二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 夏休み残り一週間の聖域にて ( No.315 )
- 日時: 2015/07/28 23:32
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /9RVPCwZ)
読者からのコメントは作者の原動力。
モチベーション上げるのも下げるのも、読者次第。
さて、夏休みと言うことで、これをお届け。エイヴさんの短編の元になったお話。
◆
夏休みも、もう後一週間程…。
この時期、面倒くさがりの学生達の悩み事。
「終わらねえぇぇぇっ!」
烈の叫びが、神殿内に木霊する。
「烈、口より手を動かしなさい!」
「まぁ、気持ちはわかるけどさ…。」
「うん、よくわかるよ…。」
彼に教えていた氷海の怒声と、その光景を見ながら別の課題をやっている風雅と鈴花。
そう、彼らは…。
「…まぁ、この時期特有だよな。夏休みの宿題が終わらなくて集まってやる、この光景。」
麦茶を入れた昴の言葉通り、この四人(氷海以外)は夏休みの課題が終わっていなくて、ここに集まってラストスパートをかけているのだ。
「てか、氷海以外終わってないって…夏休み何してたんだよ。…遊んでいたとか?」
「…。」
終わっていない三人、黙りこむ。
「図星かよ。」
「でも、鈴花も風雅も、後は自由研究だけだから、まだ救いはあるわ。問題は…。」
ちらりと、烈を見る昴と氷海。
「…一個も終わってないってどういう事? 烈。」
「…。」
氷海に睨まれて黙る烈。
だが、そんな中で黙々と手を動かしているのは、割と偉いと誉めるべきか。
そんな二人を放っておいた方がいいと判断した昴は、鈴花達を見た。
「そう言えば、二人は自由研究のテーマは決まっているのか? それだけなんだろ?」
「私はまだ決まらないの…。風雅君はもう決めちゃって、あとは纏めるだけみたい。」
「へぇ…。風雅、何のテーマにしたんだ?」
「これだよ。丁度今終わったところ。」
風雅はプリントアウトした紙を昴に渡した。
タイトルは、
『アンデッドを造る為のネクロマンシー技術の研究』
とあった。
「…。」
固まる昴と鈴花。
「ね、ねぇ、昴さん、これ…。」
「…。」
何かを悟った鈴花の言葉に、昴はまだ黙り混む。
「…風雅。」
が、急に話だし、風雅の肩をポンと叩いた。
「ん? 何?」
「…今から俺と一緒に別のテーマを考えよう。悪い事は言わないから。」
「えー…。」
「お前がネクロニカにハマったのは分かる。確かにお前がきっかけだったから。だけどな、流石にこれを研究テーマにするのはマズイと思うんだ。」
「風雅君、私も昴さんと同意見だよ…。」
二人に止められ、風雅はしぶしぶ他の題材を探す事にしたようだ。
「…でも、これが駄目となると、どうしたらいいかな…?」
「うーん…。風雅、確かお前、星が好きだったんだよな?」
「え? うん…。」
「なら、星座について調べるのはどうだ?」
「星座、かぁ…。うん、面白そうかも…!」
風雅の目が輝きだした。どうやらいい題材を見つけたようだ。
「鈴花は、その力を使って、植物の事を調べてもいいんじゃないか? 何か、朝顔の観察とか、小学生っぽいけど…。」
「確かに言えてる。でも、私らしい自由研究な気がする。私、それでやってみるね!」
「おう、何事も挑戦だ。…じゃあ、俺は聞き取り調査に行ってくるから、何かあったら鏡と雪花を残しておいてるから、アイツ等に言ってくれ。」
「わかったわ。じゃあ、気をつけてね、昴さん。チャイムが鳴る前には帰りますから…。」
「まだ日数はあるし、ほどほどにしとけよな。」
それだけを言い残し、昴は去っていった。
- 夏休み残り一週間の聖域にて ( No.316 )
- 日時: 2015/07/28 23:39
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /9RVPCwZ)
「…。」
烈はしばらく真面目に勉強していたが、わからないところにぶち当たり、頭を抱えていた。
「…? どうしたの? 烈。」
それを見た鏡が、烈と問題文を見て、彼に何があったかを理解した。
「…ここの問題は、こうだと思うよ?」
「え?」
鏡は自分のノートに式を書き、烈が悩んでいた問題をあっさりと解いた。
「…違うかな?」
「いいえ、合っているわ、鏡。」
横から覗き込んだ氷海が、綺麗な笑顔を浮かべながら、鏡を撫でてあげた。
撫でられた鏡は凄く幸せそうだった。
「えへへ…雪花にたまに教えてもらってるんだ。すーさんにも教えてもらう事もあるよ! …化学限定で…。」
(…何故、化学限定なのかしら…。)
それは聞かない方がいいと判断した氷海は、黙って鏡を褒めつつ、烈を見た。
「烈、分身に問題を解かれるなんて…。」
「言うな、氷海。俺が一番へこんでるんだから…。」
弟のように思っている鏡に問題を解かれたのが悔しいのだろう、烈は頭を押さえて悔しそうに俯いていた。
「…ご、ごめんね、烈…。」
「謝るなよ…。何か逆に惨めになってくる…。」
「う、うん…。」
「でもまぁ、サンキュな。お前のお陰で先に進めそうだ。」
「…うん!」
鏡は烈に撫でられ、嬉しそうに大きく頷いた。
烈はそんな鏡に優しげな笑みを見せながら、課題に戻る。
「…。」
が、すぐに壁にぶち当たったのだとか…。
「…鏡、見てあげてくれないかしら? いい薬になるでしょうし。」
「い、いいの? 氷海…。」
