二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 幕前劇:創世島にて ( No.3 )
- 日時: 2015/05/18 15:37
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FYh/B0LU)
これは、とある日の事。
新たな人々がこの地に住む事を決めてから、数日後の事。
「今度の休みさ、創世島に行って泊まってこねぇ?」
彼らと仲良くなった一同は、そう計画し、すぐに実行に移したものの…。
「ぎゃあぁぁぁぁっ!」
「裸族が、裸族が出たあぁぁぁぁぁっ!!」
「女性と子供はすぐ逃げろ! 凪、鏡を連れて遠くに行ってろ!」
「ティズ、アニエスを早くどっかに連れてって! 師匠、ガイスト、ミネットとレヴ連れて逃げてーっ!」
「ニコライのおっさん、ユウを連れて避難しろ! ユウはユウでも、あっちの服を脱ぐ変態じゃねぇ方のな!」
「完二、お前はリリィちゃんとローズを連れてどっかで遊んでろ。里中、直斗、殺るぞ。」
「…チッ。あのクソリートとクソ上の辞書に懲りるって言葉はねぇのかよ。チッ。葉月、理乃連れてどっかで遊んでてくれ。ああ、あの馬鹿懲らしめたらすぐ行くから。」
懲りもせずまぁあいつらが暴れたので、避難役に頼んで避難させて貰ってから、カオスクラッシャーが総出で沈めに行き…あれ?
「…? 烈は?」
「あれ? そういやいねぇな。」
ここに、何故か烈だけがいないのだ。いつもならカオスクラッシャー枠のリーダーらしく、このような事態になったらすっ飛んでくるのに…。
心配になった陽介とジャンの同性ツッコミ二人はふと冷静になり、烈の姿を探した。だが、見つからないようだ。
それが分かると、今度は現在盛大にボコられている裸族共を見る。
「まぁ、ここはこんだけいれば大丈夫か。」
「だな。俺達は烈を探しに行こうぜ。」
この場は彼らに任せ、ジャンと陽介は烈を探しに行った。
■
その頃、烈は海岸線におり、後ろの喧騒をものともせず、ただ海を眺めていた。
その手には、美しい白菊の花束が握られていた。
「…。」
烈は黙って、その花を海へと放り投げた。
花束はゆらゆらと、海の上で漂っていた。
「なーにたそがれてんだよ、ガラじゃねぇな。」
「! じ、ジャンさん!?」
そんな烈を見かねたのか、彼を探しに来たジャンが話しかけた。隣には陽介はいない。どうやら別行動で探していたようだ。
「ガラじゃなくたっていいだろ。そう言う気分だったんだよ。」
「ふーん…。まぁ、いいや。それよりも烈、また裸族が暴れたから一緒にとっちめてくれねぇか?」
「またかよ! って、この喧騒そうだったのかよ…。はぁ、ったく…。」
烈はジャンの言葉で自分のやるべき事を見出し、駆け出していった。
「…。」
ジャンは烈がいなくなった後、海の上に浮かぶ白菊の花を見た。烈が先程、投げたものだ。
「…アイツ、一年前の事件を思い返してんのかな…。」
「? 一年前になんかあったのか?」
どうやらようやく合流できた陽介の呟きに不思議そうにジャンが聞くと、陽介は表情を暗くさせた。
「…今、話したくねぇんだ。ごめん。…その内、話すよ。」
そう言って、陽介は未だ鳴り響く喧騒の元へ駆けていった。
彼がいなくなったのを確認すると、ジャンはポケットから創世手帳を取り出した。
「…。おい、プレア。」
—なんか新しい呼び名キタ!? プレアって、プレアデスからきたよね!? まぁ、いいけど。…一年前の夏の事件の事でしょ。
(細けぇ事は気にすんな。あと、話が早くて助かる。で、何があったんだ?)
