二次創作小説(映像)※倉庫ログ

少年の思い ( No.333 )
日時: 2015/07/31 20:58
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: g9MFapnu)

みんなが消えてから、もう一週間。
その間、俺達は何一つ、変わりなく過ごしていた。










…って、いけたらよかったんだけどな。
氷海は雪花がいなくなったショックで上の空。
鈴花も、家、学校問わずに泣き出すし。
唯一…風雅がいつも通りってところか。いや、あいつの場合は…。










俺?
俺なら大丈夫。いつも通り、過ごせてるさ。
みんなが帰ってくるって、信じてるからさ。










…そう、信じてるから…。
だから、いつも通り過ごせるんだ。…そう、いつも通り…。

少年の思い ( No.334 )
日時: 2015/07/31 21:05
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /9RVPCwZ)

『さて、次のニュースです。先日未明に、黒いドームのような物に覆われた森林地帯の続報です。ここに住んでいた方の捜索ですが、未だに続けられていますが安否の目処は立っておらず、捜索は難航』

キャスターが全部言い終わる前に、俺はテレビの電源を消す。
…聖域が黒いドームに覆われてから、もう、一週間。ニュースキャスターだかなんだか知らないけど、ひっきりなしにこの町を訪れて、やれインタビューやら昴さん達の事やら聞いてくる。
一種のお祭り騒ぎみたいなもんだけど、この町の人達は、誰も喜んじゃないない。

『…神達がいなくなって、もう一週間か…。』
「…。」

黒の声が、いつもより悲し気だ。無理もないよな。分身の紅が消えたんだ。

「きっといつかひょっこり戻ってくるって。あのドームみたいなのも絶対、『ちょっと旅行に行っていて、部屋の片付けするの忘れたからドームみたいなので聖域を覆っちまいました。』とかいう理由だって!」
『烈…。』
「ダイジョブだって! 鏡には昴さんがついてるしさ! さてと、学校いってくるな!」

俺は鞄を手に持って、さっさと学校に向かう。
…そうだよ。大丈夫。きっと、みんな無事に帰ってくるさ。










…そう言い聞かせなきゃ、やってられねぇよ…!

少年の思い ( No.335 )
日時: 2015/07/31 21:13
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /9RVPCwZ)

いつもの通学路を歩き、学校を目指す俺。
…でも、その行く手を阻むかのように、前方に人だかり。

「…まだいんのかよ…。」

通学路を通る上で必ず通過する、聖域付近。
そこには何人ものマスコミがいた。

「あの人達、嫌だよね。」
「風雅。」

いつの間にか、風雅が横にいた。
まぁ、おんなじ商店街にいるんだから、通学路が一緒で、どっかしらで会うのは当たり前だけど。

「昴さんや凪の事を面白おかしく取り立ててさ…。あの人達、昴さんの何を知っているの? って言いたいよ。」

確かに、昴さんが神様だって知られてから、このドームは昴さんが作っただのこのドームは侵略の一貫だの、デマ記事が流れるようになった。
だけど、俺達はわかってる。
あの人は、純粋にこの世界を愛しており、侵略だとか、世界を我が物にしたいとか、そういった事を考えていない。
だから、わかるんだ。昴さん達は何かに巻き込まれたって事を。
昴さんと何ヵ月も付き合ってきた人なら、こんな事、簡単にわかる。
だから、風雅や俺を含むこの町の人は、そう言った理由でこいつらを歓迎していないんだ。

「…風雅、別の道から行こうぜ。」
「うん。」

俺と風雅は通学路から離れ、裏道から学校に行く事にした。

少年の思い ( No.336 )
日時: 2015/07/31 21:18
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0JVd9KgH)

学校について、いつの間にかお昼も終わって五時間目。

「…んで、この式を代入した答えを…氷海ー。」

数学、ハジメちゃんの授業。
後ろの氷海が指されてら。あいつならすぐに答えて…。
…あれ?

