二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 生と死の狭間で【ポケモンXY】 ( No.12 )
日時: 2016/01/28 18:21
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 8R/poQo9)
参照:

 ありましたございました!
 気持ちの良い言葉を背に向けてブティックを出るカルムとセレナ。今カルムが被っている帽子は、昔から被っていた赤いハンチングではなく、色違いの黒である。アクセサリーとして2つのピンズが留められている。
 値段は高かったものの、トレーナーとの対戦で稼いだ賞金で何とかなった。セレナ曰く「ブティックではこれが普通の値段」らしい。
 カルムは喜んでいる。人は何かの欲望が満たされると、悦に入るものだ。
 セレナは相変わらずクールである。
 カルムとセレナは向き合い、カルムは笑って話す。

 「本当にありがとう、セレナ!」
 「大したことじゃないわ。服は旅にでも必要なもの。雨でずぶ濡れになった時にもう一着あると便利だし、例え汚れていても、別のがあれば着替えられるわ。ブティックはハクダンの他にもあるから、今日みたいになった時は訪れると良いわよ」
 「うん、わかったよ」

 ところで、と話を切り換えるカルム。その視線には、セレナが手にしている沢山の服が入った袋に向けられている。 セレナがオシャレ好きなのはわかったが、そんなに沢山の袋を持っていると流石に気になる。
 カルムが尋ねると、セレナは袋に視線を落とす。

 「これは大切なもの。そのうち話すわ。……じゃあ、アタシもうそろそろ行くから、お隣さんも頑張ってジムリーダーを倒してね」

 大切なものとは何なのだろうか。それについて訊きたいが、あまり追求しない他が良いだろう。それに、カルムはこれからジムに挑むので暇ではないのだ。
 カルムはセレナの揺れるオーク色のロングヘアーを見つめた。いつか話してくれることを願いながら。

 ◆

 腹が空腹を訴えたので、ひとまず昼食を摂ることにした。腹が減っては戦は出来ぬ、だ。それに空腹だと精神力と集中力が落ちてしまうので、人間やポケモンに食事は欠かせない。欠かせられないものである。
 どの店にしようか頭を悩ませるが、カフェオレの香りに誘われて、喫茶店で食卓を済ませることにした。このカフェ──何処の店でもそうだが──にはポケモン用の飯や飲み物もあるのだ。
 喫茶店に入ると、店員である気品あるウェイトレスに案内され、やって来たのはテラス。とても景色の良い場所だ。ポケモンを連れたトレーナーたちがよく見える。
 椅子に腰を下ろすと、ご注文がお決まりましたらこのベルを鳴らして下さい、とウェイトレスが説明をして、去って行った。
 カルムはハリマロンとピカチュウを繰り出す。冒険に出発してから彼等には何も与えていなかったので、きっと腹を空かせているに違いない。最も、ピカチュウにはオレンの実をあげていたが、あれだけでは足りないだろう。
 ハリハリ!
 ピカチュー!
 ハリマロンとピカチュウは元気よく鳴いた後、二匹はカルムを見ると疑問符をつかせて鳴く。恐らく、カルムの帽子だろう。

 「ああこれ?帽子を取り替えたんだ。このままでも良いんだけど、セレナからしたらイマイチだからって」

 良いだろ〜!と自慢気に語るとハリマロンは良いなーと言いたげに鳴き声を上げる。
 カルムは被ってみるか?と訊くとハリマロンは瞳を輝かせてカルムから渡された帽子を受け取り、それを被る。ハリマロンの頭部にある棘により上手く被れてはいないが、似合っている。
 リマリマ!嬉しそうに鳴くハリマロン。
 ピカチュウはカルムの帽子を奪いとり、今度はピカチュウがカルムの帽子を被る。ピンと立つ両耳は帽子によって垂れる。こちらも似合っている。
 それを見て苛立ったハリマロンは、ピカチュウから帽子を奪った。それに続き、ピカチュウもハリマロンからカルムの帽子を奪う。
 二匹の喧嘩を止めるかのように、カルムは二匹から帽子を取り上げ、ニシシと笑みを浮かべる。
 すると、

 「とっても良い笑顔ね!」