二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 神と猫の集会場 ( No.591 )
- 日時: 2015/11/13 21:25
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
ある日の夜。
ノーデンス本社の地下一階にある一室にて、ネコカフェ“にゃーでんす”の開店準備をしていた。イグサの香り立つその部屋は、自由気ままに振る舞う愛猫と組んで、和やかな時間を約束するだろう。
この部屋で今、一人の女性が猫達の健康状態を確認している。緑と黒を基調とした服は、もう少しでお尻が見えそうな程に丈が短い。その背中側を、表地が緑、裏地が真紅のマントが覆っている。緑と白の縦縞模様の長髪を降ろした頭には、獣と思わしき耳が生えている。
「お疲れ様です、クロノ。」
背後から、ベルが声をかける。女性—クロノは静かに振り向いた。
「お疲れ様です、ベル様。」
「猫達の様子は如何でしょう?」
「皆、健康状態は良好です。問題なく明日の開店時刻を迎えられることでしょう。」
クロノの報告を聞いたベルは、嬉しそうに目を細めた。
「それは何よりです。明日は開店初日ですからね。何事も初めが肝心なのです。無論、その先も、ね。」
二人が話をしていると、扉が開き少女が入って来た。半袖にミニスカート、大きなリボンで結んだポニーテールが特徴の少女は、怯えた表情で焦った様子で部屋に入って来た。
「たたた、大変! お、おおお!」
「何事ですか、騒々しい。」
軽く頭を押さえながら、ベルは少女に訊ねた。
「お化け! お化けがいたの!」
「お化け?」
少女の言葉を聞いたクロノは、怪訝そうに訊き返した。
「正面前広場でね! 暗い中、猫…猫…って、ブツブツ呟いてたの! 今はブランに見張って貰ってる!」
「竜を狩る者がお化けに怯えるなど、些か間抜けですね。まあいいでしょう。不審者の可能性が高いので、私も対処に当たりましょう。エリー、貴方はここでクロノと待っていなさい。」
「う、うん…! 気を付けてね…!」
涙目を浮かべながら、少女—エリーはベルを見送った。
「だ、大丈夫かな…?」
「問題ありません。ベル様は攻撃魔法と回復魔法、共に習得済みです。」
「スキルの話じゃなくてね…。」
検討違いのクロノの言葉に、エリーはそう突っ込むしかできなかった。
- 神と猫の集会場 ( No.592 )
- 日時: 2015/11/13 21:30
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
正面前広場。
そこには確かに、図体の大きな何者かが立っていた。それを陰から見張るのは、左胸に刺した白い花がチャームポイントの執事服を身に着け、カイゼル髭を生やした男—ブラン。
(まだ何かブツブツ呟いてるな…エリーはお化けだなんて騒いでるが、そ、そんなものいる訳ないだろう! だから、こんな下らないことに付き合わないで、さっさとベッドにインしたい! それにしても寒いな…。断じてビビッてなんかいねえ。イヤ幽霊トカ全然怖クネーシ! オバケナンテナーイサッ! オバケナンテウーソサッ! ネーボケータ)
「見張りお疲れ様です。」
「ヒイイッ! むぐっ!」
ベルに話しかけられたブランは突拍子もない声を上げ、その口をベルの掌に塞がれた。
「お静かに。」
「…な、なんだベルか。急に話しかけんなって。別にビビッてねえけどっ!」
「強がる前に静かになさい。警戒されているではないですか。」
ベルの言う通り、何者かは挙動不審になった。が、何がそうさせるのか、その場から一向に動く様子はない。
「奴は、何をしているのでしょう?」
「さ、さあな…さっきからneko*nekoと言ってはたまに溜息を吐いているな。気味が悪いというか、若干気持ち悪いというか…。」
「溜息を吐いているのなら、少なくとも貴方が“苦手な”お化けではないということですねえ。」
「に、苦手じゃねえよ! あんな不愉快な奴に近寄りたくないだけだって! マジで!」
ブランの強がりを聞き、ベルは溜息を吐いた。
「…ああ、こちらからもお化けが…。」
「のわあっ!」
思わずブランは後ずさった。悪いことに、何者かが察知できる位置で転んでしまった為に、ブランの姿はばれてしまった。
「だ、誰だ!?」
何者かは、半ば戦闘態勢でブランの方を向いた。
「や…。」
「や?」
ブランは吹っ切れたのか、溢れる気合で何者かに向かった。
「ヤッテヤンヨオオッ! カカッテコイヤ、オバケヤロウガッ!」
「いきなり喧嘩売るなんて、大した礼儀だな! 相手してやるっ!」
「“大した礼儀”は貴方の方ですよ。」
何者かの頭上から、雷が落ちる。まともに浴びた何者かは、身体が麻痺してしまった。それを確認したベルは、姿を確認する為に何者かに近付いた。
「ふむ、やはりお化けではありませんね。」
何者かの正体は、金髪の青年—大牙だった。
ベルは冷たい眼で、大牙を見下ろした。
「貴方、何をしていたのですか?」
「ね、猫のために徹夜待機をしていただけだ!」
「猫? …ああ、にゃーでんす—ネコカフェのことですね。」
「ああ。猫好きとしては黙っちゃいられないからな!」
大牙はベルに自信満々に言い放つ。どうやら本当に徹夜待機でにゃーでんすに一番乗りしたいがために来ただけだったようだ。
「ふむ、正直に白状して頂いたので、今回は“見逃して”差し上げましょう。今後、このような騒動を起こさないように。良いですね?」
「す、すんません…。」
不穏な何かを察したこともあってか、大牙は素直に謝った。
