二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 麗しき宝石のプリンセス ( No.209 )
- 日時: 2015/12/23 19:26
- 名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: CjSVzq4t)
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あの人間に襲われてからは何も覚えていない。あの人間が耳元で発していた言葉、あの後どうなってしまったのか、そして──何故自分は助かったのか。あの人間は自分を盗みに来たと言っていた。妖しきシャンデリアを使って大臣を追い払い、自分を拐おうと接近したのだ。しかし、奇想天外なことが起こり、目が覚めた時にいた場所は見知らぬ森の中だった。人間は自分を逃がしたのだろうか。しかし、何故?
人間って、よく解らぬ生き物なんですね。人間について勉強をしたのは良いが、大臣や家来がいないこと、そして、此処は何処なのかもわからない。大臣があの後自分を庇って此処に逃げ出したのか、それともあの人間が此処に送り出したのかも、脳内の記憶が曖昧だった為、どれが明確なのかははっきりしていなかった。
しかし、此処でうじうじしていても何も始まらない。外の世界に飛び出すことが出来たのは良いが、大臣への心配性が巡る。早く国に戻らなくては! 決心し、薄暗い森を突き進む。
◆
それから、旅は始まった。大きな山に登り、深い谷を越え、森を抜ける。それはとても厳しく、サバイバルな生活であった。
こんなにも厳しい世界だったとは、思いませんでした。また新しいことを学ぶ。外の世界を学べば学ぶ程、自分の世界はどんどん広がっていくことの楽しさを感じていた。外の世界は楽しいけれど、やはり大臣や家来たちが心配であり、故郷に恋しさを募らせていた。楽しいことがある分、悲しいこともあるのか、これも勉強なのだと。
色々なことを学びながら、旅をしていると、あるものと遭遇することになってしまう。赤だ。炎のように燃え上がる赤が、旅を遮り、こちらに迫ってくるのだ。それはいくつものの赤が。何故赤が自分を狙うのかはわからないまま、ひたすら逃げた。逃げて逃げて逃げまくっていた。
赤といえば、あの人間の瞳は赤ではないが、緋色だった。赤と緋色はよく似た色だ。もしかしたら、あの人間の仲間なのかもしれない。やはり、大臣が自分を庇って逃がしてくれていたのか!
仲間たちへの想いが募り切る。一刻も早く、故郷へ戻らなければ!
◆
眼前には大きな壁が道を遮っていた。行き止まりである。しかし、前を振り向くとそこには赤い二人組が立っていた。
「さぁ、大人しくこっちに来い!」
「お断りします。あなたたち、あの人の仲間なのでしょう?」
「お前の言うあの人は知らないが、こっちに来れば痛い目に合わなくて済むぞ」
「嫌です、わたくしは故郷に帰らなければならないので」
では、失礼しますと礼儀あるお辞儀を交わし、そのまま赤を素踊りしようとするポケモン。しかし、赤はそれを許さなかった。
「きゃあッッ!!」
突然何かに襲われ、その場に倒れ込む。犬型のポケモンと蝙蝠のようなポケモンがポケモンを攻撃したのだ。
「さぁ……来るんだ!」
「しつこいですわね、何を言われようと、わたくしはあなたたちについて行きません!」
何をされても、ポケモンの意志は変わりなかった。それが赤の苛立ちを加速させるエネルギーに変化していく。
「デルビル、やれッ」
「ズバット、お前もだ!」
瞬間、
「ゲコゲコラ、みずのはどー」
「パンプジン、いわなだれッ!!」
勢いよく発射された水の塊と岩の霰が飛び、犬型ポケモンと蝙蝠のポケモンを突き飛ばし、壁に衝突する。
何だ!? と赤二人組が振り返ると、そこには少年少女と目が合う。
「一匹相手に二匹出すとか卑怯だぞー!!」
「せっかくのグルメ旅を邪魔して、ほんとグズね」
「くっ……此処は子供が来るところじゃねぇ! さっさと帰れッ」
「やーだよぉー」
少年があっかんべーをすると、赤二人組は挑発に乗ってしまい、やっちまえ!と指示を出す。
「ゲコゲコラ、もう一発!」
「パンプジン、アンタもよ!」
蛙のようなポケモンは水を塊、南瓜のようなポケモンは岩の霰を繰り出し、それらを犬型ポケモンたちに当てる。
犬型ポケモンと蝙蝠ポケモンはそれを食らうと、爆発が発生し、視界が遮られる。
一匹のポケモンは咳き込みをすると、一つの手が差し伸べられた。
「この隙に逃げるぞ!」
「……はい!」