—あー、話してあげてもいいけど、あっち止めてきてくれない? 夜、またここで昴と一緒に振り返りましょ。あの子には私から話は通しておくわ。
(りょーかい。)
会話を終えると、ジャンは手帳を閉じ、駆け出して行った。
■
その夜、ジャンは昴と共に、先程来た海岸へとやって来た。
「そうか、もうすぐあの事件から一年になるのか…。」
地平線を望みながら、昴はポツリと呟く。
「…陽介が話したくない程の出来事なら無理に聞くつもりはねぇけど…。」
「いや、話すよ。…けど、船の一件は他の奴等に話して良いけど…もう一つする話は、内密にしてほしい。」
「もう一つ?」
昴は創世ノートを取りだし、開いた。
「全ての始まりは、この世界が生まれる前。…繰り返しを除けば、十二年も前…。ある誘拐事件と、火災事故が起こった事から始まるんだ。火災事故を起こしたそいつは今も、その罪で苦しんでいて…その水面下で、誘拐犯は今も、非道な実験を繰り返している。…幼い子供を、実験台にしてな。」
「ひでぇな…。」
彼女の語る衝撃的な話に、ジャンは顔を俯けた。
「で、何でそれを話しちゃならねぇんだ?」
「…火災事件を起こした方は今でも苦しんでるって言ったろ? …そいつは、多分…この過去を話されたくないと思う。それに、そいつは俺達がそいつの過去を知ってる事は、知らない。…ここから先は、振り返りながらにしよう。ジャン、これから先、何を知っても…アイツには、普段通り接してほしい。…火災事故を起こした奴に、な。」
悲しそうに昴が言うと、ジャンは深く頷いた。
「ああ。何を知っても、誰だかわからねぇけど、そいつとは普段通り過ごすさ。」
「ありがとう。…俺。」
—はいはーい。じゃあ、同期を開始するわね。
昴とジャンは、ノートに描かれていく物語を見守った。
- 懺悔の菊 ( No.4 )
- 日時: 2015/05/18 15:38
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: oq60GVTK)
小さな頃、俺は、紅い目の鴉を見た。
その目が綺麗で、思わず手を伸ばそうとしたら、逃げられた。
その紅い目が、まるで煌めく焔のようで綺麗で、ずっと心の奥底に残っていた。
その目に魅入られていたって言ってもいいかも知れない。
次にあの鴉に出会ったのは、小学校に入る前。
俺が…ある場所に、“誘拐”された時の事。
突然母さん達と離れて、怖くて、泣いていたのを覚えてる。
そんな時に、あの鴉が来てくれたんだ。
けど、あの紅い目が悲しそうに揺らいでいて、不安になった。
そしたら鴉は、悲しそうな声で、俺に言ったんだ。『すまない。』って。
…その次の瞬間。見たものは…。
紅い、あの紅い目のように紅い…焔だった。
■
紅い、焔に包まれた世界。
燃え盛る焔に包まれたこの世界に、俺は一人でここにいた。
泣き叫ぶ声が聞こえる。子供の声だろうか。
熱い、熱いと…泣き叫ぶ、声が。
どんなに耳を塞いでも聞こえるその声は、次第に俺に近づいてくる。
熱い、苦しいと叫ぶ声。
俺は耳を塞いで、ただただ、謝った。
ひたすらに、ただひたすらに、「ごめん。」と。
ふと、顔をあげると、そこには…。
…ただ呆然と立ち尽くす、無数の骸骨達がいた…。
- 懺悔の菊 ( No.5 )
- 日時: 2015/05/18 15:39
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: oq60GVTK)
「うわぁっ!!」
『ぐはっ!』
—ゴンッ! ゴスッ!
俺は勢いよく体を起こす。
また、この夢かよ…。
「はぁ、はぁ…。」
息を整えて、出てきていた嫌な汗を拭う。
…頭が痛い。そういえば、何かにぶつかったような気がする。
辺りを見回すと…あ、いた。
『』
「あ、黒。ごめん。」
黒が床に倒れて気絶していた。きっとこいつに盛大なヘッドロックをかましたんだな。
『…心配して様子を見に来たのに、この仕打ちはなんだ? 烈…。』
が、すぐに気絶から回復して、ぼそりと呟くように言う黒。あ、やばい、これ怒ってる。
「わ、悪かったって…。今度、何か作るから許せ。」
『スルメイカで手を打とう。高い奴な。』
「却下。お前、それを親父と一緒に食うつもりだろ。店の酒を飲みながら。」
『酷いな貴様!』
ギャンギャン言う黒を無視して、俺は学校に行く支度を始めた。
…つか、また大人の話し合い起こすんじゃねぇよ近所迷惑だこの馬鹿鴉。
本当に最近紅とこいつを交換したいって考えてるんだけど。
『…最近、見るようだな。あの日の夢を。』
急に、黒は騒ぐのを止め、真剣な面持ちで話す。
「…昔の事を思い出す切欠が沢山あったからな。それで、見るようになったんだろ。」
ワンダークロック事件の時、氷海の時、それから、理乃先輩に打ち明けたあの時か。まぁ、最後は俺からだから仕方ないけど。
『…済まない。』
「何で謝るんだよ。…あん時はああしないと俺が死んでた。だからお前は俺に力を与えたんだろ?」
『そう、だが…結果的にはお前に深い傷を残してしまった。…それだけは、悔やんでも悔やみきれぬよ…。』
「…。」
黒は、俺に力を与えた事、気に病んでいるんだな…。
でも、この力があったからこそ、みんなの助けになれるんだ。だから、俺は後悔してないさ。
お前、ワンダークロック事件の時に言ったじゃないか。
今の俺達があるのは、過去にそう選択してきたからだって。お前のその選択があったから、今の俺があるんだ。だから、お前が気に病む事はないさ。
『…長話させたな。そろそろ飯食って出ないと間に合わんぞ?』
「だな。じゃ、行ってくる。」
俺は鞄を持って、黒にそう言ってから部屋を出た。
『…烈。』
「ん?」
『…嫌な、予感がする。あの日のように、お前の運命が大きく変わるような、そんな予感がする。…気を付けろ。』
「覚えとく。じゃ、またな。」
そう言いながら、俺は黒に手を振って出ていった。
…予感、か。あいつの予感、当たるんだよな。
気を付けておこう。氷海の件もあったし…。
- 懺悔の菊 ( No.6 )
- 日時: 2015/05/18 15:35
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: FYh/B0LU)
「おはよーさん。」
「あら、おはよう、烈。」
「おはようございます。烈君。」
いつものように学校に行った俺は、先に来ていた氷海と直斗に挨拶してから、自席についた。
「…ふぅ。」
「朝から疲れているようね…。大丈夫?」
「ん、あぁ、平気。ここ最近、何か寝付けなくてさ。」
悪夢の事を話そうって思ったけど、こいつらは確実に心配するし、やめた。
…それに、話して、何か知られたら、嫌だから。
「…そうだわ、烈。今日、一緒に帰らない? リリィが好きそうなお菓子を見つけたの。」
「あー…。」
氷海、元気付けようとしてくれてるのかな?
