二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- あの人の為に ( No.303 )
- 日時: 2015/07/27 19:33
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0JVd9KgH)
「…さよなら。」
嫌だ。
お別れなんて、絶対に嫌だ。
オレはまだ、みんなと…すーさんと一緒にいたいよ!
ずーっとずーっと、何年、何十年と経っても、ずーっと!
目を覚ますと、そこにみんなはいなかった。
いつもオレを起こしに来てくれるすーさんも、いない。
…でも、悲しんでいる場合じゃないよね。泣いてる場合じゃない。
オレには、やらなきゃいけない事があるんだから。
- あの人の為に ( No.304 )
- 日時: 2015/07/27 19:40
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0JVd9KgH)
「…う、うーん…。」
体が痛い。あの爆弾のせい、なのかな…?
…考えてもしょうがないよね。取り合えず…。
「ここ、どこ…?」
見た事のない景色の、ベッドの上。
そこに、オレは寝かされてたみたい。
あれ? 傷の手当て、されてるみたい。誰がしてくれたんだろ…。
『気がついたか、鏡。』
「紅!」
ふと、声がした横を見ると、そこには紅がいた。
紅は痛めたのか、翼に包帯がしてあって辛そうだった。
「だ、大丈夫!?」
『心配するな。神が創造神の力を用い、ここに飛ばしてくれた際に、回復術も同時にかけてくれたようだから、じきに治るだろう。』
確かに、すーさんがあの後、何か力を放ってたのはわかったけど…MZDの力、だったんだ…。
「紅、よくMZDの力だってわかったね。」
『…微かだが、いつもの呪文が聞こえてな。…神は、創造神の奇跡に賭けたのだろうな。自分が倒れる危険を冒しても、我等を逃がしたかったのだろう。』
「あの場所に誰かいて、オレ達に危害を加えさせないようにしてくれた…?」
『恐らくな。』
すーさんはあの時、誰かと話してた。
その誰かがオレ達を狙わないとも限らない。だからすーさんは体力の消耗が激しいけど、奇跡を起こせる強い力であるMZDの力を使って、オレ達を逃がした。傷の回復までおまけにつけて。
『無我夢中だったのだろう。だから、完全に快復とまではいかなかった。あるいは、力を放っている最中に気絶したのだろうな。』
どっちもありそう。最近すー姉さん、すーさんにノートを使った時、倒れる寸前になったら力の供給をやめて気絶するよう制約をつけたって言ってたし…。
『そうだ、鏡。この手帳の事だが…。』
紅は自分の前に置いてあった創世手帳を捲る。
『…彼女と連絡をとれるかと思ったのだが、どうやらここは彼女が干渉できる場所の範囲外のようで、連絡は難しそうだ。』
「そっか…。」
すー姉さんと連絡がとれたら楽だったんだろうけど、無理なら仕方ないよね…。
「…とにかく、みんなを探そう。紅、肩に乗れる?」
『長時間飛ぶ事は無理だが、これくらいなら…。』
紅は翼を羽ばたかせ、オレの肩に乗った。
『つっ…!』
「紅、大丈夫…? 凄く痛そうな顔してる…。」
『これくらい平気だ。鏡、お前こそ歩けるか?』
「…。」
オレはベッドから降りて、少し歩いてみる。
うん、ちょっと痛いけど、歩けない訳じゃないみたい。
「大丈夫そう、かな。」
『ならば行こうか。』
「うん。」
オレと紅は取り合えず、扉まで行く事にした。
- あの人の為に ( No.305 )
- 日時: 2015/07/27 19:43
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0JVd9KgH)
「殺すのが一番だろう。侵入者は殺すのが常識ではないのか?」
「!?」
扉の辺りまで何とか歩いて来てみたら、その言葉が聞こえて、オレは思わず立ち止まってしまう。
「まだ子供ではないか! ワガハイは反対だ! 普通に外に返してやるだけでいいではないか!」
「だが、ここの事を知ってしまった以上…。」
