二次創作小説(映像)※倉庫ログ

幕前劇:神殿・鏡の部屋にて ( No.71 )
日時: 2015/05/30 00:23
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)

(もうすぐすーさんの誕生日かぁ…。)

鏡は机の上にある卓上カレンダーを見つつ、ポツリと心の中で呟いた。

—早いわね。もう一年経つんだ。あの日から。

そんな事を考えていると、ふと、鏡のポケットから創世手帳が飛び出し、文字が書かれる。
それを見た鏡は、ふぅ…。と溜息をついた。

(何か、色々あって早く感じるね。)
—二十歳過ぎれば時間が経つのが早く感じるって聞いたけど、あながち間違いでもないと思うよね。

他愛ない話を、二人でする。

(そう言えば、今頃打ち合わせしてたよね。すーさんとりせの誕生会の。)

そんな会話を終えるかのように、鏡が何だか懐かしそうな顔をして心の中で言った。

—そう言えばそうね。…何だか懐かしくなってきたし、振り返ってみる?
(いいの? じゃあ、オレね、りせのライブがどうなってたかも知りたい!)
—そう言えば、鏡君は昴の足止め係だったわね。いいよ、両方とも振り返っちゃおうか。

そして、創造者による手帳への同期が始まった…。

—これは、氷海ちゃんのマヨナカテレビ事件が終息してから、少しした後のお話…。

ある日の為の打ち合わせ ( No.72 )
日時: 2015/05/30 00:29
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)

五月三十日、金曜日。

「全員、来たか。」

烈達つぎドカ!メンバー、鏡達聖域メンバー、悠達ペルソナメンバー、理乃達魔導師メンバー、ジョーカー一味が、MZDがいるこの場所、BEMANI学園校長室に集まっていた。
だが、ここにいないメンバーが二人。

「ちゃんと昴とりせには内緒にして来たようだな。」

そう、昴とりせがいないのだ。

「当人達がいたら、意味ないでしょー? もー、必死だったよー。全員一気に仕事休む理由を考えるのー。」
「こちらも大変でしたよ…。僕は久慈川さんと同室ですから、勘ぐられないようにするのでもう神経使いました…。」
「同じクラスのオレらも気ィ使ったな…。」
「うん…。」

少しだるそうに言う凪と直斗。それに続く完二と鈴花。風雅も少しだるそうにしている。

「まぁ、それも明後日までの辛抱だ。てな訳で!」

MZDが指をパチンと弾くと、ホワイトボードが現れる。

「明後日の、“昴とりせの誕生パーティー企画会議”、始めるぜ!」

影が文字を書くと、一同の気が引き締まる。
そう、明後日六月一日は、自称特別捜査隊のサーチャーであるりせの誕生日。そして、この世界の創造神(正しくは管理者)である昴の誕生日。
本人達は別に祝わなくていいと言っているが、それでも祝いたい。だからこうして、綿密に打ち合わせをしている。

「まずは役割分担だな。料理できる奴は料理班、それと、プレゼントやその他諸々の材料を買いに行く買い出し班。そんで当日に昴とりせを足止めする、足止め班が必要かな?」
「それくらいでいいんじゃね? あれ? でもりせって明後日はライブがあるとか言ってなかったか? 確か、主催があの半裸の…VENUSだっけ?」

陽介が聞くと、直斗が頷く。

「はい、VENUSの二人が主催するBEMANI楽曲中心のライブを、都内のホールでやるみたいです。明日朝一からリハーサルで、明後日が本番だと言っていました。恐らく、向こうでホテルを取って泊まる事になるでしょう。」
「りせは明日からここにいないのか。…昴さんもどっかに行ってくれれば楽なんだけどなぁ…。」

りせは明日、この町にいない。せめて明日一日、昴もどこかに行ってくれれば、準備がしやすいと考えた由梨は、そうぼやいた。

「あ、由梨姉、それなんだけど…。すーさんね、今日の夜からちょっと、一人でお出かけするみたい。明後日には戻ってくるみたいだけど…。」
『確か、創造神に頼まれた仕事とか言っていたが…。その、まさかとは思うが創造神…。』
「ああ。でっち上げた。あと、ライブもオレが仕組んだ! いやー、VENUSの二人に依頼するの、結構骨が折れたぞ…。」

どこまでも用意周到なMZDに、尊敬の眼差しと共に、ツッコミ属性メンバーから哀れみの視線が送られた。
この事がばれたら、恐らく、いや、確実に、MZDは昴によって説教部屋へと招待されるだろう。理由? 勿論でっち上げられた仕事をさせられたから。

「とにかく、だ。明日は二人共いないから、聖域の冷蔵庫とか、使っちまえよ。あと、誕生日プレゼントを選ぶ時間もあるだろ。二人にバレる心配もねぇしな。」
「でも、二人のプレゼントは誰が選ぶの? 料金はMZD持ちとして。」
「おい鈴花、オレ持ちは確定なのかよ。」