…けど、ごめん。あの悪夢の後は、行かなきゃいけないんだ。あの場所に。
「悪ぃ、帰りに寄りたい場所があるんだ。」
「そう? 分かったわ…。」
「明後日、一緒に帰れたら帰るから、勘弁な。」
あからさまに落ち込んだ氷海だけど、俺がこう言うと花が咲いた風雅みたいに綺麗な笑顔を浮かべて嬉しそうに頷いた。
…好きって、本当にすげぇよな。氷海の気持ちを知ってから氷海を見てると、つくづくそう感じる。あの鉄面皮みたいで近寄りがたかった氷海が、こんなにもコロコロと表情を変えるんだから。
そう思ったら、何か、氷海の頭に手が伸びてた。
「烈?」
「…何か、氷海って、鏡みたいだな。撫でたくなる。」
「…フフッ。悪い気はしないわ。」
やっぱり氷海って、鏡みたいだ。何か、撫でていると落ち着く。
「…僕、お邪魔ですねー。久慈川さんのクラスに行って」
「いえお願いここにいて直斗! 流石に烈と面と向かって二人きりはちょっとまだ恥ずかしいわ!」
…直斗が離れようとしたら、氷海がすかさず止めた。
…でも俺も正直、氷海と二人は何か恥ずかしい。今なら分かる気がするわ、陽介先輩の気持ち。確かに恋人である千枝先輩と二人って何か恥ずかしいな。いや、まだ俺達恋人じゃないけど。
「…それよりも烈、どこに行くの?」
「…ごめんな、それは話したくないんだ。」
「…分かったわ。」
「話したくないのならば、無理して話す事もありませんからね。」
俺の表情で理解してくれたのか、氷海も直斗も、これ以上聞いてこなかった。
「…いつか、お前らにも話すよ。」
「約束よ。」
「絶対ですよ。」
…二人の表情に、俺は頷くだけだった。
話せるかどうかはわからない。
だけど、話はしなきゃいけない。それは、分かってるんだ。
けど…俺は…これを知られるのが…怖いんだ。
- 懺悔の菊 ( No.7 )
- 日時: 2015/05/18 15:40
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: oq60GVTK)
放課後、俺は真っ先に、はなさんが営む花屋に向かった。
「こんちはー。」
「あら、烈君。いらっしゃい。」
「にゃー。」
「ニャー!」
すぐにはなさんとししゃもが出迎える。おっ、今日は黒の恋猫の…トビー、だっけ。も一緒か。
「おいーっす、ししゃも、トビー。元気してっか?」
「にゃー!」
「ニャー!」
多分、元気だぞーって言ってるんだな。ははっ、猫っていいな。何か。
「烈君、今日はどうしたの?」
「あー…。いつもの、白い菊の花、下さい。」
「また、お墓参り? ここのところ、何だか頻度が高いわね?」
…そう、だっけか?
