二次創作小説(映像)※倉庫ログ

【カルムとピカチュウは仲良しでちゅう】 ( No.183 )
日時: 2016/02/18 00:24
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: f/YDIc1r)
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 ハツナ。それが彼女の名前である。
 彼女はカルムたち6人同様、プラターヌに選ばれた図鑑所有者であるが、御三家を選ばずに旅に出たらしい。カルムとは一つ年下だが、カルムたちよりもカロス地方を旅している。年下なのだが後輩である。
 今はカルムたち同様、メガシンカについて調査しており、セキタイタウンの石に目がついた彼女は此処で一泊をしようとしたところ、カルムのピカチュウが逃げた光景を目撃し、今に至る。
 ハツナに今までのことを話すと、ハツナは急に叫び出す。

「あんた馬鹿じゃないのッ!!??ピカチュウを放棄してゲームしてるなんて最低よ!」
「ぐっ……」
「スピアーはあたしも苦手だから、彼女があんたに付いて来た気持ちはわかるわ!だけど、あんたはピカチュウの気持ちを踏みにじったのよ!?もう少しピカチュウのことも構ってあげたらどうなの!?」
「!ぼ、僕だって、ピカチュウや他のポケモンたちとも構っているよ!ただ、ピカチュウは悪戯好きだから──」
「あんたそれでもポケモントレーナーなの!?そんな言い訳、あたしには聞かないわ!」
「……うっ」

 悔しいが、ハツナの言い分は最もである。




 ハツナの長い長い説教を受け終えた時は既に、夕食の時間となっていた。
 ジョーイやタブンネ特製の料理を食べて、トレーナーやポケモンたちは楽しそうに会話を弾ませたり、美味しそうに夕食を食べている。
 しかし、

「……ふん」

 カルムとハツナは同じ席になり、テーブルの上に置かれている夕食を一口も頬張らない。カルムは上目でハツナの様子を伺っているが、ハツナは膨れっ面になったまま、カルムの顔を見ようとしていない。
 カルムとハツナのポケモンはポケモンフーズを頬張っているが、二人の様子を見てとても心配そうな表情をしている。
 それを眺めているニャスパーはよちよちと小さな足を動かせ、テーブルの上に乗り、二人の目の前に立つ。
 ニャスパーのアメジストの瞳が光り出す。

『もう、良いんじゃないの?』

 ニャスパーのテレパシーだ。ニャスパーはエスパータイプなのでテレパシーが使えるのだろう。
 ニャスパーのテレパシーはあまり使わないが、こういう事態の場合は別である。

「こんな最低トレーナー見たことないわ」
「うう、悪かったってば……」
『はいはい、もうこの件はお終い。それより……今大事なのは、彼女を探すことなんじゃないかな』

 彼女とは、ピカチュウのことだろう。カルムのポケモンの中で雌ポケモンといえば、ピカチュウのみである。
 ピカチュウはあれ以来、カルムの元に帰って来ていない。どうやら、彼女の家出は本気らしい。
 ピカチュウは旅を通して強くなってきているが、彼女一匹では野生のポケモンに太刀打ちは出来ないだろう。カルムも、彼女もまだまだ未熟なのだ。

「……そうね、今は口喧嘩してる場合じゃないわ。貴方のピカチュウを探さなくちゃね。私も手伝うから、この件は無しってことで」
「そうだね、今はピカチュウを探さないと。その為には沢山食べないと!」




 カルムと喧嘩をし、家出してから数時間が経つ。
 ピカチュウは道路を歩いていた。
 どうもまだカルムにことで苛立ちをしており、木を叩き付けたりしている。
 木に住んでいる虫ポケモンや鳥ポケモンは逃げ始める。ピカチュウはそれを気に止めず、ひたすら歩く。
 もう、あのピカチュウと喋ったりして何が楽しい訳!?あのピカチュウは仮想であって、アタシは本物なのに、一体何が不満なの!?
 ピカチュウが心の中で愚痴を呟くと、背後から攻撃が迫ってくることに気が付く。
 それを察したピカチュウはハートの尻尾でその攻撃を打ち返す。
 すると煙が発生する。
 その中で高めの声が響く。

「中々やるじゃん♪」

 煙が晴れ上がると、声と攻撃の主であろう男とポケモンが立っていた。
 小柄でサイズの合わない赤い囚人服に、裸足。両手が袖により遮られている。
 素顔は見えず、ニカニカ笑う真っ白の歯が光る。
 隣には黒いぬいぐるみらしきポケモン。赤い焔の瞳が宿っており、体や両手にあるファスナーが開かれ、まるで怨念を放しているようにも見える。
 まるで、男の傀儡人形のように。

「やほー、オイラはラージ!ラーちゃんって覚えてもいーんだよ?この子はジュペッタ!オイラの大切なお人形なのー♪可愛いデショ?」

 喋り方はお茶らけているが、とてつもない狂気を発している。ポケモンも、彼も。
 それを察したピカチュウは後退りをする。
 吹き出る汗がピカチュウの頬を伝う。

「まぁまぁ!オイラは君をヤりに来たんじゃないヨー?君をオイラたちの仲間にしようと思ってー♪」

 仲間?
 ピカチュウは訝しげな顔をすると、彼とジュペッタは笑う。

「オイラと行けば、悪戯しほうだいだし、楽しいことだらけだよ!何処も行くところがないんデショ?だったら、オイラのところにおいでよ!」

 確かに、何処も行くところがない。カルムの元にも帰るつもりは一昨日ない。それに向けて最近悪戯もしていない。引っ掛かりがいのあるカルムにも悪戯しようとしたが、彼は"現実のピカチュウ"より"仮想のピカチュウ"の方が良いらしいのだから。
 ピカチュウはラージの元にゆっくりと、歩み寄る。

 彼のことが忘れられるのなら、それで良い。