「では、明日、開店時間以降閉店時間前にお越し下さい。従業員一同、心よりお待ちしておりますよ。」
ニッコリと笑って、ベルは大牙を解放、いや、追い返した。大牙は見送られながらそそくさとその場から立ち去った。だが…。
「…おい、あいつ、敷地外ギリギリで突っ立ってるぞ。」
「もう、放っておきましょう。」
もはや脅威がないと思ったのか、ベルはブランと共に社内に戻った。
- 神と猫の集会場 ( No.593 )
- 日時: 2015/11/13 21:35
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
翌日。
記念すべき、にゃーでんす開店初日。
「うおおおっ!」
本社の玄関が解放されるや否や、大牙はノーデンス社内に突進してエレベーターのボタンを連打した。
エレベーターの扉が開かれると、大牙は勢いよく乗り込み、勢い余って壁に激突した。
エレベーターの扉が閉まると、大牙はそわそわしながら妄想に顔を赤らめた。
「猫…猫…。」
明るい電灯に照らされて尚、気味の悪い挙動で待つ大牙。そうしている内に、エレベーターの扉が開かれ…。
「猫ーっ!」
開ききる前に、大牙はエレベーターを飛び出した。痛みなど微塵も感じない。
看板には「おーぷん」の文字。扉の上にはにゃーでんすの文字とネコの絵。部屋の扉が開かれると、即座に入り込んだ。
「業火をどうぞ。」
大牙が部屋に入るや否や、広がる炎(猫に配慮して小さく静か)が出入り口で上がってすぐに消えた。
「おわっ! 誰だ、室内で火遊びしたのは!?」
「私ですが?」
受付のある場所に目を向けると、そこにはベルがいた。
「猫が怯えるので、心無きお客様には退店願います。」
「うぐ、すんません…。」
流石の大牙もこれには申し訳なく思ったのか、素直に謝罪をした。
「では、改めまして…ようこそ、ネコカフェ“にゃーでんす”へ。」
にこやかにベルは挨拶をして、大牙を歓迎した。
「当店では、こちらでネコ缶を購入することで、入店料とさせて頂きます。ネコ缶の持ち込みは可能ですが、こちらのネコ缶のご購入が必須となります。」
「あー、購入しないと駄目か。一応、ネコ缶なら持ってきた。後で飼い猫にやろうと思ったが。」
大牙は料金を払いつつ、ベルに高級そうなネコ缶を見せる。
「賞味期限、栄養価、諸々…問題ありませんね。では、ごゆっくり…。」
ベルはそう言って大牙から離れた。そして大牙はベルがいなくなったのを見計らい、ネコ缶を開けた。パキュッ、といい音が猫達の耳に届き、同時にいい香りが部屋中に広がる。
猫達はその香りに誘われ、大牙の周りに集まった。
「ほーら、たんと食えよー。」
大牙が近くにあった皿に中身を盛り付けると、猫達は競って奪い合った。
「よーしよし、可愛いなー。」
完全に鼻の下を伸ばし、デレデレの大牙。
(本当は触りたいが、今なら行けるかなー。)
デレッデレの顔のまま、そーっと猫に手を伸ばす。すると、先程まで中身に夢中になっていた猫達は、一斉に逃げ出した。
「あっ! 待ってくれ! 怪しい者じゃないからー!」
叫びながら、大牙は狭い室内で猫を追い回し始めた。当然、騒ぎはベルの耳目に入った。
「何事です? …ああ、恐れていたことが…。」
ベルは頭を押さえ、ポケットに入れていた小さな装置のスイッチを入れた。少し経って、赤紫を基調とした、ニンジャのような格好の青年が天井から降りてきた。首には和柄のストール。口元には黒いマスク。
「抜刀!」
青年が刀をしまい、パチッと音を立てると、大牙はその場に崩れ落ちた。
「ここは地下なのですが…。」
「無理を言って、多少改修して貰った甲斐があったな。これなら、速やかに駆けつけやすい。」
「改修内容は…今は訊かないでおきましょう。それより…。」
室内では、猫達が怯えて各々隅に身を寄せている。数も減っている。どこからか逃げ出したのだろう。
「これでは、ネコカフェの意義がなくなるな。」
「いいえ、そんなことよりもっ!」
ベルは怒りを露わにし、何事か喋り始めた。
「このままでは猫は安心して人間の傍で寛げないではないですか! 猫は元々警戒心が強い生き物なのです! 故に、安息を得られる保証がない限りは、決して近寄ってはくれないのです! ええ、こちらがどんなに品質の良い餌を用意し歓迎の意を示そうとも、心を開いてくれない限りはその高貴で愛らしいその身を寄せてはくれないのです! 触れるどころかそのお姿を見ることさえままならない…これが、どれだけの苦痛か、猫に無礼を働く輩には解らないでしょうね! ああ、嘆かわしい…!」
「珍しい顔して珍しく力説するな…。それより、猫をどうにか安心させてやらないとな。」
呆れた眼で青年がそう言うと、ベルは平静を取り戻した。
「はぁっ、はぁっ…そ、そうでした…これは、クロノを呼ぶしかないでしょうか…。」
「そうだな。だが、クロノは今、迷い猫を飼い主の許へ帰しに行っていたな。いつ頃戻って来られるか…。」
にゃーでんすの営業、そして怯える猫達への不安を抱えながら、どうしたものかと二人は頭を悩ませた。
- 神と猫の集会場 ( No.594 )
- 日時: 2015/11/13 21:44
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
その頃、ノーデンス社外…。
「にゃーでんす! にゃーでんす!」
「にゃーでんす! にゃーでんす!」
「行ってみたいにゃ、にゃーでんすー!」
ミネットとリリィが鏡を間に挟みながら仲良く手を繋ぎながら、ノーデンス本社前にやって来ていた。ちなみにこの中の二人、十七歳です。
その後ろから、昴、凪、ジャン、烈が微笑ましい表情を浮かべながらついてくる。ふと、何かに気がついたのか、烈はジャンを見る。
