二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ある神様の聖誕祭 その四 ( No.256 )
日時: 2015/07/19 22:41
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: g9MFapnu)

ライブも終盤の雰囲気を漂わせてきたのか、凪が少しそわそわしだした。

(まずいなー。そろそろ僕らの出番かもー。)
「あ、あの、凪さん、どうかなさいましたか?」

そんな凪の様子に気づいたのか、ユウは声をかけた。

「うーん、そろそろ僕、中に戻らないとまずいかなー…。でも、ユウを放っておく訳にもいかないしー。(奴等が暴走したら困るし。)」
「オレなら一人で平気ですよ、凪さん。だから、戻っても平気ですよ。」
「うーん、でもなー。(ジャンさんに後で怒られそうだしー…。)」

嫌な予感がしているので、このままユウを放っておく事は、凪にできなかった。
だが、自分の出番も迫っている。どうしようか困り果てていると…。

「なら、僕達がユウと一緒にいるよ。」

そう言いながら、凪の背に声がかけられた。振り向くとそこにいたのは、ティズとアニエスだ。

「あれ? ティズさん、アニエス様、どうかなさいましたか?」
「ちょっと、さっきの歌で緊張してしまって…。ティズと一緒に気分転換に外の空気を吸いに行こうと思いまして。」
「やっぱり、ああいう雰囲気はちょっと苦手だからね。」

どうやら、アニエスの気分転換ついでに外へと出ようとしたところ、凪が困っていたようなので声をかけたようだ。

「ユウは僕達に任せて、行ってきなよ、凪。」
「うん、ありがとー。」

ティズを信頼し、凪は会場内に入っていった。
と、同時に、会場から出てくる影がいた。

「あれ? アルテミアにヴィクター。どうしたの?」

それは、アルテミアとヴィクター。ヴィクターの腕には眠そうなヴィクトリアがいた。

「アルテミア、飽きた。楽しいけど、少し疲れた。」
「私はヴィクトリア様が最初で盛り上がりすぎて疲れてしまい、眠そうだったので気分転換の為に外に出てきたのですよ。」
「うにゅー…。ヴィクター、眠いのじゃー…。でもライブ見たい…。」

ヴィクトリアの目は今にも閉じられそうだが、ライブは見たいらしい。これは少し気分転換させた方がいいだろうか。

「じゃあみんなで外に行こうか。」
「ええ、そうですね。って、うわぁっ!」

ユウは会場の外を見て、驚いた。
なんと、そこにはいつの間にか出店がずらりと並んでいたのだ! あ、何か楽しそうな気配を感じたのか、アルテミアの目が輝き始めた。ヴィクトリアも出店に目を移し、眠気を飛ばしたようだ。

「な、何故こんなに出店が…。」
「どうやら、昴の誕生日を祝いたくても中に入れなかった客達が二次会として開いたようじゃな。」

あまりの出店の多さに驚く一同に声をかけたのは、茜だった。

「あ、茜さん、もう大丈夫ですか?」
「お陰さまでの。お主ら、折角じゃし、このまま出店を見て回らんか? 外に気分転換しに行くつもりだったんじゃろ?」
「はい。折角なので、このままお祭りを楽しみましょうよ、ティズさん、アニエス様!」
「そうだね。…ハルト祭を思い出すな…。」

自分の世界であったお祭りを思い出しつつ、ティズ達はお祭りの中へと駆けていった。

「私達もあちらにいきますか? ヴィクトリア様。」
「出店? 面白そうなのじゃ! ヴィクター、早く行こうぞ! アルテミアも一緒に来るか?」
「行く。アルテミア、一緒に、行く!」

面白そうな臭いを嗅ぎ付けたのか、ヴィクトリアとアルテミアは並んで仲良く出店へとかけていき、ヴィクターはやれやれと肩を竦めつつも、笑みを浮かべながらそんな二人の後ろからついていった。

ある神様の聖誕祭 その四 ( No.257 )
日時: 2015/07/23 17:35
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: q9qYGNqH)

