二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 年初め 波乱万丈 いつもの日 ( No.723 )
- 日時: 2016/01/01 22:14
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: kcbGQI7b)
『朝、神殿にて』
新年、一月一日。
「すーさん、おせちー!!」
「昴さん、お餅ー!」
「昴さん、おせちをお願い。」
「昴さん、お餅をいただけませんこと?」
「新年の挨拶前にそれかよオイ。」
昴はおせちの準備中、挨拶もせずに朝から食事の催促をする子供達に苦笑した。
『神、粥。』
「昴殿、粥を頂けないか?」
「大人もこれかよ! 今準備するから待ってろ! つかジョーカーは手伝いやがれ!」
「すまん、飲みすぎて頭痛い…。」
『我も…。』
「七日前に七草粥用意しなきゃいけない状態になるまで飲むなし。」
そうは言いつつも、きちんとおせちと餅と粥を用意する昴。
「おせちー!! おせちー!!」
「みんなして箸トントンしながら待つな行儀悪い! しかも無駄にリズミカルなのがムカつく! 騒ぐなら自分で用意してもらうぞ!」
「おー、世知辛い…。」
これには全員しょんぼりとなり、大人しくなった。
が、
「昴さん、僕にはおせちとお餅両方で!」
「いつ来たジェイド!?」
いつの間にかすんなりとジェイドが鏡の隣でおせちをスタンバイしているので、昴は思わず突っ込んだ。朝から突っ込みすぎである。
「え、つか鍵は?」
「開いてたよ? 全く不用心だね。」
そう言いながら、くすすと笑うジェイド。
「まぁ、不用心は否定しないが…朝からさらっと混ざるな。それにお前、ジェダイトの飯食えよ。」
「いいじゃんいいじゃん、ここに初詣に来たついでだもん。」
「普通の神社に行けよ。つか、初詣に来たついでにその神様からご飯貰うって図々しくないかお前。」
「固いこと気にしない気にしない。あ、鏡。テレビのチャンネル変えていい?」
「うん、いいよー!」
神様の家だと言うのに、のんびりとくつろぐジェイドに、昴はもう突っ込みを放棄した。
「まぁ、いいや。ほら、雑煮もできたから食え。」
「わーい、いっただっきまーす!」
こんな形で、ちょっと変わった朝食が始まったとか。
■
『初詣』
「ロア、ロア、初詣いかないか?」
遠い宇宙にある、イオとロアの家。イオはロアにそう提案をした。
「初詣か…。混むから正直遠慮したい。今年も、あの神のところで済ますか。」
「えー、あのめんどくさい神様んとこに行ってもつまんねーし、つかあいつの前に行く事自体めんどくさいし、もちっと別の場所にいかねーか?」
「別の場所か…。しかし混むのは嫌だから…。」
だが、ロアの言う混まない神社などは正直まれだ。
しばらく二人で思案していると、同時にポンと手を打った。
「そうだ! 昴様の所に行こうぜ!」
「ああ、それを考えていた。あそこなら混まないし、何よりあのめんどくさい神と顔を合わせずに済むからな。」
「よし決まり! んじゃ行こうぜ、ロア!」
銀河を翔る天使の二人は、そう考えて昴のいる神殿に向かったとか。
ちなみにそう考えたのは、イオロアの二人だけではなかったとか。
「完二、初詣どうする?」
BEMANI学園寮、陽介と完二の部屋。ここではクマを交えて三人で初詣について話し合っていた。
「んー、みここんとこ行ってもいいが、今から行っても混んでるッスよねぇ…。」
「昨日の今日だから、さっと行ってさっと帰ってこられるところがいいクマ。でもそんな場所なんてそうそうないクマよ?」
んー、と悩む三人。が、すぐに陽介がいい場所を思い付く。
「あ、そだ。昴さんちは?」
「え、あの人カミサマだったっけ?」
「カンジ、忘れちゃダメクマ。スーチャンはカミサマ(?)クマよ。」
「お前ら、いっぺん昴さんに殴られてこい。いや、確かに俺もたまに忘れるけどさ…。」
まったくもって神らしくない、むしろ人間の普通のお母さん的な感覚がするのでたまに忘れるが、昴は正真正銘この世界の神様である。恐らく彼女を知る大抵の人間はたまに忘れるだろうが。
