二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 見守る星々 ( No.89 )
- 日時: 2015/05/30 21:31
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
『りっ、臨時ニュースですっ! 信じられないニュースが飛び込んできました!』
『全く見た事のない未知の生物が、シエルアーク号を闊歩しています!』
『乗員・乗客の安否は不明ですが、どうやらシエルアーク号で殺人事件が起こったようです。』
『詳しい事は不明です。ここで専門家に…。』
シエルアーク号にモンスターが出た事は、瞬く間に広がり、その日の臨時ニュースとして大々的に報道されていた。
その頃、酒屋…。
「…! お、お母さん!」
リリィは慌ただしく店番をしていた烈の母親を呼んだ。
「なぁに? リリィ。何かあったの?」
「ニュース…! これ、烈君が乗ってる船…!」
「えっ? …!?」
平静を保っていた烈の母親も、目の前に映る船を見て、口元を覆った。
「な、何なのあの化物…!」
「わかんない…見た事、ない。でも、怖い…!」
リリィはぎゅっと、自分の体を丸め込み、震えた。
「リリィ!」
ガラッ、と網戸を開けて入ってきたのは、風雅だった。
「風雅君…。」
「あ、烈のお母さん、窓からお邪魔します。ニュース、見た!?」
「ええ、今見てるわ。…烈、大丈夫かしら…。」
「…。」
不安そうな一同。その場に、不穏な空気が流れた。
「…きっと、大丈夫。」
ポツリと呟いたのは、リリィだった。
「リリィ?」
「…烈君は、大丈夫。見た事がない化物ばかりでも、大丈夫。…こんな日の為に、由梨さんが鍛えてた。由梨さん自身も、船にいる。私は見た事がない化物。でも、由梨さんは見てる…と思う。」
「…そうだね。理乃先輩達は、あんな化物との戦いが日常だったって言ってた。多分、由梨先輩なら見てるよね…。それに、陽介先輩達や昴さんも一緒だし、今の相棒は紅だし…。」
「あの黒より何十倍もマシね。」
「黒じゃないから、力、出せない。でも、冷静。…昴さんも、いる。鏡君の力で、紅さんを精霊にできる。」
精霊へと姿を戻すには、黒は烈の、紅は鏡の焔でないと戻らない事が確認されている。
何故互いの相棒でないと戻らないかの理由はわからないが、今の紅だと、昴の援助を受けなければ精霊の姿に戻らないのだ。
「だから、大丈夫。信じよう? ねっ?」
リリィがそう言うと、烈の母親も風雅も、一つ頷いた。
「そうね。烈なら、大丈夫よね。」
「うん、頼もしい仲間がいるからね。」
頼もしい仲間達の事を思い出し、安心したようだ。
(…それに、こんなニュース、放っておけないの、近くにいる。…信じて、いいよね? …フランシス、黒。)
リリィは遠くを見つめながら、心の中で呟いた。
- 見守る星々 ( No.90 )
- 日時: 2015/05/30 21:37
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
所変わって、聖域。
「なっ…!?」
ここに修行に来ていた氷海は、目の前で流れる映像に、絶句していた。
「こ、これは、一体…!?」
「ジョーカー、こいつら、見覚えないー?」
「すまない、まったく…! 未知なる侵略者が、この世界に…!?」
「…多分、私の世界にいた奴等だよ。」
ずず、とお茶を啜る葉月の言葉に、その場にいた凪、ジョーカー、氷海は彼女を見る。
「スライム系の魔物。どれも、これに記載している姿そっくりなんだ。」
葉月は懐から、一冊の分厚い本を取りだし、机に置いた。
「これはー…?」
「モンスター図鑑。学校一帯のモンスターだったら、これに大体網羅されてるよ。」
「…ほんとだ。確かに今映像に映ってる奴等そっくりだねー。」
「凪! 冷静に構えてる場合じゃないでしょう! あの船には直斗も」
冷静な凪に、氷海は少し語気荒く言い放つも、凪は黙って氷海を見た。それに圧力を感じた氷海は、黙り込む。
「知ってるー。直斗の事は心配だよー? それにー、昴さんと紅も心配ー。でもー、僕らは今、助けには向かえそうにないよねー?」
「…水だけを見るとこの海域は…創世島近海かな? 距離的には難しそうだね…。空でも移動できれば、話は別になるけど…。」