「しかしジャン、お前、よくネコカフェなんかに行く気になったよな。」
「ミネットに連れてけってせがまれたんだよ。」
「ミネットって確か俺と同い年だよな。…パシリ?」
「それ以上言うと剣の錆にするぞ、烈。」
ヴェンデッタを取り出していい笑顔で微笑むジャンに、烈は「ごめん。」とすぐさま謝罪をした。
そんな戯れは置いておいて、社内の受付カウンターまで来ると、凪は一人離れた。
「じゃー、僕はカーソルさんに用があるから、帰りに合流するねー。」
「おう、なんの用かはわからないけど、気を付けてなー。」
「うん、昴さん達も楽しんできてねー!」
そして凪と別れた昴達は、にゃーでんすがあるという地下一階を目指そうとしたが…。
「おい、誰だよエレベーターのボタン壊したの。」
「うわー、ボタンがめり込んでるにゃ。凄いにゃ。」
なんと、エレベーターのボタンが破壊されており、現在使用不可能のようだ。しかも近くにいた社員に話を聞く限りだと、エレベーターの中も亀裂が入っており、今は完全に使えないそうだ。
これにはジャンも呆れたように肩を竦め、ミネットはまじまじと壊れたボタンを見るしかなかった。
「凄いね…。まるで力任せに連打したみたい。」
「何したらこんな風に壊れるんだしマジで。」
リリィと烈も怪訝そうに壊れたボタンを見ていた。
「仕方ないな。お前ら、非常階段から行こうぜ。」
エレベーターが壊れている以上、仕方のない選択だった。
地下へ降りていると、ミネットは何かを察知したのか立ち止まった。
「どうした、ミネット?」
「にゃにゃ…ねこねこネットワークに警報が発令されたにゃ! 場所は、ここの地下にゃ!」
「つまり、地下で猫がピンチなのか?」
「そうにゃ! 幸い、自主避難している猫もいるにゃ! でも、取り残された猫もいるにゃ! にゃーっ!」
いてもたってもいられないのか、ミネットは駆け降りた。
「あっ、おい!」
「俺達も追うぞ!」
ミネットに続き、昴達も階段を駆け降りた。
- 神と猫の集会場 ( No.595 )
- 日時: 2015/11/13 21:51
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
ベルと青年が猫を宥めようと四苦八苦していると、扉から勢いよく何かが飛び込んできた。
「な、何だ!?」
何か—ミネットは猫達を見てホッと安堵するも、すぐにベル達に向き直った。
「にゃにゃ! 猫達を怖がらせたのはお兄さん達なのかにゃ! きっとそうにゃ! ここにいるのはお兄さん達だけにゃ!」
「待て、俺た」
「問答無用にゃーっ!」
ミネットはどこからか魚の形をした斧、ジャガーノートを取りだし、青年に向けて振りかぶった。
「うおっ! 危ないなお前!」
青年は持っていた刀がしまわれた鞘でなんとかミネットの一撃を防ぐ。
「事情も聞かずにいきなり攻撃はないだろ!」
「猫達を怖がらせて何を言ってるにゃ! 大人しくミネットの斧のさびに」
『ミネット様ー! 違いますにゃー!』
ミネットが着地したところに飛び込んできた一匹の白猫が、ベルと青年、そしてミネットの間に立った。
「にゃにゃ? 違うってどう言う事にゃ?」
「? なんだ?」
猫の言葉が解らない青年は、同じく猫の言葉が解らないベルと共に首をかしげた。
『コイツら、居場所がなくなったオレ達を拾ってくれた恩人にゃんです! さっきもオレ達を襲ったブレイモノから守ってくれたですにゃ!』
「よく分からんが、すごく失礼なことを言われている気がする。」
「ううん、言葉は悪いけど、感謝してる。」
「へー、そう…うおっ!」
突然隣にいた浮遊する猫型生物—リリィに、青年は驚いて飛び退いた。
「だ、誰だお前! ま、マモノか!?」
「人の妹をマモノ扱いしないでくれっか?」
後から入ってきた赤毛の青年—烈が、ポキポキと指をならしながら自分を睨み付けていたので、青年は萎縮してしまった。
「す、すまない…だが、お前の妹?」
「お客様に対し失礼ですよ、ムラサメ。それより、貴方と彼女は同じ種族とは思えませんね。トウキョウでは珍しくないことなのでしょうか? それとも、貴方のご趣味ですか?」
「お前の方が余程失礼だ。」
青年ームラサメはベルにそうツッコミを入れると、ミネットの方を見た。驚くべきことに、先程まで隅で怯えていた猫達が、ミネットを中心に集まっていたのだ。
「よーしよしよし、もう安心していいにゃ。」
猫達を一通り撫でると、ミネットはムラサメの方を見た。
「お兄さん達の事聞いたにゃ。いい人達で安心したにゃ。うにゃっ!」
「おいミネット、まず言うべき言葉はそれじゃねぇだろ。」
いつの間にかミネットの近くにいたボサボサ髪の少年—ジャンが、ミネットを小突いた。
ミネットは小突かれた頭を押さえながら、ムラサメに向き直った。
「ご、ごめんなさいにゃ…。」
「誤解が解けてよかった。それよりも、折角来てもらったが、何匹か猫が逃げ出してしまったんだ。すまないが、しばらく待っていてくれ。片付けと…猫を捜さなければならないからな。」
猫があまりいないネコカフェなど、ネコカフェとは呼べない。ムラサメはそう言って一度ミネット達を外に出そうとした。
「そういうことなら、俺達も手伝わせてくれ。」
不意に、声が響き、更に黒服をまとった人物—昴が入ってくる。
「手伝いを? ですが、お客様の手を煩わせる訳には…。」
「うちのが知り合いらしい奴に事情を聴いて飛び出していっちまったし、どーせこうなった原因はそこ寝っ転がってるDQNだろ? そいつ、俺達の知り合いと思いたくない知り合いだから、こうなった責任もあるし…。」
「本当にうちの仲間の兄が申し訳ない。」
