二次創作小説(映像)※倉庫ログ

生と死の狭間で【ポケモンXY】 ( No.10 )
日時: 2015/06/29 20:37
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: z0poZTP7)
参照:

 「カルタロって、優しいんだね♪」
 「え?」
 「大事なサングラスを壊されて散々悪戯されたのに、ピカチュウを助けるなんて、カルタロは優しい人なんだね」
 「そ、そうかな」

 ハクダンの森の出口。カルムとサナはピカチュウの話をしていた。本当ならこのまま抜けて3番道路へ向かうのも良いが、サナの提案で「みんな一緒で出よう」となったので、4人を待つことにした。
 暫くサナと喋りながら待っていると、オーク色の髪を揺らしたセレナがこちらに向かって来る。

 「あら、お隣さんとサナ」
 「あ、セレナ!」
 「貴方たちが先ってことは、つまり才能のあるトレーナーなのね、貴方たち」
 「?」

 意味深な発言をするセレナ。その意味が全くわからなかった。
 その間、ティエルノ、トロバ、アイニスがやって来た。

 「色んな動きのあるポケモンが見れて良かったなぁ!」
 「ティエルノさんは動きすぎるんですよ……」
 「色んなトレーナーに声かけられて面倒くさかった……」

 全員揃った。これで一緒に抜けられる。

 「みんな、そろったね!それじゃ……」
 「待って」

 森を出ようとするサナをセレナが制する。そして、視線をカルムに変える。ティエルノたちも目線をカルムにする。
 カルムは訝しげな顔をする。

 「ねぇ、お隣さん。貴方の頭にいる"そのポケモン"は……何なのかしら?」
 「え?」
 
 自分でもわかる位、間抜けな声だと思った。
 その時、ピカッ♪と可愛らしいポケモンの鳴き声が聞こえた。
 カルムは目線を上げる。
 ピカチュウと目が合った。
 黄色い体、長くて先端が黒い耳、先がハート形のギザギザの尻尾、そして、愛嬌たっぷりの顔立ちは裏に秘めた本性を隠す。

 「さっきのピカチュウ!?何で?」

 何故だ。ピカチュウは先程カルムたちと別れた筈だ。それなのに、何故カルムの頭の上に乗っているのだろうか。
 カルムとサナの驚愕をよそにピカチュウは笑い続ける。
 セレナは訊ねる。

 「ねぇ、サナ。このピカチュウって何なの?」
 「この森に住んでるピカチュウだよ。とっても悪戯好きなんだけど、さっきスピアーたちに襲われたのを助けてあげて、別れたんだけど……」
 「……もしかしたら……カルメンについて来たんじゃないの?」

 アイニスが言う。眠気が覚めたのか、欠伸はしなくなったがジト目だ。相変わらずカルムの名前を間違えている。
 驚いたカルムはピカチュウにそうなのか?と訊くと、ピカチュウはピッカ♪と頷いた。どうやらこのピカチュウはカルムを気に入っている様子だ。スピアーたちから助けてあげたことから影響しているのか。

 「……僕と一緒に来るか?」
 「ピカッチュ!」

 迷い一つもない笑みと答え。
 カルムは満足げによし、と頷き、バッグからモンスターボールを取り出し、ピカチュウの頭にコツン、と触れさせる。
 ピカチュウはモンスターボールの中に吸い込まれ、姿を消した。
 最初は抵抗をするかのようにカタカタと動き始めていたが、次第に揺れは収まり、やがて動かなくなる。つまり、ゲット成功なのだ。
 カルムの初めてのポケモンゲットである。
 サナが驚愕して叫んだ。

 「えええっ、ピカチュウがボールの中に入った!?」
 「貴方のエネコは何の中に入っているのよ。……それより、ゲットもお隣さんに先に越されるなんて、悔しいわ」
 「え?」

 以前からセレナはよくわからない発言をする。先に行っただけで才能あるトレーナーとか、ピカチュウを捕まえただけで悔しいとか、一番に拘りを持たないカルムには、よくわからなかった。

 「じゃあ、気を取り直して、ハクダンの森を抜けましょう!」
 「オーライ!そうだね!」

 カルム、セレナ、アイニス、サナ、ティエルノ、トロバの6人は、一斉に足を踏み出してハクダンの森を抜けた。

 ◆

 森を抜けた後の日差しが眩しい。晴天を遮っていた樹はなくなり、虫ポケモンたちの声も聞こえなくなっていた。3番道路に着いたのだ。
 サナが訊ねる。

 「ねぇ、みんなはこれからどうするの?」
 「アタシはハクダンシティに行って、ジムリーダーに挑んでくるわ」
 「もうジムリーダーに挑むの!?セレナすごーい!」

 ジムリーダーは各地方にもいるポケモントレーナーだ。普通のポケモントレーナーとは比べ物にはならない程の強者で、それぞれのジムリーダーは違うタイプのポケモンを使ってくるのだ。ジムリーダーは全部で8人。ジムリーダーに勝利すると、ポケモンリーグに挑む時に必要なリーグ公認のジムバッジが貰えるのだ。そして、ジムバッジを8つ集めると、ポケモンリーグに挑むことが可能で、ジムリーダーよりも遥かに強い四天王を勝ち抜いた後、そして、地方の中でも最も強い、チャンピオンと対戦することが出来るのだ。
 セレナの両親は、かつては凄腕トレーナーらしく、セレナもその血が流れているからか、自信があるのだろう。

 「あたしは可愛いポケモンを捕まるんだー♪」
 「僕は動きのあるポケモンを探しに行くよ」
 「僕は……博士のお手伝いを進める為、色んなポケモンを探そうと思います」
 「オイラはハクダンシティに行って寝る……。沢山歩いたから疲れちゃったよぉ……」
 「カルタロはどうするの?」

 みんなは決まっているが、カルムはまだ決まっていなかった。

 「僕は取り敢えず、ハクダンシティに行って、ポケモンを回復させてから考えようかなって思ってる」
 「そっか、カルやん、セレナ、アイニスはハクダンシティで僕たちはポケモン探しなんだね」
 「そういうことになるね」
 「じゃあまたね!」

 サナ、ティエルノ、トロバはポケモン探し。カルム、セレナ、アイニスはそのままハクダンシティに向かうことになった。
 サングラスを乗せていないハンチングを見つめながらセレナは向かった。