「なら、凪とジョーカーは向かえるんじゃ」
「葉月さんみたいな人じゃあるまいし、奴等と戦い慣れてない僕らが行ったって足手纏いだよ。あの船には由梨さんがいる。それに…創世島には、この現状を放っておけない人がいるはずだよねー?」
凪がそういつもの調子で言うと、葉月は再びお茶を啜った。
「…凪君の言う通りだよ、氷海ちゃん。それに、私は千枝ちゃんをそんな柔に鍛えた覚えはないから。」
「あとー、放っておいても向かうのが約一名ー。昴さんのピンチに駆けつけない訳ないからー。」
「…それもそうだな。昴殿を母親のように慕う彼が、彼女を放っておく訳あるまい。あちらには紅殿もいるしな。」
「…そう、ね。そうだったわね…。」
氷海は何か分かったのか、それ以上は何も言わなかった。
(…あっちは任せたよ、理乃。)
(鏡、無茶、しないでねー。)
凪と葉月は、互いの友を信じ、託した。
- 見守る星々 ( No.91 )
- 日時: 2015/05/30 21:43
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
更に所変わって、大型ショッピングモールにある巨大テレビ前。
「…。」
目の前のテレビから流れる報道に、その場にいた人達は足を止め、報道を見ていた。
「烈君達…大丈夫かな…?」
「花村センパイや里中センパイがいるし、大丈夫だろ。それに、野上センパイや昴さんだっているしよ。」
その人影に紛れて報道を見ていた不安そうな鈴花に、完二はそう、自信あり気に言った。
「そう、かな…?」
「なんだよ、まだ不安か?」
完二が慰めるも、鈴花は未だに不安そうな顔を浮かべたまま。
そんな鈴花の頭を、完二はワシャワシャと撫でる。
「ここで心配しても何もできねぇよ。」
「完二は心配じゃないの…?」
「そらぁ、心配だ。けどよ、今オレ等ができっこたぁ何もねぇ。…センパイらを信じて、待つしかできねぇ。けど、あのセンパイらなら無事に帰ってこれる気がするんだよな。」
「…。」
完二の言葉に、鈴花は頷く。
それしかできない事を悟ったのだろう。
「つか、心配なのはクマ吉の奴なんだよな。」
「えっ? クマ君?」
「ああ。あの船のチケットを渡したの、クマ吉なんだよ。自分が貰ったけど使わねぇから、花村センパイにやったんだと。」
事の経緯を語り、完二は腕を組んでふぅ…と溜息をつく。
「…クマ吉の奴、気負わねぇといいけどな…。」
「そうだね…。ちょっとそれは、心配だね…。」
「…明日には創世島で一緒に遊んでる桜坂センパイと帰ってくるだろうし…ホームランバー、用意してやっかな…。」
クマの大好物で労ってやろう、そう考えた完二は、鈴花を伴ってテレビ前を後にした。
- 見守る星々 ( No.92 )
- 日時: 2015/05/30 21:58
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
創世島にあるホテルのロビー。
「ふぃー。食った食った、クマ。」
「クマ、食べ過ぎだよ…。」
「朝からラーメン五杯と餃子十個と炒飯大盛りはないぞ。ガチで。」
『理乃、大丈夫か? 気分が悪そうだが…。』
「へ、平気です…。(クマさんの食いっぷりを見てたら気持ち悪くなってきたわ…。)」
朝食の帰りだろうか、クマ、理乃、鏡、フランシス、黒がロビーに繋がる廊下を歩いていた。
「さて、今日は何して遊ぶクマか? 帰りは明日クマ。今日もいっぱい遊ぶクマー!」
「オレ、絶叫系はもういいや…。」
「『降ろしてえぇぇぇっ!』とか、『うち帰るうぅぅぅっ!』とか言って泣いていたものな。」
「うぅぅ…言わないでよフランシス!」
「そんなに怖かったのですか? 鏡さん。結構楽しかったのですが…。」
笑みを浮かべていたフランシスだが、理乃の言葉で一瞬にして笑みを消す。
「…理乃、お前は楽しむべき所が違いすぎだ。悲鳴をあげるようなスピードで『あら、空が綺麗ねー。』とか、『潮風が気持ちいいわー。』と言っているんだ。時速百キロオーバーで何でそんな冷静なんだ。」
「えっ? 私、普段からそれ以上のスピードを出していますし…。」
「そうだった。お前にとっては絶叫系はただの乗り物同然だったな。」
風の加護か、素早さが高い理乃にとって、絶叫マシーンはただの動く玩具同然。それを理解できたフランシスは、それ以上何も言わなかった。