「…氷海? 寝てんのか?」

俺はくるっと後ろを向く。横にいた直斗も氷海を見る。

「…。」

氷海は外を眺めて、ぼんやりしていた。

「氷海さん、指されてますよ。」
「…。」

直斗が声かけるけど、氷海は窓の外を眺めたままだ。

「…おい、氷海!」
「きゃっ!? な、何? 烈…。」
「…当てられたぞ。」
「えっ、あ、は、はい!」

氷海はやっと指された事に気がついたらしく、立ち上がる。
…おい、教科書逆さまだし、今現国じゃないし、今日はその授業、ないし。

「すみません…。えーっと…。な、何を答えたら…。」

最初っから聞いてなかったな、こりゃ。
普通ならここで笑いが起こりそうだけど、誰も笑わない。
氷海がこうなった理由を、みんな知っているから。

「あー、いいって。…そうだよな、雪花がいなくなって、心配していないわけないよな…。悪かった…。」

そう、ハジメちゃんのいう通り、雪花や昴さんがいなくなって、氷海が動揺しないわけがないんだ。
いつも通り過ごそうとしているみたいだけど、やっぱり上の空になっちまってる。

「…代わりにお前答えろ、リュータ。」
「はいっ! わかりません!」

リュータがそう答えたと同時に、教室内で笑いが起こる。
…でも、わざとそう答えたのか、本当にわからないのか、わからないな。成績下位のこいつの場合。

「よし、今日の放課後、補習やろうな? …氷海、もう座っていいぞ?」
「す、すみません…。」

氷海がおずおずと席に座る。

「…ごめんなさい、烈、直斗。」
「何でお前が謝るんだよ。」
「そうですよ。…無理もない事、なんですから…。」

そう、無理もないんだ。
自分の片割れ同然の存在が消えて、今まで一緒にバカやっていた人間が消えて、いつも通りいられるわけ、ないんだよな…。

「…雪花がこの場にいたら、何て言うかしらね…。」
「…。」

授業中だからか、声を出して泣く事を堪えてる氷海。
…本当はわめき散らしたい程、泣きたいはずなのにな。

「…さて、授業再開するぞー! 今日はちょっと騒いでも許してやる! ほら、みんな、騒げ騒げー!」

そんな氷海を、ハジメちゃんがちらりと見てから、授業を再開しだした。みんなも、話し声を大きくしている。
…氷海に気を遣ってくれたんだな。

「…いいクラスでよかったな、氷海。」
「ええ…本当に…。」

クラスのみんなが騒いだ事によって、氷海の声は聞こえ辛くなった。

少年の思い ( No.337 )
日時: 2015/07/31 21:24
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0JVd9KgH)

「おんやぁ、一クラスだけうるさいなぁ。」

廊下から変なダミ声が聞こえて、全員静まる。
空気もどこかはりつめたようにピリピリする。

「…何ッスか? 授業中なんッスけど。」

ハジメちゃんの機嫌が悪くなる。
クラスのみんなの機嫌も、悪くなる。
氷海の涙も、ぴたりと止まる。
そんな中に、丸々太った男が入ってきた。
こいつも昴さんを悪く書いたマスコミの一人で…どこよりも早く、彼女の事を悪く書いた奴だ。

「こんだけ騒いでちゃ、授業にならんでしょう。取材させてもらっても構いませんよね? 授業中じゃないんですから。」
「…取材許可、とったんッスか?」
「いいえ。私の手法はお伝えしたはずですよねぇ?」

また、無理矢理入ってきたのか、あの豚野郎。
あの豚は、取材許可を取らずに学園内にずかずか踏み込んできやがる。それで校長も迷惑してるんだよな…。

「…帰ってくれます? 見りゃわかるでしょうが、みんな、アンタの事を歓迎してませんよ。」
「あぁ、大丈夫ですよ。二、三人にいつもの話を聞いたら帰りますんで。」
「…ここの人間に、昴さんを悪くいう人はいませんよ。」

