の無言に、バルは言いようのない不安を抱いて、思わず二人の傍に歩み寄った。
「マリー」
テーブルに突っ伏している方——マリーに、声一つ。とんとん、とテーブルを軽く叩いて揺らす。
それが原因なのか、或いは全く関係ないのか。もそもそと小さく身動ぎし、ペンを握ったまま腕を顔の下に敷きながら、彼女の口から何事か言葉が零れた。
「ぅ、ん……違う、そうじゃなくてぇ……」
「マリー?」
「爆発するよぅ……」
「い、一体何を言って——ぁっ」
真面目に尋ねかけて、バルはこれが寝言だということに気付いたようだ。今し方の自分の行動に顔を赤くしながら、彼女はちらと老師の方を見る。椅子に深く身を預け、手を組んで、俯き加減に目を閉じた彼は、余りにも静か過ぎて不気味なほどだ。起こすどころか、近付くのも若干憚られる。
結局、腰の引けたバルはそのまま二人の傍から離れ、隣室の扉を叩いた。こちらからも反応は特に無かったが、代わりに威勢のいい鼾が耳に入ってくる。それが一人分しか聞き取れなかったことをやや不審に思いつつも、とりあえず一人は扉の向こうに居ることを確認して、彼女は静かにこの部屋と廊下を繋ぐ扉を開けた。
今回の雨は長いだろう。だが、雨の切れ間があるかもしれない。
そんな淡い期待を篭めて、バルは軋む階段を降りていく。