「あら? 何かしら、あの人だかり。」
そんな話をしながらロビーまで辿り着いた理乃達は、そこのテレビに群がる集団を見つけた。
「人がいっぱいクマー。」
「何か面白いニュースでもやってるのかな?」
「うーん、ここからでは見えませんね…。」
『どれ、我が見てこよう。』
「俺も行こう。」
ふわりと、フランシスと黒が鏡の肩から離れ、テレビを見た。
…あの、シエルアーク号襲撃事件を。
「なっ…!?」
『なっ、何だあの化物!』
「えっ? どうしたの?」
鏡は、二人の様子でただならない事態が起こってると悟った。
黒は鏡の肩に戻る。
『船が、見た事もない化物に襲われているようだ。』
「えぇっ!? み、見た事もない化物って…!?」
『本当に見覚えのない敵だった。しかもあの船は確か…烈が乗ると言っていた船だ!』
楽しみに話していた烈の笑顔を思い出しながら、黒は言い放つ。
当然、全員の表情に驚きが走った。
「烈が!? じゃあ、すーさんも…!」
「ええっ!? も、もしかして、クマがヨースケにチケットを渡したあの船クマか!?」
『ああ、間違いないだろう。…烈…。』
「…クマのせい、クマ…!」
全員、心配そうな表情を浮かべている間に、クマがポツリと呟いた。
「クマが、クマがヨースケにチケット渡しちゃったから! クマがヨースケ達を船に連れて」
「落ち着けクマ!」
半場錯乱状態のクマの目の前に、フランシスは刃を召喚して突き立てた。
それにより、クマは一瞬で黙り込んだ。
「…クマさん、クマさんのせいではありませんよ。」
「り、リノチャン…。」
「クマさんは、最近元気がない烈さんや昴さんを元気付けようとしただけではありませんか。謎の化物の敵襲は予想外だったのでしょう?」
「…クマがそんなのヨゲンしてたら怖いクマ。」
確かに、とその場にいた一同は思う。まったく予期していない筈なのにクマが言い当てたら怖い。
「だから、クマさんは何も悪くありませんよ。ねっ?」
「…アリガトクマ、リノチャン。…でも、クマ、ヨースケ達を助けにいきたいクマ。ヨースケに見せて貰ったパンフレットによれば、この辺りにいるはずクマ。」
「りー姉…。」
鏡はじっと、理乃を見る。
- 見守る星々 ( No.93 )
- 日時: 2015/05/30 22:05
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
理乃は何が言いたいか分かったのか、一つ頷いた後目を閉じた。
「…ここから更に南、五十キロ程の場所。そこに、件の船があります。」
「五十キロか…。いけない距離ではなさそうだ。」
「クマもいきたいクマ! けど…。」
「紅がいないから空を飛べないよ…!」
意外に近い場所にいたようで、助けに向かいたいが、空でも飛ばない限り近付けないだろう。
元々飛ぶ能力のないクマはもとより、相棒の不在により鏡も向かえない。
「大丈夫ですよ。足なら用意してありますから。」
そんな二人を気遣うように、理乃が笑顔で言う。
『理乃、何か方法があるのか?』
「はい。…でも、その前に少し気掛かりな事があります。」
『気掛かり?』
「花村さん達の武器です。…あの魔物の大群に対抗するには、素手では流石に無謀です。」
理乃はちらりと、テレビを見る。いつの間にか人だかりは捌けていた。
うごうご蠢くゲル状のもの。それが大量に船を埋め尽くしている。
「…せめて、武器があれば楽になるかと思いますが…。」
「武器ならなんとかなるクマ! んじゃ、クマ、とってくるクマ!」
そう言ってクマはロビーのテレビにいきなり体を突っ込んだ。
「え、クマ!? 何してるの!?」
「このテレビも、あのエントランスに続いてるのを昨日確認したクマ! てなわけで、パパっととってくるクマー!」
クマの体は、そのままテレビに飲み込まれた。
「…武器はなんとかなりそうですね。では、私は支配人さんに広い場所を聞いてきます。広い場所ではないと出せないので。」
「わかった。俺達はクマと合流次第、そっちに向かう。」
「りー姉、場所が見つかったらメールで知らせて。」
「わかりました。」
理乃はそう言って支配人を探しに走り出していった。
「…。」
『神が心配か? 鏡。』
不安そうな鏡に、黒が声をかける。