昴の死んだ目を浮かべながらの説明の後、関係者に程近い烈が深々と頭を下げて謝罪をする。流石大人の話し合いをしている最中に近所に頭を下げ慣れているのか、見ていて清々しい。
「そういうことでしたら、お言葉に甘えさせて頂きましょう。それにしても…。」
チラリと、大牙を見るベル。
「昨夜、ZONBIEということにして始末しなくて良かったですよ。DQNということであれば、いくら害虫でも問題になりますからね。」
「本当に申し訳ございません。後でこいつの妹に任せますんで。」
烈は再び深々と謝罪をする。その手には既に携帯電話が握られていた。あぁ、これここから出たら鈴花に報告する気満々だ。大牙の命日が確定した瞬間である。
「とにかく、猫探しをしないと。」
「幸い、この建物から出た猫はいないみたいにゃ。でも完全に怯えちゃって通気孔に入ったまま出てこない猫もいるみたいにゃ。ある程度の猫達は呼んでみるけど、そういった猫達はちょっとミネットも難しいにゃ…。」
「そっちはリリィに任せるか。」
とにもかくにも、猫探しに繰り出す一同だった。…大牙を昴が出したロープでぐるぐる巻きにした上に同じく昴が出した簀を巻いた状態で置いて。
「ベル、にゃーでんすにあんな物騒な物を置いていたのか?」
「いえ、そのような憶えはないのですが…。」
事情を知らないムラサメとベルは困惑するものの、不届き者を封じられたことに、ひとまず安堵した。
- 神と猫の集会場 ( No.596 )
- 日時: 2015/11/13 22:02
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
その頃、一人別行動していた鏡はというと…。
「何でオレサマが猫探しに付き合わなきゃならねえんだよ、マッタク…。」
「えー、でも、困ってるようだし…。」
「猫とかホントどーでもいいし、アイツ等腹が減ったら戻ってくるんじゃねーの? ほっといてもいいじゃねえかよ。」
「えー…。」
途中で出会ったナガミミをなかば強引に連れ出して猫探しをしていた。
「えーじゃない。オレは忙しいの!」
「そうは言っても手伝ってるナガミミちゃんもナガミミちゃんだよね。」
別行動していた澪が合流した時にポツリと呟くと、ナガミミの耳に入ったのか、澪を小突いた。
「いたっ。」
「大して痛くねえだろうが。いいか? 本来ならあの猫の溜まり場を管理するアイツラの仕事なんだぞ? 管轄外のオレにも面倒事を持ち込まれるのが嫌なんだ。面倒事はさっさと済ませるに限る。」
「えっと、こういうのって確か、“つんでれ”って言うんだよね!」
この後、鏡がナガミミに小突かれたのは言うまでもない。
「痛いよー…。」
「ちょっとナガミミちゃん! お客様まで手をあげちゃダメだよ!」
「客でも容赦しねえ。それにジュリエッタにやったみてえに顔面めり込ませてねえんだからまだいいだろうが。それとチビスケ。むやみにそんな言葉を使うんじゃねえ。」
「えー? だって、色んな人がよく使ってるし…。」
「はあ、これだからニンゲンは…。いいか、チビスケ。“多数派が正しいという考えこそが間違い”だ。交通ルールを破るニンゲンは数多くいるが、ヤツらが正しいとは思わないだろ?」
(ナガミミちゃんも今は人間だよね…。多数派が正しいとは限らないって言う話は同意するけど。)
澪はナガミミの言葉に何か言いたそうだったが、それを今、鏡に話しても首を傾げられるだけだと思い、これ以上何も言わなかった。
「そ、それよりも鏡君、猫ちゃん探そっ、ねっ?」
「うん!」
これ以上鏡が変な事に興味を抱く前に、澪はそう促した。
「うーん、でも、猫どこにいるんだろ…。あっ!」
鏡が何かを見つけたのか、とてとてと設置されていたテーブルへ走り出す。
澪とナガミミも慌てて追いかけ、そこで見たものは、プルプルと震えて踞る子猫だった。
「猫さん見っけ!」
「ちょ、ちょっと待って!」
澪は、子猫に手を伸ばそうとする鏡を、慌てて制止した。
「この子、怯えてる。驚かしちゃダメだよ。」
「首根っこ掴んで持ってったらダメなのか?」
「逆に警戒されて二度となつかなくなりそうだけどね。」
ナガミミの提案を、澪はスッパリと一刀両断した。
「うーん、じゃあ、これで出てきてくれるかな? 凪からもらったんだけど…。」
そう言って鏡がポケットから取り出したのは、ヨーヨーだった。
「ヨーヨーなんかで出てくんのかよ。」
「わかんないけど、いつも凪がこれをシャーってやって河川敷の猫を集めてたよ?」
「これで来てくれるかな…。」
物は試しに、と言わんばかりに、鏡は子猫から少し離れたところでヨーヨーを回し始めた。
くるくる回るヨーヨーを、子猫はじっと見つめていた。
「くるくるー。」
「…。」
子猫はまだじっとくるくる回るヨーヨーを見つめている。
「まどろっこしいなー。」
「ナガミミちゃん、しっ!」
今にも子猫に飛びかかろうとするナガミミを、澪はとどめる。
やがて、何故か安心したのか、子猫はとことこと鏡に寄って来た。
「にゃー。」
「にゃー♪」
面白そうなもの、害のないものと判断したのか、子猫はヨーヨーにじゃれついた。
軽く小突いてみたり、挟んでみたり。鏡は止められたその度に紐を巻き、子猫の前に落とす。
どうやらすっかり鏡に対しての警戒心は消え去ったようだ。それどころか、鏡に何かを期待するような目で見ている。ヨーヨーを落としてほしいのだろうか。
「凄い、鏡君。子猫を落ち着かせちゃった。」
「やるじゃねえか、あのチビスケ。」
鏡になついた子猫を見て、澪とナガミミは感心と驚きが混じったような顔をしていた。
「えへへー。さっ、みんなのところに帰ろー?」
「にゃー!」