何か実感わかないけど…確かに、最近ずっと見ちまうからな…。
「…。」
「まぁ、いいわ。死者を悼む気持ちは大切だからね。はい、これ。」
「ありがと。」
俺は菊の花を受け取って、代金を渡すと、すぐに店を出ていった。
そして、町外れまで行き、鬱蒼と繁る森の手前までやって来た。
「…。」
ここは相変わらず、昼でも薄暗いな。
…夜になる前に帰らなきゃな。母さん、心配しちまう。
鬱蒼と生い茂る道を抜け、やがて開けた場所に出る。
「…明るいな。ここ。」
目の前には人が神様に祈る場所、教会。…俺の、目的地。
森の中心だと言うのに、この場所は明るい。その理由は…。
「…やっぱり、草木は生い茂らないようになっちまったんだな…。根っこから、燃えちまったんだ…。」
そう、この辺一体の草木は、全て焼き尽くされてるんだ。
そして、目の前の教会も焼け落ちてて、辛うじて建物を残しているだけ。
「…。」
俺は、教会の前にそっと菊の花を置く。
そして手を合わせて、目を瞑り…黙祷を捧げる。
「…ごめん…。ごめんな…!」
絶えず、涙が出てきているのが分かった。
だけど、俺は拭う事はしなかった。
「…!」
ふと、そんな時、木の枝を踏むような音が聞こえ、俺は慌てて涙を拭い、背後を見た。
「鏡…! な、何だ…お前だったか…。」
そこにいたのは、鏡だった。俺は思わず安堵の息を吐いた。
「ごめんね、烈…。烈がここに入るのを見かけて、着いてきたの…。」
「…そっか。」
「…また、見ちゃうの? あの日の夢…。」
鏡の問いかけに、俺は頷く。
…俺の分身たる存在だから、隠す事は出来ない。そう、思った。
「…烈、その…上手く、言えないけど…無理、しないで? オレ、すーさんや烈が苦しむの、見たくないんだ。だから…。」
「分かってる。…辛くなる前に言うさ。」
「約束だよ?」
「ん、約束。」
鏡が小指を差し出してきたから、俺も小指を出して、絡める。指切りげんまんだ。
「…言うのか?」
「うん。」
う、歌うのかよ、あれ。まぁ、誰も聞いてないし、いいか。
「ゆーびきーりげーんまーん、嘘つーいたーら針千本のーますっ。ゆーびきった!」
俺と鏡の歌声が辺りに響き渡った。
「…へへっ♪」
「…。」
それを聞き届けた鏡が笑みを見せ、俺も釣られて笑う。
「烈、そろそろ帰らないと、真っ暗になるよ?」
「おっと、そうだな。鏡、お前も昴さんに心配かけさせる前に帰れよ?」
「はーい♪」
俺は鏡を撫でてから、来た道を戻り、家路についた。
- 懺悔の菊【Side 鏡】 ( No.8 )
- 日時: 2015/05/18 15:46
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: kXLxxwrM)
烈の後ろ姿を見送ったオレは、教会を背にし、空を見上げた。
「もう出てきて大丈夫だよ、紅。」
『うむ。今降りる。』
オレがそう声をかけると、紅と、二つの影がオレの前に来た。
紅はオレの肩にそっと着地し、影が風を纏いながら降り立つ。
「ふぃー…。危なかったな、風雅。」
「うん。今回は僕もヒヤヒヤした。鏡がいてくれて助かったよ…。」
『陽介、風雅。これに懲りたら尾行は止めておけ。…お前達の運は最悪レベルなのだからな。』
「はーい…。」
二つの影…陽兄と風雅は、紅に怒られてしょんぼりした。
お空のお散歩中に、陽兄と風雅が烈を尾行しているのに紅が気付いて、オレも後から着いてったの。
そしたら、陽兄も風雅も、運悪く木の枝を踏んじゃって…。オレが咄嗟に烈の前に出たの。陽兄と風雅を紅に任せた後でね。
「それにしても、ここ…。」
「…教会の、跡地だよ。」
風雅が教会…だった場所を見たから、オレは答える。
「…燃えてんな、完全に。誰がやったんだ? これ。」
「…知りたい? 陽兄。」
「えっ? あー、まぁ、な。」
「…。」
…陽兄は曖昧に答えるけど、風雅の視線が痛い。
これは絶対、教えてほしいって願ってる。
オレは紅を見た。紅は静かに頷いて、口を開き始めた。
『…ヒントをやろう。…風雅、お前達が五歳の頃…その時に、ここで起こった事件を調べるといい。昔の新聞記事を調べていけば、出てくるはずだ。』
「…僕が五歳というと、やり直しを抜かすと…今は十七歳になるから、十二年前か。分かった。僕らで調べるよ。」
『ああ。…仮に調べて、答えが分かっても…烈には、何も言わないでくれ。約束できるか?』
紅が二人に問いかけると、二人は頷いてくれた。
陽兄も風雅も、ちゃんと約束は守るから、大丈夫、だよね。陽兄はガッカリが出ないか心配だけど。
