二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 生と死の狭間で【ポケモンXY】 ( No.13 )
日時: 2015/12/13 19:22
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: CjSVzq4t)
参照:

 ジャーナリストは新聞や雑誌などあらゆるメディアに記事を素材として提供する職業で、記者や編集者と指すことがある。
 カルムと向かい合ってテーブルの椅子に腰かけている女性──パンジーというらしい──もジャーナリストである。動きやすそうな服装に、頭に付けていたヘッドセット型のカメラ。ウェストバッグを腰に付けていて、より身軽に見える。
 パンジーはハクダンシティの先にある街、ミアレシティにあるミアレ出版で働いており、各地方で取材することもあるらしい。
 今回はハクダンシティで取材をすることになり、ジムに寄ろうとしていたところで、カルムと楽しく触れ合っているハリマロンとピカチュウを目撃し、その様子を撮影していたとのことだ。
 お待たせ致しました、とウェイトレスが珈琲の入ったコップとショコラの入ったコップをトレイに乗せてやって来た。カルムとパンジーが頼んだものである。
 ウェイトレスは丁寧な仕草で二皿のコップをトレイから下ろし、そして二皿のコップをテーブルの上に乗せる。そしてごゆっくりどうぞと、笑みを浮かべながら去って行く。
 カルムはすでに昼食を終えたところで、ハリマロンとピカチュウの飯は届いたばかりで、二匹はカルムとパンジーの足元でがつがつと平らげている。
 クラシカルなBGMが流れる中、パンジーが口を開く。

 「カルム君はカロスに来たばかりなのね」
 「はい。3日前くらいから」
 「どう?慣れて来たかしら?」
 「んー、まぁ何となく」
 「そんなすぐには慣れないわよね。でもこの旅を通して慣れていけば良いのよ!ところで、カルム君はもうトレーナーズスクールには行った?」

 トレーナーズスクール。初心者トレーナーが集う施設だ。あそこはポケモンに纏わる状態や特性、相性と言ったポケモンの基本を学ぶ学校である。
 否、と返答するとパンジーは微笑した。

 「あそこは初心者トレーナーにぴったりだから、是非行ってみると良いわ!あそこなしでジムリーダーに勝つのは難しいのよ」
 「そこまで強いんですか?ジムリーダーって」
 「ええ、 私の妹も一筋縄ではいかないわ」

 そうなんですか、と受け流し、ショコラを口にするカルム。
 直後、先程パンジーが放った言葉を再生した。

 "私の妹も一筋縄ではいかないわ"
 "私の妹も一筋縄ではいかないわ"
 "私の妹も……"

 は?

 カルムは思わず口からショコラを吹き出した。まるで発狂を起こした黄色い梨の妖精が梨の汁を発したのような光景だ。幸い、少量だったので、ウェイトレスを呼ぶ必要もない。
 漏れてくる咳を片手で抑える。その様子を見てハリマロンとピカチュウは駆け寄る。
 パンジーは心配そうに問い掛ける。

 「カ、カルム君、大丈夫!?」
 「あほっ、ごほっ。……大丈夫です、吃驚しただけで」
 「ごめんなさいね、驚かすつもりはなかったの」

 咳は何とか治まり、落ち着きを取り戻すカルム。
 カルムはパンジーがすごいと思った。カロスや各地方で取材をしている職業に就いていて、にジムリーダーである妹を持つなんて。自分もサイホーンレーサーの肩書きを持つ母がいるものの、感心してしまう。
 だがしかし、どんな相手がジムリーダーでも必ず勝ってバッジを入手してやるという意識は変わらないが。

 ショコラを飲み干し、カルムは口を吹いて立ち上がる。

 「よし、今からジムに挑んで来るぜ!待ってろよ、ジムリーダー!」

 余裕のある笑みを浮かべてカフェを後にしようとすると、待って、とパンジーが止めた。

 「ちょっと……寄っていかない?」