『さぁ、次は誰が乱入するのかなー!?』
「俺達が乱入してやるぜ!」

そう言って現れたのは、烈達つぎドカ!メンバー。きちんと本体と分身両方います。

「あれ? いつの間に…。」

昴はいつの間にか消えていた鏡達に驚き、思わず辺りをキョロキョロと見回してしまった。

『おぉっ、真打ち登場ってとこかな!?』
『真打ちかはわからないけど、精一杯歌うよ! まずは…。』

既にマイクを持っていた鈴花が代表して話すと、くるりと昴のいる観客席に向き直った。

『せーの!』
『昴さん、誕生日おめでとー!』

鈴花の音頭で、全員揃えて言う。
昴は一瞬だけ驚いたが、そっと微笑み、「ありがとな。」と照れ臭そうに返した。

『ここからは私達がメドレー形式で歌うね! まずは私と牡丹!』
『歌う曲は勿論、Realize Mazeですわ。』
『特別にアレンジ加えた生演奏だよ! にゃぐわちゃん、ドラム、お願い!』
『にゃぐー!』

鈴花がギター、牡丹がベース、そしてにゃぐわがドラムを担当し、生演奏をするようだ。

『流石に人数いないから、キーボードとかは打ち込みだけど、そこは勘弁ね!』

そして、曲が始まった。そこで、事件が起こった。

「」

なんと、ススス…。と、舞台袖からキーボードを持ったVENUSのチュナイが出てきたのだ。もちろん、前に出ていた鈴花と牡丹は気づいていない。唯一気がついていたのは、にゃぐわだった。


“Realize Maze/pop'n music ラピストリア”


ハモりを入れつつノリノリに歌う鈴花達が歌い終わると、チュナイは音もなくススス…。と舞台袖に引っ込んだ。どうやら小さなサプライズとして、全部生演奏になった。演奏した等の本人は何も知らないが。

『じゃー、次は僕ー!』

鈴花達が後ろに下がると、次に出てきたのは、凪。

「あれ? でも凪達の曲ってインスト系ばかりじゃ…。」

恐らく担当曲を歌うつもりだと思ったのだが、風雅の曲は全部インスト系。昴はそう思ったが、凪はチッチッチッ、と指を振った。

『やだなー、昴さん、忘れたのー? 一曲だけ、歌付きだよー。曲は、 Cosmic Hurricane -Try to Sing Ver.-! だよー!』
「歌ってみたあぁぁぁっ!?」

そう、一曲だけ、後付けだが、歌詞がついた曲がある。それがこのコズミックハリケーンだ。
曲が始まると、すぐに凪はマイクを構えた。その直後、凪のいる背後の床が空いた。そこから舞台が競り上がる。

「」

競り上がる舞台の上にいたのは、先程同様スーパースターの格好をした風雅とリングアベル。かっこよく決めポーズを決めて、構えている。


“Cosmic Hurricane -Try to Sing Ver.-/REFLEC BEAT colette All Seasons”


ノリノリに歌う凪。ノリノリに踊る風雅とリングアベル。何とか笑いをこらえる昴達観客。
含み笑いが途絶える事のなかった歌が、今終わった。と同時に、舞台が再び降りていく。

『いえーい、ありがとー! あと風雅とリングアベルさんはお客さんを笑わせないでねー。』
「気づいてたの凪!」

なんと、風雅達は絶対にばれていないと思っていたのか、凪の言葉に驚いていた。

『いや、流石に二度目なんだからわかると思うわ。』
『まぁ、お客様も楽しめただろうから、よしとしましょうね、氷海。次は私達で、illuminaよ。』

お次は氷海と雪花。曲は“唯一”歌付きの曲、iluminaのようだ。

『ナレーター、後で覚悟なさい。』

さーせん。
そんな戯れをよそに、曲が始まった。


“illumina/pop'n music ラピストリア”


静かな曲に、会場は落ち着きを見せた。だが、拍手の音は鳴り止む事はなかった。拍手の音に混じり、氷海と雪花は舞台袖に引っ込んだ。同時に、烈が出てくる。

『さて、静かな曲の後で悪いけど、また盛り上げていくぜ!』
(あれ? 鏡は一緒に歌わないのか。)

てっきり、烈と鏡で一つの曲を歌うかと思った昴だが、現れたのが烈だけで思わず首を傾げてしまった。だが、そんなのはお構いなしに曲が始まる。烈のラピストリアでの担当曲、煌だ。


“煌-灼熱の裁き-/pop'n music ラピストリア”


