二次創作小説(映像)※倉庫ログ

続々・ほのぼの日和 ( No.122 )
日時: 2015/06/09 22:36
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: hmaUISmg)

前書き de 雑談



—ここしばらく私生活が忙しそうなので、またお話を移植していこうと思いますので、ご容赦下さい。…烈君の過去回でもいいけど、あんまり暗いのを移植するのもね。それに、あんな話題を出した後だし。


「で、今回は何の話?」


—短編三つ。烈君とリリィちゃん要素、花千枝要素、烈氷要素があるので、その辺りをお知らせしようかと。


「後は何の話を移植するんだ?」


—目下亜空間事件と…烈君の過去を語る上で必要な、林間学校と笛吹き男事件かな。クマ君が覚醒の切欠を掴んだお話。


「でもまぁ、まずは…ほのぼの日和、短い短い、暖かいお話、スタートです。」

続々・ほのぼの日和 ( No.123 )
日時: 2015/06/09 22:38
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: hmaUISmg)

『兄と妹のように』


「擬人化したリリィちゃんって、どことなく烈君に似てるよね?」
「…?」

とある休日。リリィが鈴花と一緒にカフェでまったりとしていた時の事。
リリィは鈴花にそう言われ、うーんと考え込んだ。

「寝ぼけた烈君、勘違いした事、あった。…そんなに、似てる…?」
「うん! 髪の毛とか、何か似てる! 性格はまったく違うけど、二人共並んだら、きっと兄妹みたいだと思う!」
「兄妹…。お兄ちゃん…。」

何か思うところがあったのか、リリィはぽつりと繰り返す。

(…烈君が、お兄ちゃん…。何だか…いい、かも。)

込み上げてくる嬉しさに、リリィは思わず表情を緩ませた。

「リリィちゃん?」
「あ…ううん、何でも、ない。…あ、鈴花さん、パフェ、溶けるよ…?」
「うわっ、いけないっ!」

リリィに指摘され、鈴花は溶けかけたパフェを急いで食べ進めていった。











(…お兄ちゃん…。)

鈴花と別れ、家に帰り、いつものように話し合いを始められて店番を任されていた烈の手伝いをしながら、烈の横顔を見る。

「よい、しょっ、と…。ふぅ。…ん? どうした? リリィ。」

視線に気がついたのか、烈はリリィを見た。

「…。」

リリィは擬人化をして、烈の横に立って手を繋いだ。

「どうしたんだよ、急に手なんか繋いで…。」
「…。」

疑問符を浮かべる烈を他所に、リリィはそっとガラス戸を見る。

「…鈴花さんに言われた。私と烈君、兄妹みたいだって…。」
「あー…。お前が擬人化して布団に入ってきて、俺が寝ぼけていた時には完全にビビったかんな…。」
「…。」
「けど、お前が妹ってのも、何か悪くないな。」

烈はニッと笑って、リリィの頭をくしゃくしゃと撫でる。
リリィは少し照れ臭そうに、それを受けた。

「…お兄ちゃん。」
「ん?」

リリィから兄と呼ばれて、何の不自然もなく反応する烈。
そんな烈に、リリィは優しく微笑んだ。

「お膝の上…乗っていい?」
「おー、いいぞ。」

烈は椅子に座り、リリィもその上に座る。
暖かいリリィの体温が、烈に安心感をもたらした。

「…えへへ。お兄ちゃん、暖かい。」

それは、リリィにも同じようにもたらされた。暖かい烈の体温に、リリィは思わずはにかんだ。

「へへっ、どーも。」

烈は照れ臭そうな表情を浮かべながらも、リリィを抱き締め、しばらくまどろんだ。

「リリィって何か暖かいなー。いい匂いするし…。」
「お兄ちゃん、少し、汗臭い…。」
「う、そ、そりゃ、暑いから…。」
「…でも…落ち着く。凄く、安心できる。」
「…そっか。」

とても穏やかな時間が、二人の間を流れた。
そんな光景をガラス戸越しに見ていたのは、向かいに住む風雅とフランシスだ。二人は配達の帰りなのか、原付から降りながら見ていた。

「…リリィと烈って、ほんと兄妹みたいだよね…。」
「リリィも烈によくなついているようだからな。…俺も、あんなリリィの表情を見るのは初めてだ。」

長い事リリィと一緒にいるフランシスでさえも初めて見る表情に、フランシスはただただ、驚くばかりだった。

「(あんな表情もできるのだな…。)それに比べて…。」

フランシスはじっと、二階を見る。
そこからは未だに怒声と固いもので何かを叩くような音が響き渡っていた。

「あの夫婦はいつもいつも…。」
「ねぇ、フランシス、僕、烈の両親が何で離婚しないか気になるんだけど…。」
「俺に聞くな。俺だって気になるさ。」

どこか疲れきったフランシスと共に、風雅は家に入っていった。

続々・ほのぼの日和 ( No.124 )
日時: 2015/06/09 22:42
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: hmaUISmg)