「いいのよ。鏡にいくつか教われば、きっと家庭科と体育以外の成績も真面目になるでしょうから。」
(…確かにその二教科以外、寝てばっかりだからなぁ…。)
他の教科は寝てばかりな為、どうしても成績が低い。
氷海はそれを改善させる為、鏡に烈を任せた。
勿論、鏡がわからないところは力になってあげたが。
- 夏休み残り一週間の聖域にて ( No.317 )
- 日時: 2015/07/29 00:00
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: G1JcBOCg)
夕暮れも近くなってきた頃…。
「…終わったぁー!」
山のようにあった課題を、終わらせたらしい。
勿論、自由研究も鈴花と同じ題材にした為、彼女に手伝ってもらい、レポートをまとめた。
「烈君、あんなにあったのによく一日で終わったねー。」
「…悔しいけど、鏡の教え方とかわかりやすくて、結構すいすい進んだんだよ…。」
「えへへ…。」
「これに懲りたら、烈も真面目に授業を受けるのね。」
「へーい…。(鏡の奴には絶対負けねぇ…! 今度は俺が教えてやる番だ!)」
いつものような空返事だったが、どうやら真面目に受ける気にはなっているようだ。
「ただいまー。宿題、終わりそうかー?」
そんな折、聞き取り調査に行っていた昴達が帰ってきたようだ。
「お、昴さん。全員終わったみたいだぞ?」
「はえーなー。まぁ、別に不正とかはないだろうけど…。ほれ、頑張ったお前らにご褒美。一人一個な?」
「何々? うわぁ! シューアイスだ!」
昴が渡した袋には、有名店のシューアイスだった。
パリパリのシュー皮がこんがりと焼きあがって美味しそうだ。
「今、紅茶出してくる。あ、アイス溶けるから先食ってていいぞ。」
「いっただっきまーす!」
全員、シューアイスの袋を開け、中身を取り出し、食べる。
バニラの甘さが、勉強で疲れた脳に癒しを与えた。
「甘くて冷たくて美味しいわね。」
「疲れた時には甘いものだねー…。」
優しい甘さにとろけそうな氷海と鈴花。
暫し微睡んでいた時、昴が冷たい紅茶を差し出してきた。
「ははっ、よっぽど根を詰めてたんだな。氷海は烈を教えるのに苦労したってとこか?」
「いいえ、そういう訳じゃないのだけれど…。それに、私はあまり烈に教えていないわ。」
「じゃあ、自分でほぼ全部解いたのか? あんな山のようにあった課題の問題。」
「いいえ、鏡よ。あの子、結構頭が良くて…驚いちゃったわ。私、ロクに口を出していないわ。」
「へぇ、鏡が…。そういや、ここんとこ雪花に勉強教わってたもんな。それを発揮したって訳か。」
昴は紅茶を配り終えた後、鏡の頭を優しく撫でる。
鏡は嬉しそうな顔をして、昴の手を受けた。
「さてと、それ食ったらそろそろ帰宅準備した方がいいぞ。トワイライトチャイムが鳴りそうだしな。」
「そうだね。…あ。」
昴が言った丁度その時、優しい音楽が流れてきた。トワイライトチャイムだ。
「いっけね! チャイムが鳴る頃には帰って来いって母さんに言われてたんだ!」
「僕も、手伝い頼まれていたんだっけ…。じゃあ、今日はここで解散だね。」
「そうだねー。じゃあ、みんな、また明日。」
そして、四人は解散していった。
「やっぱ夏休みの最後の方ってこんなもんだよなー…ん?」
ふと、昴は視線を移したゴミ箱の中に何か入っているのを見つけた。
中身を取り出してみると、そこには、
『星座と、その物語』
と書かれたグシャグシャな紙。
風の能力でシュレッダー代わりをしたのか、修復するのは無理そうだ。
「…おい、まさかアイツ…。」
「アンデッド研究の方を間違って持ってったのかな…?」
「あ、昴さん、大変ですわ。」
カレンダーを見ながら、牡丹は昴を呼んだ。
「どうした? 牡丹。」
「…明日、烈達は登校日です。課題を提出する為の。」
「それに、今日は風雅、家の手伝いだと思うからこれから絶対会えないよー? 電話やメールもしないだろうし…。」
このままでは風雅はかなりオカルト紛いな自由研究を出してしまう。
家のポストに届ける手もあるかも知れないが、風雅が気づかないかもしれない。
「…もういっその事、そのまま出させちゃっても面白いと思うよー?」
「…だ、大丈夫だろうか…。」
不安の残る一同だったが、この話はもう触れない方が良いと考え、夕食の用意へと取り掛かった。
翌日、風雅は案の定最初に研究していたアンデッドの方を提出した。
が、しかし、その斬新さで意外にも先生に高評価を貰い、生徒達にネクロニカが広まったとかいないとか。
■
「へぇ、そのような事がこの世界が生まれて間もない頃にあったのですか…。」
「ああ。ある意味あの学校に卓ゲー馬鹿が増えたのは風雅のせい。」
ポリポリと柿の種を貪りながら、理乃の言葉に答える昴。
どうやら、夏休みにちなんだ話をリクエストされ、ならばとこの物語を同期させたようだ。
「ちなみに、理乃は夏休みの宿題は…終わらせてっか。」
「勿論です。一日で終わらせましたよ。自由研究も論文クラスになってしまったので少し時間がかかりましたが。」
そう、面白そうに笑う理乃だが、昴は少し苦い顔をした。
(なぁ、理乃ってお前をモチーフにしてんだろ? 何故にこうなった?)
—天才設定持たせたのが間違いだったか。
きっとこの文を書いているスバルも苦い顔をしているんだろうなと思いながら、昴は再び柿の種を貪りながら、お茶を啜った。
☆
あまりシリアスばかりでもまいるのでクッション材として。感想ok