烈の熱い歌唱で、再び会場は大盛り上がり。そんな中、静かなピアノの旋律が流れ、観客達は一斉に拍手をやめた。

(…成程な。こっちを歌うから、お前は一緒に歌わなかったのか。)

ピアノの旋律と共に出てきたのは、鏡。その姿は、いつもの学ランではなく、スーツ姿。そう、水鏡のジャケットで鏡の中にいるお兄さんの姿だ。
やがてピアノの旋律が終わり、特徴的なギターが流れた。そう、この曲は、昴がPONさんの曲の中で大好きな曲であり、鏡の担当曲である、水鏡だ。


“水鏡(Long ver.)/REFLEC BEAT colette Spring”


そして歌い終わると、盛大な拍手を受けながら、丁寧にお辞儀をして舞台袖へと去っていった。

(…普段は子供っぽいのに、歌う時は何か…。)

昴は、今の鏡の姿を見て、少しだけ、頼もしく思えていた。

ある神様の聖誕祭 その四 ( No.258 )
日時: 2015/07/19 22:45
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /9RVPCwZ)

※ネールさん、最初に謝っておきます。ごめんなさい。


『うーん、何か今の鏡君ので締めみたいな感じがするし、時間もそろそろ押してきてるし、昴さんの言葉をもらって終わりに』
「祭りはまだまだ、これからだぞおぉぉぉっ!!」
『へ? うわあぁっ!!』

突然、舞台にあった背後の反響板が割れた。そこから出てきたのは、御輿を担いだ悠とイフリート。上には女の子にも見える男の子がいた。
ちなみに言うと、全員脱いでいます。何をって? 服 を で す よ 。
当然、保護者組や避難係が行動を開始したのは言うまでもあらず。

「ミネット、外にお堀があったから釣りに行こうか。」
「行くにゃー!」

カミイズミはミネットを魚釣りでうまく誘導し、

「レヴ、お土産売り場に行こう。今の時間だったら空いているだろう。」
「うん! パパ、お揃いの何か、買おうね!」

ガイストはレヴナントをお土産で釣り、

「カービィ、外にポップコーンが売っていた。一緒に買いにいかないか?」
「ぽよー!」

メタナイトはカービィをお菓子で釣り、

「ピカチュウ、私と少し散歩にいかないか?」
「ピ? ピカー!」

サムスはピカチュウを抱っこして避難させ、

「理乃、ちょっと一緒に空気を吸いに行こうよ。流石に疲れたでしょ?」
「ええ、少し…。人が多くて疲れたわ…。」

葉月は理乃を気遣いつつ外へと誘導し、

「リリィ、ちょっと私とお手洗いにいかない? 場所、忘れちゃって…。」
「え? うん、いいよ。」

セシルは嘘をついてリリィを連れ出し、

「ローズ、ちっとオレと一緒に来てくれねぇか? 後で編みぐるみの作り方教えてやっから。」
「うん、行く!」

完二はうまい言い訳を見つけられなかったが、その後の約束を取り付けてローズを逃がし、

「フレイさん、コールさん、私と一緒に外に行きましょう。」
「?」

ネリアがフレイとコールを抱え、そっと外へと逃げ出した。

「…エインフェリアお姉様、アルテミアが飽きてくれてよかったですね…。」
「ああ。切実にそれを思ったよ。メフィリア。」

末の妹が不在のこの状況をありがたいと思ったヴィーナス姉妹は、遠い目を浮かべながら御輿を担ぐ裸族共を見ていた。

「」
「ぎゃあぁぁぁっ! ピーチ姫が気絶したあぁぁぁっ!!」
「姫、大丈夫ですか? クッパ、姫を外に連れ出してあげて。」
(こんな状況を見てもブレないお前が凄い。うん。流石は大物だ。)

その横では、気絶したピーチを見てルイージが慌て、冷静にマリオがクッパに指示を出して避難させている。

「何でこんな悲惨な状況になっているゾイ! 女子供は早く逃げるゾイ!!」
「早く逃げろ! 特に子供は絶対に早く逃がせ! あんな汚いモン見せんな!! 心に傷が残る!」