『名前で呼びたいっ!』


「…よ、よう、よう…。」

千枝は陽介の写真を壁に張り付け、何事かを呟く。

「ようよう? ラップですか? でも、あんまりようよう言わないで欲しいです。あの人を思い出しますので…。」
「あ、ごめん…って、うぎゃあっ!」

突然隣から聞こえた声に、千枝は驚いて飛び退いた。
そこにいたのは、出掛けていたはずの理乃。
ちなみに、彼女の言う思い出したくない人と言うのは…テイルズシリーズのレジェンディアをやれば分かる。

「い、いいいいいつの間に帰ってたのっ!?」
「一応、ただいまと挨拶しましたが、ようよう言っていて聞こえていなかったみたいですね…。すみません、驚かせて…。」
「う、こっちこそごめん、気付かなくて…。」

どうやらきちんと挨拶をしたようだが、千枝の耳には入っていなかったようだ。

「ところで、花村さんの写真なんて張り付けて何をしていたのですか?」
「う…。じ、実はさ、恋人同士になったはいいけど…花村の事を一度も名前で呼べていなくて…。あ、あたしは、その…名前で呼びたいんだけど…どうも何か、恥ずかしくてさ…。」
「あー…。」

理乃はその説明だけで分かったのか、納得したような表情を見せたあと、笑みを見せた。

「…でも、練習をしなければならなかったり、無理をして呼ぶようなら、今は名字で呼んだ方がいいと思います。」
「えっ…?」
「気付いたら、名前で呼んでいた。自然と名前で呼べるようになっていた。それが、いい恋人の形だと思いますよ?」
「自然と…名前で…。」

うわ言のように呟く千枝に、理乃は小さく頷いた。

「いつか、自然と名前で呼べるようになる日、それが、早く来るといいですね。」
「…うん。ありがと、理乃ちゃん。何か、楽になった気がする。今は、深く考えない事にするよ。…花村を自然に名前で呼べる日まで。」
「里中さんなら、すぐに呼べるようになると思います。その、こういうのも変ですが…頑張って。」
「うんっ!」

理乃の声援に、千枝は嬉しそうに頷いた。











「ち…ち…うがあぁぁっ!」

同じ頃、陽介もまた、千枝の写真を壁に張り付けて、何事かを呟いていた。

「ただいま〜ッス。…まーたやってんッスか、花村センパイ。」
「うぇっ!? かっ、完二!?」
「んな事しなくても、気付けば名前で読んでるもんッスよ。焦んなくてもいいと思うッスけど?」
「うぅ…そうだけどよ…。でも、その…できたら、名前で呼んでやりたい。いや、呼びたいんだよ…。」

困り果てる陽介に、完二は溜息をつく。

「んな事考えなくたって、センパイ等は仲がいいんだし、心配せずとも自然に呼べるようになるっしょ。」
「そ、そうかぁ…?」
「そうッスよ。だから無理して焦る必要なんかないと思うッスけどね。」

完二はそう言いながら、備え付けの冷蔵庫に買ってきた食材をしまった。

「…完二は、鈴花ちゃんとは付きあわねぇの?」
「」

陽介のこの言葉に、持っていた林檎をボトリと落とす完二。

「なっ、ななななっ…! なんでそこに鈴花が出てくるんッスか!?」
「いや、お前等も仲いいし…付き合ったりしねぇのかなーって思って…。」
「りっ、鈴花はライバルだっつってんだろ!」
「…氷海ちゃんのシャドウが言った事と違」
「だあぁぁぁぁぁっ!!」

尚も何かを言おうとした陽介に、完二は顔を真っ赤にしながら吼えた。

「センパイ、これ以上何か言うようなら、今日の晩飯、麻婆豆腐にするッスよ? とびっきり辛くて、豆腐たっぷりの。」
「すまん、もう何も言わん。だから麻婆豆腐はやめてくれ!」

急に真顔になりこう話し出すと、陽介は土下座をして謝罪をしたとな。

続々・ほのぼの日和 ( No.125 )
日時: 2015/06/09 22:47
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: hmaUISmg)