「まぁ、そんな感じであの人ん家にはあんまり人が集まってないだろうし、挨拶がてら初詣に行こうぜ。」
「花村センパイ、さっき昴さんのことカミサマっつったのに、今、人っつてるッスよ。いや、オレとしても正直あのカミサマっつー呼び方に違和感を感じるッスけど。」
「ま、まぁ、細かいことは置いといて! とっとと行って帰ってこようぜ! ついでにお年玉でも催促しに行くか?」
「賛成ー!」
そんなこんなで、陽介達は神殿に向かったとさ。
- 年初め 波乱万丈 いつもの日 ( No.724 )
- 日時: 2016/01/01 22:21
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: kcbGQI7b)
『間違ったおせち』
ジャッカルはティズと共に、いそいそと、一生懸命にお重に料理を詰める。
「由梨から聞いたおせちって、こんな感じか?」
「大丈夫だよ。しっかり聞いておいたから。」
「それは信用するが…ティズ、メモとか取ったか?」
「大丈夫だよ。きちんと僕の頭に入ってるから。」
その言葉で、ジャッカルは若干、いや、大分不安になった。
「…念のため、詳しい奴に聞いてみっか。何となくだが、コレジャナイ感がする。」
「気のせいだと思うよ? 念のため、一の重から確認してみる?」
「やや不安だが、してみっか。できれば詳しい奴交えて。」
初めて作った者同士で確認すると変になりかねないので、とりあえず由梨に連絡して来てもらうことになったとか。
しばらくして、由梨がやって来る。
「よっ、ジャッカルにティズ。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。」
「おう、おめっとさん、由梨。」
「早速だけど知恵を貸して」
「挨拶ぐらいは返しとけよ、ティズ。まぁ、いいや。上がってくれ。おせちを作ってみたんだが、どうしてもコレジャナイ感が半端なくてよ。」
「初めて作ったんだっけか? まぁ、見せてくれ。」
二人は由梨を台所まで案内すると、すぐに一の重からふたを開けた。すぐに、由梨は絶句したのは言うまでもない。
彼女の目に飛び込んできたもの、それは…。
「おい、何で一の重にモンブランが入ってんだ。つかお重にモンブランは場違いだろ。」
「え、栗きんとんって栗で作った甘い何かでしょ?」
「やや間違っちゃいないが、栗きんとんは栗を甘く煮付けたものだ。どうしたらそれがモンブランになる。この重はパステルくんでも手をつけないぞ。」
ティズが困り顔を浮かべているが、間違いはまだある。
「で? 何でかまぼこじゃなくてなるとが入ってんの? しかもかまぼこの板まで入れんな。かまぼこ入ってないのにかまぼこの板とかおかしいだろ。つかそもそも板入れんな。」
「だって、練り物でしょ? それに紅白のって言ったらこれしか思い浮かばなくて…。」
「条件は満たしてるが違う。あと板は完全にいらないから。あと極めつけ。」
由梨は苦笑を浮かべながら、ある一点を見る。
そこには、黒いマスクがあった。
「伊達巻の場所に何故ダース・ベイダーのマスクがあるんだよ。もはやかまぼこの板と一緒で食い物じゃねぇし、伊達巻とは縁も所縁もないだろ。」
「ダース・ベイダーの仮面は伊達政宗の兜をイメージしてるって聞いたから…。」
「伊達しか、かすってねぇよ!」
「巻かなきゃダメだった?」
「どうやって巻く気だったんだよおい! …つ、次、二の重…。」
一の重でかなりのインパクトがあり、もうどう突っ込んでいいかわからなくなりかけたので、次の二の重に行くが…。
「すまん、背中に星がある海老のフィギュアなんてどっから見つけてきた。」
海老の鬼殻焼きがある場所に、謎の海老みたいなフィギュアがころんと置いてあったのだ。
「アニエスと一緒にフリーマーケットを覗きに行って、店員さんに『海老ありませんか?』って聞いたらそれくれた。」
「フリマで食材探すな! つかフリマで探してる時点でおかしいと思えよ!」
「本当はその横にミニカー添えようと思ったけど、ジャッカルがやめとけって言ったから…。」
「ジャッカル、できればもう少し早く止めてほしかったんだが。」