ハジメちゃんがそう言うと、オッサンは笑い出した。

「ですが、内心はわからんでしょう。あのドームを作り出したのは、神様を名乗るワケわからん小娘だって、みんな心のどっかで疑ってるんじゃないんですかぁ?」
「…。」

ヤバイ、氷海と直斗の様子がおかしい。

「それに、その小娘の回りにいる奴等だって、ろくな連中じゃないでしょう…。聞いたところ、能力者なんでしょう? 私はそいつ等を使って、あのドームを作ったんじゃないか、って、考えてるんですよぉ。」
「…!」
「氷海、直斗、落ち着け…!」

能力を発動しかねない勢いの二人を、俺は押さえる。

「そう、世界を手中に納めるためにさぁ!」
「!」

ガタッ! と音をさせ、立ち上がる氷海と直斗。
まずい! 能力を発動させてやがる!

少年の思い ( No.338 )
日時: 2015/07/31 22:08
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /9RVPCwZ)

「落ち着け二人とも!」

俺も立ち上がって、頭に血が上った二人を止める。

「離してください、烈君!」
「あんな事言われて落ち着けないわ! あいつは雪花を…昴さんを悪く言ったのよ!?」

普段が冷静だから、頭に血が上ると手がつけられないな。
…俺だって、頭に来てない訳じゃないんだ! だけど、ここで冷静さを失ったら、奴等の思い通りになっちまう!

「あぁ、言ったさ! だけどな、俺達は知ってるだろ!? あの人は、極限まで無理をして、自分がぶっ倒れるくらいまで、俺達の為に動いてくれるような、優しい人だって!」
「っ…! そう、だけどっ…!」
「言いたい奴等には言わせておけ! 奴等は昴さんの事、なんにも知らないんだから!」

そう、ぶっ倒れるくらいまで無理をしてくれるあの人の事を何も知らないんだ。
それに、こいつらは自分はそんな事をできないから僻んでるって、母さんが言ってた。俺も、その通りだと思った。

「知らない奴等には吠えさせておけ! その分、俺達が信じてやればいいんだ! みんなが何かに巻き込まれているだけだって事を! 昴さんや鏡達が無事に帰ってくるのを!」

俺は、思わず手に力をいれる。
左手が熱い。こっちで掴んでる直斗、火傷していないといいけどな。

「氷海、ここにいる誰よりも付き合いが長い俺達が昴さんを信じてやらなくてどうする!」
「っ!」

氷海の目に、涙が浮かぶ。
元々浮かんでたけど、更に大粒になっている。

「直斗、お前、学校終わったら毎日のように聖域に通っているんだろ!? 昴さんがやましい事をしていないって信じられるだろ!?」
「勿論です! 烈君に言われなくたって…!」
「だったら信じてやれ! あと、今は少し頭を冷やせ! 探偵は冷静でいる能力も必要だろ!?」
「っ…!」

…よし、これで直斗も氷海も落ち着いたな。

「…すみません、烈君…。」
「ごめんなさい、烈…。少し、落ち着いたわ。ありがとう…。そう、よね。私達が信じてあげればいいのよね。昴さん達を。」

もう、大丈夫そうだな。
俺はそれを確認した後、おっさんを見た。

「…帰れよ、おっさん。」
「嫌ですよ。君には聞きたい事ができましたからねぇ。」
「話す事なんかねぇよ。俺がまだ冷静でいられる間に、帰れ。」

体が熱い。
ダメだ。冷静にならないと。能力が暴走しちまう。
今は暴走を止められそうな黒もいないんだから、落ち着かないと。

「帰りませ」
「帰れ。」

溢れ出た焔を隠しながら、おっさんを睨み付ける。
おっさんはなにか、怖いものを見たような顔をして、俺を見た。

「わ、わかりましたよ…。帰りますよ。今日はね。」

そう言い残して、おっさんは帰っていった。

「…。」

俺は一息ついて、気持ちを落ち着ける。
だけど、昂りすぎて静まってくれない。まずいな、こりゃ。
ははっ、氷海達に冷静になれって言ったのに、俺がこれじゃ、話にならねぇよな。