「気を失ったままここに来たのだぞ!? 知ってしまった訳ないだろう!」
誰かが、喧嘩してるみたいだ。
「紅…!」
『鏡、ここは動かずに様子を見よう。』
紅の指示に、オレは頷く。
でも多分、この声…知ってる気がする。
「とにかく、ワガハイは反対だ! 侵入者は子供であれ殺すなんぞ、ワガハイが許さん!」
「貴様が許す許さないは関係な…む?」
小さな音が聞こえた後、しばらく話し声が聞こえなくなった。
どうしたんだろ…。
「フンッ、よかったな。あのガキはしばらくは無事でいられそうだぞ。」
「…。」
何かに反対していた方の人が、微かに「よかった…。」って言ったのが聞こえた。
きっと、心からの言葉だったんだろうな…。
「…紅。」
『どうやら、我等は誰かに助けられたみたいだな。』
「うん…。」
やっぱり、殺されそうになった侵入者って、オレ達の事なんだろうな。
誰が助けてくれたんだろう…。
『…鏡、どうする?』
「助けてくれた人にはお礼をしたいけど…ここは逃げた方がいいと思う。さっきそこで話していた声の人達…オレの記憶が正しければ、ここは…。」
『…そうだな。我も思い出した。確かにここは逃げた方が良さそうだな。』
オレ達は脱出する為に、辺りを見回す。
近くに、バルコニーみたいなところに出る窓がある。あれなら、紅に乗って逃げられそうだけど…。
「紅、いけそう…?」
『すまぬ、流石にお前を乗せて飛ぶ事は難しそうだ…。』
肩に乗った時も辛そうだったんだもん。オレを乗せて羽ばたくなんて無理だよね…。
- あの人の為に ( No.306 )
- 日時: 2015/07/27 20:07
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: g9MFapnu)
「逃げる算段でも立てているのか?」
「!?」
突然、後ろの扉が開いて、大きな角の生えた亀さんがやってきた。
オレは思うように動けない紅を庇いつつ、臨戦態勢をとる。
「無理に動くな。傷に障るぞ。」
「…オレ達をどうするつもり?」
質問をしたけど、亀さんは何も言わずにオレ達に近づく。
そして、
「ちょっ! 何す、うわぁっ!」
『鏡!?』
オレを抱き上げたんだ。
し、しかも…お、お姫様だっこ…。
…すーさんにしてあげたら、ひっぱたかれた、あの…。あ、でも、今ならちょっとあの時のすーさんの気持ち、わかるかも。
ちょっと、恥ずかしいっていうか、その…うん。
「傷が治るまで寝てろ。まったく…。」
「え? わっ…。」
亀さんはオレをベッドに寝かせ、布団をかける。
更には紅を横に寝かせ、とれかかっていた翼の包帯を巻き直してあげていた。
「…あ、あの…。」
「ん?」
「…その…。侵入者って、オレ達の事だったんだよね?」
「ああ。…聞いてたのか。」
亀さんはあっさりと答える。
殺そうとしてもおかしくないのに、この亀さんは反対してくれた。うん、信頼できそうないい亀さんだと思う。
「…なんで、オレを殺そうとした事に反対したの?」
「単純だ。ただ、ワガハイはお前みたいな子供を殺すなど、できんからだ。…ワガハイにもクッパJr.と言う息子がいるからな。やんちゃでわんぱくだが、可愛い息子だ。」
『やんちゃでわんぱくか。まるでお前みたいな子供だな。』
紅がオレを見てクックッと笑ってる。
「酷いよ紅!」
『フフフ、すまんすまん。だが、我からすればお前は十分わんぱくな子供なのでな。神もたまにだが、お前の相手は手がかかるとこぼしていたぞ。』
「うぅぅ…! すーさんまで、酷いっ! 今度会えたら一週間無視してやるーっ!」
『無理だな。』
即行でそう返された。
うぅぅ…! 重ね重ね酷いよ、紅!
「すーさん…?」
亀さんが首を傾げて、聞いてくる。
『我等の世界の神であり、我等の親代わりの女性だ。名は、昴と言うのだが…。』
本当はちょっと違うけど、当たってはいるからね。
「…そうか、あの娘と同じ世界の住人だったか。親代わりを勤めているならば、助けるよう命じたのも頷けるな。」
「!?」
すーさんが、ここにいる!?
しかも、オレ達を助けてくれたのは、すーさんだったの!?