デデデとブラピは必死に、避難誘導をする。各々もう必死だ。

「…。」

そんな騒ぎの中、パルテナはいそいそと何かの準備を始めた。

「パルテナ様! ボク達が沈めますので何かをいそいそと準備しないでください!」

何かヤバイ気配を察知したピットが、すかさずパルテナを押し止め、避難させた。

「ちょっ、まさかの裸族登場って、あはははははっ!」
「ユマさんは笑うな!(忘れてた、この人ギャグカオス組だ…。)」

この中で大爆笑をしているユマに、昴は思わずツッコミを入れてしまう。

『昴さん、誕生日おめでとう! ささやかだが、俺達からプレゼントだ!』
「要らんわ! 帰れ! あとてっぺん誰だ!」

すかさず裸族を追い返そうとする昴だが、御輿のてっぺんにいる裸の男の子を見て、訊ねる。

「あー、俺ん所のろくでもない考えを持ってる生物だと思うよ。」

ポリポリと頭を掻きながら気だるそうに現れた男に、昴は思わず首を傾げる。
男の腕には赤いマフラーを巻いた顔がどう見てもジャアクフロストなジャックフロストがいた。

—彼は花村祥陽君。ネールさんの所の陽介君のお兄さんらしいよ。原作ではいないから、オリジナルなのかな。腕にいるのはルサンチフロスト君。で、そこで裸族共と意気投合しているのが、インキュベーターの擬人化版である加藤・E・九兵衛。こいつ、普段から服着てないから隙あらば脱ごうとする裸族らしい。

勝手に開かれたノートに書かれた文字を見て、昴は愕然とする。あろう事か、別世界の裸族が来てしまったようだ。ちなみに、避難するために一時的にホール内に電気が点いたので、文字は読めた。

「まぁまぁ、そう怒らないで。お近づきの印に君にこれをあげるよ。」

そう言って男の子—九兵衛は昴に一升瓶を手渡した。

「これは山神の恩恵っていうお酒でね。まぁ、飲んでみてよ。」
「?」

九兵衛は勝手に一升瓶の蓋を開け、勝手にコップについで勝手に飲ませた。
芳醇な香りが口一杯に広がり、日本酒が苦手な昴でも飲めそうな気がした。

「ちなみに、これはね、古来から言い伝えられてる製法で作ったんだ。」
「古来から言い伝えられてる製法?」

…次の余計な一言を聞くまでは。

ある神様の聖誕祭 その四 ( No.259 )
日時: 2015/07/19 22:46
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: g9MFapnu)

「うん。山神様の汗を一滴一滴集めて作ったお酒なんだ。山神様はいないから、代わりに僕とこの二人の汗を使って作ったよ。」
「」

え? つまりこれは、このむさい男と変態と変態少年の汗を集めて作った衛生的に超アウトな液体…?

「…どう考えてもアウトな液体じゃねぇかあぁぁぁっ!!」
「ごめ、ちょっと気分が…。」

ジャンが叫び、昴は思わず口を覆って気分を悪そうにしている。
フラリと倒れそうな体を支えたのは、

「…。」
「え、ユマさん?」

先程まで大爆笑していたユマだった。今は微笑んでいるが、どう見ても目が据わってます。

「昴さん、ちょっとアイツ等、シメて構いません?」
「どうぞどうぞ。(うわー、ユマさんキレてらー。)」

ここで補足。ユマさんは普段はギャグカオスな展開や腐った展開が大好物のギャグカオス組なのだが…食べ物を粗末にするような輩には、容赦ないのだ。

「さて、鳴上悠。それとイフリート。それからそこの。まずそこに並んでくれへん? 美味しく焼いたるから。」
(あ、ユマさんが関西弁になった。)

昴の女子化と同じように、彼女にもキレた合図のようなものがある。それが、関西弁なのだ。関西圏出身なので、地が出ると言ったところだろう。

「何で俺達が焼かれなきゃいけないんだ!」
『そうだそうだ! 焼くならそっちのウナギと鶏を焼けばいいじゃないか!』

そう言ってイフリートが指差したのは…あ、0の地平線さんの所のリヴァイアサンとグリフォン。

「…あ?」

すみません、二人の目が据わりました。あ、フラグ立った。

『オレにはわかるぞ。そっちの二人、擬人化しているが元はリヴァイアサンとグリフォンだろ? だったらウナギと鶏じゃねぇか。ついでに酒のツマミにもなるんじゃないか?』

おいお前ゲストさんを酒の肴にすんなし。

—あーあ…。終わったわね、あのラゾリート。
(? すー姉、どういう事だ?)