鏡は黙って頷いた。悲しそうに瞳が揺らぐ。本気で心配しているのだろう。
「案ずる事はないだろう。あの船にはああいった化物を相手にして来たであろう由梨がいるのだろう?」
「…うん、そうだけど…。」
「鏡、男ならデンと構えて信じて待て。あの船にいる奴等はそんな柔じゃない。」
そう、あの船には強い人物達が集まる。
だから、フランシスは何も心配していなかった。まったく、何も。
「…そうだね。大丈夫だよね。」
『逆に、我らが行く頃にはもう終わっていたりしてな。』
「その時はその時で、笑い話にしてやろうか。」
全員、船にいる大切な存在が無事である事を思いながら、クマを待っていた。
- 見守る星々 ( No.94 )
- 日時: 2015/05/30 22:12
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
暫くして、クマがテレビの世界から帰ってきた時、丁度理乃から『屋上へ来てください。』との連絡があり、鏡達は屋上へと向かった。
そこにあったのは…。
「う、うわぁっ…!」
『驚いた…! 理乃、これは本物なのか!?』
「ええ。正真正銘、本物の…。」
翼の生えた、バイクのような機体が、目の前に三台程並ぶ光景を示しながら、理乃は言葉を続ける。
「“レアバード”です。」
「すっ、すっげー! ゲームの中で動いてた機体が目の前にあるなんて!」
『烈や神が見たら目玉が飛び出るな。』
「ヨースケならソットーしちゃうクマねー! …あ、ナオチャンなら分解しそうクマ。」
嬉々とした表情で工具を握りしめている直斗を思い浮かべたのか、鏡と黒、フランシスは表情を変えた。
「まぁ、私も一回やろうとして由梨に全力で止められた事はありますが…。」
「お前もそのクチか理乃。」
由梨の知られざる苦労を垣間見て、フランシスは思わず彼女に同情をした。
「と、とにかく、早くすーさん達を助けに行こう!?」
『そうだな。だが、操縦法方はわかるのか?』
「それなら心配要りません。鏡さん、クマさん、今は一番前の機体に合わせて自動的に隊列飛行するように命令しています。なので、お二人はハンドルを握るだけの簡単なお仕事をすれば大丈夫です。」
「俺と黒は後ろをついていけば大丈夫か?」
「うーん、おいてけぼりにしてしまいそうなので、フランシスさんと黒さんは、私の鞄の中に入っていて下さい。」
理乃は、小さなポシェットを指差す。明らかフランシスと黒が入らないようなサイズのポシェットを。
『…どう考えても入りそうにないが?』
「み、見た目は確かに入りそうにありませんが、論より証拠、ですっ!」
そう言って理乃はむんずと黒とフランシスを掴み、ポシェットに押し込めた。
「い、痛い痛い!」
『押し込めるな理乃! …む?』
不思議と、何故か広く感じるそのポシェットの内部。
他にも、理乃が私用で使うのか、見た事のない石や薬などが転がっている。
明らか、ポシェットのサイズにあっていないようなものもある。
「ひ、広い、な。」
「ジョーカーさんがフランシスさんに持たせた四次元クーラーボックスと同じようなものです。」
「成程。納得した。」
『納得していいのかわからんが、これ以上話すのは時間の無駄だろう。』
「りー姉、黒の言う通りだよ。」
鏡が言うと、理乃は頷いた。
「お二人共、全速力で飛ばします! 振り落とされないように気を付けてくださいね!」
そして、機体を浮かせて発進準備に入る。
突然機体が浮いて驚く鏡とクマだが、そんな暇は与えてくれなかった。
機体が浮いた次の瞬間、物凄いスピードで飛び出した。
「うわあぁぁぁぁぁっ!」
「クマアァァァァァッ!」
必死にハンドルにしがみつきながら、鏡とクマは悲鳴をあげた。
…船につくまで、ずっと…。
■
「理乃達がここに早くこれたのは、そう言う事だったのか。」
昴がポツリと呟くと、ジャンが不思議そうな顔をした。
「なんだ、知らなかったのか? こいつ等が近くにいた事。」
「少しは聞いたけどさ、あの時は完全に戦いの連続だったから聞き流してた。」
そう言いながら、昴は次なるページをめくった。
「…次は…陽介が残念な事になるんだよな…。」
「あいつの残念具合は今に始まった事じゃなかったのか…。」
☆
今日はここまで! …誕生ライブ回、もしかしたら当日に上げられないかもです…;