- あの人の為に ( No.307 )
- 日時: 2015/07/27 20:06
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /9RVPCwZ)
「亀さん!」
「うおっ! な、何だ?」
「お願い! すーさんに…あの人に会わせて!」
あの人がここにいる。
オレはいてもたってもいられなくなって、亀さんに凄んでいた。
聞かなきゃ。あのさよならの意味。聞かなかったら、後悔する!
それに、言わなきゃ! 何があっても、さよならは嫌だって!
「…お前が気がついたら、連れてくるよう言われている。だが…。」
「どうしたの…?」
「…確か、そこの鴉が鏡と呼んでいたな。名前は鏡で間違いないか?」
「う、うん。オレは鏡。こっちが、紅。」
そう言えば、自己紹介を忘れてた。
「ワガハイはクッパ。カメ一族の大王だ。…鏡、あの娘…昴は、どんな人だ?」
すーさんが、どんな人か?
何でそんな事を聞くんだろう、あの亀さ…あ、いや、クッパおじちゃん。
「自分を犠牲にしてでも、他人を守る、優しい人だよ。」
『我も同じだ。』
怒ると怖いけど、凄く優しい人だよ?
たまに無理するから、凄く心配だけど。
「…やはり、な。」
やはり、って…何を言ってるの?
「あの娘が、あんな計画を立てるはずがないと思ったが、やはり何か事情がありそうだな。」
「ねぇ、クッパおじちゃん…。どういう事なの…?」
「おじっ…!?」
クッパおじちゃん、何かを怒った顔で言いかけたけど、何だか急に笑顔になった。
「…悪い気はせんな。鏡。昴は今、この世界を亜空間爆弾という代物を使い、亜空間という所に引きずり込み、支配しようと目論んでいる。恐らく、この世界が終わったら、お前の世界も同じように支配するだろうな。」
「えっ…!?」
『何だと!?』
嘘だ…! すーさんがそんな事をするはずない!
すーさんがあの爆弾を落としたなんて、そんなの嘘だ!
「そんなのっ…そんなのデタラメだ!」
『あの神がそんな悪事の首謀者など、信じる事はできぬ!』
「ワガハイもそう思ったから、先程考えていたのだ。お前達を見ていると、あの娘の態度はおかしいと思ったのでな。何らかの事情があるのではないかと、考えたのだ。」
…すーさんが、悪事に荷担するはずはないんだ。
ましてや、世界を自分のものにしようとするなんて、おかしい。それに、そんな事をしたら、すー姉さんが黙っていないのも、知っているはずなのに。
「…紅、すーさんに会おう。」
『そうだな。これは、神に直接会って真意を確かめた方がよいだろう。』
嫌な、予感はする。
あの爆弾を落とした首謀者と、すーさんが同じ事を企んでいる。
…もし、あの場にいたのが、その首謀者なら、すーさんは…。
「こっちだ。」
今、考えても仕方がないよね。
だって、すーさんに会えば、全部わかるんだから。
- あの人の為に ( No.308 )
- 日時: 2015/07/27 21:21
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /48JlrDe)
クッパおじちゃんの案内で、オレはすーさんがいるという部屋にやって来た。
「着いたぞ。ここだ。」
「…。」
ここに、すーさんがいる。
いや、もしかしたら…。
やめよう。考えるのは、よそう。
会えばわかるんだから。
「連れてきたぞ、昴。」
「ああ、入っていいぞ。」
オレ達は中に入る。
目の前にいたのは、いつものすーさん。
…でも、何かが、何かが違う。
「鏡、気がついたんだな、よかった。」
「う、うん。」
言葉遣いは、いつものすーさんと変わらない。
だけど、違う。
「…どうしたんだよ、俺をじっと見て。」
「…ううん、何でもない。ねぇ、すーさん。オレここに呼んだ理由って、何?」
見極めてみよう。冷静に、冷静に。
大丈夫。この質問なら、きっと食いついてくる。
「勿論、お前に手伝って欲しい事があるからだ。」
よし、引っ掛かった。
「手伝って欲しい事?」
「簡単だ。クッパと協力して、この世界全域を亜空間に飲み込む為の、強い兵士を集めてくれ。」
「…。」
やっぱり、違うよね。
本物のすーさんなら、こんな事、言わない。絶対に!
