二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ポケモン 不思議のダンジョン カルムとハリマロンの冒険 ( No.132 )
- 日時: 2015/09/17 18:48
- 名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 9/mZECQN)
- 参照:
ねぇ、……き……。……ってば……。
……誰かの声がする……。小さいからよくわからないけど……聞き覚えがあるような、ないような……。
此処は夢の中なのかな?夢はよくよく見ているけれど、こんな夢は初めてだ。
だけど、辺りが暗いな。僕の姿も見えない位、真っ暗だ……。
こんな暗闇の中で声が出てくる夢なんて、新鮮だな……。
それよりも、誰に声を掛けているんだろう……。僕……かな?そりゃ、そうかもしれない。此処にいるのは、僕一人なんだし。
でも……何故?
……起きてよ。ねぇってば。
え、起きてよ?何のことなの?一体何のことを言ってるの?わからないよ。君は誰に問い掛けているの?君は──
「起きてよッ!」
そこで僕の瞳孔は開かれた。曇り一つない綺麗な青空に照らされた日射しがとても眩しい。
青空から幾多のヤヤコマが羽根を羽ばたかせ、空を舞うのが見えた。
そよ風が発生し、僕の頬を撫でる。
そこで僕は気付く。
……そっか、夢を見ていたんだ。それにしても、ちょっと変わった夢だったな。あの声が誰に対して問い掛けていたのかはわからなかったけれど、まぁいっか。
上半身をゆっくりと上げると、視界に一匹のポケモンが僕の瞳に映る。
後頭部に五本の針のある緑色の頭が特徴的で、帽子を被っているように見える。茶色の体をしており、両腕だけが濃い。幼さの残る愛嬌たっぷりの顔立ちをしている。このポケモンには見覚えがある。えーと、確か……。
僕が名前を当てようとする中、そのポケモンは僕を見て、にっこり笑った。
「良かったぁ!呼んでも起きてくれないから、心配しちゃったよ!ぼくハリマロン、よろしくね!」
……そうだ、ハリマロンだよ!毬栗ポケモン、ハリマロンだ!
「君が起こしてくれたの?どうもありが──」
わなわなと震える僕を見て、ハリマロンは首を傾げる。
思わず、僕は──
「アイエエエエええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???ハリマロンガ……喋ッタぁぁぁぁぁぁ!!??喋ッタナンデ!?」
ハリマロンが喋る訳ないだろ!?というか、まずポケモンが喋るなんて、有り得ないだろ!?夢のまた夢を見ているっていうのか、僕は!?訳がわからないよ!おかしいよ、誰かぼくをアーカム・アサイラムに連れてってくれッ!!!
驚愕する僕を見て、ハリマロンは急に笑い始める。
「あっはははは!面白いことを言うね、君!ぼくたちポケモンは喋るのが普通だよ!君だってポケモンなのに……面白いね!」
「だって、ポケモンは喋らないのが普通だよ!それに僕、人間だよ!」
「人間なんて、お伽噺に過ぎないよ。此処にいるのはぼくたちポケモンだけ。ポケモンだけの世界さ。君がそういうなら、水辺を見てごらんよ?」
言ったからな!と膨れっ面になりながら、僕は近くにある水辺を覗く。
其処には黒髪黒眼の僕──ではなく。
「アイエエエエ!ポケモン!?ポケモンナンデ!?」
ポケモンの姿になっているなんて、おかしい。きっと視力がおかしくなったんだ、そうに違いない!僕は人間!カロスを旅するポケモントレーナーだ!
慌てる僕を見て、ハリマロンは眉を潜めて僕に問う。
「君……何だか怪しいね。もしかして僕を騙すつもり?」
「違うよ、そんなことはないよ!そうだったらこんなことしないしッ!!」
「じゃあ、名前は?」
名前。そうだ、僕にはちゃんとした名前がある。親が付けてくれた、「穏やか」を示す名前。確か──
「カ……ルム。カルムだよ」
「……カルムか、良い名前だね。疑ってごめんね、カルム。此処で倒れてるポケモンなんて、滅多にいないし、演技じゃなさそうだしね。……よし!」
ハリマロンは何か思い付いたかのように頷くと、僕の腕を掴む。
そして、ウインクを送る。
「ぼくたちの町においでよ!」