パタパタと尻尾を揺らしながら、子猫は鏡の後ろをついていく。
「よーし、これで猫は見付かったな。オレは仕事に戻るぞ。」
「それがね…逃げ出しちゃった猫はまだいるんだ…。」
澪の言葉に、ナガミミは嫌そうな顔をした。ええ、あからさまに嫌そうな顔を。
「だったら、チビスケが一人でやれ。オレがいても役に立たんだろうが。」
「えー! そんなぁ…!」
鏡は悲しそうな顔をしてしょんぼりとうなだれてしまった。横では子猫が同じようにしょんぼりとうなだれている。
「…ああ、もう、そんな顔すんな! 後ろ髪引かれるだろうが! オイ、チビスケ。このナガミミ様を引きとめた代償はきっちり支払って貰うからな!」
「だ、代償…お小遣い足りるかな…?」
「そうじゃねえって! いいからさっさと猫を捜すぞ!」
ナガミミはちょっと乱暴にズンズンと進んでいった。
「素直じゃないなあ…。」
澪はそんなナガミミを、クスクス笑いながら見つつ、着いていった。
- 神と猫の集会場 ( No.597 )
- 日時: 2015/11/13 22:07
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
「怖くない。もう大丈夫。悪い人、いなくなった。」
『ほ、ほんとかニャ…?』
「ミネットさんも、呼んでる。一緒に、行こう?」
『わ、わかったニャ。ミネット様もお呼びですからいきますニャ。』
同じ頃、通気孔内に逃げた猫とリリィは会話していた。猫は怯えつつも、リリィに着いていった。
通気孔から一緒に出てきた猫とリリィは、プルプルと全身を震わせ、埃を落とす。
「おつかれ、リリィ。埃まみれだな。」
「真っ黒。烈君、後で一緒にお風呂はいろ?」
「ああ、体洗ってやるよ。」
「えっ…?」
ちなみに言うが、やましい意味は一切ない。だが、その会話をたまたま通りかかったジュリエッタが聞いてしまい、奇妙なものを見る目で烈とリリィを見ていた。
「あらやだ、アナタ達って、そういう関係だったの? 隅に置けないんだから♪」
「え、ちょ、違っ…! つかアンタ誰!?」
「あ、ジュリおじちゃん。」
「え? ジュリおじちゃん? リリィ、知り合いなのか?」
烈が訊ねると、リリィはひとつ頷いて答えた。
「うん。前に、ダーターでおおばんぶるまいしてくれた。」
「いまいちよく分からんが、いいや。リリィが世話になったみたいだな。俺は烈。こいつの…まぁ、兄貴みたいなもん。」
「アタシはジュリエッタよ。よろしくね、烈君。(この子、あの天使そっくりねー。あぁ、愛くるしい、撫でたくなる感じも似ているわー。部屋に連れ込んであーんな事やこーんな事をしたくなるわ。いや、ここには誰もいないし、あの可愛い子猫ちゃんもいるし、猫ちゃんもいる事だし、いっその事このままアタシの開発部長室に連れ込んで(※ここから先は自主規制))」
(…何か、寒気がした。あぁ、もしかしてこの人、牡丹とかと同類か?)
ジュリエッタから漏れだす、嫌らしい視線と思念を感じた烈は、ジュリエッタが妄想の世界に沈んでいる隙に、リリィと猫を伴ってそそくさとその場から逃げた。
「あっ、待って! アタシの天使ちゃん!」
「そこまでだ。」
天井からムラサメが降りてきて、ジュリエッタの首筋に刀を寄せた。
「通報を受けて来てみれば…またお前か。」
「ゲッ、ムラサメ…!」
「選ばせてやる。彼岸へ行くか、此岸に留まるか。」
「できれば生き残る方にしてちょうだい。」
きっぱりと訴えるジュリエッタに、ムラサメは、刀を収めた。
「ならば、衝動を抑えろ。できないなら、彼岸にすら行けないと思え。」
「えー。可愛い子を見たらキュンとするのが一般的でしょ?」
(どんな一般的だよ…。)
烈は会話を聞きつつ、そう思っていた。思うだけだったが。
「なら、望み通り魂ごと微塵に刻んでやる。」
流石に嫌な予感を感じ取った烈は、リリィと猫をつれて即座にその場から離れた。
その後、ジュリエッタの悲鳴が聞こえてきたのは、烈の気のせいにしておこう。
「ジュリおじちゃん達、どうしたの?」
「そのおじちゃんは今、お楽しみ中だ。邪魔しちゃ悪いから、早く行こうぜ。」
『そうニャ。お邪魔しちゃ悪いニャ。』
「うん。」
烈と猫に諭され、リリィは気にしないでいる事にした。
「さて、猫はどれくらいまで集まったかな。ちょっとミネットに連絡とってみるわ。」
そう言って烈は携帯を取り出そうとしたが、画面にあった着信表記に、思わずフリーズした。
「…? 鈴花さんから着信?」
「…メールの詳細を教えてほしいんだろうな。出来れば俺の口から。リリィ、猫連れて先戻ってろ。」
「うん。じゃあ、一緒に行こう。」
リリィは猫をつれて、先ににゃーでんすに帰っていった。
烈はとりあえず手近にあった椅子に腰掛け、震える手で通話に応じた。
「…もしもし。」
『ハァイ、烈君。うちのクソ兄貴、今度は一体何やらかしたの? 会社でもぶっ壊した?』
「(ヒイィッ! な、なんか上機嫌なのが逆に不気味なんだけど!)大丈夫だ。“会社”は壊れてない。正確には、一部を除いて、か。」
烈は大牙がにゃーでんすに至る道のりで、社内の設備をあちこち壊したこと。にゃーでんすの猫を怯えさせ、一部の猫が逃げ出したことを、簡潔に説明した。
『うんうん、ありがとー、烈君。よーくわかったよー。…あのクソ兄貴を即座に沈めた方がいいっていうのが。』
「ああ、説教部屋の予約を済ませろよな。時間は、昴さんと応相談な。」
『ハーイ。』
「それと、回収する時は、他の奴らに、その…気を遣えよ。」
『わかってるよー。じゃあ、烈君。“また後でね”♪』
その言葉を残し、鈴花は通話を切った。
(不安だ。俺達、巻き込まれないよな?)