「あ、いや、その、そういうもんだと思ってた。砂糖の人形的なあれで。」
どうやらジャッカルは今までのインパクトが強いあれは全部食材で作られたものだと思っていたようで、ミニカーの時点でようやく違うかもと気づいて止めたようだ。
「あと、祝い鯛の代わりに入ってるこの緑色の物体はなんだ。」
姿はまるで小さな恐竜のような緑色の何かに、由梨は嫌な予感がしたが訊ねてみた。
「カプカプ焼き。」
「んなもん入れんな! つか何で入れた! 明らかおかしいだろ!」
「あ、言われていれば。」
「気づかなかったのか!?」
もう怖いが、三の重に行く。本来ならば煮物中心の重だが…。
「すみません、これ何煮たんですか。」
何か得体の知れない茶色い何かがあった。
「なんだっけ、ジャッカル。」
「えっと、確か…。リンゴンとラビィとヴァルチャーと…。」
「そうそう。エネミークラブとアルラウネとマイコニドもぶちこんだよね。」
「魔物煮てる時点でアウトだ。いや確かにそのうち何体かは食材に回せそうだけどさ。」
「あと、カルディスラ付近に生息しているゴブリンも美味しいかわからないけど煮込んでみた。」
「捨てろ。」
由梨は即座に、ええ、即座に流し台を指差しながら言った。
「えー、もったいない…。」
「モンスターを煮込むな。普通の食材を煮込めよ。」
「え、だっておせちって一年に一度食べるものじゃないの? だから特別な食材を用意した方がいいと思って…。」
「んな特別はいらん。そもそもおせちは毎日台所に立つお母さんとかそういった人に、正月くらいはゆっくり休んでもらうために保存食を主だって構成された奴だ。だから、別に特別でもなんでもないし、お前達の特別は明後日の方向に飛んでって要らぬお世話と化している。」
そんな話と豆知識を交えつつ、あとで三の重は捨ててもらうことにし、与の重に行く。
「やっぱりやりやがったよ畜生が。」
本来、なますがあるところに、ナマコがでん、と鎮座していた。これには由梨もがっくりと膝を落とした。ええ、OTZのポーズ。
「ティズ、ジャッカル、ここナマコじゃない。」
「えっ、違うの?」
「ほらやっぱりそうだろ? ティズ。ここはなめこだったんだって。」
「なめこでもない。ここ、なます。」
「え、生酢? そのままお酢を入れるの?」
「ちげーよティズ。どう考えたってゼラチンかなんかで固めていれんだろ。」
次々と変な事を言うものだから、由梨の何かはもうどうしようもなく限界に近かった。
「…あとでなますの作り方教えてやるよ…。で、この数の子んところにある蛇は何だ。」
次に由梨が示したのは、数の子があるはずの場所にある…いや、いる、腹が丸々と太った蛇。
「ツチノコ。」
「ワンモア。」
「ツチノコ。」
なんと、これはティズが言うにはあの幻のツチノコらしい。
「どうやって捕まえたし!?」
「え、普通に罠を仕掛けて…。」
「で、ちっと甘辛く煮付けてみたんだが…。これなら三の重にいれた方がよかったか?」
「そういう問題じゃねぇし!」
どこに入れるの問題ではない。ここにツチノコがいると言うのが一番の問題だ。
だが、これ以上彼らを詮索しても無駄だろうと思ったので、スルーしておくことにした。
「で? この田作りが入ってる場所にあるこの畑みたいなのはなんだ。」
「ヴァルチャーを煮る時に余った肉を使ってそぼろにして、小さい畑みたいなのを作ってみたんだ。」
「もう凄いのは認めるが、どうやって突っ込んでいいかわからないからスルーすんぞ。与の重は他にも突っ込みたいが、もうそれをしているとめんどくさいから五の重…は、空っぽでいいから見ることないか。」
最後の重は、諸説あるが、来年にはこの重にも物が詰められますようにと言う願いをかけて盛り付けないので空っぽのはずだが…。
「空っぽっつっても何か味気ねぇから、一応入れたんだが。」
「何入れたんだよオイ。」
「笑う門には福来るつーことで、カダの作った笑気ガス」
「三の重の中身と一緒に捨てろ! んなもん入れんな!!」
「見た目は何も入っていないように見えるよ?」
「そういう問題じゃないっつーの!」
由梨はティズにそう怒鳴り付ける。
「とにかく、全部作り直しだ! アタシがここにいてやるから、わかんないことがあったら聞け! 分かったか!」