完全に気分を悪くした昴に寄り添っていた由梨が、ノートに書かれた記述を見て、聞き返した。

—今、あの二人のデータを見たの。そしたらね…貴方の精霊、完全に禁句ワード言ってたの。

まるで溜息をつくかのように書かれる文章。それはさらに続く。

—グリフォンさんはリヴァイアサンさん以外に鶏呼びをされたら、笑顔で目潰ししてきて、リヴァイアサンさんはウナギ呼ばわりされると…。

スバルが記述を終える前に、ブォン! と何かが回る音が盛大にした。
そちらの方に目を向けると、リヴァイアサンが無表情でどこから出したかわからないが、どう考えてもアウトなチェーンソーを持っていた。

—…無表情でチェーンソー取り出すんだって。
(おぉう、終わったな。あの馬鹿。)

由梨は心の中で、ろくな方じゃない相棒に合掌を捧げた。
とりあえず、このまま行けば完全に一触即発な状態になる。下手をすると会場が壊れるかもしれない。

ある神様の聖誕祭 その四 ( No.260 )
日時: 2015/07/23 18:01
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: q9qYGNqH)

『みんなー、ちょっと中央から退いてーっ!!』
『ドイテクダサーイ!』

そんな時、突然、スピーカー越しにこの声が聞こえ、全員、ステージの真ん中から避けた。
それを見た人影が指を鳴らし、合図を出した。すると、すぐに曲が流れ始める。

「この曲…!?」

全員、聞き覚えがあったのか、辺りを見回す。同時に、二つの人影はジャンプし、裸族共をめがけて…足を出した。

『アイヤー!』
「うわあぁぁあぁっ!!」

ドゴォッ! と激しい音を立て、裸族共は御輿ごと来た道から追い出された。

「千枝!? それにアルト!?」
『色々と聞きたい事あるだろうけど、もう裸族の脅威は去ったから席に戻って大丈夫だよー! さぁ、ライブの続き、始めるよー!』

裸族共を蹴ったのは、千枝とALTだった。二人はそのまま舞台に立ち、インカムマイクを使って歌い始めた。


“KUNG-FU MAMA/jubeat knit”


歌い終わると、裸族を追い払った事の拍手と称賛の声が千枝とALTに降り注いだ。客席はいつのまにか、気絶した人以外ほぼ全員戻ってきたようだ。一部は外の出店を見つけたらしく、ここには戻って来ていないが、結構な人数が戻ってきたようだ。

『と、言うわけで、飛び入り参加ごめんねー。』
『いや、今回ばかりは本気で助かったよ、千枝センパイ…。』
『ワタシモ助カリマシタ。イクラ歌ッテ戦エルアイドルニバージョンアップシタトハイエ、蹴リニハ自信ガアリマセンデシタカラ。』
『ちょっと待ってアルトちゃん。歌って戦えるって何。アイドルに戦い要素はいらなくない!?』

いや、お前も歌って踊れて戦えるだろと観客席からツッコミが飛びそうだったが、あえてみんなグッとこらえたようだ。

『ト言ウワケデ、飛ビ入リ参加ノ千枝サンニ大キナ拍手ヲ!』

ALTがりせの言葉を軽く流して会場にそう言うと、千枝に惜しみ無い拍手が沸き起こった。千枝はそれを受けつつ、恥ずかしそうに舞台から去った。

『デハ、次ニ、モウ一人ノゲストト歌イマス。コレデ、ワタシカラノ誕生日プレゼントハ終ワリデス。』

そう言ってALTは再び歌う。曲はDOES NOT COMPUTEだ。


“DOES NOT COMPUTE/pop'n music 20 fantasia”


途中、仮面を被った男が現れた気がしたが、昴は軽く流す事にした。

『スペシャルゲスト、ジズサンデシター。』
(やっぱあの幽霊紳士かよ!!)