「アンタ…誰?」
「…? どうしたんだ? 鏡。」
「誰だって聞いてるの。それと、すーさんの体を操って、何してるの?」
奴の顔色が、少しだけ変わる。
「変な奴だな。俺は昴。奏月昴。お前もよく知ってる存在だろ?」
「…オレの知っているすーさんは、悪事に荷担する事なんてしないよ。」
「…。」
信じて、いいんだよね、すーさん。
こいつは、すーさんじゃないって。
あの時、すーさんと話していたのは、アイツだったって。
そして…あの「さよなら」は、本当は「逃げて」と「助けて」が入り交じった、叫びだったって!
「オレは、お前等に協力なんかしない。オレ達の日常を壊したお前なんかに、協力するもんか!」
「…。」
「すーさんから離れろ! タブー!」
オレは、焔を飛ばす。
流石に紅に纏わせて体当たりは、紅の体に負担がかかるから、できない。
狙いは、すーさん…いや、すーさんを乗っ取った、タブー!
「…言う事を素直に聞いてくれよ。」
急に、頭に衝撃を感じた。
「がっ…!?」
『鏡!』
「鏡!?」
何か、固い物が当たった。
痛い。多分、血が出ていそう。でも、オレは踏み留まった。
「しかも、誰だよ、タブーって。」
カシャン、と音がする。
すーさんが持っている、杖からみたいだ。
今気がついたけど、すーさんがいつも持っている創世ノートがない。代わりに、宝石のような物がついた片手杖を持ってた。
「正体を悟られて、びっくりした?」
「…。」
「オレの知ってるすーさんは、悪事に荷担するような人じゃない。それに、お前の事は、ある物語を見て知ってる。…マスターハンドと同じように、すーさんも操ったんでしょ?」
「!」
再び、カシャン、と音がする。
同時に、あの杖の宝石部分が外れ、オレに向かって飛んできた。
「…!」
今度は、慌てずに回避する。
大丈夫。凪の攻撃より、遅いっ!
「甘い。」
「なっ!」
宝石は起動を変え、オレを素通りして、別の方向に向かう。
狙いは…紅!?
『があっ!』
「紅っ!」
肩に止まっていた紅だけを、器用に直撃させた。
そして宝石は、すーさんの元に戻っていく。
「紅、大丈夫!?」
『問題ない…! 鏡、やはりアヤツは…!』
「うん、間違いない! すーさんはただ操られて意のままにされてるだけ…。操っている奴の名前は…タブー。」
「…フッ、今更ここで違うと言っても、貴様には無意味か。」
すーさんの声だけど、口調が全然違う。
「鏡。もう一度言う。…我に協力しろ。」
「絶対に嫌だ! お前なんかの悪事に荷担するもんか!」
「…聞き分けのない奴め。」
タブーは、何度もオレや紅目掛けて宝石を飛ばしてくる。
何度か当たって、痛い。紅ももう、フラフラだ。
「フン、遅いな。」
「!」
オレの目の前に、宝石が迫る。
もう駄目だと思って、オレは思わず目を閉じる。
「…?」
いつまで経っても、当たった感じがしない。
オレは目を開けて…驚いた。
「フンッ、貴様の攻撃は、この程度の力しかないのか。」
「クッパおじちゃん!?」
オレを庇うように、クッパおじちゃんが立っていた。
おじちゃんは平然と、攻撃が通じていないかのように立っている。
『…鏡、ひとつ作戦があるのだが…。』
この隙に、紅はオレに耳打ちした。
…成程、それはいい案だと思う。
『…なぁ、タブーとやら。ここで我等を仲間に加えたいなら、その杖をしまえ。ボロボロにしたら困るのはお前だぞ?』
「そうだよ? オレは最後までお前に抵抗する。残念だけど、仲間になるのは絶対嫌だからね!」
例えこの体がボロボロになっても、屈する事はない。
だけど、アイツはしつこく勧誘してくる。
- あの人の為に ( No.309 )
- 日時: 2015/07/27 22:02
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: oRnw6v/P)
かと、思っていた。
「そうか。ならば仕方がないな。では、死ぬまでボロボロになって貰おうか。」
「えっ…!?」
「! 危ない!」
タブーは再び、オレに向かって宝石を飛ばしてきた。
オレはクッパおじちゃんに抱えられて、なんとか避けられた。
『これで諦めがつくかと思ったら…!』
「別に、我にとって貴様等はただ単なる駒のひとつでしかない。…いや、人質としての役割は果たしているか? クク…。」
人質?