「はーい…。」
盛大に怒られた二人は、しょんぼりとしながらも調理を開始した。
- 年初め 波乱万丈 いつもの日 ( No.725 )
- 日時: 2016/01/01 22:28
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: kcbGQI7b)
『貢ぎ物とお年玉』
朝食も終わり、神殿が落ち着いてきた頃。
「ふぃー、朝から疲れた…。」
—ピンポーン。
「ん?」
食休みと朝のツッコミ疲れの休息がてら、休んでいると、そんな暇を与えるものかと言わんばかりに、呼び鈴が鳴る。
「誰だよ朝から…。はーい。」
ガチャリとドアを開けると、そこにはヴィーナス三姉妹がいた。
「エインフェリアにメフィリアにアルテミア。どうしたんだ? 朝から。」
「初詣、という風習があると師匠からうかがってな。こうして挨拶に来たんだが、迷惑だったか?」
「いや、大丈夫だが、別にうちに来なくてもいいんじゃないか? エインフェリア。」
「今から行っても凄く混んでたからここで妥協したのよ。」
「妥協でうちに来ないでほしいんだがメフィリア。」
どうやらこの三姉妹は今行っても神社が混んでるからここで妥協したようだ。
「神様、貢ぎ物、備える、聞いた。だから、アルテミア、貢ぎ物、持ってきた。」
「まー、多分間違ってはいないが、何持ってきたんだ? アルテミア。」
「アルテミア、狩った。これ。」
そしてどこからか取り出されたのは、とても大きな大蛇だった。昴を優に飲み込めそうなその蛇は、神殿の敷地を一周できそうなくらい長い。すみません、それどこにしまってたんですか。
「買ったんじゃなくて、狩ったんですねわかります。」
「あ、アルテミア、森オロチをまた狩ったのか?」
「森オロチ、ちがう。葉月の世界、行った時、見つけた。狩った。酒に漬け込めば、美味い。葉月、言ってた。」
「…うん、後ででかい瓶用意していれとくからそこ置いとけ。」
「で、ではまたな、昴さん。」
そんなこんなで、ヴィーナス三姉妹は帰っていった。
彼女らと入れ替わるように、ペルソナ4男性陣(悠以外)とイオロアが現れた。
「昴さん、明けましておめっとさん!」
「明けましておめでとうッス、昴さん!」
「スーチャン、オメデトクマ!」
「昴様、明けましておめでとうございます!」
「昴様、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。」
いつも通りに挨拶をするペルソナ男性陣とは逆に、昴には丁寧に挨拶をするイオロア。
「おめっとさん、お前ら。あれか? お前らも初詣に行きたいが神社が混んでるからこっちに来た組か?」
「何故ばれた!?」
ペルソナ男性陣、行動を読んでいたかのような昴の物言いに、驚いていた。
「マジかよおい。で、イオロアはそうだな、あの馬鹿神と顔を合わせたくないが初詣に行きたいので、こっちに来たパターンかな。」
「何でわかった!?」
「やはり悟られていましたか…。流石は昴様です。」
そしてイオロアの目的を話したらイオは素直に驚き、ロアは苦笑混じりに昴に称賛の声をあげた。
「ま、まぁいいや。んじゃ、昴さん。ん。」
陽介は頬をポリポリと掻くと、手を差し出した。
「おい、何だその手は。」
「やだなぁ、昴さん、あれに決まってるっじゃないッスか!」
どうやらお年玉目当てに差し出された手らしい。オイ陽介。参拝しに来た神様に金せびるってどんだけ図々しいんだよ。
「あー、あれか。ちょっと待ってろ。…ほれ。」
昴は一度神殿の中に入り、白い何かを持ってきて、陽介に手渡した。
「ちょ、昴さん、これ餅じゃないッスか! 何で餅!?」
「陽介さん、知らないんですか? お年玉というのは元々、神棚に供えた餅玉を渡していたことから来ているのですよ。まぁ、色々と説はあるみたいですが。」
「で、昴様はその風習通りに餅玉を渡したんだよ。残念だったな、陽介。第一、参拝対象の神様に金をせびりに来るってどんだけ図々しいんだよ。」
「ちくしょー…。昴さんって神様っつーよりは人間っぽいから、人間らしく金の方をくれるかと思ったんだけど…。」