『…もうすぐ夜だ。二人共、今日はもう帰るといい。陽介、お前は門限があるだろう?』
「だな…。風雅、調べ物はお前に任せていいか?」
「うん。…完二に勘ぐられて、何言うか分からないしね。」
確かに、完二も口は固いけど、隠し事が苦手だからなぁ…。
「…ねぇ、二人共。」
「ん? どうした?」
「どうしたの? 鏡。」
「…もし、烈がどうしようもない酷い事をしていても…仲良く、してくれる…?」
オレの問いかけに、陽兄と風雅は顔を見合わせる。
ちょっとだけ考えた後、二人はオレを見た。
「当たり前じゃねぇか。」
「うん。過去に何があろうと、僕等が好きなのは、今の烈だからね。」
平然と、そう答える二人。…うん、これなら…これなら、二人共、烈と今まで通り接してくれる…。そう、思った。
「ありがとう、二人共…。」
「んじゃ、遅くなる前に帰ろうぜ。あ、鏡。駄目だったら神殿に泊めてくれ。」
『【スクカジャ】使って帰らんのか? 結構早いだろう?』
「出来る事なら疲れるから遠慮したいんだよ。あと、前にスピードの出しすぎで止まれなくて電柱に思い切りぶつかってタマ打ったから遠慮したい。」
「あー…僕もあるよ、それ…。」
陽兄、風雅、運、絶望的だからなぁって、前にすーさんが哀れんでた。
とにかく、そんな話をしながら、オレ達も家路についた。
…ねぇ、烈。陽兄達なら、きっと、烈の過去を受け入れた上で、接してくれると思う。
だから、だから…烈も、無理しないでほしい。
壊れる烈やすーさんを見るのは、絶対に、嫌だから…。
- 懺悔の菊 ( No.9 )
- 日時: 2015/05/18 15:47
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: oq60GVTK)
紅く、燃え盛る建物。熱い、熱いと泣き叫ぶ声。
その中心に、俺は居た。
「あ…!」
あの日を思い出させるかのような、紅い、紅い場所。
俺は思わず、後退りする。
「…?」
ふと、何か、踏んだ気がして、恐る恐る後ろを見る。
「あっ…! う、うわあぁっ!」
そこには、風雅の、鈴花の、氷海の、鏡の服を着た骸骨が転がっていた。
いや、それだけじゃない。沢山、あった。どれも、俺が見覚えのある服を着た、骸骨だ。
「ま、まさか、みんな…みんな、俺が…!?」
俺が、燃やしたのか…!?
『そうだよ、烈。全部、烈が燃やしたんだ。』
「!」
声が聞こえて、俺はそっちの方に目を向ける。
そこにいたのは、鏡だった。だけど体は透けていて、まるで幽霊のようだった。
「き、鏡…!」
『烈のせいで、みんな、死んじゃったんだ。風雅も、鈴花も、氷海も、凪も、牡丹も、雪花も、悠兄も、陽兄も、ちー姉も、雪姉も、完二も、直斗も、りせも、クマも、ジョーカーも、リリィも、フランシスも、ローズも、セシルも、りー姉も、由梨姉も、月姉も、七姉も…オレも、すーさんも!』
鏡の責め立てる声が、脳裏に響く。
俺は耳を塞いで、踞った。
「ごめん…! ごめ、鏡…!」
『謝ったって、みんな、帰ってこないよ。あの日のように、烈が燃やしたみんなは…烈が“殺した”みんなは、帰ってこない!』
そう…。俺が燃やしたみんなは…“殺した”みんなは、もう帰ってこないんだ…。
「ごめん…! ごめん、なさい…!」
『泣いて謝ったって、みんなは許さないよ。』
急に、誰かがいる気配が濃くなる。
辺りを見ると、透けているみんなが、そこにいた。
『烈、酷いわ…。こんな仕打ちをされるなんて…!』
『烈君の馬鹿! 最低!』
「あ…!」
みんなが、俺を罵る。俺は、泣いて謝るしか出来ない。
「あ…あぁ…!」
苦しい。体が熱くなる。駄目だ、これは…!
「うあぁぁぁぁっ!」
俺の周りに、紅い焔が駆け巡る。
力は留まる事を知らないかのように、俺から飛び出して、焔となる。
焔は俺の周りに居た鏡達を、なす術もなく焼き尽くす。
鏡達の断末魔が聞こえる。
「や、やめろ! 止まれっ! 止まれよっ!」
俺は耳を塞ぎながら、焔を操ろうとするけど、治まる気配がない。俺の範疇を越えて、暴走している。…あの日のように。
「お願いだ…! もう、もう、止めてくれ…! もう、誰かを燃やさないでくれ!」
俺の叫びは虚しく響き渡る。
いつの間にか、鏡達の断末魔が止んでいた。…その姿さえも、ない。
「…嫌だ…! もう…嫌だ…! ごめん、ごめん、みんな…!」
留まる事を知らない焔の中で、俺は一人泣いた。
泣いて謝ったって、許されないのは分かってる。
でも…俺には、これしか出来ないんだ…! みんなを守るどころか、“殺して”しまった俺には…!