まぁ、いいけど…。と呟くMZD。懐が広いのか狭いのか…。

ある日の為の打ち合わせ ( No.73 )
日時: 2015/05/30 00:35
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)

「あの…。」

おずおずと手を上げたのは、鏡だった。

「…すーさんのプレゼント、オレが選びたいんだけど…。」
「んー…。鏡なら昴と一番親しいし、好みも分かってるだろうしな。適任っちゃ適任だ。…理乃。お前もちっと手伝ってやれ。」
「私でいいのですか?」

突然指名された理乃は思わず聞き返す。

「いや、お前か葉月か由梨なら別に誰でも。お前らなら、変な物は買ってこなさそうだし。それに…。」

MZDはこっそりと理乃に近づく。そして彼女に耳打ちした。

「事情を知ってる人間だから、っつーのもあるかな。昴のと一緒に、アイツのプレゼントも選んできてもらっていいか? あ、ちなみに鏡は事情を知ってるから、話しても問題ないしな。」
「成程。わかりました。あの人の分も、きっちり選んできますよ。」
「頼んだ。じゃあ、りせのプレゼントは誰が選ぶ?」

理乃との話が終わった後、MZDは他のメンバーに問いかけた。

「ハイハーイ! クマが選びたいクマ!」
「俺が選ぶ!」

クマと同時に、悠が手を上げる。互いにライバルと認識した瞬間、二人の間で火花散るも…。

「…氷海、雪花、鈴花、千枝、直斗。それから、由梨、葉月。お前達の中の誰かに頼んでいいか?」

MZDが勝手にまともな部類に入る女子を指名していた。

「…まぁ、あの二人に任せるよりは…。」
「無難な選択ですね…。さて、どうしましょうか。」
『ふむ…。ならば、鈴花と葉月で問題ないだろう。二人共、学内外を問わず、りせと行動を共にする事が多いし、好みは把握できていそうだからな。不安ならば、直斗を加えるといい。同い年で、何年も共にいるだろうから、好みはある程度把握しているはずだ。』

紅が思案しつつ、そう指示をする。
稲葉の事件から付き合いのある直斗は勿論、葉月はボイストレーニングを手伝い、鈴花は恋のキューピット役で一緒に行動する事が多い。それを知っている紅は、そう提案し、指名された鈴花と葉月は納得する。

「成程、正論ですね、紅君。」
「そう言われれば、確かに私達が一番りせちゃんに接しているよね?」
「紅、よく見てるねー。あの黒とは大違い。」
『む、むぅ…。それほどではない。』

紅の観察眼に、葉月と鈴花は驚きと関心を持つ。それに紅は少し恥ずかしかったのか、頭を掻いた。

『とにかく、だ。食材の買い出しは残りのメンバーで何とかなるだろう。…料理上手で常識のあるジョーカー、リリィ、セシル、由梨、完二、烈の中から誰か二名程、強制的にこちらに回した方が無難だと思うが。』
「ああ…確かに、約何名か、変な食材買ってきそうだし。」
「うん、確かに買ってきそうだし。」
「ああ、買ってくるだろうな…。」

そう言いながら烈と鈴花、ジョーカーはちらりと牡丹を見た。

「そうですね…。余計な物を買われて、使わないとなったら嫌ですからね…。」
「あぁ、確かにな…。」

理乃と由梨もじろりと七海を見る。

「同感ッス…。」
「オムライスとマロンポタージュのヒゲキは、楽しい誕生日パーティーに持ち込んじゃイカンクマ…。あと、ムドオンカレー。」
「あの物体X共を思い出させないでくれ、クマ…。」

完二とクマ、マロンポタージュの一見で痛い目を見た悠も、雪子を見る。

「烈、何でこっちを見るのですか?」
「必要な食材しか買ってこないから心配しないでよ、理乃。」
「酷いよ鳴上君! 少なくともムドオンカレーは千枝も一緒だったよ!?」
「こっちまで巻き込むな!」

とばっちりを食った千枝が反論するも、一役買っていたのは間違いない。
だが、彼女は現在最愛の陽介の為に頑張っているので、少しはまともになった…かも知れない。

「とにかく、だ。明日に必要な食材とプレゼントを買い揃えて、と…。次は、当日の足止めと調理班の振り分けだな。」

MZDは名前の書かれた人数分の磁石を取りだし、ホワイトボードにくっつけていった。

ある日の為の打ち合わせ ( No.74 )
日時: 2015/05/30 00:40
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)