お金がもらえると期待した陽介は、期待はずれのことが起こって残念そうだ。
「そんな生活の余裕はないっつーの。諦めてその餅玉食え。」
「スーチャン、カミサマなのにボンビークマ? ビンボーガミの方のカミサマクマ?」
このあと、この発言をしたクマが昴によりボンレスハムの刑にされたのは言うまでもあらず。そんなこんなで、陽介達は帰っていった。
次に入れ違いでやって来たのは、どこかワクワクしているリリィと、呆れながらついてくる烈だった。
「よっ、昴さん、あけおめことよろ。」
「あけおめことよろ。」
「おう、あけおめことよろ。何? お前らも神社行くのめんどい派?」
「それもあるけど、リリィが昴さんからお年玉がほしいって。」
「お前もかよ。」
これでお年玉をせびりに来たのは二人目だ。昴は呆れた顔をしながらも、リリィに小さなポチ袋を渡した。
「ほれ、少ないけど。」
リリィはじっとそれを見て、そして、
「いらない。」
ぽいっ、と捨ててしまった。
「え、何? 少ないのが嫌なのか?」
「いや、昴さん。多分違う。俺達、ここに来る前に陽介先輩とすれ違ったから…。」
「ああ、聞いたのか。餅を渡したの。」
昴が餅、と言うと、リリィの目がキラキラと輝き出した。
「(ほんっ、と分かりやすい奴…。)わかったわかった。餅の方やるからちっと待ってろ。」
「やたー。」
擬人化姿で振り袖が汚れそうになるのも構わず、リリィは体全体で喜びを露にした。
「こらリリィ! 暴れるな! ばーちゃんの着物汚れるぞ!」
「それはやだ。」
烈が注意すると、ピタリと止まる。その間に、昴は餅を持ってきて、リリィに手渡した。
「ほれ。あとミカンのおまけ付きだ。」
「ありがと、昴さん。…♪」
リリィは昴からミカンと餅を受けとると、義兄を置いてさっさと聖域の森を抜けていった。
「ちょ、オイ待てリリィ! ったく…。じゃあ、昴さん、また後でな! 挨拶回り終わったらまた飯せびりに来るから出前とっておいてくれ!」
「ざけんな。半分請求すっぞ。」
聞こえたか否かは定かではないが、烈はそのままリリィを追いかけていってしまった。
(ジェイドといい陽介といいリリィと烈といい…。この世界は図々しい奴しかいないのかよ…。ヴィーナス三姉妹みたく俺を敬う奴はいないのかおい。)
「あれ? どうしたのすーさん。玄関でボーッと突っ立って。」
「(こう考えさせたのはお前にも責任あるんだけどと言いたいが、スルーしとこっと…。)いや、何でも…。」
昴は言いたいことをグッと飲み込んで、溜息をつきつつ中に入った。
その後もややひっきりなしに挨拶に訪れる人が来たが、大半が昴にお年玉をせびりに来た人物だったとか。そしてその度に餅を渡したのは言うまでもない。
- 年初め 波乱万丈 いつもの日 ( No.726 )
- 日時: 2016/01/01 22:33
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: kcbGQI7b)
『大団円?』
やがて夜になり、いつしか神殿内は昴に夕飯の出前をせびりに来る輩が集まった。しかも人数は去年以上という悪夢である。
「いやー、挨拶に来ただけなのに飯まで貰えるっていい神様だな、昴は。」
「(俺の正体知っててそれ言うかジャン。)言っとくが、俺は別にお前らのために出前をとる気なんて一切なかったんだが?」
「固いこと言うなって。」
早くも人の金で頼んだチキンを頬張るジャンに、昴は軽く睨み付けるも、ジャンはそ知らぬ顔で肉を頬張っていた。昴は一瞬どつきたくなったのは内緒で。
「リンゴンの煮物おいしー! マイコニドの醤油煮も美味しいね!」
「それはよかった。じゃあ、来年もまた作ろうかな。」
「作るのはいいが、今度はまともな食材で作ってほしいんだが。」
あの後、由梨の指導の下ティズとジャッカルがもう一度おせちを作り直して成功したのだが、失敗作の処分に困っていたのでこうして神殿に持ってきて処分してもらったようだ。なお、笑気ガス入り五の重は適切な処理をしてから、カダにお返しし、ついでにディローザにもお裾分けました。翌朝こいつらの表情筋は筋肉痛でしょう。
え? ダース・ベイダーの仮面とかカプカプ焼きの処分はどうしたか? …ご想像にお任せします。