烈は携帯を持つ手を震わせながら、今は何も映っていない画面を見つめていた。
その後、ミネットに電話をかけて猫が全匹戻ってきたのを確認したので戻ろうとしたが…。
(…足に力が入らねぇ…。)
鈴花のあの電話越しに伝わる気迫に押されてか、烈はしばらくその場から動けなかったそうな。
- 神と猫の集会場 ( No.598 )
- 日時: 2015/11/13 22:15
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
そして、にゃーでんすへとなんとか戻ってきた烈は、片付けられた部屋で寛いでいた。
その横では昴がガタガタと震えている。烈は直感で、鈴花から電話がかかってきたことを悟った。
「昴さん、俺達にできることは何もねぇし、ゆっくりしてようぜ。」
「あ、ああ、だな。…鈴花の奴、なんっつー殺気を…電話越しでも伝わるって相当だぞ…。」
「ああ、隣で聞いていた俺も思わずビビって昴の服の裾を握っちまったよ…。」
昴はおろか、ただ聞いていたジャンをもビビらす鈴花の殺気。余程末恐ろしいものと見た。
一方、受付付近では、迷い猫を届けて帰って来たクロノと、粛々と仕事をするベルが会話していた。
「ベル様。お客様の電話から、真竜よりも恐ろしい気を含む声が聞こえたのですが。」
「聞こえすぎるのも問題ですね。何が聞こえたか判りませんが、あれはお客様がたの問題なので気にしないでおきましょう。」
「関与しなくても良いとはいえ、震えが止まりません…。」
「俺の仲間がほんとにすみませんでした。」
クロノの呟きが耳に入ったのか、烈はクロノに向かって頭を下げた。
クロノはルシェ族故に、耳が良い。故に、多くの音を耳に入れてしまうのだ。ちなみに、“ルシェ族”はTodestriebの傲慢ちゃんとは何も関係がない。
「はー…。安らぎに来たのに何でここまで違うストレスためなきゃいけないんだよ…。」
昴は持ち込んだネコ缶(※ベルの検閲済み)を開け、用意された皿に盛り付け、目の前に置いた。猫達はこぞって群がり、はぐはぐと食べ始めた。
「…まぁ、いいか。可愛いし。」
猫に癒され、ご満悦の昴。ふと、この時、少し悪戯したくなり、ノートにこっそりと記述をした。
「ん? 昴、何出してんだ?」
「鍋。」
「鍋? おい、何出してんだよ。」
「中身は空だ。ほら、有名な写真があるだろ? 猫鍋。」
昴は目の前に鍋を置く。無論、ノートを用いて出現させたものだ。
狭いところが好きな猫が一匹、昴の出した鍋に入る。この時点でもう可愛い。が、何を思ったか昴は、そのまま蓋を閉めた。
「おい、何やってんだよ昴。」
「猫のお部屋ー。後で普通に蓋を開けるから心配すんなって。」
どうやら、あの有名な猫鍋に何故か蓋をしたくなったらしい。
が、ここで事件が起こった。なんと、その猫が自分から蓋を開けて持ち上げ、腰を降り始めたではないか! その様子はまるで、なんちゃら症候群で有名な、日曜日の長寿アニメの猫さながらだった。しかも入ったのが白い猫だからもう完全に再現しているんですけど。
「」
これには昴もジャンも烈も絶句。受付から遠目で見ていたベルとクロノも絶句。
「クロノ、これは一体…!」
「にゃーでんすの全ての猫は、私がしかと確認しました。皆、何の変哲のない猫です。しかし、あの猫は一体…!」
猫の突然の行動に、全員黙ってその様子を見る。猫は相も変わらず腰を降り続ける。
「これは、研究開発チームに調べて貰わなければなりませんね…。」
「今、お連れしますか?」
「お客様に危害を加える可能性が無きにしも非ずです。頼みましたよ。」
「分かりました。」
クロノは昴達の許へ寄り、猫鍋に手を伸ばした。
「失礼します。」
猫から鍋蓋を取り上げ、猫を抱きかかえると、クロノはそのままにゃーでんすを去った。
「申し訳ござりません。安全上の都合上で、あの猫は一時退避させます。」
「なんか言葉遣いおかしくねえか?」
動揺が滲み出ているのか、ベルの言葉遣いが、やや変になっていた。
「…失礼致しました。他の猫は、問題ない(筈)ので、引き続きお寛ぎ下さい。」
「お、おう…。」
昴は代表してそう答えると、やや複雑な表情でのんびりと寛いだ。
「…しかし、なんだったんだろうな、あの猫。」
「いきなりサ○エさんした時はびびったが、あれが普通の猫なのか?」
「ジャン、あんなのが普通の猫なら俺、この世界を理から創り直すぞ。」
「だよなー。(多分プレアもそう答えるだろうな。)」
きっぱりと、昴はそう訴える。世界の真実を知るジャンも昴の言葉に同意し、スバルの考えも読んだ。
そんな折り、クロノが猫を抱き抱えて帰ってきた。そして猫を降ろし、ベルへと向き直る。
「ベル様。この猫は検査の結果、“ごく普通”の猫と結果が出ました。なんら異常性のない、ただの猫だと…。」
「では、トウキョウの猫独自の特徴だと?」
「それは分かりません。ですが、件の話をしたところ、大変興味を持たれました。その様子から察するに、“ごく普通”の猫は、後ろ足で立って腰を振るような動作はしないと思われます。それがトウキョウの猫であれ。」
ベルとクロノの会話を盗み聞きしていた昴は、猫の理をどうしたものかと悩んでいた。取り合えず現実逃避のために、もう一度鍋を出し、猫を招く。
やがて、今度は茶色の猫が鍋に入る。そして蓋をする昴。
「にゃー。」
猫は蓋を開け、腰を振る。
一同、またも絶句。純粋組は感激のあまりキラキラとした目で見ていたが。
「直接、猫の言葉を聞くことが出来れば、理由が解るかもしれませんね。」
「あ、それなら…ミネット、ねこ使いのお前なら余裕だろ?(ああ、俺も理由が知りたい。)」
ベルの呟きに反応したジャンは、猫の言葉が理解できるねこ使いのミネットを頼った。
「キャットシッターミネットにお任せにゃ! …にゃんか知らないけど、できたっていってるにゃ。」
「なんか知らないけどでできるのかよ!」
どうやら猫達にもなぜこんな芸当ができたかわからないようだ。
「…取り合えず、考えないようにしよう。うん。」
昴達はもう、その件については考えないようにし始めた。…腰を振り続ける猫を、そっと見ながら。
- 神と猫の集会場 ( No.599 )
- 日時: 2015/11/13 22:38
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
しばらく鍋猫の事は忘れてくつろいでいると、突然入り口のドアが開かれた。
ドアの先には、可憐な乙女がいた。が、室内の人も猫も、全員が怯えていた。
「ちはす! 三河屋…じゃなかった、始末屋のリンちゃんです!」
(どんな登場の仕方してんの!? つか、鈴花が来た瞬間室内の気温が一気に下がったのは気のせい!?)