- 懺悔の菊 ( No.10 )
- 日時: 2015/05/18 15:52
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 8NwmyZQz)
「…嫌だ…嫌だっ!」
俺は、体を勢いよく起こした。
…いつにも増して、酷い夢だったな…。
「…。」
出てきていた涙を拭い、俺はもう一度横になる。
そこで、ふと気が付く。右手がほんのりと、暖かい。
「…。」
隣を見ると、小さな女の子が隣で眠っていた。
俺と同じような髪の色をツインにした女の子が…って、えっ!?
「えっ…えぇっ!?」
だ、誰だこいつ!? 俺に妹はいないぞ!?
え、俺何した!? 思い出せねぇんだけど!?
「ん…。」
な事考えてる間に、女の子が起きた。
…あ、ようやく思い出した。
「…悪いな、起こしちまったか、リリィ。」
そうだよ、リリィだよ。擬人化したリリィ。…寝惚けてて忘れてたよ…。
「…ううん、大丈夫。」
リリィは寝惚け眼を擦りながら、俺をじっと見上げた。
「…烈君こそ、大丈夫…?」
「俺?」
「…うなされてた…。ここ数日…ずっと、そう。」
…一緒の部屋で寝てるから、聞かれちまってるか…。
「…大丈夫だよ、リリィ。心配すんなって。」
「…嘘。」
リリィは俺の頬に、ぺたん、と手を置いた。
「泣いてる。」
「えっ?」
「涙、拭いきれてない。…あ、また、出てきた。」
暖かい、リリィの手。
それに安堵したのか、俺の目からまた涙が出てきてしまった。
「…烈君、今日は怖い夢見ないように、私が、ナデナデしてあげるから…。泣いても、いいから…。我慢、しないで…? 私と戦った時みたいに…自分を、痛めつけないで…? ねっ…?」
リリィはポンポンと背中を叩く。
不思議と、何故か安堵する。リリィの髪についた石鹸の匂いが、更に安心させて、俺はリリィを抱き締めて、また大粒の涙を零した。
ありがとう、リリィ…。俺、本当に…幸せ者だよな。
だけど、俺は…本当に、こんな幸せでいいのかな…?
多くの子供達の命を奪った俺は…幸せになって、いいのかな…?
- 懺悔の菊【Side 風雅】 ( No.11 )
- 日時: 2015/05/18 15:57
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 8NwmyZQz)
夜中の二時。紅から話を聞いて、僕はフランシスが眠った隙に、インターネットを駆使して調べていた。
その事件は、すぐに見つかった。
「…これだね。」
この辺りでは昔、誘拐事件が頻発していたそうだ。小さな子供達が次々と何者かに攫われて…四人以外、帰ってこなかったそうだ。その四人は、名前は載っていないから分からないけど、一人は確実に、彼…だと思う。
そして、あの教会は、教会の形を借りた、研究所だったようだ。地下に、研究施設があったみたい。
子供達はあの教会…いや、研究所に集められ、能力開発の実験体にされていたらしい。勿論、秘密裏に。
「どこのネクロニカな訳…? 子供達使って能力開発だなんて…。リアルネクロニカなんて、笑えないよ。」
僕は思わず、ぼそりと呟く。シナリオに使えそうな話題かも知れないけど、僕はこれをシナリオに組み込むつもりは毛頭ない。
「…。」
能力開発の研究が失敗したのか、突然あの研究所は燃えた。かろうじて建物を残すくらいで、実験器具は滅茶苦茶。能力開発だと分かったのは、その四人の生き残りの中の誰かの証言みたいだ。
そして、生き残った子供達は親元に返されたけど…。
「…焼け跡から、大量の人骨…。」
そう、焼け跡から、大量の人骨が出てきたのだ。紅が烈に言うなって言ったのは、これのせいだね。
…あの研究所を全焼させたのは、恐らく、烈だ。…多分、能力がいきなり覚醒した事による暴走を引き起こしたんだと思う。
大量の人骨…恐らく、烈がその時に焼死させたのだろう。烈は…それをずっと、気に病んでいる。
彼が、僕等と一線を引く理由。それが、これだったんだ。この事件があったから、烈は僕等と必要以上の関係になろうとしない。
烈を縛り付ける、過去の呪縛…。
「…出来る事なら、解いてあげたいな…。」
そう思うけど、難しいって分かってる。これは…重過ぎる。こんな重い十字架を背負って、烈は生きてきたんだね…。
「…。」
明日、陽介先輩にもこれを話そう。
話して何か変わる訳じゃないけど…それでも、烈の過去を知っていれば、烈が苦しんでいたら、助けてあげられるかも知れない。
重すぎて、潰れてしまう前に、支えてあげられるかも知れない。
…それしか出来ないけど…それなら、出来るから…。
だから…もう、これ以上一人で苦しまないで…。お願い、烈…。
- 懺悔の菊 ( No.12 )
- 日時: 2015/05/18 16:06
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 8NwmyZQz)
翌日、俺は学校が終わるとすぐに、花を買ってあの教会跡に来た。
「…!?」
だけどそこには、先客が二人いた。俺は思わず隠れて様子を伺う。
一人は、金髪蒼眼の、夏間近なのにコートを来て、耳にヘッドフォンしてるような奴。もう一人は、鏡の目と同じような色の髪をサイドに三つ編みで編んだ女の人。
あれ? 確かあの二人…。
「ここが、美鶴さんの言っていた場所ですね…。」
「うん。…十二年前に、火災で半焼した、例の研究所だね。」
「桐条の研究員が関わったと聞きましたが…シャドウ以外も研究していたのですね。」
「私も、桐条先輩に聞いてビックリしちゃった。…能力開発をペルソナの覚醒に応用しようとしていたみたい。ペルソナも、一種の能力のようなものだし…。」
あの研究には、そんな意図もあったのか…。
能力者を増やして、何しようとしたんだろうな…。
「とにかく、この事件に詳しい人を探そう? 桐条先輩達が追っているあの人の手がかり、握れるかも。」
「この辺りは人通りが無さそうですが…運良く誰か来てくれたみたいであります。」
「!?」
もしかして、俺の事!?
