二次創作小説(映像)※倉庫ログ

麗しき宝石のプリンセス ( No.205 )
日時: 2015/10/13 23:49
名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: H65tOJ4Z)
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 時々思うことがあります。あの時、わたしがmariを止めていなければ、mariはこうなっていなかったのかと。
 昔のmariは幼く無力だった自分に腹をただせては、リスカットをなされていました。わたしが何度も注意を促しても、mariはその行為をやめてくれませんでした。
 そして、こう言うのです。──「この痛みを抉れば、ぼくは強くなれる」。
 mariの身体だけではなく、心と精神までもが歪んでいます。これは、わたしでもあります。
 もし、あの日がなければ。もし、わたしが止めていなければ──。
 mari、貴方はわたしが憎いでしょうか。





 カロス地方の何処かにある誰も知らない洞窟。そこにはある秘密が眠っている。
 潜れば一見何もない暗闇の洞窟にしか見えないが、進んでいくうちに光が照らされているのがわかる。ダイヤモンドだ。しかし、そのダイヤモンドは"桃色"という滅多に見ることの出来ないレア物であり、売却すれば1ヶ月遊びきれる程の贅沢が出来る位の高価だろう。
 更に進んでいくと、地下には桃色に光るダイヤモンドがあちこちと発掘されており、中央には2㎝のダイヤモンドがある。金にがめつい人や探検家はダイヤモンドを持ち帰ってしまうだろう。だがしかし、此処に住むあるポケモンはそれを決して許さない。
 何故なら、この洞窟の主である"プリンセス"がいるのだから。

 プリンセスはこの洞窟の生活にうんざりしていた。毎日変わらぬ日々、自分を縛る規則、姫としての仕事──
あまりにも退屈すぎるので、外に出てみようと思った。しかし、外に出る度に大臣や家来が表れ、説教をされてしまうというオチが毎パターンとなっている。
 大臣は外は危険だと言い、外出への恐怖を教えてくれるけれども、プリンセスは納得がいかなかった。野生のポケモンは本来なら外の世界で生活をしているのに、何故自分は駄目なのだろう、自分もポケモンなのに。
 疑問は尽きず、外の世界に知りたいという一心が深まるばかりであった。

 プリンセスは今日も大臣や家来の目を盗んで、外に出ようとしていた。外の世界への好奇心というものは中々抑えられない、もっと知りたいという欲がプリンセスを動かしているのだ。
 みんなが働いている隙を狙い、プリンセスはこっそりと出口に進んでいた。ダイヤモンドの明かりがなくなって来ている。もうそろそろ外の世界だ。
 今日こそうまくいく、今日こそ外の世界にわたくしは飛び立つのだ──


「ディアンシー様ッ!」


 反射的に振り返ると、プリンセス──ディアンシーは溜め息を吐いた。もうちょっとで、この生活からおさらば出来ると思ったのに。現実は上手くいかないものである。
 ディアンシーはげんなりとした表情で大臣を見つめる。

「……見つかっちゃった」
「見つかっちゃったじゃありません!何度言ったらわかるのですか、外の世界は危険ですッ」
「危険危険と言いますが、それ程外の世界は危ないものなのですか?野生のポケモンはみんな、外の世界で暮らしているというのに、何故わたくしは駄目なのです?」
「姫、あなたにはこの洞窟を述べるという大事な役割があります。そして、あなたは宝石を生み出すという能力がある。あなたが外の世界に彷徨いていれば、いつ誘拐されてもおかしくありません!」

 いつもいつもその台詞ばかり。大臣はそうやってわたくしを縛るのだ。わたくしのしたいことを否定し、自分の意見を押し付ける。ディアンシーはそれが嫌で堪らなかった。
 いつもなら、はーいと言って引き返してしまうが今日は違うのだ。

「わたくしは諦めません!わたくしは外の世界が知りたいのですッ!」
「駄目です!!駄目と言ったら駄目!」
「わたくしは今までのわたくしとは違います!今日はお前たちを押し切って、外の世界に出てみせるッ!!」
「姫様──」


「へぇ……わざわざこっちから出迎えてくれるんだ。寧ろその方が好都合かも」


 聞いたことのない男声が響き渡る。そこには何かがいた。
 ディアンシーや家来よりも長身で手足が長く、胴体のある。頭には絹糸のようなものが生えてある生き物は、二つもいる。ポケモンではない。

「人間、ですか?」
「ご名答、お姫様。僕はエカルラート、あなたを──」

 言葉を切った人間は、シャンデリアのようなポケモンを球体から飛び出し、ディアンシーたちを襲った。
 炎が燃えている。
 顔を上げると、人間は炎と同じ瞳の色を宿らせ、微笑む。


「──盗みに来ました」


 危険を察した大臣はディアンシーの前に立ち、人間を睨み付けている。
 人間はそれを鼻で笑い落とす。
 シャンデリアとよく似たポケモンは大臣に容赦なく襲いかかり、炎を撒き散らした。効果は薄いものの、桁が違うことに気付く。
 シャンデリアのようなポケモンは大臣を攻撃して突き飛ばす。

「大臣ッ!」
「ディアンシー……様……お逃げ……下さい」
「で、でもッ」

 顔を上げると、人間の顔が目の前にある。驚愕したあまり、ディアンシーは動きがとれなかった。
 人間は笑みを浮かべたまま、ディアンシーに歩み寄る。ディアンシーは何も出来ず、その場を立ち尽くしている。
 そして、人間とディアンシーの距離が0になる。
 ──これが、人間、人間の本能、外の世界。やはり、大臣の言っていたことに間違いはなかった。大臣の言うことを聞いていれば良かった。
 後悔と人間への恐怖心に苛まれたディアンシーは、堪らなくなり、現実から逃げるように目を閉じた。
 その時。


「   」


 耳元で何かが聞こえた。
 瞳孔を開くと、人間が自分の耳に顔を寄せていたことがわかる。言葉は何を発していたのかは、忘れてしまった。
 人間はディアンシーの耳から離れ、微笑みを保ち続けていたままだった。
 ディアンシーは理解出来ずにそのまま立ち尽くしていると



 辺りが真っ暗になった。