可憐な乙女—鈴花は、ニコリと笑って簀巻きにされてる大牙を指差しながら、ベルを見た。
「友達に頼まれて、そこのクソ兄…じゃなかった。不良の引き取りに参りました!」
「初めまして。立場上、処分することが叶いませんでしたので、助かります。」
やや気圧されながらも、ベルはいつも通り対応する。
「いーえー。こちらこそ、そこの不良品…いやいや、クソ兄…ごほんっ、お兄ちゃんがご迷惑をお掛けして、本当にごめんなさい! エレベーターの修理費用はこちらで出すので、穏便にお願いします! あ、昴さん。説教部屋、借りるね?」
「あ、ああ。…静かにやれよ?」
ガタガタと震えながら、昴は不穏な気の籠った鈴花にそう告げる。
「わかってるよー。夜も遅くなっちゃったら近所迷惑だしね! じゃあ、私はこれで! 今度、お客さんとして遊びに来ますね! ほら行くよ、お・に・い・ちゃん♪」
大牙はそのまま、鈴花に引きずられていった。…全員、猫も含めて全員、大牙に向けて合掌をしたのは言うまでもない。
「鈴花さんが怖い…。」
「鈴花が怖いにゃ…。」
「鈴花が怖いよ…。」
あまりにも嬉々として鬼気とした鈴花に、純粋組の三人はそれぞれの保護者に泣きついた。
「これ、ローズには見せられないな…。」
「ああ。完二にも見せられない。」
「確実に前者は泣く。そして後者は…怯えてどうにもならなくなるだろうな。」
だがその保護者達も、震えを抑えることはできずに、半泣きの状態だったそうな。
「能力は真竜に劣りますが、精神を圧する気迫を感じます。戦うことになれば、私達は不利になるでしょう…。」
「彼女を敵に回してはなりませんね。状況によっては、毅然とした態度で相対しなければなりませんが。」
遠巻きに見ていたクロノは鈴花に怯え、ベルは冷静に気を取り直す。
「あー、えっと、一応言っておくが、あいつ…鈴花は、“普段は”花とか猫が好きな奴なんだ。だけど、兄貴が粗相した場合は…。」
「あのように豹変するのですね…。」
昴の言葉に答えたベルに苦い顔をされ、彼女を知る一同は何も言えなかった。
「…みんな、今の鈴花は忘れよう。」
全員、昴の言葉に頷いた。
- 神と猫の集会場 ( No.600 )
- 日時: 2015/11/13 22:44
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
そして、時間も忘れて寛ぎすぎて、いつしか夕暮れ時になりかけていた。
「うわっ、もうこんな時間!」
「かなり長居しちまったな。そろそろ帰らないと。凪の方も終わったかな。」
「終わったよー。」
いつの間にか、一同の背後に凪が立っていた。これには当然、全員驚いた。
「うおわぁっ! お前な、気配消して背後に立つなって何度言えばわかる!」
「ごめーん。」
猫に配慮し、少し抑え気味に凪に怒鳴り付ける昴。そしていつものように返す凪。
「まったく…。で、用事って何だったんだよ、結局。」
「それはお話しできないよー。この会社の機密事項に関わるからー。」
「…まぁ、いいけど。ろくなことじゃなけりゃな。」
何を企んでいるかはわからないが、凪の言うことだし、大丈夫だろうと信じることにした昴だった。
「じゃあ、えっと、ベル、だっけ。悪いな、長居しちまって。あと、例のDQNの事も。」
「こちらこそ、ご来店頂きまして、ありがとうございます。不慮の事故がありましたが、お寛ぎ頂けたなら、幸いです。」
「あーうん、不慮の事故はもうスルーしておこうぜ。じゃあ、また来るな。」
そんなこんなで、一同はベルとクロノにお礼をいいながら、去っていった。
■
数日後、聖域のポストに、昴宛の手紙が投函された。「親展」の文字が、封筒に書かれている。
「ん? 俺宛だ。差出人は…。」
差出人を確認した後、昴は執務室に行き、手紙を読み始めた。
『拝啓 時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
先ずは、勝手に住所を調べ、突然手紙を送る非礼をお詫び致します。先日はネコカフェ“にゃーでんす”にお越し頂きまして、誠にありがとうございます。
本題ですが、貴方とゆっくりお話し頂く機会を設けたいと思います。つきましては、お手数ですが下記の電話番号に連絡を入れて頂き、都合の良い日時をお伝え下さい。その際に面談場所をお伝えします。
それでは、良い返事をお待ちしております。
敬具』
「…ベル…あのにゃーでんすの店主か。(理乃から、あいつは油断ならないって聞いた。もしかしたら、この世界の核心を朧気ながら掴んでるのか?)」
半ば脅迫のような内容に昴は暫し考え、携帯を手に持った。
(どこまで知ってるか、いや、その話じゃないかもしれないけど、仮にここで引いたら鏡達を脅してまで聞くかも知れない。だったら、俺が直接出向いてやろうじゃねぇか。)
そして書いてあった電話番号にコールした。
- 神と猫の集会場 後書き ( No.601 )
- 日時: 2015/11/13 22:50
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: AOK.B8lR)
後書き de 雑談
私
—…って、終わるんかーいっ!!