軽く流したが、その人物がゲストと知り、何か納得と同時に愕然とする昴だった。
ALTは惜しみ無い拍手と共に、舞台から去っていった。

ある神様の聖誕祭 その四 ( No.261 )
日時: 2015/07/23 18:03
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: q9qYGNqH)

『何かつぎドカ!のみんなで終わりそうな雰囲気だったけど、まだ続けちゃおっか! でも、時間的にあと一人かなー。誰か、いるー?』

りせがそう言った瞬間、会場の全ての照明が消え、全ての者が暗闇に飲み込まれた。

「あれ、照明が…って、マイクの電源も切れてるし!」

停電だろうか。誰もがパニックに陥ったその時、ステージに文字が映し出された。

“意思は言の葉に変ずるを欲するが、既に数多の時は費やされた。
 故に我が祝福の唄は唯一つ。”

「えっと…“言いたい事はあるけど、時間がない。だから、一つだけ歌う”…って、ところか。」

烈は映し出された言葉を意訳し口にした。

「おー、流石は中二のプロだね。」
「凛と一緒にすんじゃねぇよ!」

風雅が感心すると、烈は風雅に反論した。そんなやり取りをしている間に、ステージ、いや、会場全体に異変が起きた。
ちなみに、烈の言う凛とは、ひなビタ♪のメンバーの一人で、古本屋の女の子。そして、中二のプロである。


“SHION(Long ver.)/pop'n music 19 TUNE STREET”


ステージに映された文字は消え、中性的な歌声による歌い出しと共に、会場全体に小さな無数の光の玉が走った。まるで吹雪のようだ。
歌う間に、光の吹雪は緩やかに降りる雪になり、またある時は雪の結晶となり回りながら雪を放出する。
歌い終えると、会場の照明は復旧した。

『なんだったの…って、マイクの電源が戻ってるー!』
「…。」

りせはパニックになるも、先程聞こえた歌声に聞き覚えのあった昴は、盛大に溜息をついた。

(あの馬鹿、なんっつーパフォーマンスしてんだし。つか、顔見せろ。)

そうぼやくも、声に出す事はしなかった。

ある神様の聖誕祭 その四 ( No.262 )
日時: 2015/07/19 22:56
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0JVd9KgH)

「…。」

舞台袖で、鏡はしょんぼりと項垂れていた。
自分の曲で、締めたいと考えていたのに、なんだか他の人が入ってきたので、それが叶わなくなって落ち込んでいたのだ。

「なーにしょげてんの、鏡。」
「わっ! か、影…。」

そんな鏡に声をかけたのは、影だった。

「あ、もしかして自分の楽曲でしめたかったとか?」
「うん…。すーさんの好きな曲で、最後にしたかったの。でも…。」
「まだあるじゃん。昴の好きな曲。」

影が優しく言うと、鏡は首をかしげ、「えっ?」と訊ねた。

「あの馬鹿がスバルに渡したもの。スバルが昴に渡したもの。この世界の始まりである…あの歌が。」
「あ…!」

そうだ。まだ、あったではないか。
この世界の始まりたる、あの歌が。昴の持つ物の元になった、あの歌が。

「いっそのこと、その歌を烈と一緒に歌ったら? あの二人がもっとも好きな君達に締めてほしいって、きっと思ってるよ。」
「うん! ありがとう、影! オレ、烈と一緒に歌う!」

そう言って鏡は烈を探しにかけていった。

「さぁ、馬鹿神、お膳立てはしたよ。後はお願いね。」
「さんきゅ、影。」

いつのまにか、影の後ろにMZDが立っていた。

「オレもどうしてもあの歌で締めたいと思ってたからさ、助かったよ。」
「この曲は、始まりの唄だからね。ボクとしても、この曲で終わらせたかったんだ。」
「珍しく意見が合ったな。」
「二度とないといいけどね。」

MZDは「ひでぇっ!」と反論するも、すぐに自分の役割を思いだし、舞台へと向かった。

ある神様の聖誕祭 その四 ( No.263 )
日時: 2015/07/23 18:06
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: q9qYGNqH)

りせは、ちらりと時計を見る。時刻は既に夜の七時半。

『もう時間もなくなってきたし、これで終わりか』
『ちょっと待ったー!』

昴に締めてもらおうと考えたりせは完全に閉幕する気満々だったが、その言葉が聞こえて、言葉を中断させた。
不意に、舞台中央にMZDが出てくる。彼が指をならすと、ボンッ、という音と共に、烈と鏡が現れた。二人共、サニパ時の服だ。

