二次創作小説(映像)※倉庫ログ

生と死の狭間で【ポケモンXY】 ( No.9 )
日時: 2016/02/18 00:08
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: f/YDIc1r)
参照:

 「待てー!」

 逃げたピカチュウの後を追う為、走り回るカルムとサナ。
 ピカチュウは走りながらこちらに振り向き、あっかんべーをする。その反省の色もない行為に、カルムは困惑を覚えた。

 「はあっ……はぁ……速すぎて追いつけない!……出番だハリマロン!」
 「あたしも!エネコちゃん、お願い!」

 『No.78 エネコ 子猫ポケモン
動くものを追ってしまうので、自分の尻尾を追いかけて、同じ場所をグルグル回るという可愛らしい面を持つ』

 カルムはハリマロンを。サナは薄桃色の子猫のようなポケモン、エネコを繰り出した。にっこりと笑った顔をしている。

 「ハリマロン、ピカチュウにつるのムチだ!」
 「エネコちゃん、うたう!」

 ハリマロンは肩から緑色の鞭を使い、ピカチュウに叩き付けようとするが、背後にいるのを悟ったのか、ピカチュウは回避する。
 エネコは可愛らしい歌声でメロディを奏で、ピカチュウを眠りにつかせようとするが、ピカチュウはかわす。

 「全……然……当たらな……」
 「それより……サナ……眠くなって……」

 逆にカルムたちを眠りに誘ってしまい、カルム、サナ、ハリマロンはその場に倒れ込み、寝息を立てる。
 ピカチュウはその隙を狙い、自慢のスピードでその場を去っていった。
 歌い終えた後、エネコは眠っているカルムたちを見て、驚愕した。
 起きているエネコは困惑し、カルムたちを起こそうと尻尾でおうふくビンタをした。

 「!サナたち、寝ていたみたい……」
 「それよりピカチュウは?」

 いない。あるとしたら、樹に虫ポケモンたちばかり。どうやら逃げられてしまったようだ。
 がっくりと、カルムは項垂れた。あぁ、お気に入りだったのにな。しかし、ピカチュウはもう既に消えていたので、諦めるしかなかった。

 ◆

 カルムとサナはピカチュウの行方を探った。しかし、ピカチュウは何処にもいなかった。ハクダンの森を逃げ出したのだろうか。それでもサングラスの恨みを晴らそうと奮闘するカルムなので、あちこちと探す。

 「ピカチュウいないね……」
 「ああ、一体何処にいるんだろう」

 そんな時、
 ピカッチューー!!
 ピィアアア!!
 森中に響く轟音と鳴き声。一匹目の鳴き声には面接があった。
 カルムのサングラスを加えて逃げるピカチュウ。それを追いかける蜂のようなポケモン。

 『No.28 スピアー 毒蜂ポケモン
両手とお尻にある3本の毒針で相手を攻撃し、猛毒にさせる』

 両手と尻にある3本の毒針に羽の生えたポケモン、スピアーが何匹もピカチュウを狙って追いかけている。ピカチュウの悪戯癖によって、スピアーを怒らせてしまったのだろう。
 これはピカチュウが作り出したことなので、自業自得だが、あんなに憎かったピカチュウが、今では助けたい気持ちに駆られる。

 「わわっ、ピカチュウがスピアーたちに襲われてるよ!」
 「助けに行くぞ、サナ!」
 「うん!」

 幾らスピードの高いピカチュウにでも、体力は切れてしまうものなのだ。疲れきったピカチュウはその場に倒れ込む。それと同時に、口に加えていたカルムのサングラスが転がり落ちる。しかし、スピアーたちはそれを許さなかった。
 ピカチュウはサングラスに手を伸ばしたが、何者かの攻撃により、サングラスは壊されていた。ハッと目を見開いた。
 振り向くと其処には鬼の形相となったスピアーたちが。
 スピアーたちはピカチュウに目掛けて両手の毒針を下ろそうとするのを見て、もう駄目だ、と覚悟を決めて目を瞑る。

 「ハリマロン、ころがる!」
 「エネコちゃん、たいあたり!」

 ぐるんぐるん。頭の棘を尖らせて転がるハリマロンとスピアーたちを体当たりするエネコ。
 ピカチュウは目を見開いた。
 次の瞬間、ふわりと体が浮いた気分になる。顔を上げると、其処には以前悪戯をした帽子の少年。隣には少女がいる。
 ハリマロンたちがスピアーたちを倒したのを確認した後、カルムたちはポケモンを戻し、ピカチュウを抱えて逃げ出した。

 ◆

 シューッ
 キズぐすりをかけると、ピカチュウは痛いと言わんばかりに叫ぶ。
 カルムはピカチュウからキズぐすりを離し、バッグの中にしまう。

 「もう終わったぞー」
 「これでもう大丈夫だよ!」

 笑うカルムとサナ。
 ピカチュウには訳がわからなかった。あんなに悪戯をして、挙げ句には大事なサングラスまで壊したというのに、何故優しくしてくれるのだろうか。
 カルムは、壊れたサングラスに目をやる。粉々になっていて、直せそうにもない。あぁ、怒られるだろうな。
 しかし、それを介せずに、カルムは笑っていた。

 「何でだろうね、サングラスを壊されて、悲しいのに……だけど、スピアーたちに追いかけてられているお前を見てたら、助けなきゃって思ったんだ。僕でもわからないや。……ま、いっか。悪戯は程々にな。じゃあな!」

 立ち上がり、踵を返すカルムとサナ。
 その後ろ姿を、ピカチュウはずっと見つめていた。