「料理の出来る奴等は強制的に料理を頼みたいんだが、人数多いな…。」
「つぎドカ!メンバーは烈と鈴花、ペルソナメンバーは完二とクマと悠、レシピありなら直斗と陽介もか。アタシ達は理乃とアタシ、ジョーカー達は…。」
「全員一通りは出来るが…料理ならばリリィが得意だな。」
「ジョーカー様も、凄く、上手。クマ君の腕に、負けてない。」

クマの、と言った瞬間、悠とクマは膝を抱え込み、陽介と千枝、烈は彼らを睨み付けた。春祭りの事件を思い出しているのか。

「…九、直斗と陽介も数えると十一か。ちと多いな。」
「四人くらいで十分じゃないか? 足止めメンバーは多い方がいいだろうし。」
「だな。…とすると、誰か今名前が上がったメンバーの誰かで、代表者を一括り一人ずつ選べば十分か。んじゃ、話し合いだな。」

そして、各々話し合いを始める。

「んー…。俺が行くより鈴花が行った方がいいな。お前の方が料理の腕、上だし。」
「そうかな…? じゃあ、私が調理班に回るね!」

結果、つぎドカ!メンバーは鈴花に、

「俺は完二が行った方が十分安心できる気がする。(相棒やクマに行かせたら他の調理班に加わる女子が危ない。)」
「それに賛成。(鳴上君とクマ君の暴走回避の為に。)」
「僕も同感です。巽君なら料理の腕は申し分ありませんから。(女の敵を女子の前に晒したら危険です。)」
「おう、じゃあ、オレ行ってくるわ。」

ペルソナメンバーは完二に、

「アタシは和食なら得意だが、他のは平凡だからな…。理乃、お前行ってくれ。」
「わかったわ。ふふっ、久し振りに腕がなるわね。」

司組は理乃に、

「…ジョーカー様、私、足止めに回りたい。」
「何故だ? 料理の腕ならば我よりも上のはずだが…。」
「…ライブ、面白そうだから。…ダメ?」
「(うっ、ウルウル目攻撃…。)わかったわかった。我が調理班に回ろう。…それに、あのキッチンを把握している人物も一人は必要だろうからな。」

ジョーカー一味からは、ジョーカーが出る事になったようだ。
…と言うかペルソナメンバーの完二を推す理由。それとリリィ、お前な…。

「んじゃ、決まり! 残りのメンバーで飾りつけと、足止めに分かれてくれ。」

調理班以外のメンバーは、再び話し合いを始めた。
結果、

「りせの足止めはアタシと千枝、リリィにローズ、それから烈か。」

由梨と千枝、リリィとローズ、そして烈がりせの足止めにまわり、

「昴さんは私と陽介君、セシルちゃんとフランシス君、それと鏡君だね。」

葉月と陽介、セシルとフランシス、そして鏡が昴の足止めにまわり、残りは飾り付け等の準備にまわるようだ。

「…こりゃまた、見事にまともなメンバーが揃い踏みだなそっち…。」
「あ、だな。昴さんの方、ツッコミ属性少ないわ。」
『いや、メンバー的にはどっこいになると思うぞ? そちらは由梨、千枝、それから烈。こちらは我と陽介、それから、神も加わるからな。』
「おお、言われてみれば!」

紅の言葉に、ツッコミ属性全員ポンッ、と手を打った。
何気にツッコミ属性が別れてほっとしている一同。
だが、彼女は違った。

「…僕、胃薬用意しますね…。」
「あ。」

直斗一人、ボケの中に混ざらなければならないのだ。

「…直斗、平気だって。ツッコミ属性じゃないけど、氷海や雪花がいるし。凪だっているし。」
「理乃もまともな部類だから安心しろ。いざとなったらそいつ、ツッコむから。」
「そうだよ直斗君、意外にまともなメンバーはいるよ? 鈴花ちゃんだってそうだし。」
「いざとなったら完二、お前も助けてやれ。お前も俺から見たら、まともな部類だ。」
「う、ウッス…。」
「うぅ…あ、ありがとうございます、皆さん…。」

ツッコミ属性は、苦労を分かち合う。
…同じ苦労人同士、何か通じるものがあるのか。

「んじゃ、決まったところで、明日もう一度、学校終わったら集合な。」
「おう!」

そして、その場は一旦解散となった。

「…。」
「何だよ、影。じっと見て。」
「別に。…ちゃんと昴を祝うって約束、覚えてたんだなって。いやそもそも昴の誕生日、覚えてたんだなって思ってさ。」
「失礼だな、影。まったく…。」

MZDは何かブツブツ言いながら、その場を去った。

「…影、影。」

一人残された影の側に、戻ってきた鏡が寄る。

「ん? どしたの? 鏡。」
「えと、これ。」

鏡は創世手帳を影に見せる。そこには…。

—あの馬鹿、私が言ってようやく思い出してたよ?

と、書かれていた。

「…どうせそんな事だろうと思ったよ…。」

それを見た影は一つ、溜息を溢した…。