…待てよ。確か、マスターハンドがタブーから解放されたあの時、マスターハンドはすぐにタブーを攻撃した…。
…まさか…! あいつ、すーさんの意識は…!
「気がついたか? …我は体と言葉を操ってはいるが、意識に介入はしていない。そして、貴様がここで死のうと、我は構わない。が、この小娘にとって、お前は心の支え。…そのお前がここで死んだら、どうなるかわかるな?」
ここで、奴がオレを殺せば…すーさんの心が、もたない…!
すーさんが壊れるなんて、嫌だ!
『鏡…。』
悲しそうな顔しないで、紅。
オレだって、こいつらに従うのなんて嫌だよ。
でも、すーさんを守る為、だから。
「…わかった。言う通りにする…。」
「いい子だ。では、もう休むといい。…クッパ。鏡の面倒を見てやれ。」
「…了解した。」
クッパおじちゃんは、悲しそうに頷いた。
「鏡、戻るぞ。」
「うん…。あ、そうだ。」
オレは再び、すーさんを見る。
言わなきゃいけない事があるから。
「すーさん、起きているなら、聞いて。オレは必ず、すーさんを助けるから。…何があっても、すーさんとさよならだけは、絶対に嫌だからね!」
「…。」
すーさんからの言葉は聞けなかったけど、きっと聞こえてたはず。
「…クッパおじちゃん、行こう?」
「うむ。…行こうか、鏡。」
オレはクッパおじちゃんに連れられ、すーさんの部屋を後にした…。
■
「ひでぇ…!」
「こんな事されたら、トラウマは当たり前だよ…!」
「…。」
スバルは顔を歪ませる二人を見て、静かに俯いた。
「自分の意思とは裏腹に、鏡君を…最愛の息子とも呼べる存在を傷付けてしまった。そして、彼の望まぬ事を強いてしまった。自分が操られたばかりにね。そんな思い出が蘇るから、あの子はタブーを恐れていた。昔は、鎖の音でさえ、恐怖を感じていた。」
ここまで言ってから、「だけど、」と繋げ、ペンダントの先にある、鍵のような物を握った。
「あの子はあの子なりに、あのトラウマから向き合おうとしているんだと思う。逃げ出したい思い出に、立ち向かおうとしているんだと思う。じゃなきゃ、私にエールデを渡すはずがないんだから。」
「エールデって、お前が昴から貰った杖だよな。名前はあの馬鹿神がつけたけど。」
「あれ? そう言えば…。」
七海は何かに気付いたのか、首を傾げた。
「エールデ、今振り返った話で昴さんを乗っ取った奴が使ってた武器に似てない?」
「え? あっ!」
「普段馬鹿なのに何で変なとこで察しがいいのよ。でも、その通り。エールデは昴のトラウマなの。けど、あの子は私にこれを渡した。…多分、だけど、鏡君がアレを使ってるのを見て、逃げちゃいけない、って悟ったんじゃないかな?」
過去のトラウマである武器を使う鏡を見て、自分も向き合う為に、トラウマである武器をスバルに渡したのではないか、そう、考えたが、それは本人のみぞ知る。
「さて、次は…昴達のは少しお休みして、もう一つの事件を話そうか。」
「もう一つの事件って…鏡達にも話すなっつった奴か?」
「うん。これの詳細はあの子達は知らない。そして、みんなと約束したの。これは絶対に、昴達の耳にはいれないように、って。あ、わかってるわね? 七海ちゃん。話したらたらいじゃなくて棘鉄球落とすから。」
「はい、絶対に話しません。」
コンマ二秒の早さで返した七海に頷いてから、スバルは再びノートに目を向けた。
☆
私
「あ、エールデについては親記事のURLから参照してください。やっぱりガチで疑問。自分の話はシリアスとギャグ、どっちが面白いのか。」
七海
「要はシリアス向きかギャグ向きかかな? あ、かんそーどうぞ!」