『甘いひと時を』


あくる日の生徒会室。

「…ふぅ。」

氷海はパソコンから目を離し、一息ついた。

「お疲れさん、氷海。」
「あら、烈。帰ったんじゃなかったの?」

そんな氷海の元に、烈がやってきた。手にはコンビニの袋が握られている。どこかコンビニに行ってから、また戻ってきたのだろうか。

「まーた根つめてお前の帰りが遅くなりそうだったから、一緒に帰ろうと思って一回コンビニ行って戻ってきたの。んで? 仕事、もうすぐ終わるのか?」
「うーん、それが、もう少しかかりそうなのよ…。」
「会長も大変だな…。でもま、一息つこうぜ。根つめても疲れるだけだしさ。」
「そうね…。」

烈の考えに氷海は同意し、パソコンを閉じた。そして烈はお茶を入れようと席を立つ。

「あ、これ茶葉切れてんじゃん。お、コーヒーはあるみたいだな。コーヒーでいいか?」
「構わないわ。あら、美味しそうなチョコレート。」
「ああ。俺好みだから、ちょっと苦いかもしれないけど。ほら、コーヒー。砂糖とかは自分で入れてくれ。」
「ありがとう。」

チョコレートの封を開けながら、氷海は烈からコーヒーを受け取る。
暫く二人はコーヒーを片手にチョコレートをつまむ。

「うん、美味い。やっぱ疲れた体には糖分だなー。」
「ふふっ、毎日能力者の仲裁で疲れが溜まっているのかしら?」
「仲裁って言うか…殆ど一人が原因だけどな。」
「…それは言わないお約束よ。」

苦い顔をした烈の言葉に、氷海はそう切り返しておいた。





「ふえっくしょいっ!」

学園寮にて、悠は盛大なくしゃみをした。

「オヨー? センセイ、風邪クマか?」
「ん、いや…多分、誰かが噂しているんだろう。そう、俺の事を、女子が褒め称え」
「多分それはないクマ。逆なら有り得るかも知れんケド、それはないクマ。」
「ぐふっ!」

完全に否定するクマに何かを貫かれたのか、悠は胸を押さえてその場から崩れ落ちてしまった。





揺れるコーヒーを眺めながら、氷海は一人考え込んでいた。

「どうしたんだよ、急に黙り込んで。」

それを見ていた烈は、心配そうに聞く。

「…ねぇ、烈。今、私にしてほしい事って、ある?」
「は?」

突然の切り返しに、烈は面食らう。

「…烈は、私に沢山の事をしてくれたけれど、私は烈に何もしてあげられていないなと思ったの。…だから、その…何か、あるかな、と思って…。」
「…。」

烈はそっぽを向き、黙り込む。
怒らせたかと思って心配する氷海は、烈に何かを言おうとした。

「…後ろから、抱き締めてくれないか。」
「…えっ?」

が、烈からそう返ってきたので、これには氷海も面食らう。

「…リリィが言ってたんだ。俺は誰かに抱き締められていると落ち着くタイプの人間だって。俺、それを聞いて、その通りだって思った。誰かに撫でられたり、誰かに触れてると…凄く、安心するんだ。」
「烈…。」
「で、でも、正直…氷海の顔を真正面に捉えて抱き締められるのは、ちょっと、その…恥ずかしいから…。」

烈が言い終わるか終わらないかのところで、背中が暖かくなる。

「そんなの…簡単よ。」

氷海がそっと、慈しむように抱き締めてきたのだ。

「…。」

烈はしばし、氷海の体温に身を寄せる。安心しているのに、どこか心拍数が高くなる。

「烈、緊張しているの? 凄く熱いわ。」
「なっ、き、緊張なんかして…。お、お前こそいつもより熱くないか!?」
「…ええ、熱いわ。こうして、烈を抱き締めているって事だけで…ドキドキするの。」

烈には見えないが、氷海の顔も真っ赤になっていたのだ。大好きな人をこの手で抱き締められる。それだけで、氷海の胸を高鳴らせるのに十分だった。

「…凄く、緊張するわ…。でも…私、今、幸せよ…。」
「氷海…。」
「…暫く、こうしていていい?」
「おい、仕事は?」

生徒会の仕事はどうしたのだ、と烈が問うと、氷海は烈の髪を撫で、

「今は、烈とこうしていたいの…。幸せな時間に浸っていたいの…。」
「…しゃーねぇな。付き合ってやるよ。」
「ふふっ、ありがとう、烈。」

溜息をつきながら答える烈に氷海は礼を述べてから、更に烈を自分に引き寄せた。
烈は緊張しながらも、氷海の体温に身を任せた。
…コップの中にあるコーヒーから、暖かさが消えるまで、ずっと…。







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