『さーて! みんな盛り上がってるか! ここからはEXTRA STAGEだぜ!』
『え、ちょっと馬鹿神、そろそろ時間が…!』
『なぁ、お前ら。なーんか忘れてね?』

そう言って、MZDは、烈は、鏡は、昴を見る。

『昴、お前も心の中では、この曲で締めてほしかったんじゃねぇのか?』
「…。」

MZDの言いたい事がわかって、昴は首を縦に振る。

「この世界の始まりである曲。それを最後に聞きたかったって言う思いはあった。」
『うっし、決まりだ! 烈、鏡、気合い入れて歌え!』
『おう!』
『うん!』

烈と鏡に合図をすると、いつの間にかいたチュナイに合図を出した。彼の前には、シンセサイザーがあった。
そして、特徴的なピアノの音を奏でてから…すぐに、シンセサイザーの音色を切り替えた。

(そう、どっかで思ってた。この曲で…この、創世ノートで終わるといいなって。)


“創世ノート(Long ver.)/私立BEMANI学園”


MZDがDJブースで奏でる音色。そこから生みだした可視化させた音色の星達に、観客達は息をのみ、昴は思い出していた。
始まりの歌が奏でられた、あの日の事を。スバルと一緒に生み出した、この世界、その始まりの日を。
歌い続ける中に入った、長い間奏。その間に星はひとつとなり、大地が、空が出来る。
丸い塊…地球のような形となったそれに、雲が集まる。まさにそれは、世界を創造しているかのようで、美しく、言葉がでなかった。

「…。」

歌いきった。烈も鏡も、その気持ちでいっぱいだった。MZDもやり遂げた顔をしつつ、星を消す。
しばらく、誰も何も言わない。静寂だけが、会場を包んだ。

「…。」

やがて、一つの席から、拍手が響いた。…昴だ。
その拍手は、周りの人達に広がり、そして…気がつくと、全員が立ち上がり、歌いきった二人に称賛の拍手を送っていた。

「す、スタンディングオベーション…!?」
「あわわ、どうしよう、烈! スタンディングオベーションなんて初めて!」
「俺だって初めてだわ! やべぇ、感動で涙が…!」
「泣くんじゃねぇって烈。俺が今一番泣きたいんだから。」

いつの間にか、昴は舞台上に移動していた。そして、烈からマイクを引ったくると、会場にいる人達に向き直った。

『えー…。皆さん、その…。ありがとうございました!』

昴なりに精一杯絞り出した言葉、その感謝の言葉に、会場中は大いに盛り上がった。

ある神様の聖誕祭 その四 ( No.264 )
日時: 2015/07/19 23:05
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: g9MFapnu)

『んじゃ、このお前の誕生日パーティーもこれでお開きだな。みんな、今日は来てくれてありがとうな!』

そう言って、MZDはある曲をかけた。アフターパーティーこと、Have a good dream.だ。


“Have a good dream./pop'n music 16 PARTY♪”


まさに終幕にふさわしい曲に、全員納得しながら、帰り支度を始めた。

「…いざ祝われると嬉しいけど、何か…終わっちまうと寂しいな。」

帰り支度をする会場を見て、昴はポツリと呟いた。

「だな。じゃあ、二次会行くか?」
「二次会?」

烈の言葉に昴は首を傾げ、訊ね返す。

「外にはまだまだアンタの誕生日を祝いたい人がいるってこと。」
「いこうよ、すーさん! みんな待ってるよ!」

鏡は昴の手を取り、歩き出した。

「まだまだ、お楽しみはこれからだよっ!」
「…ああ。」

昴は鏡と共に、荷物を持って外へと向かう。その後ろを、烈がついていった。

ある神様の聖誕祭 その四 後書き ( No.265 )
日時: 2015/07/19 23:08
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0JVd9KgH)

後書き de 雑談



—ようやく終わりました昴の聖誕祭!

ジャン
「…もう七月も後半なんだが。」


「まぁ、いつもの事だがな。」


—うぐぐ…。言い返せない…。

ジャン&昴
「事実しか言ってないんだから仕方ないだろ?」


—返す言葉もありません。


「まぁいい。話す事もないし、ここで締めるか?」


—だね。じゃあ、またねー!







感想ok