辺りに人影ないし…俺、だよな。
「そこに隠れているのは分かっています。私達はただ、貴方から話を聞きたいだけです。出てきて頂けませんか?」
「…。」
俺は、木の影から体を出し、二人の前に立った。
「えっと…君、この辺の子、かな?」
「まぁ、一応。…アンタらは、何しに来たの? こんな寂れた教会に。」
「少々、独自に調査に伺いました。私達は今、とある男を追っています。その男の手がかりを掴みに来ました。」
「うーん、何も残ってないと思うけどな。火の手の中心だった研究所部分は全焼してる筈だし。」
「そっか…。それに、十二年も経ってるし、希望は薄いかな…。調べて、何か出てくるといいけど…。」
三つ編みの人は困った顔をして呟く。
…男って誰だろ。
「…例え、何も見つからなくても、調べて、手がかりを掴みましょう。」
「そうだね。しょげてる場合じゃないよね。…これ以上の犠牲者が出る前に、早く捕まえないと…。君も、ありがとね。」
「いや、俺は、何も…。その男の手がかり、見つかるといいな。」
「うん。ありがと。」
「協力、感謝であります。」
二人は俺に礼を述べると、中に入っていった。
…あの二人、何の事件を追っているんだろう。…確か、桐条っつってたし、直斗に探りを入れれば、分かるかな?
「…まぁ、いいや。」
俺は花を手向けて、いつものように黙祷を捧げて、そして…。
「…ごめんな…。」
そう、謝罪をしてからこの場を後にした。
- 懺悔の菊【Side 風雅】 ( No.13 )
- 日時: 2015/05/18 16:13
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 8NwmyZQz)
「…。」
夜中、みんなが寝静まった後、自分の部屋で、僕はふと、心配になって、向かいの酒屋を見た。
あの後、陽介先輩には全て話した。…やっぱり、驚いてた。驚いて、怒って…泣いていた。
「心配か? 烈の事。」
ふわりと、横にフランシスがやってきた。
「えっ?」
「…先程から、向かいの酒屋を見て溜息を吐いている。…まぁ、あんな事を知った後では、心配になるのも無理はない。…まさかあの烈が、あんな事を…火災を引き起こしたとはな…。」
「!? な、何でフランシスがそれを!?」
「済まない。昨日、お前が何を調べていたか気になってな。いつものように笑顔ではなかった。だから、それが気になって…履歴を勝手に覗かせて貰った。」
僕のパソコンの履歴、勝手に見たの…!?
