二次創作小説(映像)※倉庫ログ

【壁】 ( No.158 )
日時: 2015/09/22 21:47
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: 9/mZECQN)
参照:

「……チゴラス、ご苦労様でした。ゆっくり休んで下さい」

 ザクロは倒れたチゴラスをモンスターボールの中に戻すと、カメールと戯れているカルムを見据える。
 まさか戦闘中に進化をさせるとは……大したものだ。
 話からすると、ゼニガメは泣き虫で臆病、そして人見知りが激しい性格であり、ポケモンバトルに参加させるのも難しかったらしい。しかしザクロはそう思えなかった。カメールが此処まで諦めずに戦えたのは、カルムがいたからなのだろうか。
 ザクロは微笑み歩み寄る。

「お見事です。あなたは"私"、そして窮地という壁を乗り越えることが出来ました。非常に素晴らしいことです。その証に、ウォールバッジを差し上げます」

 ザクロの長い手が伸び、握られていた掌が開く。掌の中には、壁をイメージさせた茶色のバッジがある。
 カルムはそれを受け取る。

「ありがとうございます!」
「カルムさん、次に向かうジムは決まっていますか?」
「いえ、まだです」
「だったら、シャラシティのジムはどうでしょうか?あそこは普段のジムとは一味違うバトルが出来ますよ」
「?その一味違うバトルって?」
「それは……あなたとカメールの絆、そして、カメールが進化したらわかりますよ」

 笑うザクロに対し、首を傾げるカルム。その時のカルムはまだわかっていなかった。
 まさか自分が"あれ"を使えるようになるとは。

 カルムはザクロにお礼を述べ、ジムを後にした。
 今はベンチに座り、タウンマップを眺めている。ザクロが言っていたシャラシティは此処からあるセキタイタウンの後に近い。それに、セキタイタウンには変わった石があったので、ひょっとしたらメガシンカに関わっているかもしれない。
 そうと決まれば、出発だ。

「よーし!待ってろよ、シャラシティ!待ってろよ、シャラジム!!」

 ベンチから立ち上がり、ショウヨウシティを駆け抜けるカルム。
 その後ろ姿を見ているポケモンがいることも知らずに。

「ブイッ」

 ◆

 女王は不機嫌である。目の前にいる下っ端が自分が望んでいたポケモンをゲットすることが出来なかったからだ。
 ポケモンのゲットは、幼少でさえも出来ることなのに、それが出来ないなんて、こいつは赤ちゃんか。以前トレーナーのシャンデラを奪った奴の方がまだマシだ。
 苛立ちのあまりに、女王は王座から立ち上がり、ハイヒールで下っ端を蹴り飛ばす。
 下っ端は悲鳴を上げ、転がる。
 女王はハイヒールで倒れている下っ端の顎を持ち上げる。彼女が憤怒の炎に満ち溢れていることは、サングラス越しでもよくわかる。

「そ、すみません!女王!!次こそは白銀のイーブイをゲットしますからッ……だからッ」
「……もう良いわ」

 女王は方足を下ろすと同時に、下っ端の顎が落ちる。
 いてて、と自分の顎を擦りながら顔を上げる。
 下っ端は目を見開いた。
 其処には燃えるライオンと女王。

「──貴方も用済みよ」

 ああ、失敗するんじゃなかった。

 処刑を終えて他の下っ端に片付けをさせた後、女王はスマートフォンらしき機械を取り出し、耳に当てた。
 呼んだ相手は──"息子"。

「エカルラート……貴方に任務を与えるわ。キリたちのディアンシー捜索が未だに進まないから、貴方もやって来て頂戴。トレーナーから奪った、あのシャンデラもそちらに転送するわ」
『……了解。

残虐タイムだ』


 ◆

 青みがかかった長い黒髪の少女はセキタイタウンの入り口に立っていた。
 目の前には大きな石で出来た入り口。この石が……プラターヌ博士が言っていた"あれ"に関わることらしい。
 他の後輩たちや助手も"あれ"について調査をしているが、未だに見つからないままだ。この町には、それがあるのだろうか。

「行くわよ、パチリス」

 肩に乗っている水色のリスのようなポケモンはパチィ、と鳴きながら頷いた。

 向かう先は、セキタイタウン。