「先生、わりぃ、保健室、いっていいか? なんかどうも、落ち着けなくて…。」
「あぁ、構わねぇぞ? ついでに六限もフケるか?」
「おい、先生が生徒のサボりを許可してどうすんだよ。しかも次の時間まで許可出すなよ。…じゃあ、行ってきます。」

俺は教室から出て、一人保健室に向かっていった。

少年の思い ( No.339 )
日時: 2015/07/31 22:07
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: g9MFapnu)

保健室には、誰もいなかった。
とりあえず、メモを残してベッドを勝手に借りた俺は、深く深呼吸をする。
それで少しだけ、落ち着いた。

「…やっぱり、お前でもまいっちまうよな、烈。」
「!?」

誰もいないと思っていた保健室に声が響いて、驚いた俺は起き上がる。

「あぁ、まだ寝てろ。気持ちが昂ってんだろ?」
「…いつ来たんだよ、MZD。」
「んー? 最初っからいたけど、隠れてた!」

どんだけ茶目っ気あるんだよ、この神。昴さんとは大違いだなおい。

「…昴達の行方は、ちゃんと探してるから安心しろ。」
「そりゃ、信じてるさ。」
「あんがとさん。…それと、お前も無理せずに泣いとけよ。今は誰も来ないだろうしさ。」
「!?」

な、何で、泣いてって…?

「オレだって神様だぞ? …お前が無理してる事くらい、お見通しだよ。」

MZDは俺のいるベッドのカーテンを開け、中に入ってきた後にすぐカーテンを閉めつつ、俺の側まで来て頭を撫でてくれた。

「あのメンバーを纏めるリーダーだから、いつも通りに振る舞おうとしてんだろうけどさ、無理はしなくてもいいんじゃないか?」
「…っ、無理なんてしてねぇよ!」
「いーや、神様は何でもお見通しさ。…弟のように思ってる鏡と、親友同然に思っている昴がいなくなったんだ。応えてないわけないだろ?」
「!」

…ははっ、やっぱばれたか。…校長も、この辺は神様だなって思うよ。
なぁ、MZD。少しだけでいい。甘えていいか…?

「あぁ。少しと言わず、めいっぱい甘えとけ。…その後で、また昴達を信じてやってくれ。全員無事に、いつもの感じで戻ってくる事を、さ。」
「…あぁ…!」

俺はMZDに見守られながら、泣き続けた。











この涙が枯れたら、また信じよう。
昴さんや鏡がいつものように、また笑って戻ってきてくれる事を。
またいつものように、バカをやって遊べる事を…。











「デマ記事…。」
「そう。無い事書かれた誹謗中傷のデマ記事が、あの男のせいで溢れ返った。」

七海の呟きに、スバルははぁ…。と溜息をついた。

「当時、どんな記事が書かれたんだ? まぁ、破りたくなるようなのはわかるが。」
「当時の記事は全部処分されたから残ってないよ。まぁ、ジャン君が破りたくなる内容なのは確か。」

スバルのその答えに、ジャンは「理解した。」と頷きつつ答える。

「とにかく、あの子達がスマブラ世界で大変な事になってる間に、こんな自己中クソ親父が暴れたもんだから、残されたみんなが奮闘する羽目になったの。…昴達が消えたショックが立ち直らないままにね。」
「うぅー、理乃がいたら一気にあのおっさんをギャフンと言わせたのになぁ…。」
「…それどころかおっさんを社会的に抹殺してたんじゃねぇか?」

七海の呟きに、ジャンは死んだ目でそう言うと、他二人も想像できたのか、同意するかのように目を死なせた。

「…さ、さて、続き、行こうか。」

苦笑いを浮かべるスバルに、他二人も同意した。
そしてまた、創世ノートのページが開かれた。







今更だがFE覚醒を購入してみた。シミュレーション苦手なのに。色々進めたら新しく増やしてみようかな。自マイユニやらクロムやら。

感想ok