「安心しろ。誰にも言うつもりはない。…俺の胸にしまっておくさ。」
「…そうして。紅からも秘密にするよう、頼まれてるから。」
「…ああ。」
…参ったな、フランシスまで知っちゃったか…。まぁ、フランシスは口が固いから、大丈夫だろうけど…。
「…フランシス、僕、ちょっと行ってくる。」
「ああ。…俺が見に行ってもいいが、流石に、その…無理だ。」
フランシスはお酒が苦手だからな…。香りで酔うって…弱すぎじゃないかな。
「うん、じゃあ、行ってくる。」
僕は窓から抜け出し、向かいの酒屋まで飛ぶ。
烈の部屋は、僕の丁度真向かいだ。
「…。」
烈は、寝ていた。体を丸め込み、震えながら。…きっと、あの事件の夢を見てるんだろうな…。
「…風雅君?」
か細い声が聞こえた後、窓が開けられた。ツインテールの女の子…リリィが開けたみたいだ。
「あ、リリィ。」
「どうしたの…?」
「ちょっと、烈が心配で来たんだ。入っていい?」
「うん…。」
リリィは少しどいて、僕を入れてくれた。
「…烈は?」
「嫌な夢、見てるみたい…。うなされてる…。」
「…。」
体を丸めて震える烈。時々、うなされている声も聞こえる。大半は、謝罪の言葉。
…やっぱり、あの夢を見ているんだろうな…。
「…烈君、ぎゅっとすれば、落ち着く。多分、大きければ大きい程、落ち着く。」
「リリィ、それ、僕に烈を抱き締めろって事?」
「…駄目…?」
男同士はちょっと勘弁してほしいかな…。それにこれ、腐った女子に知られたら、何か色々やばそうだし。陽介先輩の二の舞になるし。
「…。」
「う、うぅ…! ごめん…! ごめん、なさい…!」
…でも、烈が苦しんでる。支えるって、昨日決めたばかりだ。
「烈…。」
僕は、烈の布団に潜り込んで、その震える体を包み込んであげた。
不思議と、烈の体から震えが治まる。
「…今日は、僕が側にいるよ…。だから、安心して、お休み、烈…。」
僕は烈の頭を撫でながら、いつしか深い眠りについていた。
- 懺悔の菊 ( No.14 )
- 日時: 2015/05/18 16:18
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 8NwmyZQz)
翌朝、俺は風雅と二人並んで学校に向かう。
「何、何で俺の布団に夜這いしに来た訳? 何で男二人で寝なきゃいけなかった訳?」
「くすん…。痛いよ、烈…。」
「何で男二人で一つの布団で寝るんだよ。マジで何でなんだよ。気付いたらマジでビビったかんな。」
「だからって殴らなくてもいいじゃないか…。」
風雅は大きなたんこぶをすりすりと撫でる。
ん? このたんこぶ? 俺が殴ったからだけど何か?
「何で夜這いしに来てんだよ。」
「夜這いは誤解だってば! …烈が、心配になったんだよ。ここの所、よく眠れてないみたいだったから。」
「…。悪かったな、心配かけさせて。」
風雅にまで心配させちまったか…。
でも…俺…話せないよ。話したら…風雅は、どう思うかわからない。余計に心配させるかも知れない。
「悪いと思うなら、今日は僕とDDRして。」
「ランカーレベルと勝負して勝ち目ある訳ないだろ。ポップン勝負だ。」
「そっちこそランカーレベルと勝負して勝てる訳ないじゃないか。」
互いに、それぞれの機種でランカーレベルの腕前を持つ俺達。
「…ぷっ、ははっ。」
「あははっ。」
俺達は、どちらからともなく吹き出した。
…人と話すのが苦手なこいつなりの気遣いに、ちょっとだけ、ありがたく感じた。
「んじゃ、互いに不利じゃないように、ギタドラでセッションしようぜ。」
「だね。あ、鈴花や理乃先輩も誘」
「ランカーレベル呼ぶな。あと、化け者呼ぶな。」
鈴花はギタドラ(主にギターの方で)ランカーレベルなんだよ。忘れてんのかこの野郎。あと、理乃先輩はトイサイダー村園赤譜面をさらっとクリアできる程の化け物なんだよ何だよあのサイレントを今入れられる早さを注ぎ込んで銅星って化け者だろあの人。
絶対他のでもみんながorz状態になる位のレベルだよ自信あるよ俺。
「…えー…。じゃあ、陽介先輩誘う…。」
「あ、陽介先輩ならいいや。」
あの人、ギターは上手いけど、他平均並みだし。
何より、一緒につるんでて楽しいしな。
「なぁ、風雅。」
「ん?」
「ありがと、な。心配してくれて、さ…。」
「…当たり前じゃないか。僕達、“友達”でしょ。」
綺麗な笑顔で笑うこいつに、俺も思わず笑顔になる。
…大丈夫って、信じたい。何を知っても、風雅達なら何も言わないって思いたい。
「だな。さっ、学校行こうぜ。」
「うん。」
だけど…やっぱり、話せない。
でも、時が来たら、話さないとな…。俺の…昔の事を…。
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ここまで見終えた後、ジャンは俯いた。
火災事故を起こした犯人、その人物を理解したが、その背に背負う大きな十字架に、何をどう言って良いかわからなくなったのだ。
「こんな…こんなデッケェ十字架背負って…今まで、生きてたのか…。」
「…。」
「…確かにこれは、話せねぇな。風雅や陽介は知っちまたみてぇだけど…。」
「ちなみに俺と直斗も、この後で知った。…初めは、信じられなかった。こいつにこんな過去があるなんて、全く…。とにかく、そんな烈を見て、クマがアイツを元気付ける為にプレゼントをしたんだよ。」
「それは、次ってか。」
ジャンが言うと、昴は頷く。そして、次なるページを開いた…。
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新スレッド一発目、本日はここまで。感想okです。