昴
「不穏な空気のまま終了しました。」
理音
「初めましての方はNigra Ludia.お久しぶりの方はLudus In Tenebris.ベルがまた出しゃばりやがりまして困惑してる、陰日向理音です。昴の運命やいかに。」
昴
「勝手に出てきて勝手にお前の推しているアーティストさんの楽曲並べて勝手に困惑して勝手に次回予告風にするなし。」
理音
「誤解です! 推しているのは曲の方です! …いえ、もうこうなったら作曲者様の方も推すしかないのでしょうね…。今まで黙っていたのに…。」
昴
「何を今さら。まあいい。今回もこいつと組んで書いたが、なしてここでぶったぎりやがった。あれか? 焦らしプレイか?」
理音
「よく分かっているではないですか。」
鏡
「それで、この続きはあるの?」
理音
「いいえ? ありませんよ?」
ジャン
「焦らしプレイの上に放置プレイかよ。アンタ、どんだけSなの?」
理音
「Sではありません。Fです。」
昴
「…触れたら負けな気がしたからもういい。とっととお前んとこの残りのメンバーを紹介しやがれ。どうせ自慢もかねて紹介するつもりだったんだろ?」
理音
「TOTTOと?」
※しばらくお待ちください。
昴
「紹 介 し や が れ 。」※拳からぷしゅー。
理音
「失礼致しました。まずは、やたら好かれているっぽい、けもみみ娘から。」※頭に三倍アイスクリーム
名前:クロノ
外見:フォーチュナー女A3
職業:フォーチュナー
VO:ボイスタイプI
備考:立ち絵の見た目は黒っぽいのに、立ち絵でない時は緑色の不思議。
ルシェ族の女性は頭に獣の耳が生えているのだが、一般的な人類が耳を生やしている場所は、髪に隠れて見えない。どうなっているのか気になる。
13班の中で一番、動物に好かれる。
理音
「本編でも触れましたが、傲慢ちゃんは関係ありません。悪しからず。」
由梨
「ボイスタイプIは井上麻里奈さんだ。進撃の巨人のアルミンや、テイルズオブハーツのヒロイン、コハクの声もやってるな。ああ、ペルソナ3のハム子(女主人公)もやってたか。」
理音
「アルミ缶の上にあるミカン。琥珀に告白…失礼。補足すると、ルシェ族の男性はエルフ耳で、女性は獣の耳です。どちらかに統一すればいいのに。」
昴
「下手な駄洒落言うなし。…それが無印からのルシェの外見なんだから今更文句言わない。でも、男ルシェにケモ耳生えててもちょっと…うん。まぁいい。次行け。」
理音
「獣の耳の男もいいと思いますが。それよりも、次のメンバーの紹介をしましょう。」
名前:エリー
外見:デュエリスト女A2
職業:ルーンナイト
VO:ボイスタイプO
備考:裏ラスボス戦のMVP。優秀な盾としての働きを見せてくれました。
女性の声は苦手な声が多いので、選ぶのに時間がかかった。声優の皆様、誠に申し訳ございません。
13班の中で一番、勉強が苦手。
昴
「ボイスタイプOは茅野愛衣さんだ。ロンパ2の保健委員…うぅ、嫌なの思い出した。」
鏡
「すーさん、大丈夫?」
理音
「何があったか分かりませんが、忘れましょう。」
昴
「だ、だな。次々。」
理音
「では、続いては戦う者、そして、執事。そんなバトラーです。」
ジャン
「なぁ、お前の解説で何故かFEifのあの執事が出てきたんだけど。」
名前:ブラン
外見:ゴッドハンド男B1
職業:ゴッドハンド
VO:ボイスタイプC
備考:性格は執事っぽくない。何かと適当だけど、料理以外は頼りになる。
おじさんに活躍して貰おうと思ったら、声が思ったより若かった。最初の失敗例だが気に入っている。
13班の中で一番、お化けが苦手。
昴
「ボイスタイプCは杉田智和さん。この人は俺も結構知ってるんだよな。FE覚醒のクロム、ブレイブルーのラグナ、銀魂の坂田銀時、ロンパ2の飼育委員、ああ、消滅都市の主人公であるタクヤもそうか。」
理音
「予約特典のナガミミぬいぐるみ(人になる前の兎っぽい姿を模したやつ)に話しかけると、夜中に動き出さないか心配していました。お化けが苦手だと思い、“13班の中で一番〇〇”の内容が決定しました。ラグナも銀時もお化けが苦手でしたね。確か。」
昴
「確かそうだったな。ちなみに、杉田さんはナナドラ3にてエデンで関わってくる変た…サイラスも演じているぞ。」
理音
「あの種の変態は嫌いではありません。性的な変態は苦手ですが。」
昴
「ごめん、俺はちょっと苦手。デートイベントで更に…うん。取り合えず次行け。」
理音
「はい。では、最後に、天井警備員ムラサメです。」
名前:ムラサメ
外見:サムライ男B3
職業:サムライ
VO:ボイスタイプA
備考:フロワロシードを狩る者。
見た目と声が安定している。しかし、見た目は侍というか忍者…。
13班の中で一番、ぬいぐるみが好き。(人形、あみぐるみは不可)
昴
「竜 を 狩 れ や 。いや、俺もサムライに割り当ててた鏡と由梨にやらせてたが。ボイスタイプAは宮野真守さん。キングダムハーツのリク、テイルズオブヴェスペリアのフレン、FEifのちょっと間抜けな王子レオン。あとはポケモンBWのデントか。」
理音
「リクのイメージが強いです。新作はまだでしょうか…。本体を買わないと遊べないみたいですが、お金も置き場所もない…。」
理乃
「…昴さん、後で慰めておいてください。」
昴
「努力はする。さて、あと一人はどうするんだ? 今回も前回も出てきてないけど。」
理音
「わたくしが設定した13班は、この世界において重要な存在ではないのでそれなりの理由がない限りは出しません。ゲスト出演ということで。最後の一人は、登場した時に紹介しましょう。」
全員
(ゲスト…? ベルに関してはゲストの枠を越えてないか…?)
理音
「何か言いたそうですね。」
昴
「気のせいだ。じゃあ、話すこともなくなったし、またなー。」
■
私
—感想OKですよー。料理対決の戦闘回ってやっぱりムズイや…;
昴
「何を言ってるの? こうなった現況を生み出したボケナスが。」
私
—あい、すみません;