「そういえばさ、昴さん。あの外にあった巨大な瓶に入ってた蛇は一体何なんだ? 氷海とセシルと鈴花が腰抜かしてたぞ。ローズはローズで泣いてたし。」
「アルテミアからの貢ぎ物。ハブ酒ならぬ森オロチモドキ酒。」
「あれ出しっぱでいいの? 多分聖域に来るチビ達が寄り付かなくなるけど。」
「置き場はその内考える。俺としても、朝、目が覚めて外に出たらこれがあるって言う状況は怖くて想像できない。」
「…。」
烈と昴の会話に、もう少し貢ぎ物を考えさせた方がよかったかと後悔する長女エインフェリアだった。
「しっかし、今日はひっきりなしに来客ばかりで疲れた…。ふぅ…。」
「だから出前とったんだよね? ジョーカーも紅と一緒に二日酔いで戦闘不能だし…。でも、出前のお寿司美味しいし、オレとしては嬉しいよ!」
「食費が馬鹿にならんから毎日はパスな。ジョーカーがピンピンしていやがったらこんな風に出前とらなくてもいいのによ…。」
はぁ、と溜息をつく昴を、鏡が寄り添って労う。
「すーさん、お疲れさまー。」
「(…色々と突っ込みたいが、とりあえずありがとうは言っとくか。)ああ、ありがとな。」
昴は言いたいことをグッと堪え、とりあえず鏡に話を合わせておく。
「…。」
そして、いまだにどんちゃん騒ぎをする集まった一同を見て、
「まーた今年も変わらなさそうだな、色々と…。」
そう、溜息をつきつつも笑みを浮かべ、鏡と共に輪の中に混ざっていった。
- 年初め 波乱万丈 いつもの日 ( No.727 )
- 日時: 2016/01/01 22:40
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: kcbGQI7b)
後書き de 雑談
私
—明けましておめでとうございます。今年もうちの子共々よろしくお願い致します。いやー、明けたね…。二十歳過ぎると一年あっちゅー間とかいうけど、早いね…。
昴
「何ババァがババァみたいな事言ってんだし。」
私
—うっさい永遠の二十(※ここは昴が消しました)歳。
昴
「あ? 何? 聞こえないんだけど今年二十(※ここは私が消しました)歳。」
りせ
「うわー、不毛な喧嘩が巻き起こってる…。」
ユウ
「そっとしておこう。」
りせ
「ごめん、ユウ君、その声でそのボイスやめて;」
ユウ
「ごめんなさい…。」
私
—さて、昨日Upした小説で触れたように、明かされていない残りの所持者も今日からここ後書き部屋に仲間入りさせるよ。とりあえずユウ君を先行的に。
ユウ
「よ、よろしくお願いします! 手帳が変わっても毎日欠かさずメモしていきますよ!」
昴
「そういやお前、Uの手帳書いてたな;だがあのネーミングセンスは何とかしろ;」
ジャン
「昴の言う通りだ、ユウ。とりあえずネーミング辞典とかでも読んでくれ頼むから;お前の日記、正直俺読めない;難しいじゃなくて、恥ずかしい;」
ユウ
「えー、結構よくできたと思ったんだけど…。」
ジャン
「ど こ が だ 。」
私
—はいはい、喧嘩はあっちでやって;今回は年始のちょっとした日常風景って感じかな?
由梨
「ティズとジャッカルのあれはひどかった;料理は上手いが、こっちの世界の常識を覚えさせないと不味いだろあれ;」
ユウ
「月からこっちに来たマグノリアを思い出させますね;」
私
—ユノハナという和の文化っぽい街はあれど、大体が西洋的だから和の文化には疎いって設定だから、ほぼ全員マグノリアちゃん状態なんだよね;徐々に覚えてはいってるけど…。
昴
「そして俺、神様であるという設定を大体の人間に忘れ去られる悲劇;いや俺自身も正直たまに忘れるけど;」
私
—あんたまで忘れちゃ終わりでしょうが;いや私もたまにあんたの事神様だって言う設定をつけたこと忘れる時もあるけど。
理乃
「フレンドリー過ぎて忘れるんですかね;あ、額に神と書いておけば誰も忘れ」
昴
「却下。まあ、いい。とりあえず話題もこれくらいしかないし、終わらせるか。」
私
—だね。じゃ、またねー!
■
私
—新年一発目のお話はいつも通りの小話。感想OKです。
昴
「今年もこいつ共々よろしくお願いします。」